国民年金と厚生年金切り替えが必要な時とは
日本には現在2つの年金制度があります。国民年金と厚生年金です。それぞれの年金制度で、加入すべき条件、納付額、受け取れる金額などが違います。もし一方の年金に加入していて、状況が変わった場合は、変更手続きをしてもう一つの年金に加入しなおす必要があります。これを年金の切り替えと言います。
働き方が変わる時に切り替えが必要
状況が変わったら、変更手続きをすると書きましたが、状況が変わるとは働き方が変わるということです。もう少し詳しく解説すると、国民年金に加入するのは、無職や自営業の人です。会社員や公務員は厚生年金に加入します。つまり、働き方が変わるとは、このどちらかの部類に変わるということです。
国民年金から厚生年金に切り替える方法
加入する年金の切り替えの第一弾は、国民年金から厚生年金へという場合です。国民年金から厚生年金への切り替え手続きはそれほど難しくはありませんが、基本的なポイントは押さえておく必要があります。そのポイントについて解説します。しかし、働き方が変わった当人がする手続きはあまりありません。
無職や自営業者が会社員や公務員になった場合
まず、国民年金から厚生年金への切り替えが必要なケースですが、無職の人や学生、自営業の人が会社員や公務員になった場合が当てはまります。前者を、正式には第1号被保険者、後者を第2号被保険者と呼びます。このような働き方や立場の変化があった場合は、必ず切り替え手続きをします。
勤務先の会社が手続きする
必ず切り替え手続きをするといっても、働き方や立場が変わった当人がすることはほとんどありません。すべて新しく勤め始めた会社が切り替え手続きをしてくれます。そういう意味では、国民年金から厚生年金への切り替えは楽です。ただし、会社の手続きで、加入者の「年金手帳」か「基礎年金番号通知書」が必要となってきます。
会社に「年金手帳」か「基礎年金番号通知書」を提出する
会社側が代行する国民年金から厚生年金への切り替え手続きに絶対に必要となるので、「年金手帳」か「基礎年金番号通知書」を提出します。会社側ではその情報をもとに、年金事務所に加入者の名前、住所、生年月日、性別、マイナンバーか基礎年金番号などを報告し、切り替え手続きを進めさせます。
「年金手帳」を紛失してしまい、会社側に提出できない場合は、直ちに再発行手続きをする必要があります。その方法は2つあって、年金事務所で申請する、会社を通して申請をするのどちらかですが。どちらでも急いで申請しなければいけません。
「年金手帳」をいつ提出するべきか?
会社が新たな従業員を雇って、厚生年金へ加入させる場合は、その事実があってから5日以内に必要書類を年金事務所に提出することになっています。したがって、そのタイミングに間に合うように会社に「年金手帳」か「基礎年金番号通知書」を提出しなければいけません。具体的にいつまでかは会社側から指示があるでしょう。
厚生年金の誤解
国民年金から厚生年金への切り替えという見出しで説明していますが、正確に言うと少し違います。厚生年金の加入者は国民年金にも同時加入しています。どういうことかというと、厚生年金だけが別の制度ではなく、厚生年金には国民年金も含まれているのです。したがって、厚生年金保険料と国民年金保険料を同時に納めていくことになります。
厚生年金から国民年金への切り替え方法
国民年金から厚生年金への切り替えの場合、会社側がほとんどの手続きをしてくれるので楽ですが、逆のパターンではそういうわけにいきません。今度は自分でもしなければいけない手続きがあります。それを含めて何をするべきかを解説していきます。ただ、手続きを忘れないようにすることも大切です。
会社員が退職し自営業や無職になった場合
厚生年金から国民年金への切り替え手続きが必要なケースは次のようなものです。会社員や公務員が退職して、自営業を始めるか無職になるかです。また、仕事を一時的に辞めて、学生の身分になる場合も国民年金への切り替えをします。いずれにしろ、厚生年金の保険料と違い、国民年金保険料は個人の責任で納めていくことになります。
自分で切り替え手続きをしなくてはならない
厚生年金から国民年金へ切り替えをする場合、2つの手続きがあります。厚生年金の脱退手続きと国民年金の加入手続きです。このうち、後者の国民年金への加入手続きはすべて自己責任で行う必要があります。国民年金から厚生年金への切り替え時のように、会社が代行してくれるわけではないので、しっかりと手順を踏んで手続きしてください。
国民年金への加入手続きを役場で行う
国民年金への加入手続きは、現在住んでいる市区町村の役場で行います。期限は退職後14日以内ですが、忘れた場合の手続きについては後程解説します。加入に際して必要な書類があります。まず、退職日を示せる証明書です。雇用保険被保険者離職票、雇用保険受給資格者証、社会保険資格喪失証明書、退職証明書、退職辞令書などです。
次に、基礎年金番号が分かる書類も必要です。これは、国民年金から厚生年金への切り替えでも登場した「年金手帳」や「基礎年金番号通知書」などがあれば、用を足します。
それから、本人確認書類と印鑑も準備しましょう。本人確認書類として役に立つのは、運転免許証、パスポート、健康保険証などです。
退職翌日に再就職する場合は手続きの必要がないが
退職した翌日に再就職する場合、厚生年金から国民年金への切り替え手続きは必要ありませんが、再就職まで少し日にちが空く場合は、国民年金への切り替えをしなければいけません。そのうえで、再就職先でまた厚生年金への切り替え手続きをします。面倒なようですが、それが決まりです。
委任状があれば代理人でも手続き可能
委任状があれば、代理人でも国民年金加入手続きができます。忙しい人は代理人を立てて、手続きをするほうが、手続きを怠るよりもずっといいです。なお、代理人が手続きを行う場合も、必要書類は変わりません。本人の退職日が分かる書類、年金番号が分かる書類、本人の本人確認書類などを準備しますが、もう1点、代理人の本人確認書類も提出します。
厚生年金の脱退手続きは会社が行ってくれる
厚生年金から国民年金への切り替え手続きのうち、厚生年金の脱退手続きは会社がすべてしてくれます。これは、国民年金から厚生年金への切り替え手続きと同じで、自分がすることはありません。そういう意味では楽ですが、だからと言って、もう一つの手続きである国民年金への加入手続きを忘れないようにしましょう。
年金手帳を返してもらうように注意する
厚生年金の脱退手続きが終わったら、「年金手帳」を返してもらわないといけません。「年金手帳」は会社の持ち物ではなく、年金加入者のものです。もし返してもらうのを忘れると、次の手続きに進めない場合も出てきます。そうなっては困るので、一言会社に言っておきましょう。そうすれば、大丈夫です。
厚生年金から国民年金への切り替え手続きを忘れた場合
厚生年金から国民年金への切り替え手続き、特に国民年金の加入手続きは自分で行う必要がある為、その手続き自体を忘れてしまう場合があります。ただ、そのようなことになっても、大きな問題にはならないようになっていますが、だからと言って事はそう簡単ではありません。忘れた場合どうなるのか詳しく見てみましょう。
手続きを忘れたことに気づいた場合
国民年金への切り替え手続きを忘れた場合、その事実にすぐ気づく場合と気づかない場合があります。それぞれ対応が違いますが、まず気付いた場合を考えてみましょう。この場合は、できるだけ早く、手続きを行う必要があります。忘れただけで特に悪気がなければ、大きなトラブルにはなりません。
速やかに役所に行き手続きをする
国民年金への切り替え手続きを忘れたことに気づいたら、速やかに市区町村の役所へ行き、新たに加入手続きをしましょう。それは早ければ早いほどよく、年金未納期間が生じないで済む可能性があります。年金未納期間があると後で厄介なことになるので、忘れたことに気づいた時点ですぐに手続きをしてください。
手続きを忘れたことに気づかなかった場合
国民年金への切り替えを忘れたことに全く気づかない場合もあるでしょうが、この場合は少し面倒です。しばらくはその気付かない状態が続き、年金保険料が未納となります。後で、加入し直すにしても、未納となった保険料をまとめて納めなければいけないケースも出てきて、困る場合があります。
国民年金加入の届書が送られてくる
国民年金への切り替えを忘れて気づかないと、年金機構から国民年金加入の届書が送られてきます。それを見れば、自然に忘れていることに気づくでしょうが、問題はこの届書が送られてくる時期です。年金機構が早く察知して、届書を送ってくれればいいですが、照会などに時間が掛かると、切り替えすべき時期よりもかなり遅れて届くことになります。
届書が遅れてきた場合
遅れて届書が来た場合でもすぐに国民年金加入手続きをしなければいけませんが、それでも未納期間が長くなっている場合があります。そうなれば、一括請求ということもあり得ます。もし一括請求をされても保険料を納められないと、受け取れる年金額が減ったり、障害年金や遺族年金の受給に支障が生じたりなど、いいことはありません。
国民年金を未納した場合のもう一つのデメリット
国民年金の未納期間が長くなった場合、年金の受給額が減る以前に、財産の差し押さえという事態になることがあります。これについてはルール(平成30年度のルール)が設けられていて、各種控除後の所得が300万円以上で、未納期間が7か月以上になると、まず年金機構から督促があり、それも無視すると、最悪の場合財産差し押さえになるとしています。
忘れたのではなく年金の保険料を納められない場合
国民年金への切り替えを忘れたら、結局は自分が損をすることになりますが、忘れたのではなく、保険料が支払えないという人もいるでしょう。退職で収入減となっている場合などです。その場合も切り替え手続きはしっかり行うべきです。そのうえで、保険料の免状や猶予制度について年金機構に相談してみましょう。
国民年金から厚生年金に切り替えたのに未納所が届いた場合
国民年金から厚生年金へ切り替えた場合は、それ以上国民年金保険料を納める必要はありません。厚生年金保険料については、給料からの天引きになるので、わざわざ自分で納付するまでもありません。ところが、厚生年金に切り替えたのに国民年金保険料の未納書(納付書)が届く場合があります。どういうことなのでしょうか。
慌てて支払う必要はない
国民年金から厚生年金へ切り替え後も未納書(納付書)が届く場合、慌てて支払う必要はありません。何かの手違いの可能性があります。慌てて支払いをすると、国民年金と厚生年金の二重納付となる場合があります。そのような場合も、余分に納めた分は還付されますが、それまでに少し時間が掛かるので、まずは冷静になることが肝心です。
行き違いの可能性もある
厚生年金へ切り替えでも、国民年金の未納書(納付書)が送られてくるのにはいくつか理由があります。そのうち、最も多くの場合に当てはまるのが、事務処理上の行き違いです。すでに厚生年金へ切り替え手続きが進んでいるのに、納付書の送付時期が来てしまったという場合です。この場合は特に心配の必要はありません。
支払う必要があるか考えてみよう
厚生年金に切り替えて、本来届くはずのない国民年金の未納書(納付書)が届いた場合、事務処理上の行き違いの可能性はありますが、そうでないケースもあります。つまり、納付しなければいけない場合です。したがって、どのような場合に国民年金保険料を納付すべきなのかをよく考えたうえで、判断する必要があります。
厚生年金の加入月を知っておこう
国民年金の未納書(納付書)が届いて、その内容の通り保険料を納付すべきかどうかを判断する為に厚生年金の加入月を知っておく必要があります。厚生年金の加入月は、入社日の属する月です。つまり、入社日が10月1日なら10月、10月31日でも10月が厚生年金加入月となります。したがって、この月は国民年金保険料を納める必要はありません。
退職した場合に未納書は届く?
少しややこしいのは、退職と再就職が同じ月になっている場合です。つまり、10月15日に退職し、10月25日に再就職した場合などです。この場合は、月末時点の状況で判断します。上記の場合は、月末時点で厚生年金に加入しているので、国民年金保険料を納める必要はありません。
しかし、10月15日に退職し、11月1日に再就職した場合は、月末時点で国民年金加入者となっているので、国民年金保険料を納めます。10月31日に退職した場合は、月末時点で厚生年金加入者なので、国民年金保険料の支払い義務は生じません。
注意したい場合
10月22日に退職し、11月以降に再就職したケースで、厚生年金保険料が給料から天引きされ、しかも国民年金保険料の未納書(納付書)が届く場合があります。この場合は、月末時点で国民年金加入者なので、国民年金保険料を納付するのは当然として、厚生年金保険料が天引きされていることに納得ができないでしょう。
これは、厚生年金保険料納付の仕組みに原因があります。どういうことかというと、当月の厚生年金保険料を当月ではなく、翌月の給与分から差し引く場合があるのです。つまり、10月の給与から差し引かれたのは9月分の厚生年金保険料です。これで納得がいくでしょう。
国民年金や厚生年金の未納の確認方法
厚生年金保険料は給与からの天引きなので、未納になることはありませんが、国民年金保険料は自分で納めるというルールがあるので、何らかの理由で未納になっている場合があります。その点で特に注意したいのが、試用期間の存在です。試用期間中は厚生年金に加入させないという会社があるので、国民年金の未納になってしまう場合があります。
「ねんきん定期便」「ねんきんネット」で確認する
国民年金保険料の未納期間があれば、損をしますから、その確認をする必要があります。その方法ですが、「ねんきん定期便」と「ねんきんネット」があります。まず、「ねんきん定期便」は、毎年誕生月に送られてくる年金記録で、これを見れば保険料の未納状況が分かります。「ねんきんネット」では、パソコンやスマホから年金記録をチェックできます。
日本年金機構からお知らせが届く
「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」以外にも、未納状況の確認方法があります。まず、日本年金機構から年に2回「国民年金未納保険料納付勧奨通知書(催告状)」という郵便物が送られてくるので、これを見れば未納期間があることに気づきます。また、7月ごろに未納期間分の保険料納付書も郵送されてくるので、気づかないということはありません。
国民年金保険を前納してしまった場合
無職の人や学生、自営業者が会社員や公務員になる場合は、国民年金から厚生年金へ切り替えをしますが、その切り替えが済む前に国民年金保険料をすでに支払ってしまっているというケースがあります。どういうことかというと、厚生年金に加入した月の分まで、国民年金保険料を納めている場合があるのです。
厚生年金に切り替えたら二重で払う可能性も
国民年金から厚生年金への切り替えで、同じ月に国民年金保険料も納め、厚生年金の保険料も天引きされるというケースがありますが、よくあるのが国民年金保険料を前納している場合です。この場合は、保険料の二重払いとなり、損をしてしまいますが、還付がされるので、必ずしもマイナスになるわけではありません。
確定申告で重複期間分の保険料は控除されない
確定申告をしたことがある人はご存知でしょうが、国民年金保険料は社会保険料控除の対象です。したがって、確定申告時に国民健康保険料分を控除してもらえば、税金が安くなります。これはこれでありがたい確定申告の制度ですが、年金の保険料を二重払いしたときには一つ問題があります。
国民健康保険料と厚生年金保険料を二重払いしている場合は、国民年金保険料は確定申告の控除対象から外れます。それは残念と思う人がいるかもしれませんが、二重払いした国民年金保険料は後で還付されるので、確定申告の控除対象にならないのは当たり前です。
年金保険料を二重払いしている人は、その分を差し引いて、確定申告時に申告することになります。確定申告を自分でやる場合はそのように申告すべきだし、確定申告ではなく年末調整の場合は、勤務先を通じて同じように申告しなければいけません。
二重払いで確定申告の控除申請をしてしまった時
確定申告時には、二重払いした国民年金保険料は控除に含めないで申告をするのですが、タイミングの問題で、確定申告においてこの国民年金保険料を控除分として申告してしまう場合があります。そのような場合、その国民健康保険料は還付されるので、得をしたことになりますが、その内容の確定申告を放置してはいけません。
確定申告で控除分に含めてはいけない二重払いの国民健康保険料を申告した場合は、確定申告の修正申告をします。また、年末調整を行っている場合は、自分で確定申告をして、修正する必要があります。
解決策は「国民年金保険料過誤納額還付・充当通知書」
国民年金保険料と厚生年金保険料を二重払いしても、そのままの状態が続くわけではありません。年金事務所では、各個人の基礎年金番号によって年金の加入状況、納付状況を把握しているので、いずれ通知書を送付します。その通知書を「国民年金保険料過誤納額還付・充当通知書」と言います。この通知書があれば、還付を受けられます。
「国民年金保険料過誤納額還付・充当通知書」は、再就職後1、2か月すると送られてきますが、事務手続きなどの遅れにより、さらに送付が後になる場合があります。もし2、3か月経ってもこの「還付・充当通知書」が届かなければ、問い合わせをしてみましょう。
振込先を記入して返信する
「国民年金保険料過誤納額還付・充当通知書」があれば、二重払いした国民年金保険料の還付が受けられると書きましたが、正確に言うと、これは通知書にすぎません。つまりお知らせです。実際に還付を受ける為には請求書が必要です。その請求書が「国民年金保険料還付請求書」という書類で、この還付請求書を送付するか持参して、還付を受けます。
「国民年金保険料還付請求書」には、還付を受ける国民年金保険料の振込先を記入します。そのうえで送付か持参すれば、還付が行われるようになっています。
1・2か月後には返金される
「国民年金保険料還付請求書」を送付するか持参してからの流れですが、「国庫金振込通知書」という書類が送られてきます。この書類に、いつ振り込みが行われるのか、どこの金融機関に振り込まれるのかなどが記載されています。内容を確認したら、後は還付を待つだけです。
「国民年金保険料還付請求書」が受理されてから、実際に還付が行われるのは1、2か月後です。二重払いが行われてら計算すると、数か月にもなります。つまり、還付まではかなり時間を要するのであり、慌てずに待つしかありません。
郵便局でも還付金を受け取れるが
二重払いした国民年金保険料の還付は銀行振込で受け取るのが基本ですが、郵便局の窓口でも還付金をもらえます。ただ、郵便局で還付金を受け取る場合は、さらに時間を要する場合もあり、トラブル発生リスクもあるので、年金事務所では推奨していません。したがって、還付金はできるだけ銀行振込で受け取りましょう。
年金の切り替えと一緒に健康保険の切り替えも
この記事は、年金の切り替えに関するものなので、健康保険の切り替えについては取り上げませんでしたが、せっかく年金を切り替えるのなら、健康保険もついでに切り替えをしておくといいでしょう。健康保険の切り替えがスムーズに進まないと、保険未加入期間が生じることになり、医療費全額負担という事態も考えられるからです。
厚生年金から国民年金への切り替えには要注意!
ここまで、国民年金と厚生年金の切り替え方法や切り替えを忘れた場合どうすべきかなどについて解説しました。国民年金から厚生年金に切り替える場合は、会社が手続きをしてくれるので問題は生じませんが、厚生年金から国民年金への切り替えは要注意です。手続きを自分で行うことになるので、手順や必要書類などを間違わないようにしましょう。