「後悔先に立たず」の意味とは?
「後悔先に立たず」は、日常生活やビジネスシーンでもよく使うことわざです。生活全てに、「座右の銘」として使っている人やビジネスシーンでの「心得」としても使っている人がいます。ここでは、「後悔先に立たず」の意味について詳しく解説していきます。
意味「終わったことを悔やんでも遅い」
「すでに終わってしまったことを後から悔やんでも遅い」「済んだことを後悔しても取り返しがつかない」という2つの意味をもつ「ことわざ」です。言い換えてみると、「事前に準備しておきなさい」「あらかじめ注意しておくこと」という教えを説いた言葉です。
「後悔先に立たず」の「後悔」は、「あと」「時間的に後」という意味の「後」と、「悔いる」「悔やむ」という意味の「悔い」が一緒になった言葉です。つまり、「後悔」は、「前にしたことを後になって悔いること」という意味となります。
「後悔先に立たず」の「先」には「未来」のことを表しています。「立たず」は「役に立たない」という意味となります。この「後悔」と「先」と「立たず」が一緒になってできた言葉です。
「後悔先に立たず」の対義語・類語
それでは、「後悔先に立たず」の対義語と類語をご紹介していきます。それぞれの対義語と類語の意味と使い方を例文を使って解説していくので、チェックしていきましょう。言葉の対義語と類語を知ることは、その言葉の理解を深めることができるので、とても大切です。
「後悔先に立たず」の対義語
まずは、「後悔先に立たず」の対義語からご紹介していきます。「後悔先に立たず」の対義語の意味や使い方を例文で確認していきましょう。対義語を知ることで、より「後悔先に立たず」に対して深く理解を進めていくことができます。
対義語「伸るか反るか」
「後悔先に立たず」の対義語として「伸るか反るか」があります。読み方は、「のるかそるか」で、意味は「成功するか、失敗するか」です。
「後悔先に立たず」の対義語「伸るか反るか」の由来は、「伸る」には、「長く伸びる」という意味があり、「反る」には「反対側に反り返る」という意味があります。この2つが組み合わさってできた言葉とされています。
使い方を例文で分かりやすくご紹介していきます。「今日は、伸るか反るかの大事な勝負だというのに、全く準備ができていません」「伸るか反るかの危険が伴う企画なので、銀行は渋っていました」となります。
他にも、「この番組に伸るか反るかで、これからのテレビ局の方針が決まりますよ。それくらい実験的な企画ではありますが、必ず成功させて欲しい」「全ての敵がいなくなったような大企業ではあるが、あの会社との合併は伸るか反るかの大事業ですよ」があります。
「後悔先に立たず」の対義語「伸るか反るか」をご紹介してきました。よく使う対義語でもあるので、参考にしてみてください。
対義語「後は野となれ山となれ」
「後悔先に立たず」の対義語として「後は野となれ山となれ」があります。意味は、「目先のことさえ解決できれば、あとはどうなっても構わない」です。自分ができることは、全てやったのなら、後のことは知ったことではないという「開き直りの気持ち」を込めた使い方とします。
使い方によってはとても潔い印象のあることわざでもあります。このことわざの由来には、浄瑠璃の「冥土の飛脚」の一節があるとされています。江戸時代の浄瑠璃や歌舞伎役者である近松門左衛門の作品でもあります。
この一説に、飛脚問屋の忠兵衛がお客さんの金を横取りして逃げるシーンがでてきます。これが「後は野となれ山となれ」の由来になったとされています。
このことわざの使い方を例文を使ってご説明していきます。「テストの問題が分からなかったので、後は野となれ山となれで適当に答えました」「やることはやったから、後は野となれ山となれだよ」「目先のことが終わったからと、後は野となれ山となれは酷すぎるんじゃないかい?」です。
英語表現にすると「その後に起こることは気にしない」という意味の英語表現で「I don’t care happens afterwards.」や「私達の後に洪水が来るなら来い」という英語表現「After us me , the deluge.」があります。
対義語「準備万端」
「準備万端」の読み方は「じゅんびばんたん」で、意味は「準備が完璧で整っていること」という意味があります。「万端」は、「ある物ごとについて全ての事柄」という意味です。
使い方を例文でご紹介していきましょう。「明日は、大切な会議です。準備万端で、後は当日を待つだけです」「12時に家を出発できるように準備万端にしておくこと」となります。
対義語「用心に怪我なし」
「用心に怪我なし」の読み方は「ようじんにけがなし」で、意味は「用心していれば失敗することがない」です。十分に用心していれば、怪我をすることも失敗することもないという意味での使い方になります。
例文として「用心怪我なしだと心得ていた成果があって、特に大きな失敗もありませんでした」となります。参考にしてみてください。
「後悔先に立たず」の類語
「後悔先に立たず」の類語の意味と使い方を、例文を使ってご紹介していきます。類語は、その言葉を言い変える表現として使うことができるので、大変便利な言葉でもあります。それでは、「後悔先に立たず」の類語をチェックしていきましょう。
類語「後の祭り」
「後悔先に立たず」の類語「後の祭り」の読み方は「あとのまつり」で意味は「時期に間に合わず手遅れなこと」です。「後悔する」という意味合いで使う人が多いのですが、実は正しい解釈とはいえません。「後の祭り」は、「時期に間に合わず、手遅れなこと」を意味する否定的な言葉です。
そのため「いまさら後悔しても遅い」という意味での使い方をし、「後の祭りだ」と言い切る形で使います。「後の祭り」の由来は、「祇園祭説」と「故人説」の2つあるとされています。
「祇園説」からご説明していきます。「祇園祭り」は、山鉾(やまぼこ)巡業の「前の祭り」と還車を送る「後の祭り」の2部構成です。山鉾巡業はとても派手で、還車送りは派手さがありません。そのため「後の祭り」は「いまさら見ても手遅れである」という意味があります。
一方「故人説」は、そのまま「盛大に式をあげても出遅れだ」という意味です。どちらの由来が正しいかは、明確にはなっていませんが、どちらも「手遅れだ」という意味となっています。
「後の祭り」の使い方として、取り返しがつかない物事に直面して、罪の意識を感じる場合の使い方があります。罪の意識に関する慣用表現として「自責の念に駆られる」「罪悪感に駆られる」が使われることが多くなります。例文をいくつかご紹介しましょう。
「後の祭りだと分かっていても、思い返すと自責の念に駆られます」「いまさら酷い言葉を使ったことに罪悪感に駆られても、後の祭りですよ」となります。
そして、「後の祭り」は予定や約束に間に合わない場面に使うこともできます。焦りやあきらめといった心情を表す使い方となります。他にも、「早めに準備しておけばよかったのに」という風に、皮肉った表現としての使い方もあります。例文で分かりやすくご説明していきましょう。
「後の祭りだといって、息子は全くテスト勉強していません」「後の祭りにならないように、明日の用意をしてから寝るよ」です。さらに、「後の祭り」は、一般的な物事に対して「後悔している」という心情の表現としての使い方もできます。
「後の祭り」の意味には「手遅れである」がありますが、これが転じて「後悔している」となるのです。例文をご紹介しましょう。「ネットで購入した方が、安く買えたようですが、後の祭りだよ」「スマホを洗濯機に入れたまま洗濯してしまったようだ。もう後の祭りだ」となります。
「後の祭り」と「祭りの後」は似ている表現ではありますが、全く違う意味があります。「後の祭り」は、「時期に間に合わなくて、手遅れなこと」という意味で、「祭りの後」は「楽しいことが終わった後の寂しさ」という意味があります。
類語「転ばぬ先の杖」
「後悔先に立たず」の類語「転ばぬ先の杖」の読み方は「ころばぬさきのつえ」で、意味は「失敗しないように、万が一に備えて準備しておく」です。これは、失敗しないように事前の準備や計画を促す意味の言葉です。
「転ばぬ」は「転ぶ」と「ぬ」の打ち消し表現からできていて「転ばないように」を意味しています。「転ばぬ先の杖」の由来は、江戸時代の「伊賀越道中双六」という浄瑠璃にあるとされています。
「転ばぬ先の杖」の使い方には「不測の事態に備える場合」「不安なことを、前もって取り除いておく場合」「前もって相手に注意を促す場合」があります。例えば、ビジネスシーンや自然災害といった不測の事態に、慌てて混乱しないように「転ばぬ先の杖」が必要になることがあります。
さらに、前もって相手に注意を促すことで、気持ちを作っておいてもらう使い方もあります。例文をご紹介しましょう。
「忘れ物をしないように、転ばぬ先の杖としてメモをしておきましょう」「あそこの自治体では地震に備えて、定期的に避難訓練を行っています。まさに転ばぬ先の杖ですね」「年を重ねて働けなくなったらいけないので、転ばぬ先の杖として貯金をしておきましょう」
「熊に遭遇したときの事を考えて、転ばぬ先の杖として鈴を用意しています」「転ばぬ先の杖として、自動車のメンテナンスは行いましょう」「新しい家電を購入したのなら転ばぬ先の杖で説明書をじっくり読んでから使いなさい」となります。
類語「油断大敵」
「後悔先に立たず」の類語「油断大敵」の読み方は「ゆだんたいてき」で、意味は「気を抜くと思わぬ失敗をする」です。由来は、いくつかあって、仏教の経典とされるものと古語「ゆたに」が由来とされている説があります。
「油断大敵」の使い方は、「気を抜きそう」「注意をしなさそう」という場合に戒めの言葉として使います。物事が順調に進んでいるときには、人はどうしても気の緩みや不注意になることがあります。また、勝負事で自分の力を過信して、気を抜く場合もあるでしょう。
こうした場合の気の緩みや注意を怠ることから起こる「失敗や負け」を「油断大敵」という言葉で戒めているのです。
使い方を例文でご紹介していきましょう。「私の座右の銘は油断大敵です。どんなことでも、常に気を抜かずに取り組みます」「相手が、格下だからと油断していたら、ストレートで負けたよ。油断大敵とはこういうことを言うんだね」となります。
英語で表現する場合、「自分自身を過信し過ぎるな」という日本語の場合「Don’t be too sure of yourself」という英語表現にもできます。他にも「Security is a great enemy」も油断大敵の意味で使えます。直訳すると「安心は最大の敵である」となります。
「後悔先に立たず」の使い方・例文
それでは、「後悔先に立たず」の使い方を例文を使って分かりやすくご紹介していきます。「後悔先に立たず」は、よく使うことわざでもあり、座右の銘として使うこともできます。さらに、「後悔しないように」という意味でアドバイスや助言としても使えるので、要チェックです。
例文①
「やるべきことは、全て終わらせておきましょう。後悔先に立たずというようにね」「後悔先に立たずで、締め切り前に何かアクションを起こしましょう」「就職の面接をパスしてしまいました。後悔先に立たずだ」という例文があります。
ここでの使い方の意味は、「済んでしまったことは、後悔しても仕方がない」というものでの使われ方です。こういったシーンに出会ったのであれば、ぜひ使ってみてください。
例文②
起きてしまった事柄に対して「あの時にこうしておけばよかった」と後悔することがあります。そうした場面での使い方を例文でご紹介していきます。「先生に「ここはテストにでます」と言われたのに、問題が全く解けなかった。後悔先に立たずとはこういうことを言うんだな」
「大事な面接に遅刻してしまいました。きちんと用意しておくべきだったと、後悔先に立たずですね」という例文があります。この例文での使い方のように、過去のことを悔やんで「後悔先に立たず」を使う場合は、文中に「こうしておけばよかった」といった反省の言葉を添えて使います。
例文③
「後悔先に立たず」の使い方として、後悔しないように今の行動を戒める時の使い方があります。その場合の例文をご紹介していきましょう。
「後から後悔先に立たずにならないように、しっかりと準備をしておきましょう」「明日の納品予定の商品は、しっかりとチェックしてください。後から後悔先に立たずと思っても遅いですからね」
「親が生きているうちに親孝行をしたい。いなくなってしまってから後悔しても、後悔先に立たずですよね」という例文となります。この場合の使い方は、「今できることをしっかりとやろう」という戒めや決意を込めて使うことがあります。
例文④
「後悔先に立たず」を恋愛の教訓としての使い方もします。仕事や恋愛も後悔してからでは遅いことがたくさんあります。取り返しがつかなくなってから気がついても遅い場合の使い方です。例文としては「後悔先に立たずだよ。好きならはっきりと伝えた方がいいよ」という使い方ができます。
この場合の意味は、「恋愛で失敗したなら、後悔しても意味がないので、失敗を教訓に前向きになろう」という意味合いでの使い方になります。この他にも、仕事での使い方として例文をご紹介しておきましょう。
「気付いたときにすぐに報告していれば、こんなことにはならなかった。まさに、後悔先に立たずだ」「今さらそんなことを言っても、どうしようもないことは君が1番わかっているでしょう。後悔先に立たずです」参考にしてください。
「後悔先に立たず」と「覆水盆に返らず」の違い
「後悔先に立たず」の意味と似ている表現として「覆水盆に返らず」というものがあります。「覆水盆に返らず」には「1度してしまったことは、取り返しがつかない」という意味があり「後悔先に立たず」と大変似ています。2つの意味には、どういった違いがあるのか解説していきましょう。
「覆水盆に返らず」は「1度してしまったことは取り返しがつかない」という意味
「覆水盆に返らず」の読み方は「ふくすいぼんにかえらず」で、意味は「1度してしまったことは、取り返しがつかない」です。「覆水」には、「こぼした水」という意味があって、「盆」には「お盆」という意味があります。
ここから「覆水盆に返らず」には、「1度こぼしてしまった水は、元に戻らない」という例えでもあります。「覆水盆に返らず」の由来には、中国古代の「元妻に復縁を迫られた元夫が、水をこぼして、この水をお盆に戻すことができれば復縁します」があるのではないかとされています。
このお話は、「こぼれた水を、元に戻すのは不可能ということと、復縁も同じで不可能」ということを例えている使い方になります。ここから、「覆水盆に返らず」は「1度離婚した2人は、元に戻ることはできない」という意味をもつようになったのです。
ここから転じて「1度してしまったことは、どんなに後悔しても取り返しがつかない」といった意味をもつようになったとされています。使い方は、「どんなに後悔しても元に戻すことはできない」どうにもならない状況や場面となります。
例文もご紹介しておきます。「どんなに問題を解決しようとしたとしても、覆水盆に返らずです」「こんなことになってしまったら、もう覆水盆に返らずだ」という使い方になります。
「後悔先に立たず」の由来・歴史
「後悔先に立たず」のことわざの由来や歴史には、どういうものがあるのでしょうか?ここでは、「後悔先に立たず」がどういう流れでできたことわざなのか解説していきます。結論からいうと「後悔先に立たず」の由来は、書物や逸話があるわけではないのです。
由来
「後悔先に立たず」の由来は、特にないとされていますが、なかには、「古今和歌集」が由来となっている説もあります。「古今和歌集」は、平安時代に書かれた和歌集で、最初の勅撰和歌集としてまとめられたもののことをいいます。
このなかに「さきだたぬ、悔いのやちたびかなしさは、流るる水の帰りこぬなり」という和歌があります。これを現代語にすると「過去が決して戻ることがないように、悔いが多い悲しみは流れる水が返ってこないことのよう」という意味があります。
これが、「起こってしまったことは、後から後悔してもどうしようもない」という「後悔先に立たず」の由来とされたという考えがあります。
歴史
他にも、古代中国の逸話が「後悔先に立たず」の由来という説もあります。しかし、「後悔先に立たず」の由来には、これが由来だということがありません。しかし、「後悔先に立たず」は人々の座右の銘になるくらい人生の教訓になってくれることわざであることは、確かです。
「後悔先に立たず」の英語表記
「後悔先に立たず」の英語表現として「What’s done is done」があります。直訳すると「終わってしまったことは仕方がない」という意味です。「It’s no use crying over spilt milk」は、「覆水盆に返らず」という意味の英語表現もできます。
「Repentance comes too late」は、「後悔するには遅すぎる」という意味の英語表現もあります。ビジネスシーンでの使い方は、「What’s done is done」という英語表現があります。日本語にすると「速すぎた決断」という意味で使うことができます。
「後悔先に立たず」は「終わったことを悔やんでも遅い」という意味
「後悔先に立たず」の意味や使い方、対義語、類語、由来をご紹介してきました。「後悔先に立たず」はことわざで対義語や類語もたくさんあります。
ビジネスシーンや日常会話でも、使える言葉でもあるので、対義語や類語とセットで覚えておくといいでしょう。今回、ご紹介して「後悔先に立たず」の使い方を参考にしてみてください。