「圭」の漢字の意味
漢字には形や他の言葉から意味を想像できるものがあります。しかし「圭」は土を二つ重ねただけの形で、「圭」が使用されている言葉も、人の名前以外ではあまり見ません。そんな「圭」には、形からは想像できない意味があり、命名の際に深い気持ちを込めることができるでしょう。
また、子供が成長した時に名前の由来を尋ねられることもあります。子供に尋ねられた時しっかり答えるためにも、名付けに使用する漢字を知ることは重要です。まずは命名する際に知っておきたい、意外性と学びに満ちている「圭」の持つ意味4つを紹介していきます。
意味①王族の持つ装飾品
「圭」の意味は古代中国の儀礼に用いられた玉器に基づきます。「圭」は権威を象徴する玉器であり、天子が諸侯に領土を与える際、権威のしるしとして与えていたものです。天子とは皇帝や天皇の呼称、国の王様のことです。
「圭」は天子が持つ玉器を示す漢字のため、王族の持つ装飾品としての意味があります。諸侯は天子から「圭」を与えられる位の高さを認められた貴族のことです。与えられた領土内において、天子にかわる振る舞いが許されました。
天子が諸侯へ与える階級は5段階ありました。公、侯、伯、子、男、の五等爵です。中でも「圭」が与えられるのは、公、侯、伯、の3階級のみ。子、男、の2階級にも信任のしるしは与えられましたが、それは「圭」とは異なる玉器です。
また古代中国の歴史の中で、子、男、が無くなり公、侯、伯、の三等となった時期があるとされています。このことからも「圭」を与えられる三等が、位の高いしるしであったことが分かります。また「圭」は祭祀や朝廷への招待券のようなものとしても使用されました。
玉器とは礼器の一種で、軟玉という硬度の低い翡翠を用いた装飾品を指します。更に玉器にも種類がある中、「圭」は特に権威を象徴するものとして用いられました。古代中国で爵位のしるしや儀礼に用いられた玉器を意味する「圭」は、高貴さを連想させる意味付けの命名にも良いでしょう。
次の項では天子からの贈り物とされた「圭」が、どのような形だったかを紹介します。この形は「圭」の意味の由来にもなっています。
意味②先のシャープな形のもの
「圭」は上方が三角に尖り、下方は長方形の形をした短冊形の玉の板です。上方を三角に作り先端を尖らせていたことから、先の尖った「圭」の形をしたものとして、漢字自体が先端がシャープな形のものという意味を持つようになりました。
「圭」が用いられている単語に圭角があり、この言葉も玉の尖った部分、玉の角という意味を有します。性格や言動に鋭さがあることにも例えられ、圭角が取れる、という鋭さが取れることを表現する言葉があります。この言葉は、円満な人柄を示す意味で使用されます。
意味③凛としているさま
先の尖った形の意味が転じ、すっきりしたさまという形容詞としての意味も「圭」にはあるのです。更に、正式の場では手に持つことで貴族のしるしとされました。天子と諸侯が重要な儀礼を執り行う際の、重厚な空気感をイメージさせるものとして命名に使用できます。
凛としているさまというのは、態度、様子が引き締まっている佇まいのことです。「圭」という漢字の形も、土が二つ重なっていることから高さが印象付けられ、背筋を伸ばし立つ姿勢が連想でされます。そのことからも「圭」は凛としているさまという意味を受け取れます。
意味④単位
古代中国の重量と容積の単位に「圭」は使用されていました。重量は10圭が1合、10粟が1圭、容積は64黍が1圭です。日本では尺貫法と呼ばれ、東アジアで広く使用されていた長さと面積などの単位系の1つにも「圭」があります。現在、1圭という読み方の単位は、聞き馴染みがありません。
「圭」は尺貫法では体積の単位として使用され、お米1粒分を下回る量の単位として、孫子算経という中国の算術書と塵劫記という日本の江戸時代の算術書で確認できます。
1圭は1勺の1000分の1の単位、メートル法換算では約18マイクロリットルであるため、「圭」を日常生活で単位として目にすることはないでしょう。
「圭」の読み方
「圭」の漢字は、ケイという読み方しか印象がないのではないでしょうか?ケイという響きはしっかりした印象や凛とした印象を受けます。「圭」の漢字自体も直線的で、ケイという読み方通りの印象でしょう。ケイが一般的な読み方として認知されている「圭」、実は他にも読み方があるのです。
ケイもいい響きですが、「圭」のもう1つの読み方を知っていると名付けの際にバリエーションが増え、更に想いや願いを間違いなく込めることが出来るようになります。
ケイ・たま
音読みでケイと読む「圭」は、訓読みでたまと読みます。先に紹介した、天子があたえる先の尖った玉から来る読み方です。この古代中国の玉はギョクと読むのですが、日本にはけん玉やお手玉などたまと読むものがたくさんあるため、訓読みのたまとしての印象が強いでしょう。
そのため「圭」にもたまの訓読みがあります。真面目な印象を与えるケイに対し、訓読みでたまと読んだ場合、丸いものや可愛らしい猫などが連想され、柔和な印象を与えることができるでしょう。
同じ「圭」の漢字を使用する名前でも、ケイとたまで与える印象は真逆。ケイと読む名前が多く広まっている分、たまという読み方はあまり見かけず、ささやかな特別感を与えられます。
「圭」の由来
土を二つ重ねたシンプルな形をしているこの漢字、意味は王族の持つ玉器や凛としたさま等でした。玉器は軟玉を用いて作られる装飾品です。軟玉とはネフライトという翡翠のなかでも低い硬度のもの、これも土ではありません。
「圭」の漢字の他の意味にも、シャープな形のもの、凛としたさま、単位、と土は出てきていません。古代中国が意味の由来である「圭」です。そのことを意識すると、なんとなく由来の想像もできるでしょうか?ここでは「圭」に土の漢字が使われている、その由来を紹介します。
土を2つ重ねる事で他よりも高い様子
この漢字は会意文字と言い、六書にある会意の方法で作られています。既存の文字と意味を組み合わせ、新たな文字としての意味を表す方法です。土を2つ重ねることで、土を更に盛り上げた様子を示しています。
土を盛って円錐形を作り神様に領有を告げたことに由来し、他よりも高い様子を表しているのです。この先の尖った円錐の形は、天子の与える「圭」の形の特徴とも一致します。玉である「圭」以前の、神様に領有を告げるために土を盛って作ったものが、「圭」の漢字の由来になっているのです。
「圭」を名前に命名する時のポイント
ここまでで「圭」の持つ意味、読み、由来と子供の命名に使用できるメリットを紹介してきました。実際に名付けに使用する場合、どんなことに気を付ければいいでしょう。一文字で十分良い意味をたくさん持ち、好感を与えることができる漢字「圭」の良さを、活かすためのポイントを紹介します。
組み合わせる文字が重要
「圭」の王族の持つ装飾品という意味。この「圭」は人に与えるものであったという歴史があるため、他の漢字と組み合わせることで意味の補強として使用できます。シャープな形のものという意味も、凛とするさまという意味も、他の漢字と組み合わせることでその意味は広がるでしょう。
また姓名判断で字画を気にするのも大切です。「圭」は一文字6画で地格の結果が良い漢字ですが、苗字次第では総画の結果が変わります。「圭」の漢字の良さを活かすためにも、組み合わせる文字はとても重要です。
「圭」の画数が与える影響
「圭」の漢字が良い意味を持っていて、他の良い意味を持つ漢字と組み合わせても、画数の相性が悪いとその良さをきちんと引き出し、活かせないことがあります。様々な意味を考えて大切な気持ちと願いを込める名前、悔いの無いように細部までこだわると、その分思い入れも強くなります。
「圭」の漢字の画数が与える影響と、他の漢字との画数の相性も確認しましょう。必ず紹介する画数になる漢字でなければいけないということはありませんので、組み合わせる漢字は吉画数を参考に候補をお探しください。
良い影響を与える吉画数
「圭」一文字の6画は吉画数で、この画数は性格に社交的な影響を与えます。名前は地格と呼ばれ、その名前を持つ人の性格に影響するものです。「圭」は一文字でも良い影響をもつ漢字ですが、名前が一文字だと苗字によって人運、助運が吉画数にならない場合もあります。
そのような場合には、二文字や三文字と相性のいい画数を組み合わせることで、全体の画数を調節することができます。「圭」と組み合わせる漢字の総画数は、7画、10画、17画等が最も良い理想画数です。この画数から「圭」の6画を引いた画数の漢字を候補にすると良いでしょう。
「圭」の付く名前の例【男性】
まずは男性の名前の例から。「圭」は音読みも訓読みも性別を気にせず使用できる漢字であるため、組み合わせによって名前が与える印象は大きく異なるでしょう。どんな子供に育って欲しいか、どんな印象を与えたいかを考えながらご覧ください。
「圭」の漢字の読みは、音読がケイ、訓読がたま、の2つだけですが、人名に使用する際の読みはこれに縛られません。名付けでの特別な読み方もあわせて紹介します。
①圭佑
ケイスケと読むのが自然ですが、「圭」は名前でキヨと読むこともある為、キヨスケと読ませることもできます。佑はたすけるという意味を表す漢字です。思いやりや優しさといったイメージを持っています。ケイスケという響きは、計や慧を連想させ、賢さやスマートな印象を与えます。
キヨスケは、清いの連想から誠実な男性像をイメージさせるでしょう。佑はにんべんに右という作りで、「圭」と組み合わせても覚えやすく説明も簡単です。
「圭」の持つ凛としたさまやシャープな形の意味と、佑の持つ思いやりや優しさの意味を組み合わせることで、勇気をもって人助けできるような、人格者への願いを込めることができます。
②圭広
たまひろ、もしくはよしひろと読むことができます。「圭」の特別な読みを使用する名前です。広いという漢字は命名に使用する際、ひろがるという意味に様々な願いを込めることができます。
たまひろと読む場合、マ行とラ行の発音は丸く柔らかい印象を与えるため可愛らしく、また口を開く母音の多さがおおらかな印象を与えます。よしひろと読む場合、良い、と連想し、善良な人間性を印象付けるでしょう。
「圭」の天子が与えるものという意味と組み合わせ、広い心を持ちたくさんの人に恵みを与えられる子に育って欲しいという願いや、王様のように名前を広く知られる立派な人に育って欲しいという願いを込められる名前です。
③圭郎
ケイロウやよしろうと読めるこの名前は、男性的なイメージを強く与えることができるでしょう。郎には清らかなおとこ、若い男性という意味があります。女性が恋人の男性を呼んでいた言葉が転じ、男子を呼ぶ美称でした。古くから男子の名前に使われています。
ロウの母音のおうが、王様のような力強さを連想させます。名前終わりのうの響きで口をすぼめることにより与えるのは、物静かで知的な印象です。ケイロウと読む場合、発音が同じ敬老の影響で、老人に優しそうな人柄も表せます。よしろうと読む場合も良しや善しを連想させ、好ましい印象です。
頼りになる男性をイメージさせるこの名前は「圭」との組み合わせで、女性に優しく誠実な男性に育つようにという願いを込めるのに適します。
「圭」の付く名前の例【女性】
女性の名前の例では男性名では紹介しなかった「圭」の名前の特別な読みと、漢字を三文字使用する名前も紹介します。三文字の男性名もあり、最近では男性らしさや女性らしさにこだわらない名付けも増えています。
自分の子供の名前にどんな願いを込めたいか、どんな名前で自分の子供を呼びたいか等、想像を膨らませながらご覧ください。
①沙也圭
日本人女性らしい、さやかという名前。この例の名前では「圭」はかという読みになります。さやかは色々な漢字で書かれる名前です。例で紹介している「圭」以外の漢字、沙の意味は砂、水際、水の中でより分ける等。サの響きは空気を含み、優しく軽い、または儚いといった印象を与えます。
也は断定や感嘆等の助字で、助動詞としての意味を様々持っています。さんずいを使用した沙の漢字は水のイメージを与えます。「圭」とこの二つの漢字の組み合わせでは、砂や水のような自由な流動性と、清らかな水辺に立つ凛とした女性の想像を描けます。
物腰は柔らかく芯は強い、そんな女性に育って欲しいという想いを込めることができます。さやかという響きは大人びていますが、子供時代はさっちゃんやさやちゃんと可愛い愛称で呼べる名前です。
②圭子
子は女性名の印象を強めます。命名のバリエーションが増えた昨今の使用は減っていますが、子も素敵な意味を持っている漢字です。親の産んだ子、自分の子供とみなすという意味は、我が子への大切さを如実に表してくれるでしょう。子は、学問があり人格の優れた人の名につける敬称でした。
シンプルですが、その分書きやすく説明もしやすい組み合わせの名前です。ケイコとたまこどちらで読むこともできます。ケイコだと真面目な印象が、たまこだと可愛らしい印象が強くなります。
この名前は強い親子愛と、学び得た学問を人に分け与えられる子になってほしいという願いを込めることができます。男性名で紹介した名前の特別な読みを使用して、よしこ、きよこと読むことも可能です。「圭」と組み合わせることで、子の漢字の持つ意味は素敵な贈り物になるでしょう。
③悠圭里
こちらも「圭」をかと読む名前です。女性名に「圭」を使用する際、かと読ませると候補にできる名前が増えます。ゆかりという言葉の意味は、人やもの同士の繋がり、所謂縁です。もう1つ古今和歌集の短歌からくる紫色の意味もあり、この名前はとても趣深く雅やかで、上品さを持っています。
ゆかりも様々な漢字で書くことができます。この例で使用している悠は、時間や空間がどこまでも続くさま、気分がゆったりしているさまという意味です。里はいなかやみちのりといった意味があり、距離の単位としても使われています。悠も里も、どちらも広い印象を与える字です。
「圭」の凛としているさまという意味で広い場所に咲く花のような映像が出来上がり、印象が際立ちます。大和撫子を想像させる女性の名前に、おおらかさと凛々しさの想いを込めることができます。
「圭」は凛としていることを意味する
「圭」の漢字の意味、読み方、由来を紹介し、それを踏まえて命名の際のポイントと例を紹介しました。古代中国に意味の由来がある「圭」は現代の日本人の名前としても馴染み深く、凛としているという意味や儀礼に用いられた玉器という意味の高貴さは、命名に使用しやすい漢字と言えます。
子供の名付けの際は是非こちらの記事を思い出し、「圭」の意味と読み方、由来を大切な子供への願いに込めた名前の命名をご一考ください。