公的年金等の源泉徴収票とは
「公的年金等の源泉徴収票」は、日本年金機構から老齢年金を受け取っている人に対して送られてきます。いつ頃かというと毎年1月中旬~下旬にかけての時期です。では、この源泉徴収票にはどのような事がかかれているのでしょうか。
年金についての情報を確認したり、確定申告をして税金の還付を受ける場合には必ず必要な書類です。その詳細な内容と見方、もしも紛失した場合や再発行の方法などを詳しくみていきましょう。
自分の年収や支払った税金の確認ができる
公的年金等の源泉徴収票には、様々な年金や税金に関する重要な情報が書かれています。自分の年収や、「源泉徴収された税金」などの金額を確認しておいてください。源泉徴収や社会保険料、特別徴収された税金の金額は、給料から自動的に引かれている場合も多く、この機会にどのくらいの金額かを確認しておくと安心です。
源泉徴収票とは何か
この源泉徴収票とは、収入の金額や支払った社会保険料・扶養控除・生命保険料控除などが記された紙のことを指します。年末調整や確定申告の際に必要になるもので、税金の還付を受けられる可能性があります。会社に勤務する給与所得者は、源泉徴収票を使って自分の年収や支払った税金や社会保険料を確認することができます。
給与以外の収入があり、確定申告をする場合には毎年2月~3月の確定申告の時期にこの源泉徴収票を提出する必要があるので、その時期までは大切に保管しておきましょう。
公的年金等の源泉徴収票の見方
公的年金等の源泉徴収票が手元に届いたら、何を確認すれば良いのでしょうか。見方としては届いたらまず、1つ1つの項目を順番に確認していきましょう。
普段あまり目にしない書類なので、見方に戸惑うかもしれませんが、年金に対するとても重要な事がかかれています。一度しっかりと目を通しておく必要があります。次から項目ごとの見方をみていきます。
①支払金額
該当する年度内に支払われた年金の合計額がここに記載されています。所得税や社会保険料が差し引かれる前の金額です。つまり実際に振り込まれた金額とは一致しないので、この項目を見て「実際に振り込まれた額が何かの手違いで少ないのではないか」と心配される事はありません。あくまでも「一期額」の合計金額です。
②源泉徴収税額
該当する年度内に源泉徴収した所得税額と復興特別所得税の合算金額です。ここでいう「復興特別所得税」とは、「東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法」の施行により、平成25年1月1日から令和19年12月31日までの間に支払った所得に課せられる税金のことです。
さらに、もしも「扶養親族等申告書」を提出されているのであれば、申告内容に基いた税金計算を行った上で徴収した額となります。
③区分
支払金額と源泉徴収額の金額は、「法第203条の3第1号適用分」「法第203条の3第2号適用分」「法第203条の3第3号適用分」「法第203条の3第4号適用分」の区分にわけて記載されています。
第1号適用分とは、老齢基礎年金・老齢厚生年金・64歳までの特別支給の退職共済年金を受けていて扶養親族等申告書を提出している人を指します。また、第2号適用分とは、65歳からの退職共済年金を受けていて扶養親族等申告書を提出している人です。
次に第3号適用分とは、退職年金(退職等年金給付)経過的職域加算額(退職共済年金)を受けていて扶養親族等申告書を提出している人です。最後に第4号適用分とは、扶養親族等申告書を提出していない人の区分です。
④年金種別
年金の種別の番号がここに記載されています。種別に割り振られた番号とは、1が「経営移譲年金」2が「旧老齢年金」3が「特例老齢年金」4が「新老齢年金」5が「特例付加年金」となっています。その後の年金種別の番号を除く11桁は年金証書の記号番号となりますので、確認しておきましょう。
⑤本人欄
本人の現在の状況についての欄です。見方としては、「特別障害者」「その他障害者」「特別寡婦」「特別寡夫」などのいずれかの該当する項目に星印が記載されています。また先ほどまでのどの項目にも該当しない場合には空白になっていますので、何も記載されていない場合もあります。
⑥控除対象配偶者の有無等欄
控除対象配偶者とは、年金を受給している人と生計を同一にしている配偶者で、所得の見積額が38万円以下又は給与のみの場合は給与収入が103万円以下である人のことを指します。また控除を受ける納税者本人の合計所得金額が1,000万円を超える場合は、控除対象外となります。見方としては「一般」「老人」の該当する欄に星印がつきます。
⑦控除対象扶養親族の数
控除対象扶養親族とは、年金を受給している人と生計を同一にしている配偶者以外のうち所得の見積額が38万円以下又は給与収入が103万円以下である人のことを指します。配偶者と同じく、納税者本人の合計所得が1,000円を超える場合は控除対象外となります。見方としては「一般」「老人」「その他」の該当する欄に星印が付きます。
⑧社会保険料の額
社会保険料の額が記載されています。市町村からの依頼で、年金から徴収した介護保険料・国民健康保険料・後期高齢者医療保険料の社会保険料合計金額です。内訳は「(摘要)」欄に記載されています。さらに詳細な保険料の額について知りたければ、現在住んでいる市区町村に問い合わせて確認をしてください。
社会保険料とは
社会保険料は会社勤務の方は毎月の給料から引かれているものです。この社会保険料を収める事で、国民が病気や介護・失業といった困った状況になった際に給付される財源となります。
社会保険料には大きく分けて5種類があります。「健康保険」「介護保険」「厚生年金保険」「雇用保険」「労災保険」です。または75歳以上になると健康保険が「後期高齢者医療保険」にかわります。様々な制度を支えている保険料ですが、事故に備えた労災保険は低めに、高齢化社会を支える厚生年金は高めになっています。
扶養親族等申告書とは
区分の項目で出てきた「扶養親族等申告書」は、日本年金機構が年金を受け取っている人に年1度郵送している書類です。具体的には、年金の金額が65歳未満ならば「年間108万円以上」65歳以上ならば「年間158万円以上」の人が対象となります。
いつ頃郵送されるかというと、9月中旬頃から10月初旬頃にかけて郵送されてきますので記入をして提出する必要があります。
提出しないとどうなる?
「扶養親族等申告書」を提出しないことで起こる最大の問題は、所得税の税率が高くなってしまうことです。一般の所得税の税率は、復興特別所得税も合わせて「10.21%」です。しかしこの申告書を提出することにより、税率は「5.105%」にまで下がります。
つまり、「扶養親族等申告書」を提出するかしないかで、所得税の額が2倍も違う計算になります。公的年金にかかわる所得税は、受け取っている年金からあらかじめ天引きされているので、もしも提出しなかった場合は年金の金額が急に少なくなってしまいます。
そこまで難しい書式ではないので、1度きちんと記入ををすれば翌年からは記入が省略できる箇所も多く有ります。もしも見方や、郵送の時期がいつかなどを詳しく知りたい場合は、日本年金機構のサイトで詳細を確認し必ず提出するようにしましょう。提出期限内ならいつ提出しても構いません。
公的年金等の源泉徴収票はいつ送付される?
公的年金等の源泉徴収票はいつ送付されるのでしょうか。日本年金機構から自宅へ郵送されてくるものは、この源泉徴収票だけではありません。年に一度誕生月には年金記録のお知らせとして「ねんきん定期便」、6月頃には1年間の年金支給額の案内や、年金支給額に変動があった倍居には随時案内が封書などで郵送されてきます。
毎年1月中旬~下旬
いつ発送されるのかというと、公的年金等の源泉徴収票は毎年1月中旬~下旬にかけての時期に日本年金機構から郵送されてきます。日本年金機構のサイトでは、公的年金等の源泉徴収票の発送開始のお知らせを1ヶ月前の12月中旬ごろから行っているので、確認したい方は日本年金機構のサイトをこまめに見てみるとよいでしょう。
公的年金等の源泉徴収票の再発行方法
公的年金等の源泉徴収票を紛失したり破損した場合には、「ねんきんネット」または「ねんきんダイヤル」にて再発行をするか、「年金事務所」や「街角の年金相談センター」に直接出向くことで再発行ができます。
もしも本人が出向くことが難しい場合でも、代理人が公的年金等の源泉徴収証の再発行を行うこともできます。その場合は、年金受給者の年金手帳などの日本年金機構が発行した書類・委任状・代理人の本人確認ができる運転免許証などの書類・年金受給者の印鑑を持って再発行の手続きをしてもらってください。
ねんきんダイヤルで再発行依頼
公的年金等の源泉徴収票は電話での再発行依頼が可能です。マイナンバーかまたは基礎年金番号が確認できるものを用意して「ねんきんダイヤル」または「年金事務所」へ連絡をしてください。
いつごろ届くのかというと、ねんきんダイヤルにて再発行を依頼した場合には受付から発送までに2週間程度かかります。到着までには配達日数がかかることに注意しておきましょう。
ねんきんネットによる内容確認と再発行依頼
「ねんきんダイヤル」の他に「ねんきんネット」からいつでも公的年金等の源泉徴収票の内容の確認と再発行の依頼ができます。ねんきんネットを利用する際にはねんきんネットのIDが必要です。
はじめて利用する場合は、まずねんきんネットのIDを登録してください。また、ねんきんネットからの発送までは1週間程度なのでねんきんダイヤルより短くなっています。手軽にいつでも内容を確認できるので、是非一度利用をしてみることをおすすめします。
公的年金等の源泉徴収票・確定申告の必要な人
公的年金等の源泉徴収票の源泉徴収税額がゼロではない場合と、年金のほかにも給与所得があり「給与所得の源泉徴収票」の源泉徴収額がゼロで無い場合には、確定申告をすることによって税金の還付を受けられる可能性があります。
その場合、所得税が還付されるだけでなく住民税や健康保険料が大幅に減る可能性がありますので、一度確認をすると良いでしょう。
①源泉徴収税額がゼロでは無い場合
公的年金等の源泉徴収票の「源泉徴収税額」がゼロで無い場合には、医療費や生命保険料の控除がなくても税金が還付される可能性があるので確定申告をしましょう。その理由としては、年金機構などに提出している「扶養親族等申告書」の内容が12月31日の時と異なっている場合があるためです。
公的年金等の源泉徴収票に記載されている情報が現状と異なっている場合は、確定申告のソフトなどで本人や家族の12月31日における正確な情報を入力してみてください。大幅に税金が還付される可能性もあります。
還付される以外にも利点が大きい
確定申告をすることにより、税金が還付されることの他にもメリットがあります。すでに所得金額を上回る控除の金額となっている場合、課税所得金額はゼロとなり、所得税もゼロとなるために源泉徴収税額は全額還付になっている可能性は高いです。しかし、所得税の計算方法と住民税や健康保険料の計算は異なります。
所得税の基礎控除は38万円ですが、住民税の基礎控除は33万のため、所得税はゼロでも住民税はゼロではない場合があるのです。この他に源泉徴収額の還付以外にも利点がありますので、所得控除額をよく検討してから確定申告することをおすすめします。
②年金以外に給与所得があり源泉徴収税額がゼロでは無い
年金以外にも給与所得があり「給与所得の源泉徴収票」の「源泉徴収税額」欄がゼロになっていない時はチェックが必要な箇所があります。それは、年末調整の際に勤務先に提出した「給与所得者の保険料控除申告書兼給与所得者の配偶者特別控除申告書」に公的年金の受け取りの際に差し引かれた社会保険料の金額を勤務先に申告していない場合があることです。
年内の最後の年金振込みが12月の上旬であることと「給与所得者の保険料控除申告書兼給与所得者の配偶者控除特別控除申告書」の勤務先への提出の締め切りの関係で煩わしくそのままにしてしまっている人も多いのではないでしょうか。
「給与所得の源泉徴収票」の摘要欄に「年調未済」と記載されているか、「給与所得控除後の金額」「所得控除の額の合計額」が空欄になっているとしたらそもそも年末調整はされていませんので注意してください。以上のことを頭に入れてもう一度確定申告を検討してみてください。
③退職して年金だけで生計を立てている場合
退職して年金だけで生計を立てている場合や、年金収入以外に収入がある場合でも、個人事業主や給与以外の収入がある会社員と同様に自分で確定申告をする必要があります。
しかし、2011年度分の確定申告からは、公的年金等の収入が年間400万円以下で、さらに公的年金以外の収入が20万円以下の年金受給者は確定申告をする必要がないとする「確定申告不要制度」が導入されました。自分がこの確定申告の対象者なのかどうかよく確認してから、確定申告をしましょう。
公的年金等の源泉徴収票の見方は細かく覚えておこう
公的年金等の源泉徴収票は、年金について様々な情報がかかれています。また、確定申告をして還付を受ける際にも必ず必要になる書類なので、1つ1つ項目の見方と社会保険料や控除額をよく確認しておいてください。いつ郵送されるのか、還付されるものは無いかの見直しや再発行の仕方などももう一度確かめておくことが大切です。