「同胞」の意味とは?「同朋」との違いや使い方・類語を詳しく解説!

「同胞」の意味とは?「同朋」との違いや使い方・類語を詳しく解説!

「同胞」という単語の意味、具体的な使い方をご存知ですか?音読み「どうほう」と訓読み「はらから」の意味と使用法やニュアンスの違い、構成する漢字の「白川説」と「単語家族説」、同音類義語「同朋」との違いや、同胞と類語の使い分け方まで詳しく解説します。

記事の目次

  1. 1.「同胞」の意味とは?
  2. 2.「同胞」の語源
  3. 3.漢字の成り立ちとその解釈
  4. 4.「同胞」の類語
  5. 5.「同胞」と「同朋」の意味の違い
  6. 6.「同胞」の使い方
  7. 7.同胞は兄弟姉妹や同じ国の民という意味!

「同胞」の意味とは?

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「同胞」の意味について説明してまいります。日常生活ではなかなか耳慣れない言葉ですが、映画や小説などではしばしば登場します。より多くの物語を深く楽しむためにも、教養としても、これを機会に使い方を覚えておきましょう。

同胞とは、兄弟姉妹のこと、同じ国民や民族の相手、故郷が同じ人を指します。原義的には母親の同じ兄弟姉妹を指し、転じて、兄弟姉妹のように他と比べて近しい、同じ言語や風習で繋がりがある人のことを意味するようになりました。

読み方で意味が異なる

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「同胞」は音読みするときと、訓読みするときで、意味と使い方が異なる熟語です。同胞は音読みで「どうほう」「どうぼう」、または訓読みで「はらから」と読みます。昭和時代から、「どうほう」という読み方がメジャーになりました。「はらから」のほうが歴史が古く、「どうほう」は「はらから」の意味も含みます。

「どうほう」の意味

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「どうほう」と音読みするときの同胞の意味は、「はらから(母親の同じ兄弟姉妹)」と、「同じ国民、同じ民族」を指します。「はらから」の意味も持ちますが、血縁者より仲間のニュアンスを持ちます。また現代においては「はらから」よりメジャーな読み方です。

意味合いにはさほど違いはありませんが、使い方はかなり異なります。「同胞(どうほう)」なら「心の友よ!」のような使い方もできますが、「同胞(はらから)」は世界観が一気に重たい印象になります。

「同胞(はらから)」の場合は特にその意味を強調するため、普段使いが難しいですが、文学的な大和ロックの歌詞には最適です。

「はらから」の意味

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「はらから」と難読の訓読みするときの同胞の意味は、第一には「同じ母から生まれた兄弟姉妹」、あるいは「きょうだい」、第二に「同じ国の民。祖国を同じくする者同士」を指します。

同胞をあえて「はらから」と読ませる場合、古語としてのニュアンスが強くなります。せまい意味では同じ母親から生まれた兄弟姉妹ですが、後に意味が広がり、一般に兄弟姉妹をいうようになりました。

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同胞(はらから)の「はら」は「腹」、「から」は「輩」です。輩は「やから」「ともがら」と読み、仲間という意味です。

同胞という漢字を受け入れる前から「はらから」という言葉やその意味概念自体は、古代日本にありました。いわゆる大和言葉の一つです。

「同胞」の語源

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「同胞」の語源の意味を、構成する漢字からみていきましょう。なぜ「はらから」に同胞という漢字があてられたのかを知ることで、この言葉をより理解することができるでしょう。同胞の、「同」「胞」の語源には諸説あります。どちらも有力な説です。簡単に意味を説明したのち、解釈について述べます。

「同」の意味

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「おなじ」です。「ひとしい。ともに。ともにする。一緒に。仲間。みな。集まる。仲間になる。他人と考えや調子を合わせる。」など、同じる(どうじる)ことを意味します。ニュースでいう「同国」など、「その」「当の」といった意味を持つ場合もあります。

もっとも有名な解釈、白川説では、「口」は神器を示す象形であり、「同」は筒形の器を表し、会盟のため人が集まったことから成り立ったとされています。飲みニケーションです。

「口」は「あな」の意で、貫き通してまとめること、とする説もあります。「凡(すべて)」という文字が変形して、「口」と合わせて、全てのものを合わせるという意味から成り立ったという説です。

いずれにしても、多くの人を呼び集めることを意味して、ひいて「ともに」、転じて「おなじ」などの意を表すようになったと考えられています。

「胞」の意味

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「胞」とは、包むという意味と、胎児を包んでいる膜を示しています。胎児を包む羊膜を含む卵膜や胎盤のことを、「胞衣(えな、ほうい)」と呼びます。転じて、「胞」はさらに範囲の広い、 母の胎内も示します。「同胞」はこの意味での使い方です。

また、生物体を組織する原形質という意味もあります。「胞子」「芽胞」「細胞」など、日常での「胞」の漢字の使い方でもっともよく見かけます。

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漢字の「月」は「にくづき」と読み、からだに関する文字を作ります。「肉(にく)」が偏(へん)になるときの形で、本来「月偏(つきへん)」とは別のものですが、現在は同じ字形で混同されています。

「包」は赤ちゃんを妊娠している形です。「にくづき」と「包」により構成されているので、「胞」とは胎児を包む膜という意味を表すことになります。

漢字の成り立ちとその解釈

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漢字は紀元前1300年頃、中国古代文明のあった黄河流域で発祥した、一字ごとに意味がある表意文字であり、イラストを簡略化した象形文字です。

エジプト文明・メソポタミア文明・インダス文明・黄河文明の世界四大文明で使用された古代文字のうち、漢字は現在でも生き残っている唯一の文字です。

韓国やベトナムなど、漢字文化圏内でも日本と中国以外は漢字表記をほとんど廃止しました。それでもなお約15億人が使用しており、文字として世界第2位のシェアを誇ります。

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現存する最古の漢字は、古代中国「殷(いん)」王朝の遺跡から発掘されました。殷では、占いの一種である「卜(ぼく)」の結果を、亀の甲羅や牛の骨に刻む、という漢字の使い方をしていたと考えられています。

甲骨文字、金文、大篆書、小篆書、隷書、楷書と、漢字は変化してきました。現代では楷書が一般的ですが、書道家は隷書も読み書きできます。

漢字研究の第一人者・白川静

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文学博士・白川静氏は、古代漢字研究における第一人者です。甲骨文字と漢字の連続性に注目し、漢字のルーツを探りました。白川氏は、「東洋的なもの」の源流を探るために中国古代文学の研究者となり、体系的な漢字の原義研究に70年以上の歳月を捧げました。

甲骨文字は占いに使用されていたため、白川氏は呪術的、宗教的な漢字解釈を好む傾向があります。「ほぼすべての漢字を神の世界との関係で解釈する」と評されたこともあります。

白川説への批判と新解釈

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漢字や日本語を解釈する上で避けて通ることのできない白川氏の研究ですが、批判もあります。白川氏の漢字解釈は、宗教儀式に使用されていたという先入観で呪術に強引に関連づけようとする、という批判です。神、神意という軸によって体系化した、ともいえますが、特に同じ古代中国学者からは批判的な評価が多くあります。

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文学博士・藤堂明保氏は古代中国語の発音の研究、音韻学を専門とする中国文学者です。漢文学の普及に努め、漢和辞典の精度向上に多大な貢献をしました。字音を重視する「単語家族説」の提唱者です。字の形を重視する白川氏とは、漢字に対する立場の違いから、互いの漢字解釈に批判、反論をしていました。

単語家族説とは

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単語家族説とは、読み方の似ている漢字は、意味も似ているという学説です。例えば令和の「令」。「鈴」「冷」「玲」「零」「嶺」などは音読みの一つは「レイ」、そして「令」を一部に含みます。また「礼」「霊」「麗」「禮」「黎」も「レイ」と読みます。

「レイ」はいずれも、美しいもの、神秘的なもの、偉大なもの、涼しげなもの。同じ音を持つ漢字は、似た意味や、共通するイメージを含みます。

「同」の単語家族

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藤堂氏の単語家族説では、「同」は「ドウ」、「筒」「胴」「洞」「堂」「動」「道」「導」「瞳」などと同じニュアンスを含む近い系統の言葉となります。穴の開いたものの意味とされます。「ドウ」の音を持つ漢字は、それの指し示すもののサイズや形状はさまざまですが「ぽっかりとした一定の空間」を感じるものが多いといえます。

「同胞」の類語

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「同胞」には、「同朋」をはじめとした、多くの類語があります。使い方の違いをみていきましょう。同朋もそうですが、「同胞」の類語の多くは「同」の漢字を含みます。そのため類語との使い分けでは、本質的な意味の違いというより、一般的な用法の違いや、言葉の持つイメージやニュアンスの違いに過ぎない部分もあります。

同国人

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読み方は「どうこくじん」、狭義では「同じ国土に住む民」を意味します。広義には「同じ民族」、同じ血統的・文化的ルーツを持つ人を指します。しかし血統や文化より「国土」に視点が置かれた表現です。今現在の居住地が違っても、祖先が同じ国土に住んでいた必要があります。対義語は異国人、異邦人、外国人です。

同郷人

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「どうきょうにん」もしくは「どうきょうじん」と読みます。故郷が同じ人を指します。出身の都道府県や旧国名が同じである人です。日本人の間でも、出身地が違う場合は同郷人とは言えません。

遠くにあって思う故郷の情景は、東京の都心部に住んだ人と、関西の住宅街に育った人、九州の海辺や東北の山間部に育った人では、全く違う景色となるでしょう。

思い出の原風景を全く共有できない相手は、同郷人とはいいません。そのため海外に住んでいるときなら相対的に多少適用の範囲が広がります。

同志

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同志とは、文字通り「同じ志を持つ人」です。同じ理想や目的・目標を持つ人、同じ主義主張をもつ人を指します。 それは仕事のプロジェクトメンバーかもしれませんし、同じ宗派や、同じ政党に所属している人かもしれません。あるいはマイホームを持つことを目指す親子や、協力して子育てに挑む夫婦も、同志と呼べるでしょう。

同士

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間柄の説明で使います。読みは「同志」と同じく「どうし」なのでスマホでの変換で間違いやすい単語です。「同士」は、身分や境遇、性質などが互いに共通している人を意味します。同じ仲間、同じ種類、同じ性質を持つ、2人以上の人間です。

たとえば、いとこ同士、男同士、恋人同士、学生同士、仲間同士、職人同士などです。ほかの同胞の類語たちとは違って、単体で使用することは通常ありません。

同輩

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読み方は「どうはい」です。勘違いされやすいですが、同輩は必ずしも同い年や同期とは限りません。場合によっては年上も年下も先輩や後輩も同輩に含まれます。同輩とは、地位や立場、古くは身分が同じくらいの人を指します。

同輩の一般的な類語は「同僚」です。これは仕事、職場の同輩を指します。つまりお互いの「立場」が「相対的に」同程度のとき、その相手は同輩です。同胞と同じで、ほかと差別化される同属性の相手を意味します。

先輩後輩が意識されるときには、同期のみが同輩ですが、上役や師匠、外の人と比べるなら、先輩後輩も同輩となるでしょう。

ブラザー

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英語の「brother」は親しい男性を意味します。海外ドラマなどではおなじみの表現です。意味は「兄弟、同胞、同僚、同士、同志、相棒、親類、縁者、組合員、同国人、同胞、親友、仲間、信徒、平修士、修道僧、助修士」です。

同胞やその類語の意味をおおよそ網羅している単語といえるでしょう。語源的にも、使い方としても、ブラザーと同胞は類語の中でも、きわめて近い言葉、似た概念です。

同胞もブラザーも、現代日本での使用が気恥ずかしい、という意味でも似ています。同胞は大仰に、ブラザーは軽薄に聞こえる危険があります。

「同胞」と「同朋」の意味の違い

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「同胞」と類語「同朋」の意味の違いを説明します。パソコンなどで「どうほう」と打ち込むとだいたい「同胞」「同朋」が出てきます。「この場合、どちらを使うことが適切なのか?」と今後迷わないために、使い分け方を徹底解説しておきます。

「同朋」とは、「肩を並べる同僚。同門の仲間。同類の集まり。友達。とも。仲間。対等に肩を列べる人物。みかた。自分たちを利する人物。」を意味します。

「同朋」は「どうぼう」と読む

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「同朋」は「どうぼう」または「どうほう」と読みます。単語家族説に従い「坊」「傍」「房」などに通じる意味を持つか否かで使い分けられます。「朋」は「友」と同じ意味の漢字です。「朋」は、貝貨(昔のお金)を五つ一組につないで2組み列べた物、数個の貝を紐で貫いて二筋に並べた様を表現した象形文字です。

「同朋」は仲間・友人の意味

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「同朋」は、現代においては、おおよそ仲間・友人の意味です。同朋の類語には朋友があります。歴史的には、もともと仏教用語であり、転じて幕府の役職名にもなりました。

「志を同じくしてともに仏道を修める仲間」「室町・江戸時代、将軍・大名に近侍して雑務や諸芸能をつかさどった僧体の者」を指しました。

役職としては、室町時代には一般に阿弥(あみ)号を称し、一芸に秀でた者が多くいました。今でいえば容姿端麗で多才な、政治家の私設秘書(※ただし坊主)です。

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江戸時代には幕府の役職の一つとなり、若年寄(幕府の重役)の支配下にあって、江戸城に出勤してきた大名(地方の殿様)の案内・着替えなどの雑事をつとめた僧侶です。同朋衆や童坊ともいいました。

裃(かみしも、出勤用の正装)は一人で着脱できず、介助がなければトイレにいけませんでした。そして(今でいう皇居の謁見室や国会議事堂の中である)お城の中心部には自分の小姓(信頼する若手キャリアの私設秘書)は連れていけません。

「同胞」の使い方

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「同胞」という言葉の正しい使い方について考えてみましょう。言葉は使ってこそ身になります。「同胞」、とても非日常的な単語ではありますが、「これはペンです」より使用頻度は高いでしょう。3つ例文を示して、類語との互換性も含めて「同胞」の具体的な使い方の解説をしていきます。

例文:私達はこれからも同胞です

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「私達はこれからも同胞です」という場合の同胞は、仲間やファミリーといった類語に言い換えられます。日本の文化からいって、実の兄弟姉妹相手に宣言するのは不自然なので、必然的に、縁が切れる可能性のある赤の他人に対して使うのが自然です。血は水よりも濃い、それに近しい関係を維持していこう、という意味合いが感じられる文言です。

例文:同胞がいるのは心強い 

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「同胞がいるのは心強い」という場合の同胞は、シチュエーションによって同郷人や同輩といった類語に言い換えられます。懐かしい気配のする同郷人、厳しい部活の上下関係の中での同級生、職場でともに成長してきた同期入社などが想定されます。

同胞は、心細い場面で特にありがたい相手です。日本国内で使うのは少々違和感を感じますが、たとえば一緒に海外進出のための支店に栄転した、上記のような関係性の相手に使うならとても実感のこもった言葉となるでしょう。

例文:同胞と力をあわせ乗りきろう

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「同胞と力をあわせ乗りきろう」という場合の同胞は、同志と言い換えられます。シチュエーションによってはほかの同胞の類語でも対応できる可能性がありますが、基本的には、力を合わせて同じ目的にのぞむ同胞、「同志」に対してのセリフです。

とても深刻な状況での使用が想定されます。郷土の経済や自然の危機、巨大企業の大型商業施設オープンやダム建設反対などの決起集会で使いましょう。劣勢にあるときこそ、「同胞」と呼びかけると効果的です。

同胞は兄弟姉妹や同じ国の民という意味!

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同胞は兄弟姉妹や同じ国の民という意味です。類語と比べると、兄弟姉妹というニュアンスが強い言葉です。語源の意味からして、ほかと差別化される身内、を意味する少々排他的な含みがあります。

同胞という言葉は、通常は、困難な場面で使用します。そのため、少しばかり穏やかではない印象も与えるため、普段使いはしないほうが良いでしょう。戦争映画などではしばしば登場するので、意味をおぼえておくと調べる手間が省けて便利です。

吉野さやか
ライター

吉野さやか

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