生前贈与における税金の種類
生前贈与とは、どのような税金の種類が発生するのかをご紹介します。また、生前贈与の期限が切れた際にはどのような税金が発生するのかにも触れます。
時効となる前の生前贈与について不安がある方や、生前贈与を行う際にはどのような税金が掛かってくるのかを知りたいというは、こちらの項目をしっかりとご覧いただくことをおすすめします。
贈与税がかかる
生前贈与は、あくまで一般的な呼び方であり、税法上の呼び方ではありません。生前贈与はあくまで贈与の延長上にある言葉になります。そのため、発生する税金は贈与税となります。
また生前贈与は、「将来的に相続する場合のことを事前に考えて行う贈与」としての意味合いが強く存在しています。贈与とは、誰かにものをあげるということだけではなく、ものを贈るという契約であることを忘れないようにしましょう。
現金だけではなく不動産も該当します。法的な効力のある契約となりますが、税務署への申告をせずに、身内で勝手に大金を贈ってしまうのは法律違反となります。
生前贈与の時効が切れると相続税
生前贈与には時効が存在しています。法律では、贈与者が亡くなる3年前までの贈与に関しては相続とする旨が記載されています。つまり、亡くなる3年前までの期間に行った贈与は、相続税の課税価格として扱われてしまうということです。
もちろん、遺産を受け取り相続税を支払う方法でも問題はありませんが、相続税よりも贈与税のほうが額面が軽くなります。
相続税よりも贈与税のほうが良いというメリットについては、こちらの記事でも後ほどご紹介するので、相続と生前贈与、どちらにしようか悩んでいる方は参考にしていただくことをおすすめします。このように、生前贈与には時効があります。
時効の期間というのは、贈与者が亡くなる3年前までとなります。相続税の支払いとしないためにも、時効となるタイミングよりも早く贈与を完了させる必要があります。
生前贈与のメリット
こちらの項目では、時効前の生前贈与のメリットについてご紹介します。時効前に生前贈与を利用することには、様々なメリットが存在します。
こちらの項目でもご紹介するような、税金関係を含む多くのメリットを知っておくことで、実際贈与者となる場合でも受贈者となるばあいでもしっかりと現状を把握できるようになるでしょう。これから相続や生前贈与について考えていらっしゃる方にもおすすめしたい内容となります。
非課税制度が利用可能
贈与税が発生するのは、一年間に贈与した金額が110万円を超えた場合です。こちらは、現金での贈与でも、銀行からの振込でも対象となります。一年間の贈与金額が110万円以下の場合、こちらの贈与については税金が掛からず、非課税となります。
つまり、毎年110万円以下の金額を贈り続けていた場合でも、贈与税及び相続税は掛からなず非課税ということになります。
贈与税の計算方法については、こちらの記事でも後ほどご紹介しますが、相続税や贈与税のことを考える必要がなく非課税であるということになります。非課税なので税金のことを考えることなく、自分の所有している貯金などを誰かに贈ることができるということは、非常に楽な生前贈与の方法となるので、ぜひ活用されることをおすすめします。
もちろん、生前贈与で非課税制度を利用するためには、生前贈与の時効が切れる前に贈与する必要があります。
生前贈与の対象者の幅が広い
自分が亡くなった場合の相続については、自分の血縁者にのみ遺産を渡すことができます。しかし、生前贈与の場合は全く異なる贈与が可能です。生前贈与が、贈与できる対象者の幅が広いと言われる理由についてご消化します。
贈与の対象者の幅が広いと言われる理由は、血縁者に限られる相続とは違い、どんな方にも贈与することができるからです。
生前贈与は、一定の限られた人にのみ現金などを贈ることができるのではなく、あくまで贈与となるので、贈りたい人に現金などを贈ることができます。ただし、年間110万円以下の現金などの贈与は、税金が掛からず非課税となります。一年間に110万円以下の現金であれば、どのような方に贈ったとしても非課税となるので、安心して贈与が可能となります。
相続時のトラブルが少ない
誰かが亡くなった場合、亡くなった方の遺産は相続という形になります。また、亡くなった方の遺書などが残されていなければ、相続する方の中で揉め事が発生する可能性も少なくありません。
誰かが突然亡くなったために、遺産を相続するということになり、揉め事が発生して残された家族の仲が悪くなってしまうということも考えられます。それに対し生前贈与は、現金の渡し方や、不動産をどのように分配するかといったことを話し合って決めることができるので、相続に比べればトラブルが少なくなるでしょう。
生前贈与の税金の計算方法については後ほどご紹介しますが、贈与税という税金は、相続税という税金に比べて安価です。
生前贈与時に起こりうるトラブル
先程、相続の際に起こりうるトラブルについて少しご紹介しました。次にご紹介するのは、生前贈与をするときに起こりうるトラブルについてです。
先程もご紹介したとおり、生前贈与はトラブルが起こりにくいことが特徴の相続方法です。しかし、生前贈与をする際にも時効を含めたトラブルが発生することがあります。生前贈与をする際に起こりうるトラブルについて、しっかりとご説明するので、気になる方はご覧いただくことをおすすめします。
生前贈与時のトラブル例
生前贈与時のトラブル例についてご紹介します。生前贈与は、相続するよりも比較的トラブルが起こりにくいと言われていますが、全く起きないということはありません。
現金や不動産といった、大きな金額が動き、税金も大きくなってしまう贈与という契約を交わすものです。相続税という税金が発生する相続や生前贈与には、トラブルがどうしても発生してしまうこともあるでしょう。しかし、事前にどのようなトラブルが発生することがあるのかを知っておけば、起こったことに対する対処ができる可能性もあります。
より安心して生前贈与を行いたいと考えている方は、こちらの項目をご覧いただくことをおすすめします。
トラブルその①:特別受益
ある家族の大黒柱である父親が、亡くなる前に生前贈与をするというシチュエーションでお話します。こちらの家族には、子供が3人います。父親は、生前贈与を考える前に長男に大学の入学費や、入学の際に大きな金額となる現金を渡していたという事実がありました。
生前贈与をするとなった段階で、他の二人の子供が長男だけ大きな金額をもらっていてずるいと言い始める結果となります。
生前贈与の際に発生するトラブルとして、家族内の子供から、受け取った金額の不公平さを訴えられるというものがあります。長男に支払った多額の現金については、生前贈与となります。他の子供たちのことを考えず、身勝手な感情で生前贈与を行ってしまうと、後ほどトラブルとなる場合があります。
こちらの問題に関しては、特別受益として、長男の受け取った金額を計上するという方法があります。
特別受益とは、相続時に相続される予定となる金額を、父親が亡くなる前にうけとったということにして、相続時に精算するという方法になります。このように、生前贈与をする場合には、税金が関係する問題以外のトラブルが発生する場合もあります。
こちらの項目でご紹介したようなシチュエーションのようにならないためには、不公平であると思われるような生前贈与をしないという考え方が必要となります。
トラブルその②:税務署から贈与を否認される
生前贈与として、自分の息子に毎年110万円ずつ現金を渡していたというシチュエーションでお話します。こちらの父親は、自分が亡くなる15年前から生前贈与を続けました。つまり、亡くなるまでに1650万円を現金で渡していたということになります。
毎年110万円以下の贈与となるので、相続税や贈与税は発生しない計算となります。父親が亡くなって数ヶ月した後に、税務署の署員が息子のもとを訪ねてきました。署員の話す内容は、父親から受け取った1650万円の現金のうち、1320万円分の現金の相続税が支払われていないということでした。
こちらのシチュエーションについてご説明します。まず、生前贈与を行う際には「贈与契約書」を作成する必要があります。
贈与契約書は、贈与を行ったことを証明する書類になります。先程もご紹介したとおり、生前贈与とはいえ、贈与という契約になります。そのため、契約書で双方の合意を確認するためには契約書が必要になることに注意しておきましょう。
また、税務署が息子に疑いの目を向けたのは、全く贈与税を収めた経歴がなかったからです。
毎年一定の非課税となる現金を贈与し続けていると、定期贈与として疑われてしまうこともあるようです。そのため、数年に一度は贈与税を収めるほうが良いと言われています。贈与税の計算方法は後ほどご紹介しますが、1320万円分の現金の贈与税は約294万円となります。また、一年間に120万円を贈与した場合の贈与税は12万円となります。
15年間に5回ほど贈与税を納税したと考えると230万円以上の節税となります。生前贈与を考えている方は、税務署との関係も念頭に入れておく必要があります。
生前贈与の非課税制度を利用する方法
生前贈与を行う上で起こりやすいトラブルを、事例とともにご紹介しました。次にご紹介するのは、生前贈与雨の非課税制度を利用する方法についてです。
時効となる前に生前贈与を行うことによって、贈与税を軽減したり、非課税とすることが可能となる制度が存在しています。時効となる前に生前贈与を行い、より税金を抑えたいと計算している方にはおすすめの内容となります。
贈与税の基礎控除額
贈与税の基礎控除額についてご紹介します。基礎控除額は、確定申告の際にも用いられるものになります。贈与税の基礎控除額とは、時効となる前に贈与を行った際に発生する贈与税の計算において、贈与した金額から基礎控除額を引いた金額で贈与税の計算をするための金額となります。
贈与税の計算方法については後ほどご紹介しますが、贈与税の基礎控除額については、贈与税の計算方法をご説明する際にも使用するものとなります。
贈与税の基礎控除額は、110万円となります。一年間の贈与学が110万円以下となる場合は非課税となる理由は、こちらの基礎控除額が存在しているからになります。基礎控除額があるため、110万円以下の金額から基礎控除額を引くと0円以下となり、計算しても贈与税は0円となります。こちらの控除額は、不動産にも該当させることができます。
相続時精算課税制度の税金控除額
不動産といった多額の金額となる贈与をこちらの制度を利用して行う場合、控除額が2500万円となります。不動産や、多額の現金を一括で贈与したい場合に使用される制度となります。
控除額が大きくなることによって、大きなメリットがあると考えてしまう方も多いかもしれませんが、特に不動産に関して、不動産の価値が変わることがなければ、相続時と同じ税金となってしまいます。こちらの制度を利用して生前贈与を行った時よりも、贈与した不動産の価値が下がれば税金の金額も下がります。
なお、贈与する不動産が収益を目的とした不動産である場合は、税金が高額であったとしても効果的な贈与ができる場合があります。
住宅取得資金贈与の特例の税金控除額
住宅取得資金贈与の特例としての、税金控除額をご紹介します。こちらの特例を利用する場合、いくつかの条件があります。その中には、受贈者が贈与者の子供であったり、孫であったりする場合にのみ不動産購入などに利用することができるという条件も存在しています。
こちらを含めた条件をクリアした上で不動産購入などに利用することができる、住宅取得資金贈与の特例の税金控除額の金額は最大で3000万円となっています。
生前贈与だけではなく、自分の子供や孫といった血縁者が家を建てるといった場合には、ぜひ活用したい税金控除となります。3000万円以下の金額であれば、非課税となり贈与税が発生しないのでおすすめです。
夫婦間贈与の特例の税金控除額
さきほどご紹介した、住宅取得資金贈与の特例と同様、こちらの特例を利用するにはいくつかの条件が設定されています。
その中には、同じ土地や、同じ家に住み続けているということや、入籍してから現在に至るまでの期間が20年を超えているということといった条件もあります。こちらの条件を含む多くの条件を満たすことができれば、夫婦間贈与の特例の税金控除額を利用することができます。
夫婦間贈与の特例の税金控除額の金額は、2000万円となっています。夫婦間において、どちらかというと長生きしそうな方に生前贈与しておくだけでも、節税になるのでおすすめの方法となります。
教育資金贈与の特例の税金控除額
教育資金贈与の特例の税金控除額についてご紹介します。教育資金贈与の特例は、子供や孫といった血縁者にのみ該当する特例となります。また、贈与する子供や孫は30歳未満であることが必要条件となります。教育資金贈与の特例は、受贈者にあたる子供や孫の通う予定の学校の入学費などに使用することができる控除額となります。
塾やピアノ教室といった習い事についてはこちらの特例の非課税対象とはならないのでご注意ください。教育資金贈与の特例の税金控除額は、1500万円となっています。1500万円を超えると、非課税ではなく課税対象となってしまうのでご注意ください。
生前贈与の計算方法
これまで生前贈与の注意点や、特例となる場合の条件・控除額などをご紹介してきました。さらに、生前贈与を行う場合に発生する税金や、相続税との違い・時効の存在などもご理解いただけたでしょう。こちらの項目でご紹介するのは、生前贈与の計算方法についてとなります。
時効となる前に生前贈与の計算方法をしっかりと把握することで、相続時とどれほどの税金の節約になるのかといったことも理解することができるようになるでしょう。
暦年課税の場合の計算方法
生前贈与を行う際に発生する贈与税において、暦年課税で計算する計算方法についてご紹介します。贈与税の計算時によく見る暦年課税とは、贈与税を計算する際の基本と言われています。
暦年課税とは、一括で使用する制度とは違い、1/1から12/31までを1つの期間として、その期間内で行われた贈与について合計して計算するという贈与税の計算方法になります。暦年課税の方法で贈与税を計算する場合、一年間の基礎控除額は110万円となります。さらに、贈与税の税率や控除額は、受贈者の性質や、贈与する金額によって変化します。
暦年課税の計算式は、「税率×(1/1から12/31までに受けた贈与額の合計-基礎控除110万円)-控除額」となっています。
贈与税の税率
先程もご紹介したとおり、暦年課税の場合で贈与税を計算する場合、受贈者の性質によって税率が変化します。
具体的な例をご紹介しますと、400万円~600万円を贈与する場合、贈与を受ける方が20歳以上であり、血縁関係にあったり、養子などの直系尊属である場合、税率は20%となります。また、それ以外の方が400万円~600万円の贈与を受ける場合には、税率は30%と比較的大きくなります。
また、直系尊属である場合の控除額は30万円となりますが、それ以外の方の控除額は25万円となります。自分の直系尊属以外の贈与する場合には、直系尊属の方に贈与する場合よりも税金が高くなる傾向があるのでご注意ください
生前贈与の注意点
これまで、贈与する際にかかる税金や、贈与の際に税金を非課税とする方法についてご紹介してきました。こちらの項目では、生前贈与する際の注意点についてご紹介します。時効となる前の生前贈与をする場合、注意して置くべき内容が何点かあります。こちらの記事では、その中でも厳選した3つの注意事項についてご紹介します。
贈与税は受贈者が支払う
贈与する際の注意事項1つ目をご紹介します。贈与の際の注意事項1つ目は、贈与税は受贈者が支払うということです。受贈者とは、贈与してもらう側の方のことです。
主に現金や不動産といった、相続の際に相続税を払わなくてはならないようなものを受け取る際に贈与税が発生します。ここで注意しておきたいのは、贈与する人は非課税となり、贈与を受け取る人が税金を支払わなくてはならないということです。
贈与した不動産が相場より安い
時価総額が1000万円となっている土地を、自分の息子だからといって600万円で売ることは、一部を贈与として計上されてしまいます。
親子間の不動産の売買において、割引して贈与しようとすることはよくあるでしょう。しかし、こちらのシチュエーションの場合、1000万円から600万円差し引いた金額である、400万円が贈与税の対象となります。税金としては、消費税やその他経費だけでなく、さらに多くの現金や費用が掛かってしまうこともあるので注意が必要となります。
現金の贈与をした場合
現金を贈与することは、税務署に申告する必要がないためばれないと考えている方もいらっしゃるかもしれません。しかし、税務処理をする場合に、税務署は過去の大きな金額の引き出しなどについて、最低10年さかのぼって調査します。また、説明ができない現金の流れについては、生前贈与や、その他脱税の疑惑をかけられる可能性もあるので注意が必要です。
生前贈与で税金を納付する方法
これまで、生前贈与によって税金を節約したり、非課税とするための方法や、現金での生前贈与の注意点などをご紹介してきました。
贈与する場合に発生する税金は、相続税よりは比較的に安く済みます。生前贈与は相続税のような税金が関わってくるような行為となるため、様々な点に注意が必要であることをご理解いただけたでしょう。次にご紹介するのは、税金を納付する方法です。生前贈与で発生する税金の納付方法には、主に2種類あります。
現金を納付する場合
生前贈与で発生した税金を、現金で納付する場合の方法についてご紹介します。税金を現金で納付する場合、現金と納付書をまとめて、該当の金融機関や、住所地を管理している税務署の窓口などで支払う必要があります。
なお、税金の納付書については税務署などで手に入れることができます。税金を支払う場合は、税務署で納付書を手にしておくことをおすすめします。
コンビニで納付する場合
贈与する場合に発生する税金を、コンビニで支払う方法についてご紹介します。税金をコンビニで支払う場合、いくつかの条件があります。その条件には、納付金額が30万円以下である場合の税金であることが含まれています。コンビニで税金を支払う場合、住所地の管轄となる税務署にて、バーコード付き納付書を手に入れる必要があります。
生前贈与は税金の種類を明確にしておこう
生前贈与に時効があるということや、贈与にかかる税金の支払い方法など、多くのことをご紹介してきました。
相続税よりも比較的税金を節約することができるので、時効となる前に生前贈与を行うことをおすすめします。また、不動産も生前贈与を行うことができるので、不動産の相続税を払いたくないという方は生前贈与で発生する税金を支払うことをおすすめします。