ご所望の意味・読み方とは
所望の読み方は「しょもう」です。「しょぼう」という読み方ではないため、読み方に注意しましょう。所望は「望む(のぞむ)」と「所(ところ)」からなる、「自分は望んでいるところ」を言います。
「所望」はビジネスシーンで使われることが多いため敬語表現と思われがちですが、「所望」名詞表現であり一般的な言葉であるため、敬語表現ではありません。「所望」の敬語表現は「ご所望」です。
「所望」という言葉にはどんな意味があるのでしょうか。どういうシーンで使えば良いのでしょうか。ここでは「所望」の意味とシーンごとの「所望」の使い方についてご説明します。
所望の意味①ある物がほしい
「所望」という言葉には2つの意味があります。1つ目の意味は「ある物がほしい」です。前途でも触れたように、所望は名詞であり一般的な表現なため、ある物がほしい際に「所望します」と使います。
例えばある資料が欲しいとします。その際に「資料を所望します」と使います。「所望します」という言葉は、「ください」よりもかしこまった意味合いを持つ表現になります。
そのため「ください・ほしいです」よりも「所望」という言葉は、「相手を尊重しながらほしい物を伝えている」という意味合いがあるため、相手の印象が変わります。
よって、相手を尊重しながら丁寧でかしこまった意味合いを持つ表現で「ほしい物」を相手に伝える言葉は、「所望」と覚えておくと良いでしょう。
所望の意味②こうしてほしいと望むこと
「所望」の2つ目の意味は、「こうしてほしいと望むこと」です。ある物がほしい場合と同様に、「こうしてほしいと望んでいる」ときに「所望します」と使います。
例えばデータをパソコンに入力してほしいとします。その際に「データの入力を所望しています」と使います。この場合の「所望します」という言葉は、「していただけませんか」よりもかしこまった意味合いを持つ表現になります。
そのため「してほしいです。お願いします」という言葉よりも「所望」という言葉は、「相手を尊重しながらこうしてほしい」という意味合いがあるため、自分がこうしてほしいと望んでいるときに「所望」という言葉を使うことで相手への印象が変わります。
よって、相手を尊重しながら丁寧でかしこまった意味合いを持つ表現で「自分が望んでいること」を相手に伝える言葉は、「所望」と覚えておくと良いでしょう。
ご所望の読み方
「ご所望」の読み方は「ごしょもう」です。「ご所望」は「所望」という名詞表現に接頭語の「ご」を付けた、敬語表現になります。「ご所望」という言葉は、ビジネスシーンでは目上の人に対して使います。
敬語表現は相手を尊重する意味合いの表現です。しかし言葉の意味を理解していても、言葉を使えなければ敬語表現が成立しません。場合によっては、「不遜」と捉えられてしまいます。そのため「ご所望」の言葉の意味だけではなく、「ご所望」の読み方にも注意しましょう。
ご所望は所望の敬語表現
前途でも述べたとおり、「ご所望」という言葉は敬語表現です。敬語表現とは、社会的関係を円滑するために身分に応じて態度をあらわす言語表現です。
ビジネスシーンで使われている敬語表現は、丁寧語、謙譲語、尊敬語の3種類あります。丁寧語、謙譲語、尊敬語では言葉の意味は変わりませんが、言葉の使い方が変わります。
「ご所望」は丁寧語、「ご所望」に「いたす」を加えると謙譲語、「ご所望」に「される・なさる」を加えると尊敬語となることを覚えておくと良いでしょう。
ご所望の使い方
「ご所望」の使い方は2通りあります。1つ目は目上の人がある物がほしい場合、2つ目は目上の人が何かを望んでいる場合です。
目上の人がある物を欲しがっている場合は「ご所望される・ご所望なさる」、目上の人が何かを望んでいる場合も「ご所望される・ご所望なさる」と使います。
一方、自分が目上の人にある物を欲しい場合は「所望する・所望いたす」、自分が目上の人に何かを望んでいる場合も「所望する・所望いたす」と使います。
「所望」という言葉も、尊敬語、謙譲語、丁寧語によって受け手への意味合いが違ってきます。そのため目上の人に対しては「ご所望される・なさる」と使う、自分自身に対しては「所望する・所望いたす」と使うと覚えると良いでしょう。
ビジネスシーンでよく使う
「ご所望」という言葉は、敬語表現であるため自分より身分が高い人に使われます。現代の日本は身分制度社会ではなく、民主主義社会であるため「ご所望」はビジネスのシーンでよく使われる言葉です。
「ご所望」と使うビジネスシーンは、「目上の人にほしい物を尋ねる」ときと「目上の人の望みに対応できず謝罪する」ときです。「ご所望」という言葉は場面で意味合いが違います。
「ご所望」という言葉をどのように使い分ければ良いのでしょうか。ここでは「ほしい物を尋ねる」使い方と「望みに対応できず謝罪する」使い方についてご説明します。
ほしい物を尋ねる使い方
まず、ほしい物を尋ねる使い方についてみていきましょう。目上の人に対して「ほしい物」を尋ねるときに、「ご所望はなんですか」と使います。
「ご所望」という言葉は敬語表現であるため、目上の人からほしい物を尋ねられたときは「所望いたします」と使います。そのため「ご所望」は目上の人に対して使う言葉、「所望」は目上の人にほしい物を尋ねられたときに使う言葉と覚えましょう。
望みに対応できずに謝罪する使い方
次に、望みに対応できずに謝罪する使い方についてみていきましょう。目上の人の望みに応えられないときへの謝罪の言葉として「ご所望」を使うことも多くあります。
ビジネスシーンでは、目上の人が望んでいることに対応できずに謝罪する意味合いとして「ご所望」という言葉は多くの場面で使われています。
よく使われるビジネスシーンは接客応対です。お客様が望む品物が無かったときに、「ご所望の品を切らしていて申し訳ございません」と使います。また、目上の望みに答えられないときに、「ご所望におこたえできず、まことに申し訳ございません」と使います。
「ご所望」という言葉を使った謝罪は目上への謝罪であるため、目上の人から謝罪されたときは「ご所望」と「所望」という言葉は使わないように注意しましょう。
ご所望の例文
「ご所望」という言葉は、どういう使い方がされているのでしょうか。ビジネスの現場では、「ご所望」という言葉の使い方が5通りあります。その使い方とは、「ご所望の品・方」、「ご所望でしたら」、「ご所望とあらば」、「ご所望の場合は」、「ご所望なさる・される」です。
「ご所望の品・方」、「ご所望でしたら」、「ご所望とあらば」、「ご所望の場合は」、「ご所望なさる・される」は場面ごとで意味合いが違います。
そのため、言葉の使い分けについて理解しておく必要があります。ここでは、それぞれの使い方についてご説明していきます。
ご所望の品・方
「ご所望の品」の読み方は「ごしょもうのしな」、意味は「欲しいと伺っていた品物」という意味があります。「ご所望の品」の使い方は、目上の人が欲していた品物を渡すときです。目上の人が欲しっていた品物を渡すときに、「ご所望の品をご用意しました」と使います。
ビジネスシーンでは「ご所望の品」という言葉と同じ意味の言葉である、「ご所望品」も使うことが多いため「ご所望の品」と「ご所望品」という言葉を覚えておくと良いでしょう。
「ご所望の方」の読み方は「ごしょもうのかた」、意味は「必要としている人、したいという人」です。「ご所望の方」の使い方は、目上の人に出席や参加を促すときです。目上の人に出席や参加を促すときに、「ご所望の方がいらっしゃいましたら出席・参加してくださいませ」と使います。
ご所望でしたら
「ご所望でしたら」という言葉は、「欲しければ・望んでいるなら」という意味があります。「ご所望でしたら」の使い方は、目上の人が欲していたものや望んでいたものを準備や用意するときです。目上の人が欲していたものや望んでいたものを準備するときに、「ご所望でしたら」と使います。
例えば、目上の人が品物を欲しがっている場合「こちらの品物がご所望でしたら、お声がけください。ご用意します」と使います。目上の人がサービスを必要としてる場合は、「こちらのサービスがご所望でしたら、お声がけください」と使います。
ご所望とあらば
「ご所望とあらば」という言葉には、「ご所望でしたら」と同じ「欲しければ・望んでいるなら」という意味があります。「とあらば」という言葉は、連語の「とあれば」の古文であり「とあれば」の文語表現です。そのため、「ご所望とあらば」という言葉は現代では滅多に使われません。
現代では「ご所望でしたら」が一般的となっています。そのため、ビジネス現場では「ご所望ならば」ではなく、「ご所望でしたら」を使うようにしましょう。
ご所望の場合は
「ご所望の場合は」という言葉の意味は、「欲しい場合・必要な場合」です。「ご所望の場合は」の使い方は、目上の人が物事を行うかどうかを尋ねるときです。目上の人が欲しい状況や必要な状況のときに、「ご所望の場合は」と使います。
例えば、不良品の商品を交換することを尋ねるときに、「商品の交換をご所望の場合は、弊社のカスタマーサービスまでご連絡ください」と使います。サービスを必要としている状況では、「サービスをご所望の場合は、仰せつかってください」と使います。
ご所望される・なさる
「ご所望される」は、「する」という動詞の尊敬語です。意味は「欲している・望んでいる」となります。「ご所望される」の使い方は、目上の人が欲している・望んでいるときです。「お客様は、飲み物を所望されている」などと使います。
「ご所望なさる」も「する」という動詞の尊敬語です。意味は「ご所望される」と同じく、「欲している・望んでいる」となります。「ご所望なさる」の使い方も「ご所望される」と同じく、目上の人が欲している・望んでいるときです。「社長は、飲み物を所望なさっている」などと使います。
「される」と「なさる」の違いは、能動的な意味があるか受動的な意味があるかです。受動的な意味を指すときに「される」と使い、能動的な意味を指すときに「なさる」と使います。
ご所望とご要望との意味の違い
ご所望と似た意味を持つ言葉で「ご要望」という言葉があります。「ご要望」の読み方は「ごようぼう」です。「ご要望」という言葉は、「ご所望」と望みの度合いなどが同じなため、ビジネスシーンではご所望よりも「ご要望」という言葉が使われています。しかし、「ご所望」と「ご要望」を使う対象が違います。
「ご所望」と「ご要望」の意味と違いを理解することで使い分けができ、それによってビジネスコミュニケーションがより円滑になります。ここでは「ご所望」と「ご要望」の意味の違いについてご説明していきます。
具体的な望みならご所望
ある特定の品物・サービスなどの具体的で目に見える望みの場合、「ご所望」という言葉を使います。ビジネスシーンでは、具体的な品名やサービスの前に「ご所望」と加え、「ご所望の品物です・ご所望のサービスです」と使われていることが多いです。
そのため、相手の望みが明確に具現化されたときに初めて「ご所望」と使うことができます。望みが明確ではないとき、つまり具体的で目に見えない望みのときには「ご所望」は使えないので、「ご所望」の使い方に注意しましょう。
抽象的な望みならご要望
物事の実現などの抽象的な望みの場合、「ご要望」という言葉を使います。ビジネスシーンでは、方法や手段の前に「ご要望」と加え、「ご要望の方法をお伝えください・ご要望の手段をお伝えください」と使われることが多いです。
「ご要望」の使い方は、「ご要望にお応えして」や「ご要望に添う」と使います。また、「ご要望の品」と使うため、「ご所望」よりも多くのシーンで「ご要望」が使われています。
「ご所望」と「ご要望」の意味と言葉の活用の違いは、望みによります。明確で具体的な望みなら「ご所望」、方法や手段など物事の実現に関わる抽象的な望みなら「ご要望」となります。
よって、明確で具体的な意味での望みの場合は「ご所望」、抽象的な意味での望みの場合は「ご要望」と言葉の使い分けの違いに注意しましょう。
ご所望とご希望との意味の違い
「ご希望(読み方:ご期待)」という言葉も「ご所望」と似た意味がある言葉です。「ご希望」という言葉は、「希望」に接頭語の「ご」をつけた敬語表現で、ビジネスシーンでよく使われている言葉です。
そのため耳にする機会が多く、一度は耳にしたことがある言葉でしょう。しかし、「ご所望」という言葉と「ご希望」という言葉の意味は違います。
「ご希望」と「ご所望」の意味の違いはなんでしょうか。「ご希望」はどのようなときに使うのでしょうか。ここでは「ご希望」についてご説明していきます。
ご希望は度合いの低い望みという意味
ご希望とご所望の違いは、望みの度合いです。ご希望という言葉は、ご所望よりも望みの度合いが低い「個人的な望み」に対して使います。
度合いを順番に直すと、ご所望とご要望の次にご希望となります。「ご希望」もご所望とご要望と同じく、物やサービス、方法や手段などの実現に対しても使うことが可能です。
ビジネスシーンでは、個人の願望程度の望みに対して「ご希望はなんですか」と尋ねるとき使われています。そのため、ご希望は個人の願望程度の望みと覚えておくと良いでしょう。
ご所望とご期待の意味の違い
「ご期待(読み方:ごきたい)」という言葉も「ご所望」と似た意味がある言葉です。「ご期待」という言葉は、「期待」という言葉に接頭語の「ご」を付けた敬語表現で、「ご期待」もビジネスシーンでよく使われています。
そのため耳にする機会が多く、一度は耳にしたことがある言葉でしょう。しかし、「ご所望」という言葉と「ご期待」という言葉の意味は違います。
「ご期待」と「ご所望」の意味の違いはなんでしょうか。「ご期待」はどのようなときに使うのでしょうか。ここでは「ご期待」についてご説明していきます。
ご期待はよい結果を待ち望むという意味
「ご期待」という言葉はよい結果を待ち望む意味があります。ビジネスの現場では、あらたまった場面で使用する言葉です。そのため、目上の人の要望に対して「ご期待に沿います」と使うと良いでしょう。
謝罪の場面では、目上の人の要望に応えられなかったときに、「ご期待に沿えず申し訳ございません」と使うことにより、丁寧でかしこまった意味合いを持つ表現の言葉で謝罪することができます。
ご所望と似た意味の言葉
「ご所望」と似た意味を持つ言葉で、「ご意見」・「ご用命」・「ご意向」・「お望み」・「ご注文」という言葉があります。これらの言葉はビジネスシーンでよく使われている言葉です。そのため、一度は耳にしたことがあるでしょう。しかし、これらの言葉と「ご所望」の意味は違います。
「ご意見」・「ご用命」・「ご意向」・「お望み」・「ご注文」にはどういう意味があるのでしょうか。また、どういうシーンで使うと良いのでしょうか。ここでは「ご所望」とこれらの言葉の意味と違いについてご説明していきます。
ご意見
「ご意見」の読み方は「ごいけん」です。意味には2つの意味があります。1つ目は出来事への主張、2つ目は人の過ちをいさめるために自分の思うところを述べるということです。
ビジネスシーンでは、「ご意見」という言葉も使われます。ビジネスシーンでの「ご意見」という言葉の意味は、「自分の考えや主張」を指します。品質改善を行うことを目的として使われることが多いです。
そのため「ご意見を頂戴できませんか」という言葉は、「品質改善を行うことを目的としているので、考えや主張をください」ということになります。よって、品質改善を行うことを目的として、相手の考えや主張を求めるときに使われる言葉が「ご意見」であると覚えておくと良いでしょう。
ご用命
「ご用命(読み方:ごようめい)」は、「発注すること・仕事を言い付けること、注文をする」という意味があります。主に、目上の人から依頼された仕事や受けた注文を「ご用命」といいます。「ご用命」という言葉は、ビジネスシーンで使われることが多くあります。
「ご用命」という言葉を使う際に注意したいことがあります。それは「ご用命」という言葉は、受動的な表現であるため受け身の場面で使い、能動的な場面では使わないということです。また、同じ立場の人と目下の人には使わないということです。
「ご用命」は、「ご用命賜ります」や「ご用命の品をご用意しました」と使います。「ご用命」という言葉は目上の人に対しての受動的な表現であるため、上司や先方に対して好印象を与えることができます。
ご意向
「ご意向(読み方:ごいこう)」の意味は、物事への対処の考えです。意向の元の意味は心の向かうところ、意識の方向です。ビジネスでは、物事への対処の考えをご意向と呼びます。
「ご意向」という言葉の使い方は、目上の人の考えや意思をあらわすときに使います。「ご意向承りました」という言葉は、「考えや意思がわかりました」という意味になります。
「ご意向」という言葉は、ビジネスシーンで頻繁に使われています。そのため、「ご意向」は目上の人の考えや意思を尋ねる際に使う言葉であると覚えておくと良いでしょう。
お望み
「御望み(読み方:おのぞみ)」は、実現したい望みという意味です。望みという言葉に「御」を加えた丁寧語表現であり、ご所望の代わりとして「お望み」という言葉で使うことができます。
「お望み」という言葉は、実現したい望みが望んだ通りの状態になるとき、もしくは実現したい望みに沿う際に使用します。一般的に、「お望みどおり」として「お望み」は使われています。
「お望み」という言葉は「ご所望」よりも願いの度合いが低く、丁寧な表現ではないため目上の人には「ご所望」という言葉を使うことが礼儀とされています。そのため「お望み」という言葉は、柔らかい表現を使いたいとき、もしくは同じ立場や目下の人に対して使うと良いでしょう。
ご注文
「ご注文(読み方:ごちゅうもん)」という言葉の意味は、ご用命と同じく「人に言い付ける、注文をする」です。ご注文という言葉は、注文という言葉に接頭語の「ご」を付けた丁寧語表現であり、「ご用命」よりも柔らかい表現でもあります。
「ご注文」は「ご用命」の類語表現であり、「注文をいたす」や「注文される」など自分の動作をあらわす表現として使いやすい言葉です。前途の通り、「ご用命」よりも表現が柔らかいため、飲食業や接客業で使われている言葉です。
しかし、「ご注文」という言葉は柔らかい雰囲気であるため、目上の人に対しては丁寧でかしこまった表現がある「ご用命」という言葉を使うことをおすすめします。
ご所望はビジネスで具体的な望みを伝えるときに使う
いかがでしたか。今回は「ご所望」と「ご所望に似た言葉」の意味と用法についてご説明しました。それぞれの言葉はビジネスシーンで使い方と意味合いが違います。
「ご所望」は具体的で明確なものへの望み、「ご要望」は事柄への望み、「ご希望」は個人の願望、「ご意見」は主張や考え、「ご用命」は言い付けられたときや注文されたとき、「ご意向」は物事への対処の考え、「お望み」は同じ立場の人や目下の人へ使う言葉、「ご注文」は同じ立場の人や目下の人へ使う言葉と覚えておきましょう。