2年目の住宅ローン控除とは?
新しく住宅を購入した際に受けることができる住宅借入金等特別控除、通称「住宅ローン控除」は、初年度の申請は確定申告が必要となります。住宅ローン控除は、所得税あるいは住民税から、年末時点の借り入れ残高の1%の控除を受けることができる制度です。
2年目以降も住宅ローン控除を受けるためにはどのような手続きをすれば良いのでしょうか。初年度と同じように確定申告が必要な方と、そうではなくもっと簡単に申請できる方がいます。この記事では、2年目以降はどういった申請が必要なのか、書類や手続き、申請の期限などを分かりやすく整理します。
年末調整で申請が出来る?
結論から申し上げると、もっと簡単な方法とは、年末調整での手続きとなります。サラリーマンの方は毎年11月頃に勤務先から提出を求められる手続きです。
主に扶養控除や生命保険料、地震保険料の控除を申請することが多いですが、住宅ローン控除を受ける場合は、この年末調整と合わせて申請することができます。申請自体も、書類を2枚添付するのみですので、初年度の確定申告と比較すれば、非常に簡単です。
2年目の住宅ローン控除の条件とは?
2年目以降も住宅ローン控除を受けるためには、どのような条件があるのでしょうか。実は2年目だからといって、初年度とは異なる特別な条件はなく、初年度と同じ条件を満たし、申請さえ行えば控除を受けることが可能です。
住宅ローン控除を受けるための条件とは、「住宅取得日から6ヶ月以内に入居し、適用を受ける年の12月31日まで住み続けている」「住宅ローン控除を受ける年の合計所得金額が3,000万円以下」「住宅ローンの返済期間が10年以上残っている」の3つです。
また、住宅ローン控除を受けるためには、居住する住宅そのものにも条件が設定されていますが、こちらは初年度に条件をクリアしていますので、リフォームなどを行って住居自体に大きな手を加えていない限り、2年目以降に条件をクリアできなくなるということはほとんどないでしょう。
①サラリーマンであれば年末調整で可能
2年目以降の住宅ローン控除を受けるためには、サラリーマンの方の場合は、年末調整で2つの書類を提出することで完了となります。初年度に行った、確定申告のために書類を揃えたり様々な手続きを行う苦労に比べれば、はるかに簡単な作業となります。
注意しなければいけないことは、住宅ローン控除の申請を年末調整で行うこと自体を忘れてしまうことです。年末調整の期限内に手続きできなかった場合は、初年度と同様に確定申告が必要となります。
②個人事業主は2年目以降も確定申告になる
年末調整のない個人事業主の方は、初年度と同様に確定申告が必要となります。しかしながら、個人事業主の方は、所得税の申告のために毎年確定申告を行っているはずですので、書く書類の種類が少し増え、計算の手間が増えるぐらいの負荷です。
もっとも面倒なのは、サラリーマンの方で年末調整での手続きを忘れる場合であることを覚えておきましょう。
2年目の住宅ローン控除の手続き方法とは?
では、2年目以降の住宅ローン控除を申請するために、具体的な手続きはどのようなものなのでしょうか。ここでは、初年度と手続きの方法が変わるサラリーマンの場合に絞って説明します。と言っても、手続きの方法自体は非常にシンプルです。
毎年11月頃に行っている年末調整の際に、必要事項を記入して、必要な書類を添付するだけの手続きとなります。
年末調整手続きは勤務先で!
2年目以降に住宅ローン控除を受ける場合は、年末調整での手続きが可能です。年末調整は、基本的に勤務先から書類を渡され、必要事項を記入して提出するだけの手続きです。
その際、必要な書類を2つ添付して、他の書類と一緒に勤務先へ提出するだけとなります。初年度の確定申告と比較すると、かなり簡単な方法となります。必要な書類についても、自分で役所等に発行に行くのではなく、基本的には自宅に郵送されるものになります。
必要書類を期限までに勤務先に提出
当然ですが、年末調整で住宅ローン控除の申請を行う場合は、勤務先が設定する期限までに書類を提出する必要があります。年末調整から状況が変わったことによる年末再調整もありますが、2年目以降の住宅ローン控除の申請は、状況が変わったことで申請するものではありませんので、しっかり期限までに書類を提出しましょう。
ただし、場合によっては2年目以降であっても年末再調整によって手続きを行う必要があるケースが存在しますので、そちらは後ほど説明します。
2年目の住宅ローン控除に必要な書類とは?
2年目以降の住宅ローン控除を受けるために必要な書類とはどのようなものなのでしょうか。2つの書類があると先にも述べましたが、ここで具体的に説明します。
いずれも自分で役所等に発行しに行く必要はなく、郵送で送られてくるものです。うち1つは、住宅ローン控除を受ける期間分がまとめて郵送されますので、紛失しないように注意しましょう。
①住宅借入金等特別控除申告書
1つ目の書類は、住宅借入金等特別控除申告書になります。確定申告時に記入したものとほとんど同じ内容です。購入した住居の金額、面積、持分比率と年末時点の借入残高を記入して提出します。
なお、記入する数値については、すでに印字されたものを注記に従って転記するだけで良いように考慮されています。記入の度に、不動産の売買契約書や登記簿情報等を参照しなくても良いように工夫されています。毎年記入が変わるものは、年末時点の借入残高のみです。
この書類は毎年同じような内容を記入しますので、確定申告時や2年目の手続き時の書類をコピーして手元に残しておき参照しながら記入すると、翌年以降もあまり迷わずに記入することができます。
管轄の税務署から送られてくる
この住宅借入金等特別控除申告書は、管轄の税務署から郵送されてきます。初年度の確定申告後、その年の10月頃に郵送されることが一般的のようです。もし次で述べる住宅ローンの残高証明書が手元に届いたにも関わらず、住宅借入金等特別控除申告書が届かない場合は、管轄の税務署へ問い合わせましょう。
なお、住宅借入金等特別控除申告書は、初年度分を除いた残り期間分のものがまとめて郵送されます。消費税が8%時に購入した場合は9年分、10%時に購入した場合は12年分です。
書類の上部に「平成(あるいは令和)○年分」と記載されていますので、該当する年のものを1枚ずつ使用していきます。もし紛失してしまった場合は、税務署へ連絡して再発行してもらう必要があります。
②住宅ローンの残高証明書
2つ目の書類は住宅ローンの残高証明書となります。住宅ローン控除による所得税からの還付額と、控除しきれない場合の住民税からの減税額は、年末時点の借入残高を元に決定されます。
住宅借入金等特別控除申告書に年末時点の借入残高を記入しますが、住宅ローンの残高証明書は、この金額が正しいと証明するための書類になります。
金融機関から送られてくる
住宅借入金等特別控除申告書は税務署から残り期間分の書類がまとめて郵送されますが、住宅ローンの残高証明書は、住宅ローンを借り入れた金融期間から毎年10月頃に郵送されてきます。記載は1年分のみで、こちらの書類は毎年送られてきます。
ただし、この時点では年末「予定」残高です。10月頃に郵送されてくるということは、まだ年末になっておらず、年末残高が決定していないため、予定通り住宅ローンを返済した場合はこの残高になっている予定、というわけです。
もし繰り上げ返済や、あってはいけませんが返済滞納で年末残高が変更になってしまった場合は、住宅ローンの残高証明書に記載されている金額と異なってしまうことになります。こういった場合の対応は、後ほど説明します。
2年目の住宅ローン控除の注意点とは?
2年目以降に住宅ローン控除を受ける場合に必要な書類や手続きについては説明した通りとなります。続いては、2年目以降に住宅ローン控除を受ける場合の注意点について説明します。
特に、残高証明書と金額が変わってしまった場合の対応方法については、良く確認するようにしてください。
年末調整で忘れたら確定申告で!
サラリーマンの場合は、2年目以降の住宅ローン控除を受ける場合は年末調整で2つの書類を提出すれば良いですが、もし申請そのものを失念して期限を過ぎてしまった場合でも、諦める必要はありません。翌年の確定申告で初年度と同じような手続きを行えば、住宅ローン控除を受けることが可能です。
確定申告期限は翌年の3月まで
確定申告を行う場合は、初年度と同様、翌年の3月までに税務署へ書類を提出する必要があります。勤務先へ書類を提出する場合は、期限に余裕をみて設定していることが多いため、多少の融通は利くかもしれませんが、税務署の場合はそうはいきません。
慣れない申請ですので、申請ミスがあることも考え、期限には余裕をもって手続きを行うようにしましょう。
また、年末調整で手続きした場合は、年末に所得税からの還付がありますが、確定申告の場合は初年度と同様、手続き後1ヶ月から2ヶ月後に指定口座への振込となります。年末調整と比較すると最大3ヶ月程度、時間が掛かりますので、その点も認識しておきましょう。
住宅ローンの残高証明書の金額が変更になった場合
もし、繰り上げ返済や返済滞納で年末残高が変更になった場合は、控除額も変更となるため、手続きが必要となります。何も手続きをせずに黙っていると、勤務先での修正が必要となり迷惑がかかるため、必ず手続きを行いましょう。
まず、金融機関に対して住宅ローンの残高証明書の再発行を依頼します。その後、期限内であれば勤務先への再申請(年末調整あるいは年末再調整)での手続きが可能です。期限を過ぎてしまった場合は、初年度と同様に確定申告することで、修正手続きが可能です。
ただし、通常と比較して手間が掛かってしまうことに比べ、繰り上げ返済する場合は、年末残高が減ることにより控除額も少なくなってしまいます。以上のことから、10月以降に繰り上げ返済する場合は、よく考えて行うようにしましょう。
2年目以降に住宅を住み替えた場合はどうなる?
最後に、住宅ローン控除を受けている住居から住み替えることになった場合について説明します。住宅の購入は大きな買い物ではありますが、転勤や止むを得ない事情などによって1回だけで終わるとも限りません。
住宅を買い替えた場合に、前の住宅の住宅ローン控除はどうなるのか、新しい住宅の住宅ローン控除は受けられるのかなど、注意すべき点は整理しましたので、買い替え予定がある方は確認しておきましょう。
住宅ローン控除は1つの物件でしか受けられない
最も注意すべき点ですが、住宅ローン控除を受けるための条件の1つに「住宅取得日から6ヶ月以内に入居し、適用を受ける年の12月31日まで住み続けている」があります。買い替えによって前に住んでいた住居から引っ越した場合、この条件に該当しなくなるため、住宅ローン控除を受けることができません。
代わりに、新しい住居が住宅ローン控除の対象となる物件であれば、新しい住居での住宅ローン控除を受けることができます。新しい住居に住民票を移さない場合は、新しい住居に住んでいないと見なされるため、新しい住宅での住宅ローン控除は受けられません。
新しい住居に引っ越した後、前の住居を売却せずに賃貸に出した場合は、たとえ住宅ローン残高が残っていたとしても、前の住居での住宅ローン控除を受ける条件を満たせなくなります。
住宅ローン控除の期間はリセットされる
住宅ローン控除は、消費税8%時の購入で10年、消費税10%時の購入で13年となっていますが、住宅を買い替え、新しい住居が住宅ローン控除の対象である場合は、また新たに10年間あるいは13年間の住宅ローン控除を受けることができます。
ただしこれは、受ける資格があるだけで、必ず受けられるわけではありません。前の住居を売却した際に利益(譲渡所得といいます)が出た場合、譲渡所得に対して所得税が掛からないような特例を受けると、新しい住居を購入した際の住宅ローン控除を受けることができません。
他にも細かい条件がありますので、譲渡所得が得られる場合は、住宅ローン控除を受けるほうが得か、特例を受けて所得税を払わないほうが得か、税理士などに相談すると良いでしょう。
2年目以降の住宅ローン控除の手続きは必ず行おう!
2年目以降に住宅ローン控除を受ける条件や手続き、書類について説明しました。サラリーマンの場合は年末調整での手続きが可能ですし、必要な書類は郵送されてきますので、年末調整での手続きをおすすめします。
2年目以降であっても、控除を受けるための条件を満たしていることが必要です。申請した住居に住み続けていること、年間所得が一定額以下(3,000万円)であること、返済期間が10年以上残っていること、この3つの条件を満たしている必要があります。
還付額あるいは減税額が大きい控除になりますので、忘れずに必ず手続きを行うようにしましょう。