そもそもIPOとは?
IPOは「Initial Public Offering」の略で、新規公開株や新規上場株式のことを指します。「利益が出やすい」「値上がりしやすい」というイメージを持っている人が多く、IPOに投資をしようと考える人がたくさんいます。
今回はIPOのメリット・デメリットや平均当選確率、当選確率を上げる方法、IPOに申し込む際のおすすめの証券会社などについてご紹介しましょう。
IPOは未上場企業の株式
IPOは上場することが決まっている未上場株式のことを表し、役員など会社関係者が保有していた株式を証券取引所に上場させることで、誰でも株式取引が出来るようにします。企業は株式を上場させることで資金調達が可能になり、さらに会社の知名度を上げることができるというメリットがあります。
新規上場するときには株式が売れ残らないようにするため、公募価格を割安に設定することが一般的です。平均的に見ると上場した後に値上がりをする銘柄がとても多く、上場してからすぐに売却をして利益を出そうと考える投資家たちがたくさんいます。
また、IPOへの投資は投資家の間で人気があり、特に人気の銘柄に関しては申し込みをしてから抽選になることも多くあります。
IPOのメリット
IPOの一番のメリットは何といっても「値上がりが期待できる」ということです。実際に2017年に新規上場した株式89銘柄のうち初値が公募価格を上回った株式は81銘柄と、9割以上の銘柄は上場してすぐに値上がりをしています。2016年には約8割、2015年にも約9割の銘柄が値上がりしており、このデータからも値上がりが期待できることが分かります。
IPOは値上がり率も大きく、2017年の初値倍率の平均は約2.13倍というデータが出ています。つまり上場後すぐに平均して公募価格の2倍以上の価格がついたことになります。値上がりが期待でき、さらに値上がり率も高い点はIPOの大きなメリットと言えるでしょう。
その他にも「IPOを購入する際には手数料がかからない」「IPOをする企業は新興企業などが多く、今後の業務拡大・急成長が見込める」というメリットがIPOにはあります。
IPOのデメリット
IPOのデメリットは、先程もご紹介したように人気のIPO銘柄は抽選になってしまう点です。IPOは値上がりが期待できることもあって人気があるため、銘柄によっては申し込みをしても抽選に外れてしまい購入することができないということがあります。どうしてもその銘柄を購入したい場合は、上場して初値がついてから買い注文を出すことになります。
さらにIPOは新興企業や小規模な企業が多く今後の成長を見込めるというメリットがある反面、必ず業績が安定するとは言えないデメリットもあります。また既に上場している企業と比べると情報も少ないため、投資するうえでの判断材料が乏しくなってしまうでしょう。
IPOで当選しない理由
IPOの人気の銘柄は申し込みをしても抽選となり、当選した人しか公募価格で買い付けることが出来ません。抽選となった場合に当選する確率は低く「なぜこんなに当選しないのか」と疑問に感じている人もたくさんいます。なかなか当たらない理由として主に「抽選方法が平等ではない」「競争率が高い証券会社で申し込みをしている」という点が挙げられます。
IPOの平均当選確率
そもそもIPOの平均当選確率はどのくらいなのでしょうか。IPOの平均当選確率は約1~2%とかなり低くなっています。以前はもう少し平均当選確率が高くなっていましたが、年々投資に関心を持つ人が増えていることもあり平均当選確率は下がってきています。そのなかでも有望なIPO銘柄だと、平均当選確率は1%を切るくらい低くなるでしょう。
IPOの抽選方法は平等ではない
IPOの平均当選確率が低い主な理由に「IPOの抽選方法が平等ではない」ことが挙げられます。抽選方法は証券会社によって異なり、ネット証券を中心に原則として申し込みをした人全てを抽選して配分先を決定している証券会社もありますが、対面で営業をしている証券会社は抽選方法が平等ではないケースが多くあります。
対面での営業を行っている証券会社では普段から付き合いのある顧客にIPOを配分する「裁量配分」が行われ、残った分だけを抽選にまわすことがよくあります。この場合、抽選に回されるのは1割程度になり、申し込みをしてもなかなか当選することは難しいでしょう。
また、資金を多く預けている顧客が優遇されることもよくあります。そのため、取引の少ない人や投資初心者の人はIPOに申し込みをしても当選する確率は低くなってしまいます。
競争率が高い証券会社を利用している
その他にも競争率が高い証券会社を利用している場合も、IPOの当選確率は低くなってしまうでしょう。配分が多いこともあり大手の証券会社からIPOに申し込みをする人がたくさんいます。しかし大手の証券会社は口座を開設している人が多くIPOに申し込みをする人もその分多いため、当選確率はどうしても下がってしまいます。
IPOの当選確率を上げる方法(基礎編)
これまで説明してきたように、IPOの銘柄は平均当選確率が低く抽選になるとなかなか当選することは難しくなってしまいます。しかし工夫することで当選確率を上げることも可能です。今回はIPOの当選確率を上げる方法を、基礎編と応用編に分けていくつかご紹介しましょう。
「完全平等抽選」で当選確率を上げる
IPOの当選確率を上げる方法として「完全平等抽選の証券会社を選んで申し込みをする」方法があります。先程も紹介したように、対面で営業をする証券会社の多くは普段から取引をしている人にIPOを割り当てる優遇措置が取られるため、申し込みをしても当選することはなかなか難しいです。
そういった優遇措置が取られる証券会社ではなく、配分全てを抽選に回す「完全平等抽選」を行っている証券会社を選んでIPOを申し込みすることで当選確率を少しでも上げることが可能となります。
IPOの取引件数で当選確率を上げる
証券会社のIPOの取扱い件数を参考にして当選確率を上げる方法もあります。証券会社によってIPOの取扱い件数は異なります。当然、取扱い件数が多い証券会社で申し込みをした方が当選確率は上がるためおすすめです。
主幹事(新規上場する際に準備や審査準備、アドバイス等を行う証券会社)の証券会社は株式の配分が多く、また主幹事になれる証券会社は限られるためIPOの取扱い件数は多くなります。しかし主幹事になる証券会社のほとんどが対面で営業を行う大手の証券会社のため、優遇措置が取られ、お得意様にならない限り当選することはなかなか難しいでしょう。
ネットの証券会社でも主幹事の経験がある証券会社はあり、さらに完全平等抽選を実施している証券会社の多くはネットの証券会社です。ネットの証券会社の中から主幹事の実績があるところを探して口座を開設することで、当選確率を上げることができるでしょう。
競争率が高くない証券口座を開設する
大手の証券会社は口座を開設している人が多いため、IPOへ申し込みをする人もその分たくさんいます。そうすると当選確率は低くなり、大手の証券会社でIPOの申し込みをしてもなかなか当選することは難しいでしょう。
そのため、IPOの当選確率を少しでも上げるためには競争率が高くない証券会社を選んで口座を開設することをおすすめします。しかし大手ではない証券会社の場合、IPOの取扱いが無い場合もあるので注意が必要です。証券会社を選ぶときには、その証券会社が過去にどのくらいIPOの取扱いをしていたのか確認するようにしてください。
IPOの当選確率を上げる方法(応用編)
これまでIPOの当選確率を上げる方法の基礎編をご紹介しましたが、続いては応用編をご紹介しましょう。口座に預けている資金が拘束される期間やタイミングをずらして申し込みをすることで、IPOの当選確率を上げることができます。投資上級者向けの方法ではありますが、是非参考にしてみてください。
資金拘束期間とタイミングをずらして当選確率を上げる
IPOの当選確率を上げる方法として「資金拘束期間のタイミングをずらす」方法があります。IPOの買い付けに必要な資金がどのタイミングで証券会社の口座に入金されていないといけないのかは、証券会社によって異なります。そのため、このタイミングのずれを上手く使うことでIPOの当選確率を上げることが可能です。
入金額の確認方法
IPOに申し込みをして当選した場合、口座に買い付けるための資金が入っているかどうかがとても重要です。もし資金が入金されていなかった場合は当選が無効となるため、入金が確認されるタイミングまでに必ず口座へお金を入れておく必要があります。また、入金した資金は拘束され資金の移動が出来なくなることも頭にいれておきましょう。
入金が確認されるタイミングは証券会社によって異なります。主に「ブックビルディング」「抽選への申し込み」「当選後の購入」のタイミングで確認する証券会社が多いです。
例えば「抽選への申し込み」と「当選後に購入」する証券会社にそれぞれ申し込みをしてタイミングをずらすことで、同じ銘柄でも2社から抽選への申し込みをすることが可能です。抽選のチャンスが2回あるので、その分当選確率を上げることができます。
証券会社の攻略方法
続いて、IPOへ申し込みをするときの証券会社の攻略方法をご紹介しましょう。IPOへ申し込みをするときには、少しでも当選確率が上がるように口座を開設する証券会社を上手に選択することが重要となります。また、いくつかの証券会社で口座を開設してIPOに申し込みをすることでも当選確率を上げることができます。
証券会社の選択方法
現在は対面での営業を主とする証券会社だけではなく、ネットの証券会社も主流になりつつあります。そのため証券会社の数は200社を超え、とてもたくさんの証券会社が存在します。しかし、そのなかでもIPOの取扱いをしている証券会社はそんなに多くありません。
特に主幹事になる証券会社は数が限られていてほとんどが対面を主とする大手の証券会社です。主幹事の証券会社は多い時にはIPOの配分の9割近くが割り当てられることも珍しくなく、さらにIPOの取扱い件数も他の証券会社に比べてとても多いです。
そのためIPOの申し込みをするときには、1つは主幹事の経験がある証券会社を選んで口座を開設し、IPOの申し込みをすることをおすすめします。
IPOで証券会社を組み合わせる
これまでも述べてきたように主幹事の証券会社は割り当てられている株数は多いものの、お得意様に多く配分する優遇措置を取る証券会社が多いため、当選確率はどうしても下がってしまいます。そのため、主幹事の証券会社だけではなく複数の証券会社からもIPOの申し込みをすることをおすすめします。
ネットの証券会社には申し込みをした人全員を平等に抽選する証券会社も多いので、ネットの証券会社からもIPOの申し込みをしておくようにしましょう。複数の証券会社を組み合わせてIPOの申し込みをすることで、少しでも当選確率を上げることが可能です。
IPOでおすすめの証券会社
現在、証券会社は対面やネットなど合わせて200社以上あります。そのなかでもIPOへ申し込みをするときにおすすめの証券会社をいくつかご紹介しましょう。IPOに申し込みをする時に資金拘束がなく申し込みできる松井証券や岡三オンライン証券、IPOの取扱いが多いSBI証券について詳しくみていきます。
おすすめ①松井証券
松井証券は約100年の伝統を誇る証券会社です。ネットからでも口座開設をすることができ、簡単に開設・取引をすることができます。「NISAの株式取引にかかる手数料が無料」など、独自のサービスを多数提供している点も松井証券が人気のポイントのひとつです。
IPOについては約70%が完全平等抽選で配分されます。また、申し込みをする際に資金を入金しておく必要は無く、当選後に入金すればよいので事前に資金を準備しておく必要はありません。さらに、当選後にキャンセルをすると証券会社によってはペナルティがあるところもありますが、松井証券の場合はペナルティもありません。
IPOの取扱い件数は2014~2018年の5年間の平均が約11銘柄と、他社と比べてそこまで件数が多いわけではありません。しかし7割が抽選で配分されるので当選確率が高く、IPOに申し込みする際にはおすすめの証券会社です。
おすすめ②岡三オンライン証券
岡三オンライン証券は、岡三証券グループのなかでネット取引専門の証券会社として設立されました。2019年の「オリコン顧客満足度調査」ではネット証券国内株式や分析ツール、PCの3部門で第1位を受賞し、多くの人に利用されています。さらに「情報の岡三」と言われているように豊富な投資情報をサイトでは提供しています。
岡三オンライン証券のIPOは100%完全平等抽選で行われます。多くの投資家に配分されるように抽選は平等に行われ、普段からの取引実績に関係なく申し込みをした人全員にチャンスが与えられます。また松井証券と同様に申し込み時の資金拘束はありません。
グループ会社の岡三証券が幹事を担う際にIPOを委託されてることが多いため、IPOの取扱い本数は2017年から増えています。「委託幹事」という扱いになるため配分はそこまで多くはありませんが、100%完全平等抽選なので岡三オンライン証券はおすすめです。
おすすめ③SBI証券
最後にSBI証券についてご紹介します。SBI証券はネットの証券会社のなかでも口座数・売買委託金額が圧倒的に多く、たくさんの投資家たちがメイン口座としてSBI証券を利用しています。SBI証券はNISA口座の普及にも積極的に取り組んでおり、NISA口座での株式の売買にかかる手数料は無料で、さらにIPOもNISA口座で買い付けすることが可能です。
IPOの抽選は店頭配分の他に35%が完全抽選、15%がポイント抽選となっています。SBI証券はIPOに申し込んで外れてしまった場合、ポイントが貯まるようになっています。保有ポイント数に応じて当選確率が上がるため、いずれは確実に当選することが可能です。
さらにSBI証券はネットの証券会社のなかでもIPOの取扱い件数が1番多く、主幹事の実績もあります。毎年平均して全IPO銘柄の約9割弱は取扱いがあるので、IPOへの申し込みをするときには特に魅力的な証券会社です。
IPO申し込み時の流れ
これまでIPOについてやIPOに申し込みをする際におすすめの証券会社をご紹介しました。では、実際にIPOに申し込みをするときにはどのような流れで行われるのかをみていきましょう。一般的な流れを紹介しますが、一部証券会社によって異なるところもあるのでIPOに申し込みをする際には、証券会社のサイト等を事前に確認することをおすすめします。
ブックビルディングへの申し込み
企業が上場する際には、証券取引所から承認が得られると証券取引所のホームページなどでIPOの情報が公開されます。「1,500円~2,000円」といった価格の仮条件が提示されるので、その価格帯の中から「2,000円で200株を購入したい」という申し込みをするのがブックビルディングです。
このブックビルディングの期間は銘柄にもよりますが、平均して5日程度と短く設定されています。ブックビルディングに申し込みをしないとIPOを購入することができないので、購入したい銘柄の時にはブックビルディングへの申し込みも忘れないようにしましょう。
なお、ブックビルディングの後に公募価格は決定しますが、ブックビルディングの際に公募価格よりも低い価格で申し込みをすると抽選の対象外となってしまうので気を付けましょう。最近の傾向では、仮条件の最高値が公募価格となることが多くなっています。
仮条件の決め方
ブックビルディングの際に提示される仮条件の価格帯のなかから公募価格は決定されます。この仮条件は、幹事証券会社へのヒアリングや主幹事が企業の経営成績、財政状態等を調べたり類似の上場会社と比較をして妥当な価格帯を決め、最終的に企業と協議をしたうえで決定されます。
申し込み後、抽選に当選したら購入
IPOに申し込みをすると人気の銘柄は抽選で購入できるかが決定します。これまで説明してきたように抽選方法は証券会社によって異なります。普段から付き合いのある人や資金をたくさん預けている人が優遇されて抽選の配分が少ない証券会社や100%完全平等抽選の証券会社など様々です。
抽選に当選した場合、購入代金を支払ってIPOの買い付けが完了します。購入期間は決まっているので、期間内に購入することを忘れないようにしましょう。なお、購入資金が拘束される時期は証券会社によって異なるので、各自ホームページ等で確認してください。
証券会社によって抽選結果の公表日は異なる
IPOの抽選結果の公表日は証券会社によって異なり、公募価格が決定した日に抽選を行う証券会社もあれば、翌営業日に抽選を行う証券会社もあります。そのため、仮に休日を挟んだ場合に結果が公表されるまでに数日かかることもあるので、IPOに申し込んだ際に結果がいつ公表されるのか確認しておくことをおすすめします。
IPOとPOの違いとは?
IPOと似た言葉で「PO」という言葉があります。「新規公開株」であるIPOに対してPOは「公募」「売り出し」と言い、既に上場している企業が資金を調達するために自社株や大株主が保有している株式を新たに市場に売り出すことを指します。
IPOとPOのメリット・デメリットの違い
IPOには値上がりが期待できる等のメリットがありますが、POのメリットには既に上場している企業なのでこれまでの株価の推移が見れたり業績などの情報も得られやすいという点が挙げられます。
しかしPOで市場に出回る株式数が増えることで株価が下落する可能性があるというデメリットもあります。また、資金調達の目的が業務拡大や設備投資といった積極的な理由のためなのか、それとも借入金を減らす等の消極的な理由なのかも判断することが必要となるでしょう。
IPOの仕組みを理解して当選確率を上げよう
投資への関心が高まりつつある現在はIPOの人気が上がっているため、平均当選確率は1~2%とかなり低くなっています。IPOの当選確率を少しでも上げるためには、IPOの仕組みを理解しておくことがとても重要です。
証券会社ごとのIPOの抽選方法や入金が必要になるタイミングなどを事前に確認し、把握したうえでIPOの申し込みをしてみましょう。また、1つの証券会社ではなく複数の証券会社で申し込みをして当選確率を上げることもおすすめします。