「憤慨」の意味
「憤慨(ふんがい)」という言葉は、日常会話ではあまり使われないので、意味や使い方に馴染みのない方が多いのではないでしょうか。
しかし「憤慨」という言葉は、色々な文献や討論の中ではよく出てきます。「憤慨」の意味を知らないと、文献や討論の内容を正しく理解できなくなります。
「憤」という字があるので、何となく怒りの感情を表していることは理解できるけど、怒りの度合いがどの程度の時に使う言葉なのか、知らない方が多いのではないでしょうか。
また「憤慨」は非常に難しい漢字なので、意味を理解するのに骨が折れることも難解の一因になっています。
意味①ひどく腹を立てること
「憤慨」の意味を知るために、難解な漢字「憤慨」をまず分解して、1文字ずつ意味を調べてみましょう。
「憤」は音読みで「ふん」訓読みで「いきどおる」と読みます。左側の部首の「忄(りっしんべん)」は心に関係する漢字に付けられる偏(へん)なので感情を表現する漢字だと分かります。
また右側の「賁」は「勢い良くはしる」「いさむ」「強者(つわもの)」などの意味があります。つまり「憤る(いきどおる)」は「ひどく腹を立てる」「奮い立つ」という意味を持っています。
「憤慨」の右の漢字「慨(がい)」は「ようす」「おもむき」「おおよそ」などの意味があります。「憤」と「慨」の2つの漢字をつなげた「憤慨」は「ひどく腹を立てるようす」という意味になります。
このように難解で難しい漢字の熟語の場合は、漢字を分解してひとつずつ意味を調べることで理解しやすくなるので、他の難しい漢字でも試してみて下さい。
意味②非常に怒ること
「憤慨」の意味を表す言葉に「非常に怒ること」があります。これは前述の「ひどく腹を立てるようす」の類語にあたります。
つまり「憤慨」とは「非常に怒る=ひどく腹を立てる」様子という意味で、怒りの度合いでいえば最高レベルなのではないでしょうか。また「憤慨」と似た言葉の類語で「激怒(げきど)」があります。意味は漢字のイメージそのままで「激しく怒ること」で、怒りの度合いは「憤慨」と同じレベルです。
「憤慨」の類語
「憤慨」の類語には、前述の「激怒」や「憤怒」など数えきれないほど沢山あります。「憤慨」そのものが難しい漢字なので、類語も難解な漢字のものが多いようです。
これから紹介する類語にも難解な漢字が多いのですが、これらの類語は日常会話ではあまり使われませんが、政治家や評論家の発言や小説などではたびたび出てきます。難解ですが意味を知っておけば、発言や文章の意図や主旨が解釈できるので、決して損になることはありません。
慨嘆
「憤慨」の類語の一つ「慨嘆(がいたん)」とは、ただ単に怒るということではなく「悲しみと同時に怒りを覚えるさま」という意味です。「慨嘆」の「嘆」には「憂い悲しむ」「なげく」という意味があるので「怒りを感じながら憂い悲しむ」という意味になります。
この漢字もかなり難解な言葉ですが、使い方としては「現代の世相を慨嘆する」「政治家のモラルのなさに慨嘆する」「最近の番組制作にはポリシーが感じられず慨嘆する」のように用います。例文の前後の言葉の流れから読み取ると解釈しやすいのではないでしょうか。
慷慨
「慷慨(こうがい)」という憤慨の類語も、かなり難解でやっかいな言葉です。「慷慨(こうがい)」には2通りの解釈と意味があります。
漢字1文字の「慷」は音読みで「こう」、訓読みで「慷く(なげく)」と読み、主な意味は「憤りなげく」「気が高ぶる」になります。
従って「慷慨」の解釈の1つ目は、前者の「憤りなげく」の意味に基づく「矛盾だらけの現代社会を慷慨(こうがい)してやまない」のような使い方をします。
また2つ目の解釈は「慷」の後者の意味に基づいて「意気が盛んなこと、そのさま」という意味になります。例文では「上級士官が意気を鼓舞するために、下級士官に頭を上げて歩けと慷慨(こうがい)した」のような使い方をします。
つまり「慷慨(こうがい)」には憤慨の類語の「憤りなげく」という意味と、「意気が盛ん」「気が高ぶる」という違う解釈があるので、文脈の流れをよく見ないと誤解することがあるので注意しましょう。
憤り
憤慨の類語の「憤り(いきどおり)」は、文字の見た目どおりに「いきどおること」「腹を立てる」という意味です。
「憤り」の類語に「怒り」がありますが、両者に明確な違いはほとんど無いのですが、強いていえば「怒り」は、怒っている感情をそのままストレートに表しています。一方「憤り」はもっと内にこもった怒りの感情を表現する時に使います。
例えば「怒りに手が震えて物が掴めない」とは言いますが「憤りに手が震える」とはあまり使いません。「怒りで手が震える」という状態は、客観的に誰が見ても怒りの感情があらわに出ているのが分かります。一方「彼の暴言に憤りを禁じ得ません」のように「憤り」の場合は、心の内に湧きあがった怒りの感情を表現しています。
遺恨
憤慨の類語のひとつに「遺恨(いこん)」がありますが、これは少し異質で、怒りの感情の中に陰湿な思いがこもっている類語です。
「遺」という漢字には、「後に残る」「置き忘れる」「死語に残す」などの意味があり、「遺跡(いせき)」「遺失物」「遺言(いごん)(ゆいごん)」のような使い方をします。
「遺恨」の「恨」はりっしんべんで、木へんの「根」とは全く意味が違い、心情を表す漢字で「うらむ」「うらめしい」という意味です。
この2つの漢字を組み合わせた「遺恨(いこん)」は「忘れがたい深いうらみ」「心残りでくやしい」「残念な気持ちが忘れられない」という意味になります。
例文としては「遺恨を晴らす」「今度の試合はリベンジをかけた遺恨試合だ」「遺恨を残さないためにフェアプレイでいこう」「注意する時には遺恨が残らないように気をつける」のような使い方をします。憤慨の怒りとは少し異質な「憤り」になります。
激憤
激憤(げきふん)という類語は、読んで字のごとく「激しく憤る(いきどおる)」「激しく怒る」という意味で、これまで紹介した中で最も「憤慨」に近い類語ではないでしょうか。
また「激憤」は火山の噴火をも連想させます。火山の噴火の「噴」は物理的に吹き出してくるさまですが、「憤慨」や「激憤」の「憤」は、怒りの感情があたかも火山の噴火のように、激しく吹き出してくるさまのようです。
ここまで「憤慨」の類語を紹介してきましたが、類語はこの他にも沢山あります。興味のある方は色々と調べてみると「憤慨」の意味をさらに解釈する手助けになるのではないでしょうか。
「憤慨」の対義語
対義語とは、類語の全くさかさまで、意味や使い方が正反対や対照的な関係にある言葉のことで、反意語、反義語、反対語とも呼びます。
「憤慨」の対義語とは、怒りの感情の反対の表現ということになります。怒りの感情の反対と考えると「喜ぶ」「歓喜」「楽しい」などが対義語に相当します。
「憤慨」を感情の高ぶった状態と考えると「平静」「落ち着く」「和む(なごむ)」なども対義語と言えるでしょう。
また「許す」という感情も「怒り」の反対の関係にあるので「堪忍(かんにん)」「勘弁(かんべん)」も憤慨の対義語になります。こうやって考えると対義語も類語と同様に沢山あるようです。
歓喜
歓喜(かんき)とは「非常に喜ぶ」「心から喜ぶ」という意味で、怒りの感情の反対の関係なので「憤慨」の対義語になります。
使い方としては「大学受験の合格発表で、自分の番号を見つけた時には歓喜して飛び上がった」「試合に勝った時に、歓喜のあまり思わず涙がこぼれた」のような例文になります。
楽しい
「楽しい」は意味を説明するまでもなく、「怒っている時」と反対の状態の感情表現なので「憤慨」の対義語になります。
「楽しい」は、普段の日常会話でもよく使うので馴染みの多い対義語です。使い方も簡単なので、例文も一寸考えただけで沢山浮かんでくるのではないでしょうか。憤慨しないで、いつも「楽しい」気持ちでいられたら幸せです。
平静
平静(へいせい)とは、心がおだやかで静かな状態のことです。憤慨している状態は、心が激しく高ぶっている状態です。「平静」は「憤慨」と対照的な状態なので対義語になります。
人生の中で憤慨することも時には必要ですが、憤慨ばかりしているとストレスがたまってしまいます。「憤慨」はネガティブな感情です。
ネガティブの対義語はポジティブです。対義語の「歓喜」「楽しい」「平静」はどれもポジティブな感情です。ポジティブな感情はストレスをためません。
ストレスをためないためにも憤慨することはできるだけ控え、対義語のように、いつも平静で楽しい心の状態を保つようにすれば、人生は豊かになるのではないでしょうか。
「憤慨」の使い方と例文
憤慨の例文や使い方で、憤慨に続く助動詞などの言葉には主に「〜される」「〜している」「〜する」「〜を覚える」「〜の様子だ」があります。
憤慨の例文にはこの他にも沢山ありますが、ここでは、これら5つの言葉を使った例文を中心に、「憤慨」の使い方や意味を紹介します。例文で使い方を学ぶことは、言葉の引出しやボキャブラリーが増え発想が豊かになるので、会話や文章を書く時の参考にして下さい。
憤慨される
「憤慨される」の「〜される」という助動詞には2通りの使い方があります。目上の人に対して使う場合は敬語の働きをします。
例文でみると「取引先の社長が、今回の条件に対して非常に憤慨されています」「クライアントが憤慨されるのは、当方の対応が悪かったからです」のような使い方をします。
一方自分が相手の対象になったとき、受身の状態を表します。「レポートの質の悪さで、上司に憤慨されてしまった」「相手から私が憤慨されたのは、言葉遣いの悪さのせいです」のような例文になります。
つまり「憤慨される」の「〜される」は、使う相手によって意味や働きが変るので使い方には注意が必要です。
憤慨している
「憤慨している」の「〜している」は、現在進行中のことがらを表す時に使う言葉です。憤慨のあとに続けた場合は、怒りの感情が現在も続いている状況を表します。
「お客様に失礼な態度をとった店員に対し、店長としていま非常に憤慨しています」「今回の失態で、先方の社長は今でも憤慨しています」のような使い方です。例文のように「憤慨している」は、自分が怒っている場合にも、相手が怒っている場合でも、どちらにも使うことができます。
憤慨する
「憤慨する」は、出来事や事柄などの状況に対して「怒りを感じる」という「感情や考え」を伝える意味で使われます。
「思いやりの無い人にはいつも憤慨する」「国会の無駄な時間の使い方にはいつも憤慨する」「被災者への無神経な発言にはいつも憤慨する」などの例文が考えられます。
このように「憤慨する」は、現在進行形でも過去形でも未来形でもなく、時間にこだわらない「感情や考え」を表現しています。
憤慨を覚える
「憤慨を覚える」の「〜を覚える」には、「〜を心にとどめる」「〜を記憶する」「〜を身につける」「〜を習得する」「〜を感じる」などの意味があります。
「憤慨を覚える」の場合の「〜を覚える」は「〜を感じる」の意味が最も近く、「憤慨を感じる」「激しい怒りを感じる」という意味になります。
「憤慨を覚える」は怒りの感情を表に出すのではなく、心の中の状態を表現しています。例文では「最近の悲惨なニュースや報道には憤慨を覚える」「責任逃れの記者会見には憤慨を覚える」「見え見えの言い訳には、憤慨を覚えて落胆さえ感じてしまう」のように使います。
憤慨の様子だ
「憤慨の様子だ」の「〜の様子だ」は、客観的にみた場合の状態や判断などを、第三者的意味で表すときによく使われます。
たとえば「レストランで隣の席の人が、注文したのと違う料理が来たので憤慨している様子だ」「あの人が憤慨する様子は、少し場違いで滑稽です」「取引先の社長は、いまだに憤慨の様子です。早く代替え案を出しましょう」のような例文になります。これまで紹介した例文の意味や使い方を参考にして「憤慨」の言葉の引出しを増やして下さい。
「憤慨」と憤怒の違い
「憤慨」と意味がよく似た類語に「憤怒」があります。「憤怒」は「ふんぬ」や「ふんど」と読みますが、辞書の見出しでは「ふんど」で出てくるので、本来の読み方は「ふんど」が正しいようです。
「憤慨」は「激しく腹を立てる」という意味で、「憤怒(ふんど)」も「激しく怒りいきどおる」という意味なので、ほとんど同じに見えます。「憤慨」と「憤怒」には何か違いがあるのでしょうか。
それとも単に使う漢字が違うだけで、意味は全く同じなのでしょうか。「憤慨」と「憤怒」の違いを検証するために、「憤怒」の意味を紐解いてみます。
憤怒の意味とは
「憤怒(ふんど)」の漢字を分解して1文字ずつの意味を調べると、「憤」は憤慨に使われているのと同じ漢字で「怒る」「いきどおる」「奮い立つ」「あらわれる」という意味があります。「怒」の方には字の通り「おこる」「いきどおる」の意味です。「憤怒」とは、同じ怒りの意味を持つ漢字を重ねることにより、怒りの度合いをより強調した熟語です。
意味:激しく怒って興奮すること
つまり「憤怒(ふんど)」の意味は「激しく怒って興奮すること」になります。「憤慨」にも「いきり立つ」「激高する」という意味合いがあるので、「憤慨」と「憤怒」の2つには意味としての違いはほとんどありません。では単に漢字が違うだけなのでしょうか。次に使い方や例文で比較してみます。
「憤慨」と「憤怒」の例文、使い方の違い
言語には「名詞」「動詞」「形容詞」「副詞」などの分類があります。辞書を引けば「名、動、形、副」と必ず表示されています。では「憤慨」と「憤怒」の例文や使い方を、言葉の分類の視点から検証してみましょう。
「憤慨」を使った例文では「部下の態度の悪さに憤慨している」「政治家の噓には非常に憤慨する」「責任のなすり合いには憤慨するばかりです」のように「憤慨」を使います。
一方「憤怒」を使った例文では「不動明王は憤怒の形相で立ちはだかっている」「彼の表情は憤怒のために赤く高揚してきた」「官僚の不祥事には憤怒の念を押さえきれない」のようになります。
ここで感の良い方はお気づきだと思いますが「憤慨」の例文では、憤慨という言葉は分類でいう「動詞」として使われています。「憤怒」の場合には、憤怒は「名詞」として使われているのが分かるのではないでしょうか。
つまり使い方で「憤慨」は動詞、「憤怒」は名詞という違いがあるのです。ただし「憤慨を覚える」など、憤慨を名詞として使う例外もあるので注意して下さい。
「憤慨」の英語表現
日本語の「憤慨」を英語ではどのように表現するのでしょう。日本語では怒りの度合いや、怒りの方向が内的、外的などの意味をひと言で表現する「怒り」「憤り」「憤慨」「憤怒」などの漢字熟語があります。
これは漢字がビジュアル的に意味を伝える象形文字に由来するからです。しかし英語はアルファベットという26文字の記号で構成されています。
アルファベットの組合せで出来ている英単語では、漢字のようにビジュアル的に意味を伝えることは出来ません。そのため英語で意味を表現するには、文章の言い回しや、文脈の流れで伝えます。
ですから英語で日本語のような、微妙なニュアンスを表現しようとすれば、かなり難しい単語を使うか長文になってしまいます。厳密にいえば、日常的な英語の会話や文章で「憤慨」に相当する単語はありません。
そこで怒りの強い度合いまでは伝えきれませんが「憤慨」に近い「be angry(怒っている)」「resent(腹を立てる)」などの単語を使って表現します。
怒っている事を意味する表現
「angry」は怒っている状態を表す形容詞なので「angry」の前には必ず動詞が付きます。例えば「be angry at~(〜に怒っている)」「get angry at~(〜に怒る)」「be angry about~」「get angry about~」のようになります。
意味はどれも同じですが、「be」動詞を使った場合は、現在形ですが現在進行形の意味を持ちます。「get」を使った場合は、今まさに怒る瞬間、怒った動作そのものを表現します。
また「at~」の「〜」にはいる目的語は「人」に限られますが、目的語が「物や事」の場合には「about~」を使います。
この他に「She was angry to hear it.(彼女はそれを聞いて怒った)」のように「to〜」の後に動詞を入れて表現することができます。
また怒っている状態を表す単語に「resent」という動詞があります。意味は「腹を立てる」「いきどおる」「憤慨する」「怨む(うらむ)」などで、動詞という点では日本語の「憤慨」と似ています。
しかし怒りの度合いという点では「angry」も「resent」も日本語の「憤激」より弱いようです。
激しい怒りを表現にするには「I extremely resent that.(私は非常に憤慨しています)」のように動詞の前に「extremely(極端に・きわめて)」などの副詞を使うことで怒りを強調します。
つまり英語には1つの単語で「激しい怒り」まで表現する言葉がないので「extremely」や「intensely」など「極端に・激しく」という意味を持つ副詞を使うことで、日本語の「憤慨(激しい怒り)」に近いニュアンスを表現しています。
「憤慨」は非常に怒ることを意味する言葉
「憤慨」とは「非常に怒ること」「激しい怒りの感情」などの意味があることや、その類語や対義語、使い方や例文、日本語と英語表現の違いなどを紹介してきました。
どの言葉も日常的にはあまり使わない難解な表現です。しかし色々な文献や小説、討論などではたびたび使われる言葉で、意味を理解することは言葉の引出しを増やすことに繫がることも紹介しました。
また「憤慨」することにはストレスがたまるというデメリットがあることも解説しました。いままで紹介したことを参考にして、あなた自身のメリットになることを見つけ出して、豊かな人生を未来に向けて歩む手助けにして下さい。