独善的の意味とは?
独善的とは、自分だけの意見や考えを押し通し、他の価値観を一切認めないことです。「独善的な人」はどんな場面でも自分が絶対に正しいと思い込んでおり、間違いを指摘されても決して認めず、反対に激しく怒ります。
独善的な人が組織のリーダーになると、いわゆるワンマンとなり、部下の意見やアドバイスをまったく聞かないため、組織はやがて硬直化していきます。
また、独善的な人のまわりにはイエスマンしか集まらないため、本人は自分が独善的であることに気づかず、「裸の王様」として組織の中枢に居座りつづける、という悪循環が繰り返されてしまいます。
独善的の対義語・類語
独善的の意味や使い方を正しく把握するためには、類語と対義語について知っておくことが大切です。独善的の類語や対義語、英語表現には、どのような言葉があるのでしょうか。類語と対義語、それぞれの例文についても詳しく見ていきましょう。
類語①独りよがり
独善的と「独りよがり」は、ほぼ同じ意味で使われています。独りよがりな意見、独りよがりな行動という使い方からもわかるように、後先を考えない自分勝手な振る舞い、というニュアンスがあります。
ただ、類語であっても、独善的とは若干使い方が違う部分もあります。独善的は主に組織のリーダーや権力者に対して使われますが、「独りよがり」のほうは権力を握っているかどうかにかかわらず、個人に対して使われることもあります。
このように、類語であっても意味や使い方には細かい違いがありますので、ボキャブラリーを広げるうえでも注意しましょう。
類語②独裁的
独善的な人が権力を持ち、組織のリーダーになると、ほぼ間違いなく独裁者になります。独善的な人は他人の意見や考えをほとんど受けつけないため、組織の中枢にいるほど独裁者として振る舞いやすくなります。
独善的な人は批判や否定を嫌い、身辺にイエスマンばかりを集めるため、自分の欠点や落ち度に気づくこともなく、自分が絶対に正しいと思いこんだまま部下たちに指示を出しつづけます。
独善的な人を独裁者にしないためには、まわりがきちんと客観性を保ち、間違っていることは間違っているときっぱり指摘できる体制をととのえる必要があります。
類語③ワンマン
ワンマン経営という使い方があるように、独善的な人が組織の中で実権を持つと、次第にまわりの意見が通らなくなります。正しい意見であってもあっさりと退けられてしまうので、まわりのほうも「言うだけ無駄だ」と思い、何も言えなくなります。
結果として、ワンマン経営者のまわりにはお気に入りの人材しか寄りつかなくなり、独善的な傾向がますます助長されることになります。
ちなみに、ワンマンというのは和製英語で、英語圏で同じ使い方をしてもまったく伝わりません。英語での意味や使い方の違いにも注意しつつ、ボキャブラリーを広げましょう。
類語④利己的
独善的な人は基本的に自分の利益のことしか考えておらず、他人がどう思おうと、どのような不利益を受けようとどうでもいいと思っています。
だからこそ、自分が得をするような意見や耳あたりの良い声ばかり受け入れ、自分を王様としておだててくれる人材ばかりを可愛がるのです。
独善的な人はしばしばスピーディに決断を下し、頭の回転が速いようにも思われますが、それは自分にとって都合の悪い意見や情報を容赦なく切り捨てているからであり、本当の意味で有能であるとはかぎりません。
類語⑤高飛車
独善的な人は自分が絶対に正しいと思い込んでいるため、客観的には高飛車に見えます。もちろん、当人としては高飛車だとは思っておらず、むしろ有能さの証明だと誇りを持っています。
ただし、高飛車なのと有能に見えるのは類語のようであってもまったく意味が異なり、高飛車でなくても仕事ができる人はいくらでもいます。独善的な人の意見が通りやすいのは、高飛車な態度にまわりが圧倒されてしまい、本音を潰しているからです。
あなた自身がもしも高飛車に見えているのなら、知らず知らずのうちに独善的になっているのかもしれません。普段の話し方に気をつけるだけでも、まわりから見た印象を変えることはできます。
類語➅傲慢
独善的な人は自分に自信を持ち、まわりの意見を一切聞かないため、客観的には傲慢に見えます。本人自身が本当に傲慢な場合もありますが、たんなる思い込みで、自信過剰なだけ、というパターンも少なくありません。
自分に自信を持つことは決して悪いことではありませんが、傲慢に見えてしまってはいけません。傲慢な人は周囲をますます委縮させ、意見が言いにくい雰囲気を作り上げてしまいます。
対義語①民主的
独善的の対義語は民主的「独善的ではない」ということは、民主的に多くの人の意見を取り入れるということです。自分とは反対の意見にもきちんと耳を傾けたうえで決断を下すため、大多数にとって納得できる結論が導き出されます。
民主的であることは決して、多数派におもねることではありません。確固たるリーダーシップがあるからこそ余裕をもって幅広い意見や要望を聞き入れることができ、しっかりとした判断基準のもとでひとつのこたえに導くことができるのです。
対義語②謙虚
独善的の対義語は謙虚であり、独善的な人に足りないのは、謙虚さです。謙虚でないからこそ、どんな時でも「自分こそが絶対に正しい」と思い込むことができるのです。
謙虚さは、ゆとりにもつながります。「自分が間違っているかもしれない」という思いを持ち、部下や同僚の意見や要望を聞き入れてこそ、本当の意味でリーダーシップを発揮することができるのでしょう。
「実るほど頭が下がる稲穂かな」。組織の中で責任あるポジションに就いている方は一度、謙虚さが自分にあるかどうかをチェックしてみてください。
対義語③柔和
独善的な人には、心からの笑顔がほとんどありません。笑顔を見せない人はまわりをつねに威圧し、緊張させ、恐れさせることが有能さの証明だと思っています。
しかしながら、威圧と緊張感を持たせることは違います。「北風と太陽」の寓話にもあるように、人は柔和なリーダーに信頼を置き、「この人ならついていってもいい」と思うのです。
もしも、あなた自身が笑顔の少ない生活を送っているのなら、まず、心から笑う練習をしてみましょう。ふとした瞬間に微笑を見せるだけで印象がやわらかくなり、自然と人が集まりやすくなるはずです。
対義語④寛容
独善的なリーダーは、寛容になることができません。寛容でないからこそ、情報をシャットアウトし、自分の考えや価値観だけで物事を判断することができるのです。
寛容な人はそれだけでまわりの人を惹きつけ、幅広い意見や本音を素直に言いやすい雰囲気を自然と作り出します。意見がすぐに否定されてしまうとわかっていれば、誰も本当のことを言わなくなり、独善的な人はますます孤立していきます。
寛容な人は決して、まわりに流されるわけではありません。自分の中にしっかりとした判断基準があるからこそ、多様な意見をいったん受け入れ、新しい価値観を提示することができるのです。
独善的の使い方・例文
どちらかというとネガティブなイメージでとらえられている「独善的」という言葉。かなり強いニュアンスがありますが、どのような意味で使われているのでしょうか。より詳しい意味と使い方を把握するために、例文を見ながらニュアンスをつかんでいきましょう。
例文①
「部長は独善的だから、今回のプロジェクトもあっさりと却下するだろうさ。どうせ、自分がいちばん偉いと思っているんだろうよ」。
まさに、「裸の王様」の典型のような例文です。独善的な人はまわりを苦しめますが、最終的には本人にとっても大きな損失となり、知らないうちに自分の首を絞めることになります。
この例文のように、独善的な人がトップに立つ組織は風通しが悪く、正しい意見もなかなか通りにくくなるため、競争社会の中では淘汰されていきます。
例文②
「先代の社長が不慮の事故で亡くなってから、2代目は変わってしまった。昔は独善的な人ではなかったのに」。若い頃は親しみやすく、人望にも恵まれていたのに、ある時を境に急に独善的になってしまう人は少なくありません。
「地位が人をつくる」という言葉があるように、人間は権力を持つことで独善的になってしまう生き物なのかもしれません。
例文③
「独善的な人が独裁者になるのではない。独裁者を望む人々がいるからこそ、独裁者は独裁者でありつづけられるのだ」。生まれながらの独裁者は存在しません。
会社組織でも、独善的な人に気を遣い、忖度するからこそ独善的な人はますます自分こそが正しいと思い込み、独裁者として振る舞うことができるのです。
付き従う民衆がいなければ、独裁者は独裁者として生きることができません。独善的な人に対しては、勇気を持ってノーを突きつけてみましょう。
独裁者が何よりも気にするのは、実は信頼です。覚悟を持ったあなたの一言によって風向きが変わり、独善的な人も態度をあらためるかもしれません。
例文④
「独善的な人にこそ、時には耳を傾けてごらん。的を射た正論が聞けるかもしれないよ」。独善的な人も、仕事がまったくできないわけではありません。
あるいは、まわりのほうが勝手に独善的だと決めつけているだけで、本当のところは能力が高く、こちらが心を開けばハッとするような意見を聞かせてくれるかもしれません。
独善的な人には、独善的になれるだけの理由があるはずです。余計な先入観を捨てて思いきって飛び込めば、相手も鎧を脱いで本音で向き合ってくれることもあるでしょう。
例文⑤
「アーティストとして自分の世界観を守り通すためには、独善的であることが絶対条件なのかもしれない」。芸術家は、自分のセンスと感性だけで勝負する世界です。
独善的というと、一般的にはネガティブなイメージにとらえられがちですが、文学や音楽、絵画の世界では常識をあえて切り捨て、独善的になることが必要なのかもしれません。
独善的と独裁の違い
独善的の類語として、独裁が挙げられることが多いようです。ただ、独善的と独裁では意味が若干異なりますので、例文や使い方で混同しないように注意する必要があります。独善的と独裁の意味の違いについて見ていきましょう。
独裁は「権力のある独善状態」という意味
独善的と独裁は意味や使い方が似ていて、類語の関係にありますが、ニュアンスには若干の違いがあります。独善的は個人の性格的傾向を表す言葉で、自分勝手から利己的、とっつきにくい、など、幅広い意味が含まれます。
一方、独裁は権力と結びついており、独裁政権や独裁体制と、個人の性格よりもシステム全体を表す言葉として使われています。
言い換えれば、権力がなくても独善的にはなれますが、権力がなければ独裁者にはなれません。独善的な人が必ずしも独裁者になるわけではなく、「ちょっと個性的な人」として見られている場合も少なくありません。
独善的を使う際の注意点
意外と意味が広く、使い方も迷いがちな「独善的」という言葉。知らないうちに、間違った使い方を続けているかもしれません。社会人として恥ずかしい思いをしないためにも、独善的という言葉を使う注意点についておさえておきましょう。
プラスの意味では使えない
「独善的」は少し堅苦しい印象があるため、日常生活ではあまり使う機会がない言葉かもしれません。「善」という言葉が入っているので、ポジティブな意味で使っている人も少なくないようですが、それは言葉の誤用ですので注意しましょう。
「独善的」は基本的に相手を非難する言葉ですので、上司や先輩に面と向かって「あなたは独善的ですね」などと言うのは失礼にあたりますので、絶対にやめましょう。
独善的の英語表記
独善的を英語に直訳すると、「self-opinionated」や「self-righteous」になります。selfは自分自身、opinionatedは頑固な、強固な、という意味があります。
righteousは英語では正当化という意味になり、selfと組み合わせることで「自分を正当化する」、独善的であるというニュアンスを英語表現では表すことができます。
また、自己中心的でわがまま、という意味であればselfishという英語があてはまり、英語圏では、独善的でまわりを振りまわす人、というニュアンスがあります。
独善的は「独りよがりで他人の意見を聞かない」という意味
独善的とは、どんな場面でも自分は正しいと思い込んでいて、他人の意見やアドバイスを受け入れないことです。類語としてはわがまま、利己的、傲慢などが挙げられ、英語では「self-opinionated」になります。
独善的な人はプライドが高く、内心では批判を何よりも恐れているため、組織でのポジションが高くなるほどまわりにイエスマンばかりを置きたがります。
ただ、独善的な人も能力が高い場合が多く、特性をよく理解し、ほどよい距離感で付き合えば心強い味方になってくれるかもしれません。