慕情の意味・読み方・使い方をレクチャー！恋情との違いや言い換え方も紹介！

慕情の「慕」の意味は思いを寄せるとか慕う（したう）という意味で、音読みは「ぼ」で訓読みは「したう」「しのぶ」という読み方があります。

「情」とは心や気持ちの動きという意味があり、音読みは「じょう」「せい」で、訓読みは「なさ（け）」「こころ」「おもむき」ですが、「こころ」と「おもむき」の読み方はあまり使われません。そして慕と情二つを合わせてぼじょうと読みます。

その慕と情が合わさって熟語の慕情になるのですが、一文字ずつの意味が総合され「慕わしい気持ち」や「懐かしく慕う」という意味で、慕うというのを解説すると、惹（ひ）かれていく心の様子を表す意味があります。気づかない間に気になって仕方がない状態です。映画や楽曲のタイトル、歌詞などに使われたりもしています。

「慕情」という言葉の意味を辞書やコトバンクなどで検索すると、「慕わしく思う気持ち」という意味が出て来ます。人を慕うとか、あの人を慕わしく思うなどと使いますが、意味を分かって使っているでしょうか。

愛おしいとか狂わしいなどと同じように使っている人もいるようですが、これは少し意味が違います。確かに愛する人を思う気持ちが慕わしいという意味ですが、男女の間だけで使われる言葉ではないのです。故郷を慕わしく思う場合や、愛車に慕わしい気持ちを持つとか、いくつになっても娘への慕情は計り知れないなどと使う時もあります。

慕情の使い方で、もちろん異性に対して恋い焦がれる場合に使われることもあり、愛しい人が遠く離れた所に行ってしまった場合などです。少しでも近くにいたい気持ちを表わす意味があり、好きという気持ちが心の中から溢れ出るような状況を慕情と表現する意味もあります。言葉で語り尽くすというより、心の中で思い描くという意味の方が適切でしょう。

「ぼじょう」と読んで「慕情」と書きますが、慕と情は互いに音読みで、日本では昔から歌の歌詞やタイトルにも慕情という言葉が印象的に使用されています。

映画のタイトルにもあり、アメリカ映画の慕情は、アメリカの従軍記者と女医の何とも言えない切ない恋模様でした。慕情というタイトルが見事にマッチした映画でした。また、「雨の慕情」という歌もあります。八代亜紀の「雨、雨、ふれふれもっと降れ」というフレーズが有名な歌詞がありますが、全体が慕情という意味の分かる歌詞でしょう。

映画や歌のタイトルを慕情にした意味は、大体映画の内容や歌詞の流れで想像が出来ますが、文章では慕わしい気持ちを表現するという意味を持ちますから、名詞で使う事が好ましいでしょう。前に形容詞を使う事が多いです。

「慕情を」「慕情に」という使い方も出来ますし、「～慕情」いう使い方も出来ます。また、慕情をグーグル翻訳にかけると「Lyrical」と出て来ます。しかし文章の翻訳では他にも色々な単語を使い分けていて例文などでは、言い換えのような使い方があり、「affection」や「longing」などが使われています。では日本語の例文を見てみましょう。

慕情の中でも意味によって文章で使い分けをします。例文をいくつか並べてみますので、慕わしく思う気持ちで慕情という言葉を表現する意味が分かるでしょう。

「彼女の気持ちは次第に慕情へと変化していきました」とか「都会暮らしに満足していると言い切る彼女の故郷を慕情は隠し切れてはいない」、「素晴らしい作品が完成したのもひとえに彼女の作品への慕情が強いからだろう」、「この風景はかつて我が家の慕情を感じて涙がこぼれる」などが慕わしい気持ちを意味する例文の一部です。

次に、慕情でも愛しい人を恋い慕う気持ちでは意味は同じでも使い方に少し変化があります。その例文を見てみますが、恋い慕う気持ちで慕情を使った場合の例文には必ず意味を読み取れるはずです。

「あなたへの慕情は、昨年の秋から続いています」とか「あの人の声や顔を見れば、彼女への慕情は手に取るように分かります」、「突然降って湧いたような慕情に困惑している自分がいる」、「いつまでも届かぬ慕情が切なさを倍増させる」、「彼が海外から戻るのを決めたのは、あなたへの慕情があるからでしょう」などが異性に対する意味の例文です。

慕情と同じように捉えられがちな言葉で「恋情」というのがあります。読み方は「れんじょう」です。「恋情」とは、恋い慕う心や恋心という意味がありますので、慕情の意味とも重複します。ただ恋情の方が慕情よりも強く恋心を表現出来る意味があります。慕情の中にも異性を慕う意味がありますので、恋情と同じような使い方も出来ます。

先にも述べましたが、恋情の意味は恋い慕う気持ちを意味しています。その慕う気持ちを言葉で切々と語ることの出来るのが恋情です。慕情を言葉で語ることは難しく心の中でイメージしているものです。慕情は態度で恋情は言葉と解釈すると意味も分かります。そして、恋情の意味は男女の間のみに使われる言葉ですので、故郷などには意味が通じません。

恋情はまさに恋心です。愛しい人を思う気持ちを延々と語れるくらいの意味を持っています。恋情は気持ちの大きさには関係なく、異性に対する思いが募ると理解しましょう。慕情に比べて比較的近くにいる人に対して使う言葉でもあります。例文では、「恋情すら感じなかった」とか「恋情を理性で抑えようとする」などが使い方の例文の一部です。

都会に出て忙しく毎日を送る日々の中で、ふと故郷を思い出し懐かしく思う事を故郷への慕情などという使い方をします。また、離れていたり死別した家族などに対するもので、例文では「何年も前に死別した父への慕情」とか、「故郷に残した母への慕情」などという使い方をします。基本的に手の届かないものに対する愛おしさなどを意味します。

慕情の言い換えの言葉や類語もいくつかあります。言い換えると使い方や意味が微妙に違ってきます。その時の気持ちの度合いや思いの重さなどによって使い分けします。言い換えはどれでも良いように感じますが、意味を把握して使い分けると、より強調されます。

慕情という言葉には言い換えや類語が本当に多く存在します。ざっと考えるだけでも多数出て来ますので、実際には限りなく多くの言い換えや類語があるのでしょう。従ってここでの言い換えは、憧れ・憧憬 、思慕、想い、情景、望みに絞ってそれぞれ個々に意味も含めて解説していく事にしましょう。

慕情の言い換えの、憧れ・憧憬の読み方は「あこがれ」・「しょうけい」または「どうけい」です。理想について現実になれば嬉しいという思いや、好きな人に対して自分は不釣り合いだと思っている時の相手に対する気持ち意味して憧れと言います。

憧憬に関しても、憧れと同じ意味ですが、憧憬の「しょうけい」と「どうけい」の読み方が違うのは、「しょうけい」の方が正式で「どうけい」は慣用読みと言って、正式ではないけれど一般的によく使われる読みです。なのでどちらも間違いではありません。憧れ、憧憬どちらも手が届かないのではないかという前提で対象物や対象人物に抱く意味を持ちます。

思慕の読み方は「しぼ」です。最も慕情と近い存在の言葉でしょう。慕わしいという意味は同じで、他には故郷や家族に対して思慕を使う事もあります。誰かを愛おしく思うとか恋しいく思う場合にも思慕という使い方があります。慕情の意味はどちらかというと漠然とした気持ちを表しますが、思慕の意味は率直に気持ちをストレートに伝えたい時に使います。

想いの読み方は「おも（い）」で、「思い」とは少し意味が違って感情的な表現なのです。常用外漢字ですから、公文書にはあまり使われません。「想」という漢字の熟語を見てみると分かりますが、想像、構想など物事を考えた事に使われます。歌の歌詞などではよく使われる詩的な漢字ですが、具体的に心の中にイメージを描く感情の意味があります。

「じょうけい」と読む「情景」は、物事が良くも悪くも心に記憶として残る場面の事を意味します。感情や心が激しく動かされる強烈な場面のことも意味します。

普段何気なく見ている風景が一変したりと、リアルな場面でも使われます。映画などの美しい場面で穏やかな気持ちになったら、それは情景で左右された意味になります。つまり情景とは風景や景色に感情が入って心が揺さぶられたらそれは情景になりますので、慕情とも似ていますから言い換えに使えます。

望みの読み方は「のぞ（み）」で、良く使う言葉ですが、意味はそうあれば良いとか期待するなどです。自ら期待する時にも使いますが、他人や世間から期待される場合にも使われます。望みは希望とも言い換えれます。期待する心のことで、そうなりたいという意味もあります。良い結果であってほしいという意味です。

慕情というタイトルの曲は多数あります。慕情単体でタイトルに使われる事もあれば、慕情を名詞として奥飛騨慕情や雨の慕情などというタイトルにもなっています。タイトルに慕情と付いているという事は、歌詞も慕情に関連する歌詞であるという意味です。具体的にサザンオールスターズと中島みゆきの曲の歌詞から解説してみましょう。

サザンオールスターズの慕情は、「世に万葉の花が咲くなり」のアルバムの5曲目や、アルバムバラッド3～the album of LOVE～の13曲目に入っている曲で、オリコンミュージックストアやレコチョク、dミュージックでの試聴が出来ます。

この曲の結論から言うと失恋ソングです。ここでは「胸に残る慕情」という表現が使われています。嫌いじゃない彼女と別れた後に楽しかった頃を思い出している切ない歌詞です。桑田佳祐という人は、失恋ソングでもその時その時の感情を言葉にすることに絶妙なセンスを持っていますので、慕情という言葉が歌詞に自然に入ってきて違和感はありません。

中島みゆきの歌う慕情は、2017年に始まったドラマ「やすらぎの郷」の主題歌になりました。この慕情の歌詞には「限りない慕情」というフレーズが出て来ます。

大切な人のことを後回しにしてしまって後悔している内容です。歌詞から想像すると彼はもう他界しているのかも知れません。ここで使われている慕情は、特定の人に対する恋愛の慕情です。「もう一度初めからあなたと歩き出せるならあなたに尽くしたい」というフレーズが慕情というタイトルを象徴しています。

1955年に公開された有名な実話に基づいた映画「慕情」は、主題歌もヒットし、登場する男女はイギリスと中国のハーフの女医を演じるジェニファー・ジョーンズと、その相手役の男性、アメリカ人の記者ウィリアム・ホールデンの切ない恋模様を描いた作品です。

不倫関係とはいえお互いに真剣に恋に落ち、楽しい時間は束の間で、戦争が2人を引き裂き手紙で淋しさを紛らすという慕情というタイトルに相応しいシチュエーションです。この手紙をやり取りをしている時に彼の戦死を新聞で知り、戦死した彼を慕わしく想いながら仕事一筋と決意した彼女の姿に慕情がイメージされます。

この月島慕情というのは、2009年11月10に出版された浅田次郎の、7作からなる短編小説の中の最初に書かれている小説です。表題にもなっている「月島慕情」は愛しい人に見受けされることが決まった吉原の花魁（ミノ）が真実を知ってきっぱりと身を引いてしまうと言うお話です。

この小説のどこが慕情の意味を持つのかというと、ミノが一般の人と所帯を持つ予定の日まで花魁をしていた大門を自由に出入り出来るため、引き取ってくれる男性に内緒で家を見に行った時に、男性に妻子がいたのに気づき、ミノが決意した事を意味しています。

自分はまさか身請けしてくれる男性が妻子持ちとは知らずにいた事に、ショックを受けます。そして、愛しい男性ゆえに身を引く決意をしたことで慕情に繋がる意味を持ちます。「この場を遠のく事があなたとの慕情を永遠のものにするでしょう」という意味を込めて、関西で落ち着く決心をしたミオの月島慕情です。

これまで慕情について見てきましたが、この慕情という言葉は、恋愛だけでなくかなり広い範囲の対象物があることが分かりました。慕う気持ちというのは、必ずしも人に対してではないという事です。似たような言葉もありますが、言い換えたりしながら上手く使い分けて、心や気持ちを正しく表現出来るようになりたいものです。