確定申告とは何か
今回は、個人事業主の方の確定申告について説明をします。企業に勤務するサラリーマンなどは会社側で年末調整という処理をするため、確定申告しなくていい方が多い反面、個人事業主として商売をしている方は、毎年自分で確定申告をしないといけません。
個人事業主の方が確定申告をする際の注意点や具体的な必要書類、経費の算出方法や手続きのやり方、白色申告と青色申告の違いなどについて解説していきます。まずは確定申告とはどんな手続きかという点から説明します。
税務署に所得を伝える書類のこと
そもそも確定申告とは、税務署に対して年間の所得額を伝え、その所得額に見合った所得税を申告し納税する手続きの事です。会社勤務のサラリーマンなどの場合は、会社側で収入および経費、控除項目などを代行して申告してくれますが、個人事業主の方は自分で確定申告をして税務署に所得を伝えることが義務付けられています。
税務署側は、受領した確定申告書のデータを基にして登録を行い、税金の収受の確認をするとともに、申告者の居住場所を管轄する自治体にデータを送り住民税の計算根拠としていきます。すなわち、確定申告をすれば自動的に住民税データにも反映します。
個人事業主の方が確定申告をする際には、事業で獲得した収入とそれを獲得するために費やした費用に加え、自分および家族の医療費控除申請などを所定の必要書類にまとめ税務署に提出することが必要になります。そのやり方のうち、青色申告と白色申告の二通りあり、それぞれにメリットとデメリットがあります。
青色確定申告
個人事業主の確定申告のやり方のうち、まずは青色申告について説明します。青色申告とは、白色申告に比べて手続きに手間を要しますが、節税効果を得られるというメリットがあります。白色申告に比べて用意すべき必要書類の種類が増え、事前の申請も必要ですが、税負担軽減のメリットは大きいので、多くの個人事業主の方がこちらで確定申告をします。
会計知識がない方など、初心者の方にとっては青色申告はハードルが高いと思われがちですが、慣れるとそれほど苦労なく手続きができるようになるので、少しでも税負担を軽減したいと考える方はぜひ青色申告での手続きを検討しましょう。
白色確定申告
個人事業主の確定申告のやり方のうち、白色申告の方は、用意するべき必要書類が簡素で、あまり手間をかけることなく確定申告をすることができます。初めて自分で個人事業主として確定申告をする方や青色申告の手続きが面倒だと感じる方には、白色申告の方がかんたんでおすすめです。節税効果が得られないことは理解しておかないといけません。
個人事業主の経費より所得が上回った場合必要
個人事業主の方が確定申告をしなければならないケースとしては、事業で獲得した収入が必要経費及び各種控除額を控除したのちの残高が100円を超えていた場合です。少額でも利益が残り、所得が計上された場合は、もれなく確定申告の義務を負うことになります。
個人事業主の方が確定申告をする場合、帳簿の記録が必要になります。確定申告書提出時に添付する必要はありませんが、いつ閲覧を求められてもいいように適切に保管しておきましょう。
個人事業主の確定申告のやり方
そもそも確定申告とはどんなものか説明をしてきました。続いては、個人事業主の方の具体的な確定申告のやり方について説明をします。どのような必要書類をそろえる必要があるのか、提出方法、白色申告と青色申告それぞれの違いなどについて解説をしていきます。
一定額以上の所得を年間で得ている個人事業主の方は、確定申告をすることが義務付けられています。正しい申告をしないと脱税として罰せられる可能性があるので注意しましょう。
必要書類の作成
個人事業主の方が確定申告をする際の必要書類とはどんなものでしょうか。白色申告と青色申告の選択により必要書類も異なってきます。どちらにも共通している必要書類は、確定申告書Bです。確定申告書Aは、個人で事業を行なっていない方が利用するフォームです。サラリーマンが還付手続きをする際に利用するケースが多いです。
青色確定申告の場合
まず、青色申告を行なう際の必要書類を説明します。事前準備として、個人事業主として営業活動を開始してから一カ月以内に開業届を提出しないといけません。また、青色申告を実施することを連絡するための用紙として、所得税の青色申告承認申請書の提出も必要になります。これらはいずれも事業開始年度のみでそれ以降は必要ありません。
確定申告の際は、前述の確定申告書Bに加え、「青色申告決算書」が必要になります。一年間の収入と支出、経費をまとめて記載する様式になっています。白色申告の際に必要となる書類よりも煩雑で記載事項が多い内容になっています。
白色確定申告の場合
白色申告を行なう場合の必要書類は、青色申告を選択した個人事業主のケースと比べて簡易的です。まず、事業開始時の開業届は必要ですが、所得税の青色申告承認申請書は不要です。確定申告の際には、「青色申告決算書」の代わりに「収支内訳書」が必要になります。
収支内訳書は、青色申告決算書よりも簡易な内容で、比較的簡単に作成することができます。これに確定申告書Bを加えて必要書類のすべてになります。なお、医療費控除を受ける際にはその領収書を提出する必要があります。さらに保険料控除などの別途控除を受ける場合は、各証明書も必要になるので注意しましょう。
添付書類の準備
確定申告書Bは、税務署で入手することができます。実際に紙面でもらうこともできますし、インターネットからダウンロードしてフォームを手に入れることもできます。青色申告決算書又は収支内訳書は、開業届を提出している住所に毎年送られてきます。
確定申告書Bには、マイナンバーの情報を添付する必要があるので用意しておきましょう。また、医療費控除を受ける場合は領収書、保険料控除など各種控除を受ける場合はそれぞれの証明書を確定申告書Bに添付します。保険会社などが毎年10月頃に発行してくれます。申告まで時間が空くため紛失しないよう管理しておきましょう。
税務署に提出
確定申告の必要書類が揃ったら、税務署に提出することになります。自分の住んでいる地域の所管の税務署に提出することになります。直接持ち込みをすることもできますし、郵送で提出することもできます。
確定申告のやり方のうち、e-taxというやり方が推奨されてきています。これは、インターネットを介した申告のやり方で、申告書作成をネット上で完結することができる便利なやり方です。最初に登録などの手続きが必要ですが、自分で細かい計算をする必要がなく手間を大幅に削減できる便利なやり方です。
個人事業主が確定申告をする基準
確定申告の具体的なやり方について解説しました。次に、個人事業主の方が確定申告をする基準について説明をします。白色申告の場合も青色申告の場合も確定申告が必要になる基準は同じです。基本的には、一年間に得た収入から仕入れなどの各種経費及び各控除項目を差引いた結果得られる基準所得金額が判断基準となります。
基準所得金額が大きくなればなるほど税額負担も大きくなります。経費に算入できる範囲を十分に理解し、所得を少ない金額に出来るよう規定の範囲内で最大限経費に算入していきましょう。
基準所得金額を算出する
基準所得金額計算のやり方は、まず年間の収入額を集計して算出します。次に、必要経費の年間の金額を算出します。さらに基礎控除や医療費控除、保険料控除などの金額を算出して、収入額から経費と控除額を差し引くというのが基本的な計算のやり方です。
一年間の収入額、一年間の経費金額をまとめるため、帳簿の作成をすることが望ましいです。特に決まった様式はありませんが、正確な収支を算出するためには規模の大小こそあれ必要な処理になります。白色申告の場合は簡易でいいですが、青色申告の場合は詳細な決算資料が求められるので、帳簿の記帳は必須といっても過言ではありません。
少しでも税負担を軽減するために、可能な限り支払ったお金を経費に算入することが重要です。ただ、決まったルールの範囲内で参入することが前提条件となるため、十分に確定申告のルールを理解し、違法とならないよう気を付けましょう。
帳簿作成とは
個人事業主の場合における帳簿作成とは、特に決まった様式の帳簿があるわけではなく、個人事業主として事業を営んでいる内容が数値でまとめられていれば、帳簿として問題ありません。最近は安価で会計ソフトが購入できるので、活用したほうが簡単で便利に帳簿記帳ができます。
個人事業主の確定申告の際に必要書類となっているわけではありませんが、公式には帳簿の作成は白色申告・青色申告の選択に関わらず義務となっています。求められないから帳簿をつけなくてもいいという判断は間違っているので注意しましょう。
帳簿の保存期間
帳簿の保存期間は、月ごとの収入および経費の金額などを記している「法定帳簿」と呼ばれる帳簿に関しては、7年間という保存期間が設定されています。補助簿と呼ばれる「売掛帳」や「買掛帳」は5年とされています。
不定期で税務署による税務調査が実施されることがあります。法人に対して税務調査が行われるのは一般的に知られていますが、個人事業主の場合でも同じです。帳簿を適切に保存し、いつ税務調査が来たとしても対応できるような負担の帳簿処理のやり方を考えておきましょう。
個人事業主の雑所得について
個人事業主の方の確定申告における帳簿の重要性について述べてきました。続いては、個人事業主における事業所得以外の所得の取扱について解説します。雑所得や一時所得など、確定申告上所得の分類は複数規定されていて、それぞれ分類して集計していく必要があります。
会社員の副業で得られる収入は雑所得として処理するケースが大半ですが、個人事業主においてはその境界があいまいなところがあります。税務上最も有利になる選択をしていくことが賢い確定申告のやり方です。
雑所得とは
確定申告上、所得の分類は以下です。「事業所得」「不動産所得」「給与所得」「譲渡所得」「利子所得」「配当所得」「一時所得」「山林所得」「退職所得」の9種類ありますが、これらに該当しないものが「雑所得」として扱われます。消去法的に考え、上記9種に当てはまらなければ雑所得で集計しましょう。
雑所得の例としては、国民年金あるいは厚生年金などの公的年金、副業として実施した原稿料などが挙げられます。FX投資で得た収益も雑所得に分類されます。
一時所得とは
雑所得と一時所得を混同してしまう方が多いです。一時所得とは、偶発的・臨時的な収入です。役務提供や資産譲渡などの対価として得られる報酬という性質を持っていない収入が含まれます。
一時所得に分類される収入の例を紹介します。福引などで当選した懸賞金や、競馬や競輪で得られた払い戻り金、生命保険の一時金、損害保険の満期返戻金などが挙げられます。例外として、宝くじの賞金は原則非課税とされているので、一時所得にも含める必要はありません。
事業所得とは
事業所得とは、事業を営んでいる方で、その事業から得られる所得のことを指します。本業がサラリーマンの方が副業を営んでいる場合、事業所得として申告しようとすると雑所得に修正させられるケースがありますが、個人事業主の場合は雑所得と事業所得の分類があいまいなところがあります。
事業所得として集計したほうが税務上有利になるケースがあります。主事業の所得がマイナスだった場合、雑所得の金額を損益通算して節税効果が得られることがあります。また、事業所得の方が青色申告時の税務上の優遇があります。
個人事業主の方が本業とは別に副収入がある場合、素直に雑所得とする前に事業所得に含められないか検討してみることをお勧めします。
個人事業主の確定申告の注意点
確定申告時に集計する所得の種類について解説をしました。続いては個人事業主の方の確定申告の手続き期限について紹介します。確定申告は年中いつでもできるわけではありません。個人事業主の方の場合は、1月1日から12月31日までの数値を集計し、一年に一度申告することになります。
毎年一定の期限が定められているので、遅延などにならないよう、日ごろからこまめに帳簿の記録をしていくなど、確定申告に向けて準備をしていきましょう。
提出期限を守る
個人事業主の方の確定申告の期限は、毎年2月16日から3月15日までとなっています。サラリーマンの方などで還付申告をする際にはこれよりも早い期日で受付ができますが、個人事業主の確定申告のような事業所得を含み納付手続きを伴う申告は2月16日から3月15日までの一カ月間になります。
この期日を過ぎて申告すると、場合によっては無申告加算税などの余分な税負担を強いられる可能性があります。必ず期日中に申告できるよう、普段から帳簿の整理などを適切に行なうなど、準備をしておける体制を作りましょう。
保険満期金の申告について
確定申告の際に漏れてしまいがちな項目に、保険金受領に関する申告が挙げられます。保険会社などから保険金を受け取った年度は注意しましょう。一時所得に分類されますが、一時所得では一律50万円の特別控除が認められています。
受領した保険金から、支払った保険料を差し引きした金額が50万円を超えるようなら確定申告に加えないといけないことを覚えておきましょう。保険金を受領したり保健機関満期になるケースは多くないので、忘れられがちです。お金をもらったら申告をしなければならないという感覚を常に持っておきましょう。
医療費控除について
個人事業主の方の確定申告で、注意すべきポイントとして、医療費控除が挙げられます。年間の医療費を集計して10万円を超えないと確定申告できないと思っている方が多いですが、総所得金額が200万円以下の場合は、その金額の5%を超えた金額を医療費控除として所得控除に算入できます。
例えば総所得金額が100万円の方は、その5%の5万円を医療費が上回れば確定申告をすることで所得控除を受けることができます。個人事業主の方で、所得が少なかった年度があったら再度医療費の金額を見直してみましょう。
振替納税について
個人事業主の方が確定申告をした後、申告金額の納税をする必要があります。通常、納税期限は3月15日ですが、振替納税を利用することでこの期限の後に納税をすることになるため、実質的に納期を延長することができます。
振替納税とは、指定の銀行口座から自動引落の形式で納税をする方法の事です。この設定をすると、4月15日に引落となるため、実質的に納期限を一カ月延長する効果を得られます。少しでも資金繰りを良くしたいと考える方は、振替納税制度の活用を検討しましょう。
個人事業主の確定申告におすすめなサービス
ここまで、個人事業主の方が確定申告をする際に気を付けるべき点について紹介してきました。最後に、個人事業主の方の確定申告に適した会計専用ソフトを紹介します。企業の会計処理と比べて、個人事業主の方の確定申告はそれほど膨大な会計処理量をこなさなければならないというわけではありません。
そのため、あまり高性能すぎるソフトを導入しても効率的はないので、比較的使いやすく費用対効果の高いソフトを3つ紹介します。ぜひ自分に合ったソフトを見つけてください。
帳簿記録には、会計上の仕分け知識などが通常は必要になりますが、会計ソフトを導入することで知識がなくても取引を所定のフォームに記録していくだけで自動的に仕分けがなされ、帳簿の形式に記録して行ってもらうことができ、最終的に決算書類まで仕上げてもらうことができます。
クラウド会計ソフトfree
個人事業主の方が確定申告をする際にお勧めの会計ソフトのうち、一つ目はクラウド会計ソフトfreeを紹介します。このソフトは、クラウド型の会計ソフトの中では最もシェアが多いもののひとつで、安心感があります。
基本使用は無料で、あまり知識のない方でも直感的に操作ができる点が魅力で、特に個人事業主の方に人気の高いソフトです。利用開始の手続きも簡単ですので、初心者の方にも十分お勧めできます。
MFクラウド会計・確定申告
個人事業主の方が確定申告をする際にお勧めの会計ソフトのうち、二つ目はMFクラウド会計・確定申告を紹介します。このソフトの特徴は、あらかじめ登録しておいた会計取引を自動的に帳簿に記録してくれる点にあります。一つ一つの取引を入力する手間が省けて、とても便利です。
確定申告用書類の準備はもちろんのこと、売り上げの物品ごとのシェアや経費の細分化など細かい分析用資料を作成するのも簡単にできるので、とても便利で実務的です。
弥生会計オンライン
個人事業主の方が確定申告をする際にお勧めの会計ソフトのうち、三つ目は弥生会計オンラインを紹介します。こちらもほかのソフトと比べてとても有名で利用者が多いソフトです。昔から利用されているソフトで、個人事業主の方からも信頼感があります。
操作性や機能の充実ぶりは安定感があります。困ったときのヘルプ機能などのサポート体制も充実しているので、安心です。初心者から経験者まで幅広くお勧めできる老舗のソフトといえます。
個人事業主の確定申告は早めの準備がおすすめ
以上、個人事業主の方の確定申告について解説してきましたが、いかがでしたでしょうか。白色申告と青色申告の違い、確定申告の具体的な方法や締切期限、所得の種類と税務上お得な考え方、おすすめ会計ソフトの紹介などを行ってきました。
確定申告は、個人事業主の方においては必ずしなければならない手続きになります。毎年のことですから、早めに準備をして締切に間に合わせるようにしましょう。日ごろから順次帳簿付けができるような体制を整えることが大事です。