「余裕のよっちゃん」とは
気がつくと最近「余裕のよっちゃん」なんてセリフ言っている人をほとんど見かけなくなりました。「余裕のよっちゃん」はもはや死語の運命なのでしょうか?由来は語源は?類語・英語の使い方も含め色々気に掛かる今回は、丸ごと「余裕のよっちゃん」についてご紹介します。
余裕のよっちゃんの意味
「余裕で簡単である」という意味で、当時は普通に「余裕だよ」と言うより、「余裕のよっちゃんよ」と言うことで面白味が生まれ、会話が弾むきっかけにもなりました。
「余裕のよっちゃん」の言葉の響き、ニュアンスには「よっちゃん」という人名の語源や由来を匂わせる語句の他に、「余裕」と韻を踏んでいるため「面白い」「軽い」「安い」イメージも当時はあったようです。
あまり重要な場面では使う事はなく、気の合う同じ身分の相手との会話やリラックスした場所や雰囲気で使う事がスタンダードでした。何気ない一言が会話の相手にも伝わって、その会話の相手も別の会話の相手に使っていく、バトンリレーのように循環していきました。
余裕のよっちゃんの類語
類語として「朝飯前」は現在でも違和感なく使われている言葉です。その語源・由来は江戸時代まで遡ります。江戸中期までは1日2食が主流で、朝飯を食べる前の仕事は力が入らず難儀でした。そこから簡単に仕事がこなせるという意味で「朝飯前」が使われるようになります。死語とならず、伝統ある由来を持つ類語です。
他の類語として「余裕しゃくしゃく」があります。この類語「余裕しゃくしゃく」の「しゃくしゃく」はただの語呂合わせではなく、調べてみますと、「綽綽」と書き「泰然として落ち着いている様」との意味があります。
また別の類語「お安い御用」なども「余裕で簡単である」の意味合いで使われます。この「お安い御用」、ビジネスシーンでも使い方に注意が必要ですが、ただ単に「簡単です。余裕です」と言うよりは味がある返し方となり、上手に使えば場を和ませたりできたりします。
余裕のよっちゃんの英語表現
英語では「piece of cake」楽なこと。簡単なこと。「ケーキ一切れ位に簡単にペロリと食べちゃう」みたいな意味から来ており、そこから「全然余裕」みたいなニュアンスになりました。簡単にイメージしやすい英語イディオムです。
類語として英語「easy as pie」があります。直訳すると「パイのように簡単」となります。「piece of cake」と同じ意味、使い方になります。
どちらの英語のイディオムも語源・由来は詳しくはわかっていないようです。例えの「ケーキ」や「パイ」は古くから欧米人に広く親しまれてきたスイーツです。身近で気軽な食べ物で簡単さを表現してきたのがわかります。
英語での使い方は「テストはどうだった?」「Piece of cake/Easy as pie(楽勝だよ)」これ以外でも仕事や家事など、簡単な日常会話で使えます。英語圏で使われているこの言葉は死語ではなく、現役の全年齢対象のイディオムです。
いずれの英語も「ちょろいもんだせ」的な「ノリ」のニュアンスです。「簡単」という意味だけに、使い方は簡単ですので英語を積極的に使う環境ですと会話の引き出しに入れておくと重宝します。シンプルながらも信頼関係も築ける、いい会話のキャッチボールになります。
「余裕のよっちゃん」世代はいつ?
「余裕のよっちゃん」はポスト団塊の世代(1975年頃)が生まれた頃から流行り始めて、1980年代になると、全国に浸透し定着していったと言われています。現在の30代後半から40代以降なら一度は使ったことがあるかないかは別として、認知はされております。
この世代が現在「余裕のよっちゃん」を全く使っていないかどうかは定かではありませんが、当時1970年代から1980年代に比べて、使用頻度が激減したのは間違いありません。
この時代には余裕のよっちゃん以外にも、「あっと驚くタメ五郎」「許してちょんまげ」「あたり前田のクラッカー」「チャンネルを回す」「冗談はよしこさん」なども昭和ギャグとして瞬く間に人々の間に広がりました。
オリジナルのギャグから類語として他のギャグが派生していきます。例えばアット驚く為五郎は「生まれ変わった為五郎」「花も実もある為五郎」。「冗談はよしこさん」も「冗談は」以下の名前を近所の「よ」が付く別の人名に変えて使ったりしました。
余裕のよっちゃんは昭和50年代の言葉
「余裕のよっちゃん」が使われはじめたその頃は、日本は高度経済成長の安定期でした。テレビやラジオは既に一般家庭に普及しており、ギャグ漫画が確立されたり、「欽ちゃんのドンとやってみよう(欽ドン!)」がスタート。ドラマでは「時間ですよ」をはじめとした「ホームドラマ」全盛期となっていきます。
こういった時代背景を受けて、余裕のよっちゃん他、昭和ギャグが多量に生み出されました。そのギャグは出自不明のものから「当たり前田のクラッカー」のようにテレビCMをきっかけにして広がったものまで多岐に渡ります。色々な印象的なフレーズが日本列島を駆け回り、1980代にまで使われ続ける事になります。
「余裕のよっちゃん」の由来・語源とは
そもそも、余裕のよっちゃんの「よっちゃん」の言葉自体には果たして意味や、語源や由来があるのでしょうか?特定の人名や商品を指している印象を受けますので、様々な説が今まで取り沙汰されてきました。
ずばり、言葉遊び説が有力です。ギャグブームなどの時代背景にも乗っかり「余裕のよっちゃん」の「余裕」と言う言葉に「遊び心」として「よっちゃん」を加えてみただけで「よっちゃん」に意味などは特に無いと見る説です。
当時は、言葉遊びから流行りのギャグが生まれ、そこから類語として新たなギャグが派生していく流れで、あっと言う間にギャグが巷に増殖していきました。使い方もそれぞれ単純でしたので、会社で学校で気軽に使う事ができました。
余裕のよっちゃんは語呂合わせだった
「余裕だよ」と「余裕のよっちゃんよ」は同じ意味で、ただ単純に言葉遊びの語呂合わせで、韻を踏んだ事でひとひねりの味が生まれ、その場にユーモアが生まれるきっかけになりました。
先述の通り、英語は甘いものを想起した「例え」ですが、当時の日本では、「余裕のよっちゃん」のようにただのリズムや語呂で言葉を作ったケースも多々あります。英語圏にはない日本人特有のユーモラスなギャグが多く生まれました。
この他にも「インド人もびっくり」「おはこんばんちは」「めんごめんご」などの昭和ギャグが、またそこから派生していく類語が多く生まれていきました。使い方も簡単で、当時はリズミカルな語呂の心地良さが受けました。しかし現在では死語となっているのがほとんどです。
余裕のよっちゃんの元ネタ
他方、一部の説によると余裕のよっちゃんの由来・語源は「よっちゃん」が、「カットよっちゃん」にかけているとする説もあります。「カットよっちゃん」とは後述でも触れますが「よっちゃん食品工業株式会社」が製造しているイカのおつまみです。しかし、その因果関係は確証が取れていません。
また「余裕のよっちゃん」が誕生したたきっかけは、ギャグ漫画のある作家からのセリフだ、とか時代劇のセリフからだ、とか色々な説がありますが、その由来・語源の信ぴょう性は現在はっきりわかっていません。
「余裕のよっちゃん」「冗談はよしこさん」のような人名を使っているギャグは、特定の人名を使用している為に、一般的に由来・語源があたかも存在しているように認識しがちですが、由来・語源の説は多々あれど、いずれも確証が得られていないのが現状です。
余裕のよっちゃんには続きがある
「余裕のよっちゃん」は、よっちゃん食品工業の大ヒット商品「カットよっちゃん」にかけて「余裕のよっちゃんイカ」とも言われるようになりました(カットよっちゃんが余裕のよっちゃんの由来・語源となったかは先述の通り、定かではありません。)
ちなみによっちゃん食品工業株式会社は最近「全英女子オープンゴルフ」で、渋野日向子選手がプレーの合間に食べていた「タラタラしてんじゃね〜よ」、その製造元でもあり、世間を沸かせました。
「タラタラしてんじゃね~よ」は渋野日和子選手の全英オープンの優勝後、反響が凄まじく、一部の店舗では品薄状態となりました。今後、商品だけでなくその言葉も「余裕のよっちゃん」のように人気となり、流行する可能性があります。
「余裕のよっちゃん」現在は死語なのか
現在30代後半・40代以降の世代が「余裕のよっちゃん」と言っても同世代は懐かしさもあり共感してくれるかも知れませんが、若い世代には最早「通じない」可能性があります。全く聞いた経験がない人もおり、世代によっては死語となっています。
「余裕のよっちゃん」が死語である世代にとっては、初めて「余裕のよっちゃん」と聞くと「よっちゃん」という人名が由来や語源を匂わせるので、ユーモアと疑問が混ざる感覚となり、「よっちゃんって誰?」と疑問が残る可能性があります。
人それぞれ言葉の受け取りかたや環境が違いますので、一概には言えませんが、世代間のギャップがあるため時と場所と機会を考えて使用した方が無難でしょう。現在「余裕のよっちゃん」は死語ではありませんが、ほとんど使われなくなりました。
余裕のよっちゃんは流行語にもなった!
昭和50年(1975年)〜昭和60年(1985年)にかけての高度経済成長の安定期から昭和61年からのバブル景気に入るに至り、それまでの日本は経済・雇用共に緩やかな右肩上がりで推移してきました。
その経済的にゆとりのある時代に生まれた言葉でもある「余裕のよっちゃん」は、その言葉の意味「余裕」とユーモラスな言葉遊びを併せ持ち、長い間人々の間で使われてきました。
昭和ギャグは今こそその大部分が死語となりましたが、その単純さだったり、そのリズムのよさだったり、語呂合わせだったりしたからこそ、記憶に留めやすくその多くが長く人に使用され続けたとも言えます。
「余裕のよっちゃん」の使い方
「余裕のよっちゃん」の使い方は簡単。余裕・簡単と感じる事柄であればどんな質問でも応用が利きます。ユーモアがあり、場の雰囲気を和ませるニュアンスがあり、相手とのコミュニケーションにいい効果を期待できます。ただ、初めて使う方は、先述の通り、時と場所、使う相手を選んで使用しましょう。では具体的にどう使っていくかを考えていきます。
余裕のよっちゃんイカ
1つの使い方として「カットよっちゃん」の存在があります。現在でも購入できる有名なロングセラー商品ですので、「余裕のよっちゃん」に「イカ」を足して「余裕のよっちゃんイカ」として使用した方が、死語になっている若い世代にも「ああギャグで韻を踏んでいるんだ」と理解してもらえます。
こんなの余裕のよっちゃん
例えばビジネスシーンでの使い方で「プレゼン資料は準備できた?」などの問いかけ。「こんなの余裕のよっちゃん」と、さらっと返答して反応を確かめましょう。うまく行けばその一言が、会議前の緊張した空気を緩和させる一助を担います。
会話の相手の心配した気遣いのある問いかけに対し、大丈夫に輪を掛けて余裕である事を端的に表現できる「余裕のよっちゃん」。この言葉を受けて相手は、「本当に余裕である」という理解と、「表現が面白い」感情を抱き、最初の気遣いが「安心」に変わっていきます。
大概「大丈夫?」系の問いかけに対して、「余裕のよっちゃん」はすんなり当てはまります。その場の雰囲気を読んで、「ここは使いどころだな」と思ったら、ワンポイントのアクセントとして使っていくと効果的です。
最近CMでも復活した「余裕のよっちゃん」
2018年7月から放送されたDAIHATSUのトコット(TOCOT)のCMで、大人になったまる子(ちびまる子)がトコット(TOCOT)で狭い道を運転していたら、大人になった花輪くんから「通りそうかい?ベイビー」と声をかけられた際、「こんなの余裕のよっちゃんだよ」と無事通り抜けることができました。
まる子役の吉岡美穂さんと花輪役の竜星涼さんの好演が光った作品でした。ちびまる子ちゃんのセリフとしてですが、ほのぼのとしていて、現代でも違和感がなく、「余裕のよっちゃん」の使い方も印象に残りました。
一見ブームのように現れ、現在その大部分が死語となってしまった昭和ギャグは、時代との適合性でそのまま淘汰されていくことは必然であります。ただ逆に、「余裕のよっちゃん」のように時代とマッチして再度脚光を浴びる事もあり得る事だと言えます。
令和に「余裕のよっちゃん」を復活させよう!
かつて時代と共に息づいてきた言葉の1つである「余裕のよっちゃん」。そもそもこの言葉もコミュニケーションを円滑にさせる役目を果たしてきました。時には緊張をほぐしたり。時には唐突に笑わせたり。現代でも再利用される事で、人と人との会話を結びつける切欠が生まれます。令和にこの温かい響き持つ「余裕のよっちゃん」。是非使ってみましょう!