定価の意味とは
日々の生活の中で良く見聞きする「定価」と言う言葉があります。なんとなく意味は理解しているけれど、しっかりとした定義、意味までは良く分からない、という方は多いのではないでしょうか。
今回は、この意外と知られていない「定価」という言葉の意味や、実際にこの言葉を使用する場面から、よく似た言葉や、間違いやすい言葉などをご紹介して行きます。
先ず、「定価」の意味を一言で表すと、「前もって定められている価格」の事を言います。気持ち良い程にそのままですが、一般的に販売されている国語辞典などで辞書を引くと上記がそのまま載っているのです。
ただ、この答えだけだと言葉そのものの真意が伝わらないので、「定価」が一体誰がどの様に決めているのかをここでは深堀りして行きたいと思います。
メーカーが出荷先に販売価格を指定
ここからは、定価を決定しているプロセスや背景に焦点を当てていきます。はじめに前提として、定価を決定している人は、その商品を作った生産者(企業)です。この様な企業を一般的に製造メーカーと呼びます。
商品を製造、生産する製造メーカーが、商品を作る際に発生する費用からいくらかの利益を乗せ、実際に小売店で店頭に並ぶ時点での価格が定価となるのです。
例えば、本屋さんで販売されている書籍や新聞、コンビニで販売されているたばこなどは、沖縄でも北海道でも価格は変わらず一定に定められています。これが「定価」なのです。
この定価は、価格を一定にする事が目的な事から、値引き等の売価変更が一切認められていません。これらは「文化の振興上必要」と定められており、無闇に価格が変更できないように定められているからなのです。
実際小売店を見ると、たばこや書籍、新聞はどのお店も価格は変わりませんが、一方スーパーマーケットなどで販売されている食料品や日用雑貨などは、販売している店舗によって、表示価格がまちまちで販売されています。これらのお店によって価格が違う商品には、定価は設定されていません。
定価と希望小売価格の違いとは
ここから少し視野を広げて、価格表示についてご紹介して行きます。定価とよく似た価格表示の言葉で、「希望小売価格」があります。この二つはどの様な違いがあるのでしょうか。
前述の様に、「定価」はメーカーが設定した販売価格から、小売店が自由に売価を変更できず、販売価格がしっかりと決められています。言い換えると、商品価格が安定しているとも言えます。
この、売価の変更が可能かどうかが、定価と希望小売価格の決定的な違いとなります。ここからは、両者の具体的な違いについて、ポイントを押さえながらご紹介して行きます。
メーカー希望の価格
希望小売価格は、文字通りメーカーが希望している価格です。定価とは違い、あくまでも希望価格ですので、この場合は小売店がある程度自由に売価を変更することが出来ます。希望価格に出来るだけ近付けて販売して下さい。というのがメーカー側の要望となるのです。
もし、メーカーが希望小売価格を設定せずに商品を流通させてしまうと、小売店が自由に売価を決める事が出来るため、競合する小売店同士が大幅な安売り合戦を行い、その結果メーカーの製品価格が大きく崩れてしまう恐れがありました。
小売店は従う必要は無い
上記の様な理由から、ほとんどの製品に希望小売価格が設定され、売価が守られていました。しかし、小売店が自由に売価を設定することが出来るため、結局競合店の間で価格競争がおこり、希望小売価格から大幅に値下げして販売する事態が頻繁に起こる様になっていきました。
例えば、1980年代の家電販売業界では、希望小売価格からの値下げが横行し、希望小売価格の50%オフでの販売などが当たり前になって行きました。現在でも家電量販店のプライスタグにはよく見る光景です。
この様に、希望小売価格と実際の販売価格に大きな差があるのが当たり前になってしまい、多くの消費者の間で混乱が広がって行きました。この事態を受けて、現在では製品に希望小売価格が設定されていることは珍しくなっています。
次は、現在もっとも一般的に使用されている「オープン価格」について、ご紹介して行きます。
定価とオープン価格の違いとは
希望小売価格と実売価の差が大きくなり、二重価格表示での販売が当たり前のようになると、公正取引委員会から「製品の販売価格を市場価格に近づける努力をするように」通達を出しました。
これは、あまりに価格のかけ離れた二重価格表示が、過度にお買い得に見えて、景品表示法に抵触する恐れがあったため、オープン価格を設定したのが背景にあるのです。
オープン価格の特徴
このオープン価格は、現在ではほとんどのメーカーの製品に適用されています。これは、希望小売価格を設定するより、オープン価格にしてしまった方が、メーカー側にも消費者にもメリットが有るためです。
例えば、メーカー側からすると、希望小売価格を設定すると、小売店側の判断でメーカーの商品が値引きされて店頭に並びます。そうすると、消費者は希望小売価格からディスカウントされて販売されるのが当たり前だと思ってしまい。値引きされた商品しか売れず、ブランドイメージが汚されてしまいます。オープン価格だと、その心配はありません。
又、消費者からすると二重価格表示によって商品本来の価値が分かりにくくなるより、実売価のみが掲載されている方が分かりやすくなります。
メーカーが出荷価格だけ決定
それでは、定価とオープン価格は具体的にどの様な違いがあるのでしょうか。オープン価格は、文字通りに解釈すると、メーカーが売価をオープンに設定し、小売店が自由に売価を設定出来ると予想できますが、正しくその通りとなります。
オープン価格では、メーカーは初めの出荷価格、いわゆる卸値のみを設定し、その後の販売価格は小売店に一任する、といった仕組みになります。
販売価格は小売店に一任
メーカーが、定価も希望小売価格も設定せず、オープン価格で製品を流通させることには、前述の二重価格表示を防ぐ事になり、二重価格表示によって、本来の製品の価値を評価する事に混乱していた消費者から、その混乱を防ぐ役割があります。
現在は、希望小売価格が設定されている製品はかなり少なくなり、多くの製品はオープン価格で販売されています。小売店舗で商品を購入する際には、こうした価格表示についても気にしながらお買い物をすると、また違った発見につながります。
定価と参考小売価格の違いとは
また、家電量販店などでは「参考小売価格」という価格表示も、現在では良く見られます。これは、メーカーが希望小売価格を設定している場合と違い、メーカーが価格を設定しているわけではなく、第三者が参考として設定している価格となります。
これは、あくまでも「参考」として設定された値段で、よく似た製品で希望小売価格が設定されているものを参考にし、市場での一般的な販売価格を示したものとなります。
上記のように、参考として設定している場合の他には、ある製品の周辺アクセサリを含めたセット販売や、送料などの費用も反映させて、参考小売価格を設定する場合があります。前者では、並行輸入品や、逆輸入品を取り扱うお店で良く使われ、後者では、主に家電量販店や家具屋などで、よく見られます。
メーカーが発表している価格
定価や希望小売価格と、参考小売価格との違いは、メーカーが発表している価格なのかどうか、が大きな違いとしてあります。
消費者の購買意欲を搔き立てるためには、希望小売価格の表示を打ち出し、お値打ち感をアピールする事が近道となりますが、メーカーが公式で発表していない場合であっても、参考小売価格を設定する事で、上記の販売戦略が可能となるのです。
小売店の為に参考に公表
この参考小売価格は、販売先の小売店に卸している、卸業者が設定する事がほとんどです。小売店のために参考の価格を示す事は、小売店が卸値から売価をどの様に設定するべきなのかの目安として機能しています。
以上が、価格表示での、定価、希望小売価格、参考小売価格の違いとなります。それぞれ似たような文字で分かりにくい所もありますが、ひとつひとつ意味を理解していくと違いが良く分かり、お買い物の手助けになる事は間違いありません。
定価と売価の違いとは
ここで、もう一つの価格表示を忘れてはいけません。それは、実際の消費者のほとんどが一番気にしている、売価です。ここからは、この売価について、前述のそれぞれの価格表示の違いを踏まえて、ご紹介して行きます。
先ず、大きな違いとなる、価格を誰が設定しているのか、という違いです。定価や希望小売価格では、メーカーが最終的に販売したい価格を示していましたが、では売価はどの様に決定されるのでしょうか。
実際の販売価格
売価とは、小売店が直接設定している販売価格の事を言います。これは、メーカーや卸業者が設定した希望小売価格や、参考小売価格等を踏まえ、小売店が最終的に商品の価格を決定しているのです。
そのため、定価も希望小売価格や参考小売価格も、ある意味での売価と言えます。ただ、価格を決定しているのが、製造メーカーや卸業者等の出荷元での立場の価格なのか、最終的に販売する小売店での立場の価格なのか、の違いに過ぎないのです。
小売店の裁量で決定
売価は、希望小売価格や参考小売価格である程度決められていたとしても、最終的には小売店での裁量に任せられています。小売店は商品を仕入れ、それに費用と利益を乗せ売価を設定して商品を販売します。
しかし、この利益を乗せた価格が必ずしもこの値段で完売するとは限りません。小売店にとって売れ行きの悪い商品は在庫となり、この在庫になっている商品は、ある程度の期間で現金化出来なければ、最終的には損失となり得ます。そのため、売れ行きの悪い商品には定期的にセールなどで売価を訂正し、特価販売を行います。
希望小売価格が設定されていると、小売店は可能な限り希望小売価格に近付けなければいけないため、柔軟な売価の変更に対応しきれない問題がありました。そこで、メーカーからの価格をオープン価格にしておき、あとは市場の需要の大きさに合わせて、店舗側が売価を設定する方が、双方にメリットが生まれるのです。
定価の注意点とは
ここまで、それぞれの価格表示の種類の違いをご紹介して行きましたが、この「定価」に関して、注意すべきことがあります。それは消費税が含まれている、税込み表記なのかどうか、です。
1990年代に、商品の売買に関して消費税が加算されるようになりましたが、小売店での価格表示に消費税を含める税込み表記にすべきかどうかは、その時々で変わっています。
ちなみに現在では、一般的な小売店舗は総額表示が義務付けられているため、税込み表記が一般的です。しかし、お店によってその商品が税込み表記なのか、もしくは税抜き表記なのかまちまちなのが現状ではあります。では「定価」には果たして消費税は含まれているのでしょうか。
定価は税込み価格
前述の通り、本屋やコンビニで販売されている書籍やたばこ、新聞などは定価での販売で、表示価格に消費税は含まれています。このことから、一般的には定価は税込みでの価格と言っても問題はありません。
しかし、消費税法では、定価は税込み表記であると明記されている訳ではなく、そもそも定価についての表記がありません。また、定価の概念は独占禁止法で定められていますが、この独占禁止法にも消費税については言及されている訳ではないのです。
このことから、例えば定価が1000円の商品を定価で購入すると、この1000円の価格が税抜きなのか、はたまた税込みなのかは現在でも議論になる事があります。
税込み表記と税抜き表記について
上記のように、定価が税抜きであるべきか、税込みであるべきかは、どちらが正解というのは現在では決まっていません。しかし、消費税法においては、小売店には総額表示義務があります。
この総額表示義務にはもちろん消費税も含まれますので、その商品が一般消費者に対して販売されているものであれば、税込みで表記された価格を定価だと定義するべきと言えます。
一方、卸問屋など、商品が一般消費者に販売されているものではない場合は、総額表示を義務付けられている訳ではないので、税込み表記が必ず必要ではありません。むしろ、税抜き表記の方が一般的と言えます。
定価はメーカーから定められた価格
この様に、価格表示には、価格を決定する立場や、価格を決定する段階によって、意味が変わってくるものとなっているのです。この様に考えると、一般的には定価とは、メーカーが定めた税込みの価格で、小売店が変更出来るものではないと言えます。是非、お買い物の際には、この様な売価表示の違いにも注目する事で、賢くお買い物が出来るようになります。