確定申告の医療費控除の書き方・申請方法は?必要書類や計算方法も紹介!

確定申告の医療費控除の書き方・申請方法は?必要書類や計算方法も紹介!

医療費を多く支払う人にありがたいのが所得税の医療費控除です。確定申告で医療費控除を行うと税金の還付を受けられますが、そのためには書き方をマスターし、確定申告で申請を行う必要があります。そこで、今回は、医療費控除の申請方法や必要書類などについて紹介します。

記事の目次

  1. 1.確定申告の医療費控除について 
  2. 2.確定申告の医療費控除の対象
  3. 3.確定申告の医療費控除の申請方法
  4. 4.医療費控除の特例セルフメディケーション税制とは?
  5. 5.確定申告の医療費控除に必要な書類
  6. 6.確定申告の医療費控除の手続き
  7. 7.確定申告の医療費控除の注意点
  8. 8.確定申告の医療費控除には書類と計算が必要

確定申告の医療費控除について 

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医療費控除は、病気やけがの治療費や、薬局で購入した薬代などの医療費を、所得から控除できる制度です。すべての医療費が対象となるわけではなく、対象となる医療費や控除できる金額に一定の制約があるので注意が必要です。ここでは、確定申告の医療費控除の申請のポイントを紹介します。

医療費控除を受けるにあたって注意すべきポイントは5点あります。本記事では順を追って紹介します。すべて読み終えたときには、医療費控除の書き方や申請、必要書類などが一通り理解できるようになっているはずです。

医療費控除のポイントは5つ

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はじめに医療費控除の対象について、医療の対象となる人や医療の範囲について説明します。2つ目に医療費控除の計算方法(申請方法)について、どのように算出するかを紹介します。

3つ目は医療費控除が受けられそうにない場合の代替手段です。医療費控除は対象にならなくても、セルフメディケーション税制の対象になる人はこちらを利用すると便利ですので、セルフメディケーション税制について紹介します。

4つ目は確定申告で医療費控除を申請する上での必要書類についてです。これがないと計算や申請ができないので大事なポイントです。最後は、医療費控除の書き方(手続き)についてです。以下、それぞれ紹介していきます。

確定申告の医療費控除の対象

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確定申告の医療費控除の対象については、誰に対する医療が対象であるかという人の問題と、どういった医療が対象であるかという医療の範囲の問題の2点があります。

後述するように医療費控除はそれなりの金額の医療費の支払が必要となるので、場合によっては金額に満たず医療費控除の適用外となることもありますので、対象範囲はしっかりと押さえておく必要があります。

医療費控除の対象

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医療費控除は、その年の1年の間に、自分又は自分と生計を同じくする配偶者やその他の親族のために医療費を支払い、その支払った医療費の金額が一定の金額を超えている場合に対象となる制度です。年度ではなく、年(1月1日~12月31日)の支払いが対象となることに注意する必要があります。

医療費控除の確認事項

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医療費控除は、所得控除の一種です。所得控除とは、納税者の所得から控除することができる項目です。ここで確認すべき事項は、次の2つです。1つ目は、誰に係る医療費を支払ったのかという点です。2つ目は、どういう医療費を支払ったのかという医療費の種類についての問題点です。

確認事項①医療費を支払っている人

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1つ目の誰に係る医療費を支払ったかについては、納税者本人のほか、納税者と生計同一の配偶者や親族の分も対象となります。世帯主は健康で病院にあまり罹らないが、父母は病気がちでよく病院に罹っているというケースも対象となります。

生計同一とは、必ずしも同居を要件としません。別居している場合でも、生活費や医療費等を送金している場合には生計同一と扱われます。

なお、実際に病院等の窓口で医療費を支払うのは、治療を受けた本人であることが多いでしょうが、その場合でも、費用(お金)の源泉(出所)が納税者であれば医療費を支払ったと扱うことができます。

確認事項②医療費の種類

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次に医療費の種類です。医師・歯科医師による診療又は治療の対価のみならず、治療又は療養に必要な医薬品の購入の対価も対象となります。なお、医薬品については、医師の処方箋をもとに購入するものは当然対象となりますが、必ずしも医師の処方箋が必須というわけではないようです。

また、医療機関で支払う診療費や薬代には、保険外診療の分も対象です。そのほか、国税庁のホームページに医療費控除の対象となる医療費が詳しく紹介されているので、対象となるか疑問がある場合は確認してみるとよいでしょう。

確認事項③予防は対象外

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ここで1つ注意すべきなのは、あくまで対象となっているのは診療や治療であって、一般的には予防は、医療費控除の対象外ということです。そのため、健康診断の費用や、ビタミン剤などの病気の予防や健康増進のための医薬品の購入代金は、医療費控除の対象にはなりません。

確定申告の医療費控除の申請方法

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次に、確定申告の医療費控除の申請方法についてです。支払った医療費の額がすべて控除の対象となるわけではないので注意が必要です。一定の計算方法を用いて算出された額が医療費控除の額となります。所得税の計算についての詳述は避けますが、この医療費控除の額を所得から差し引くことになります。

計算方法

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医療費控除の金額は、実際に支払った医療費の合計額から、①保険金などで補填される金額及び②所得金額に応じて10万円又は所得金額の5%の額を差し引いた金額となります。この額が200万円を超える場合は、最大200万円です。

保険金などで補填される金額とは、生命保険契約などで支給される入院費給付金や健康保険などで支給される高額療養費、家族療養費、出産育児一時金などが含まれます。この場合、給付の目的となった医療費の金額を限度として差し引くことになるので、引き切れない金額があっても他の医療費から引くことはできません。

所得金額・200万円以上

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上記の「所得金額に応じて10万円又は所得金額の5%の額」は、所得金額が200万円以上の場合は10万円、所得金額が200万円未満は所得金額の5%の額となります。つまり、所得金額が200万円以上か未満かで医療費控除の計算の仕方や書き方が異なってきます。

10万円という金額は、年収が低い人の場合には高いハードルとしてのしかかることから、所得金額に応じて医療費の額が5%を超えればよいという形に制度設計されています。なお、ここでいう所得金額は、所得控除を行う前の金額です。

所得金額が200万円以上を超える人の場合は、実際に支払った医療費の合計額のうち保険金などで補填されない金額から10万円を差し引いた額が、医療費控除の金額となります。したがって、自己負担額が10万円を超えないと医療費控除を申請できないということになります。

所得金額・200万円以下

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所得金額が200万円未満の場合は、実際に支払った医療費の合計額のうち保険金などで補填されない金額から所得金額の5%を差し引いた額が、医療費控除の金額となります。低所得者向けに要件が緩和されていることになります。

例えば、所得金額150万円の人は、10万円ではなく、150万円の5%である7万5千円を差し引けばよいことになり、自己負担額が7万5千円を超えていれば医療費控除を受けることができることになります。

所得控除について

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所得控除とは、納税者の個人的事情に配慮して所得から控除することができる減税項目です。医療費控除のほかに、社会保険料控除、配偶者控除、扶養控除、基礎控除など合計14の所得控除が存在しています。

所得金額から所得控除を行って算出された金額が「課税所得金額」であり、課税所得金額に税率を掛けることで所得税の額が算出されるという仕組みです。所得控除の金額が大きくなればなるほど、節税される度合いが大きいということになります。

ふるさと納税と医療費控除は併用できる?確定申告の注意点や申請方法を解説! | 副業・暮らし・キャリアに関するライフスタイルメディア
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医療費控除の特例セルフメディケーション税制とは?

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自己負担が年10万円を超えるのは、健康的な家庭の場合はなかなかハードルが高く、医療費控除を申請しにくいという声も聞きます。急な手術など保険などが対応していな治療や、頻繁に医者に通院しなければならないケースなどはともかく、年10万を超える出費はなかなかあるものではありません。

平成28年度版国税庁統計年報によると、医療費控除を受けた人の数は186万4,519人で、控除金額は3,841億4千7百万円で、1人当たりの控除金額は20万6,030円となっています。医療費控除の利用者に関しては、多くの額の支出を強いられている実態が浮かび上がります。

セルフメディケーション税制

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セルフメディケーション税制は、医療費高騰への回避から創設された制度でもあります。セルフメディケーション税制は、適切な健康管理のもとで医療用医薬品からの代替を進める観点から、定期健康診断等を行う個人が、自己又は生計同一の家族のために、一定のスイッチOTC医薬品の購入の対価を支払った場合において、認められる所得控除です。

なお、セルフメディケーション税制は、医療費控除の特例に当たるものであり、本特例を受ける場合には、医療費控除の適用を受けることはできません。

セルフメディケーション税制の額

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セルフメディケーション税制の額は、対象医薬品の合計額が1万2千円を超えるときに、その超える部分の額(上限8万8千円)について、その年の所得金額から控除することができる制度です。

例えば、対象医薬品を年間2万円購入した場合には、8千円を所得金額から控除することができます。

上記医療費控除に比べると、適用の入口が広くなって多くの人が申請しやすくなっています。なお、本特例は、現状平成29年1月1日から令和3年12月31日までの暫定的措置となっています。

確定申告の医療費控除に必要な書類

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ここからは、必要書類や明細書の書き方など、医療費控除を申請するに際し手続き的な面について紹介します。1年間の医療費が対象となるので、書き方を理解していないと、いきなり申告書に金額を書けといわれて書ける人はいないでしょう。保管や準備が大事になりますので、日ごろから書類の書き方や必要書類を意識しておきましょう。

必要書類①確定申告書

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必要書類の1つ目は、確定申告書です。これは、納税者の1年間の所得を申告する様式です。これを税務署に提出することで納税者の1年間の所得が確定します。

確定申告書の様式は、最寄りの税務署のほか、国税庁のホームページからもダウンロードすることができます。なお、電子申告(e-Tax)で確定申告を行う場合は、画面上に直接入力し、紙の様式は使用しません。

必要書類②領収書

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必要書類の2つ目は、領収書です。これがないと、以下で説明する医療費控除の明細書の作成ができません。したがって、領収書が最も大事であるといって過言ではありません。医療費を支出した場合は、領収書を捨てずに保管するようにしましょう。

以前は、確定申告で医療費控除を受けるには領収書の提出が必要でしたが、現在は領収書の提出は不要です。領収書の提出は必要ありませんが、領収書から医療費控除の明細書を作成して、この明細書を確定申告書に添付する必要があります。

必要書類③源泉徴収票

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必要書類の3つ目は源泉徴収票です。給与所得のある人が、確定申告で医療費控除を受ける場合には、源泉徴収票の原本を添付する必要があります。源泉徴収票は、給与の支払先が毎年1月中旬から下旬にかけて発行する書類で、年間どれくらいの所得税を徴収したかが記載されています。

同様に公的年金等を受給している人についても日本年金機構から源泉徴収票が発行されますので、年金受給者が確定申告で医療費控除を受ける場合にも、源泉徴収票が必要書類となります。

確定申告の医療費控除の手続き

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確定申告で医療費控除を受けるには、確定申告書と医療費控除の明細書を作成する必要があります。順番としては、まず医療費控除の明細書を作成し、次に源泉徴収票とこの明細書を手元に置いて、確定申告書を作成するという流れです。

確定申告書にはたくさんのマスがあるので、何をどこに記載すればいいのか面喰ってしまい、書き方に困る人もいるかもしれません。国税庁の確定申告書等作成コーナーを使えば、源泉徴収票を入力すれば、確定申告書に数値を移記してくれるので、書き方に困ることも少なく、確定申告書を作成することが可能です。

医療費の明細書の書き方

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医療費控除の明細書の書き方ですが、様式に「医療費通知に関する事項」「医療費(通知外)の明細」「控除額の計算」を記載します。上記のとおり、医療保険者から通知がある場合には、1件1件明細を書く必要がないので、書き方の負担が軽減されます。

医療費通知がない場合には、「医療を受けた方の氏名」「病院・薬局などの支払先の名称」「医療費の区分」「支払った医療費の額」「支払った医療費のうち保険などで補填される金額」を1件ずつ記載する必要があります。

なお、医療費控除の明細書とは別に、セルフメディケーション税制の明細書というものがあります。セルフメディケーション税制を利用する場合には、医療費控除の明細書を使用することはできません。

控除額の計算

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医療費控除の明細書の「控除額の計算」欄で、医療費控除の額を計算します。書き方は、表の枠にしたがって、「支払った医療費(A)」「保険金などで補てんされる金額(B)」「差引金額(C)」「所得金額の合計額(D)」「(D)×0.05(E)」「(E)と10万円のいずれか少ない方の金額(F)」「医療費控除額(C-F)」を記載します。

やっていることは上述「確定申告の医療費控除の申請方法」の「計算方法」のとおりであり、所得金額が200万円を超えるかどうかで、差し引きする額を変えて、医療費控除額を計算します。

所得から差し引かれる金額

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医療費控除の明細書で医療費控除額を算出できたので、それを確定申告書第一表の「所得から差し引かれる金額」の医療費控除欄に転記します。「所得から差し引かれる金額」は申告書第一表の左側の下の赤枠部分です。申告書Aだと⑱の欄、申告書Bだと⑪の欄に記載します。

確定申告書Bの医療費控除額

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確定申告書Aは、給与所得、雑所得、配当所得、一時所得だけの方が使用する申告書であり、会社員やアルバイト・パートの方が主に使用します。一方、確定申告書Bは、所得の種類に関わらず利用できます。確定申告書Bの方が複雑な表になっていますが、確定申告書AはBの簡易版です。AとBで、医療費控除額の計算や書き方が異なることはありません。

確定申告の医療費控除の注意点

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ここからは、医療費控除で問題となる注意点について紹介します。医療費控除は、年10万円以上(又は所得金額の5%)の支払が必要となるため、ある項目の支払が医療費控除の対象となるかどうかは、医療費控除の適用になるかどうか重要な決め手となることがあるので注意が必要です。

注意が必要な費用

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注意が必要な費用としては、「出産費用」「入院費用」「歯の治療」「自家用車のガソリン代・駐車場代」などが挙げられます。対象となる医療費については、国税庁のホームページでも紹介されています。どういったものが対象で、どういったものが対象でないのか、押さえておきましょう。

出産費用

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妊娠診断後の定期検診、検査費用、通院費用は、医療費控除の対象です。また、出産で入院する際に、電車、バスなどの通常の交通手段によることが困難なため、タクシーを利用した場合のタクシー代も医療費控除の対象です。

一方で、実家で出産するために実家に帰省する交通費は医療費控除の対象になりません。また、入院に際し、寝巻きや洗面具など身の回り品を購入した費用も医療費控除の対象外です。

また、健康保険組合や共済組合等から支給される出産育児一時金、家族出産育児一時金などの額は、医療費控除の額を計算する際に医療費から差し引く必要があります。

入院費用

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入院に際し購入する寝巻きや洗面具などの身の回り品は医療費控除の対象外です。また、医師や看護師に対するお礼は、診療などの対価ではなく医療費控除の対象になりません。

本人や家族の都合だけで個室に入院したときの差額ベッドの料金も医療費控除の対象になりません。入院中に病院で支給される食事は、入院代に含まれるので医療費控除の対象になりますが、他から出前を取ったり外食したものは、控除の対象ではありません。

健康保険組合などからの高額療養費や生命保険契約などの特約による入院費給付金などを受け取っている場合は、その受け取った金額を医療費から差し引く必要があります。

歯の治療

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歯の治療も医療費控除の対象となりますが、一般的に支出される水準を著しく超えると認められる特殊なものは医療費控除の対象になりません。金やポーセレンは歯の治療材料として一般的に使用されており、これらを使った治療の対価は、医療費控除の対象になります。

発育段階の子供の成長を阻害しないよう、必要と認められる不正咬合の歯列矯正の費用は、医療費控除の対象になります。しかし、同じ歯列矯正でも、容ぼうを美化するための費用は、対象になりません。

治療のための通院費も医療費控除の対象です。小さい子の通院に付添が必要なときには、付添人の交通費も通院費に含まれます。

自家用車のガソリン代・駐車場代

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通院に要する費用も医療費控除の対象となります。しかし、通院費として認められるのは、交通機関などを利用したときの人的役務の提供の対価として支出されるものをいいます。したがって、自家用車で通院したときのガソリン代や駐車場代等といったものは、医療費控除の対象になりません。

必要な証明書

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特定の費用について、医療費控除を申請する場合には、それぞれ証明書が必要書類となります。具体的には、寝たきりの人のおむつ代(医師が発行した「おむつ使用証明書」)、温泉利用型健康増進施設の利用代金(温泉療養証明書)、ストマ用装具の購入費用(ストマ用装具使用証明書)などです。

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これらの証明書に記載された証明者の名称、証明年月日等を医療費控除の明細書の欄外余白などに記載することにより、医療費控除の対象とすることができます。なお、この証明書は、添付又は提示の必要はありませんが、確定申告期限等から5年間自宅等で保存する必要があります。

その他の医療費控除の対象

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上記のほかにも、医療用器具の購入や賃借費用、義手、義足、松葉づえや義歯等の購入費用なども医療費控除の対象になります。必要な医療は人によって異なるので、どういったものが控除の対象で、何が必要書類となるかは事前にホームページ等で確認するか、最寄りの税務署にお尋ねになるのがよいでしょう。

確定申告の医療費控除には書類と計算が必要

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今回は、確定申告の医療費控除の明細書の書き方、必要書類や申請方法について解説しました。医療は様々な費用の積み重ねであるので、日々の書類の保管が大事です。件数が多い人はこまめに明細書に記載するのもよいでしょう。この記事を参考にきちんと計算を行い、医療費控除が受けられるよう手続きしてもらえたら幸いです。

たけかずや
ライター

たけかずや

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