初年度の住宅ローン控除とは?
住宅を購入する場合、何千万円という大きな金額の住宅ローンを借り入れることが一般的です。新たに住宅ローンを借り入れる場合、いくつかの条件を満たすと、住宅借入金等特別控除、通称「住宅ローン控除」を受けることができます。
この記事では、住宅ローン控除を受けるにあたって、住宅を購入した初年度に必要な申請の方法や申告書などの必要書類の集め方、さらにいつから申請ができるようになるのかなどを解説します。
控除を受けるために確定申告が必要!
住宅ローン控除を受けるためには、初年度に必ず確定申告が必要となります。確定申告を行うためには、いくつかの必要書類を揃え、税務署へ申請する必要があります。
一般的なサラリーマンの場合は、所得税の確定申告は会社を通じて年末調整で行いますので、ハードルが高いと感じるかもしれません。必要書類を集めるために、役所以外にも法務局や税務署に出向く必要がある時もありますが、面倒くさからずに申請を行うようにしましょう。
なお、個人事業主の場合は、サラリーマンのような年末調整の制度がないため、毎年行う確定申告にて、追加で書類を提出することになります。
初年度の住宅ローン控除は必要?
住宅ローン控除を受けるためには、初年度に必ず確定申告が必要となります。ただ、サラリーマンの場合は確定申告自体の経験がなく、住宅ローン控除での還付申請が初めての確定申告となるケースが多いです。
確定申告と聞くと、必要書類集めが大変だったり、申告書の書き方が難しそうといったイメージがあり、躊躇する方も多いかもしれません。
ただ、住宅ローン控除で還付、あるいは減税される金額の大きさを考えれば、住宅ローン控除を受けないと損をするということを、ここでは解説します。
初年度に住宅ローン控除をしないと損をする?
初年度に住宅ローン控除を受けないと、損をするとはどういうことでしょうか。それは、住宅ローン控除の性質上、初年度の控除額が最も大きいことが理由です。
住宅ローン控除は、年末時点の借り入れ残高の1%を控除額として計算します。住宅ローンは毎月少しずつ返済をしていきますので、借り入れた初年度よりも、翌年度以降のほうが借り入れ残高が少なくなります。つまり、控除額は年を追うごとに少なくなっていくのです。
最大で所得税から40万円の控除も!
年末時点の借り入れ残高の1%を控除額として計算しますが、上限が設定されています。40万円(認定長期優良等の場合は50万円)が控除上限ですので、借り入れ残高は4000万円となります。つまり、6000万円の借り入れ残高が年末時点にあったとしても、控除額は40万円までとなります。
毎年、借り入れ残高の減少に伴って控除額が少なくなるとはいえ、控除期間10年の合計で考えると、数百万円にものぼります。なお、消費税が10%に増税されると、控除期間は13年となりますので、更に合計の控除額は多くなります。
自身が納めた税金以上の還付がないことに注意
控除額の上限は40万円ですが、住宅ローン控除は所得税あるいは住民税からの控除となります。もし、この2つの納税額が借り入れ残高の1%より少ない場合、控除額の上限は40万円ではなく、納税額となります。
更に、住民税からの控除額上限は13万6500円と決められていますので、仮に所得税を20万円納めている場合は、合計の控除額は33万6500円となり、借り入れ残高が4000万円あったとしても、40万円の控除を受けることができません。
特に、住宅ローン控除以外に生命保険料控除や扶養控除などによって、所得税が既に控除されている方もいます。借り入れ残高が4000万円以上あるにも関わらず、控除額が40万円に満たない場合は、所得税の納税額が少なくなっていないか、確認してみましょう。
初年度の住宅ローン控除の申請方法とは?
住宅ローン控除を受けないことで、借り入れ残高によっては、数百万円を損する可能性があることはご理解いただけたでしょうか。ここからは、初年度の住宅ローン控除をうけるために、いつまでにどのような申請を行えばよいのかを解説します。まずは申請方法です。
初年度の住宅ローン控除の申請は、自営業・サラリーマンを問わず、全員が確定申告を行う必要があります。
初年度の住宅ローン控除は確定申告にて行う
住宅ローン控除を受けるためには、まず所得税や住民税を決定する必要があります。1年間の所得から、扶養控除や保険料控除などを行った金額に対して、所得税や住民税が決定されます。初年度の住宅ローン控除では、この手続きに加え、住宅ローン控除を受けるための書類を提出します。
なお、サラリーマンの場合は、個人事業主等と異なり、自身の所得の確定は年末調整にて実施します。そのため、確定申告では年収の記載はありますが、住宅ローン控除に関する申請だけを行うイメージとなります。
税務署で手続き可能
確定申告は所得税などの税計算を行うための申請ですので、役所ではなく、税務署にて行います。確定申告の時期になると、確定申告を行う人達で税務署が非常に混み合います。現在はインターネットで書類をダウンロードして郵送したり、オンライン上で提出することも可能となっています。
なお、確定申告の時期になると、税理士が確定申告の会場にいて、確定申告書の書き方を教えてくれます。申告書などの書き方で分からないことがあれば、確定申告の会場へ出向きましょう。
2年目以降の住宅ローン控除を受けるには?
初年度の住宅ローン控除を受けるためには、必ず確定申告が必要ですが、2年目以降の住宅ローン控除に関する申請は、年末調整でも可能となります。以下の記事に2年目以降の手続方法についてまとめていますので、サラリーマンの方は合わせてご覧ください。
2年目以降は年末調整で申請できますので、面倒な確定申告は初年度だけの作業となります。次で述べる必要書類を集め、確実に申請してしまいましょう。
初年度の住宅ローン控除の為の必要書類とは?
確定申告では、住宅ローン控除の算出に必要な住宅ローン残高に加え、住宅ローン控除を受けるための条件を満たしているかどうか、書類によるチェックを受けます。確定申告書に記載した内容と、一緒に提出する各種証明書の内容に齟齬があれば、申告書は受け付けられず、住宅ローン控除を受けることができません。
まずは必要な各種証明書に不備が無いように、どういった書類が必要なのかを整理しておきましょう。
必要書類は忘れずに揃えておこう!
ここから述べる各種必要書類のうち、①~③は確定申告を行うための書類、④~⑧は住宅ローン控除を受けるために提出する書類です。⑧を除いて、書類が抜けていたり不備があったりすると、確定申告を受理してもらえないため、書類は不足なく揃える必要があります。
⑧は、特別な認定を受ける人は提出する必要があります。特別な認定とは、上限40万円の控除額を50万円に引き上げるためであったり、中古住宅の購入で住宅ローン控除を受ける場合の認定です。
必要書類①確定申告書
確定申告を行うために、各種事項を記入した書類です。これがなくては始まりません。確定申告書にはAとBがあり、Aは主にサラリーマンが確定申告を行う場合に使用する様式で、Bは個人事業主や不動産所得などがある場合に使用する様式です。
確定申告書は最寄りの税務署に行くことで入手できますし、郵送や国税庁のホームページからのダウンロードも可能です。また、国税庁のe-Taxを利用する事で、オンライン上で申告書を作成し、そのまま提出することもできます。
毎年のように確定申告を行う必要があれば、国税庁のe-Taxを利用するための環境を整えても良いですが、初年度だけの申請であれば、税務署へ直接提出する方法で良いでしょう。
必要書類②源泉徴収票
確定申告書Aを使用する場合は、その所得を証明する書類が必要となるため、源泉徴収票を添付する必要があります。毎年、12月末~1月にかけて勤務先が発行する書類です。自らの年収だけでなく、各種控除額なども詳細に記載されていますので、確定申告が終わった後も大切に保管しておきましょう。
なお、2年目以降に年末調整で住宅ローン控除を申請すると、源泉徴収票に控除金額が記載されるようになります。所得税からいくら控除されたのかは、この金額によって確認できるようになります。
必要書類③マイナンバーが分かる書類
確定申告では、2016年分の申告からマイナンバーの提示が必要となりました。マイナンバーカードを持っている方は、両面コピーの提出が必要です。通知カードの場合は、通知カードのコピーと運転免許証などの本人確認書類のコピーが必要です。
マイナンバーカードを持っておらず、通知カードを紛失してしまった場合は、マイナンバーの記載された住民票の写しでも問題ありません。その場合は、本人確認書類のコピーも合わせて提出する必要があります。
必要書類④住宅借入金等特別控除額の計算明細書
ここからは住宅ローン控除のために必要な書類です。住宅借入金等特別控除額の計算明細書は、住宅ローン控除を受けるにあたって、取得した不動産の価格と持分、年末時点の残高等を記載して、住宅ローン控除としていくら受けるかを記載します。
この書類は確定申告書と同様、税務署へ出向いたり国税庁のサイトからダウンロードして印刷することもできます。なお、国税庁のサイトでは、必要な数値を入力すると、その他の値を自動計算してくれるようになっており、それを印刷できます。計算ミスによる差し戻しが防げますので、ご活用ください。
必要書類⑤借入金の年末残高等証明書
借入金の年末残高等証明書は、必要書類④で記入した借り入れ残高を証明するための書類です。住宅ローンを借り入れた金融機関が発行し郵送されますので、確定申告の時期になっても手元にない場合は、金融機関に問い合わせましょう。
一般的には年末調整が行われる前の10月~11月に発行されますが、初年度は確定申告前である1月頃の発行となるケースもあるようです。心配な場合は、事前に確認しておくことをおすすめします。
必要書類⑥家屋・敷地の登記事項証明書
住宅ローン控除を受けるためには、その家屋・敷地の情報が、住宅借入金等特別控除額の計算明細書に記載された内容に間違いがないことを証明するため、登記事項証明書が必要となります。
この書類は法務局で発行してもらう必要がありますが、直接出向く以外に、インターネットで交付請求をして、郵送してもらう方法もあります。
ちなみに、最も発行手数料が安く済むのは、オンラインで申請して、法務局の窓口へ受け取りにいく方法になりますが、郵送の場合でも+20円で済みますので、税務署がよほど近くに無い限り、受け取りに行く手間を考えると郵送が良いでしょう。
必要書類⑦家屋・敷地の売買契約書や請負契約書の写し
家屋や土地の取引を行う際に交わした売買契約書のコピーや、家屋の建築のみを行った場合は請負契約書のコピーを提出する必要があります。取得価格の確認や、売買の事実確認に利用されます。
いずれの書類も、契約時に原本を受け取っていますので、それをコピーすれば問題ありません。万が一、原本が見当たらない場合は、取引先に連絡してコピーを取らせて貰う必要があります。
必要書類⑧特例要件を証明する為の書類
最後に、特例要件を証明するための書類について説明します。①~③は確定申告のための必要書類で、④~⑦は住宅ローン控除の申請に必要な書類です。特例要件の対象家屋や土地であった場合、⑧を提出することで、控除額の増額(40万円→50万円)や築年数の古い中古住宅でも住宅ローン控除を受けることが可能になります。
認定長期優良住宅や低炭素建築物としての特例要件を証明する書類
認定長期優良住宅や低炭素建築物と認定された家屋を購入した場合、控除額が増額されます。認定長期優良住宅や低炭素建築物としての「認定通知書」、「住宅用家屋証明書」、「建築証明書」のいずれかを提出することで証明できます。
「認定通知書」や「住宅用家屋証明書」は引渡し時に交付されますので、該当する方は契約時の書類を確認しましょう。また、「住宅用家屋証明書」については、市役所等での再交付も可能です。なお、「建築証明書」については、建築士や国土交通省の指定検査機関等が発行を行います。
中古住宅で住宅ローン控除を受ける場合の書類
住宅ローン控除では、建築方法によって異なりますが、築20年~25年以内の家屋が対象となっています。これ以上の築年数の家屋を購入した際にも住宅ローン控除を受けるためには、条件を満たしていることを証明する書類の提出が必要です。
「耐震基準適合証明書」、「建築住宅性能評価書の写し」、「既存住宅売買瑕疵担保責任保険契約に係る付保証明書」のいずれかの提出が必要となります。それぞれ、国土交通省の指定機関による作成となる上、引渡日の前2年以内が交付日のみ有効となります。契約時に書類の有無を確認しておきましょう。
初年度の住宅ローン控除はいつまでに申請する?
ここまで、住宅ローン控除を受けるための必要書類についてまとめました。では、住宅ローン控除の申請はいつ行えば良いのでしょうか。確定申告は毎年2月~3月が受付期間ですが、実は必ずしもこの期間に行う必要はありません。ただし、いつから受け付けられるかは決まっていますので、この点について解説します。
確定申告は毎年2月16日~3月15日
確定申告の時期は決まっており、毎年2月16日~3月15日までの1ヶ月間です。この期間は、確定申告を行う人で税務署が非常に混み合います。先にも述べたように、申告書の書き方等が分からない人は、税理士に相談しながら書類を記入することができます。
記入方法については様々なサイトやブログでも紹介されていますので、住宅ローン控除のみを申請する場合は、わざわざ税務署まで出向かなくとも問題ありません。オンライン上で必要事項を記入して印刷したものを、この期間中に税務署へ郵送すれば、出向いた場合と同じように受理されます。
確定申告の時期でなくても書類作成は出来る!
この1ヶ月間は、所得税を確定する必要がある、本来の確定申告を行う期間となっており、実は住宅ローン控除や医療費控除などの還付申請だけを行う場合は、この期間外であっても書類の作成や申請できます。ではいつから申請が可能かというと、年明け1月1日より還付申請は可能となります。
なぜ1月1日かというと、住宅ローン控除は年末時点の借り入れ残高で控除額が決定されますので、12月31日を過ぎないと、借り入れ残高が確定しないためです。
2月~3月は年度末にあたる方も多く、仕事も忙しくなる時期ですので、余裕を持って1月中に確定申告の書類を用意し、なるべく早めに提出してしまいましょう。
初年度の住宅ローン控除の注意点とは?
初年度に住宅ローン控除の申請を行う場合、いつまでにどんな書類の準備が必要かについて述べました。ここからは、住宅ローン控除の申請時に気をつけなければいけないことについて解説します。当たり前な内容もありますが、意外な落とし穴となるものもありますので、必ず目を通すようにしてください。
必要書類に不備があると申請出来ない
確定申告書に記載した内容や必要書類に不備・漏れがあった場合は、確定申告の申請が受理されません。受理されなかった場合は通知が来ますので、不備内容を確認して再提出する必要があります。
再提出だからといって期限が延びるわけではなく、あくまで3月15日が締め切りになりますので、期限ぎりぎりに提出して不受理となると、その年は住宅ローン控除を受けることができなくなってしまいます。
なお、確定申告による還付申請は5年前まで遡って申請することができますので、翌年に再度、住宅ローン控除の申請を行い、受理されれば還付を受けることができます。
複数人で住宅ローン控除を受ける場合はそれぞれが申請する
親子や夫婦で連帯債務とした場合、各々が住宅ローン控除を受けることができます。たとえば8000万円の借り入れをし、夫婦で1:1の持分とすれば、それぞれが40万円の住宅ローン控除をフルに活用できます。
この場合、1つの物件に対する住宅ローン控除の申請ですが、夫婦それぞれが確定申告を行う必要がありますので注意してください。
また、住宅ローン控除は所得税・住民税からの控除となりますので、仮に妻が専業主婦で収入がないにも関わらず持分を設定しても、妻は所得税・住民税を支払っていないため、住宅ローン控除が受けられません。
必ず全ての必要書類や申請方法を把握しよう!
これ以外にも、還付申請以外にも不動産所得や投資による収入がある場合は、必要な書類が増えますし、申告書の書き方も異なります。自分が確定申告をする上でどの申請が必要なのかを把握し、必要な書類を整えるようにしてください。
給与所得以外にも所得があり、どのような申請をしなければいけないか分からない場合は、国税庁のホームページや税務署へ確認すると良いです。
確定申告の結果はいつ出るの?
ここまで、住宅ローン控除の申請に関して、いつまでにどのような書類を準備するのか、申請方法や注意点を解説しました。最後に、申請した確定申告の結果がいつ出るのか、確認方法はあるのかについて、解説します。特に気になるのは、いつ還付金が支払われるのかだと思いますので、その点についても説明します。
受理されたかどうかの通知をもらうためには
税務署へ直接出向いた場合は、確定申告書を提出した際に、税務署で確定申告書の控えに日付印を押して渡してくれます。これが受理通知となります。ただ、郵送の場合は、何もしないと受理通知がもらえません。e-Taxの場合はデータを受け付けたという画面が表示されますので、それが受理通知となります。
郵送で確定申告書を提出して受理通知が欲しい場合は、確定申告書を提出する際に、返送先住所を記載した封筒に切手を貼って同封すれば、確定申告書の控えを郵送してくれます。
確定申告から約1ヶ月で口座に振り込まれる
いつに住宅ローン控除の申請が受理されたのかどうかの結果が出るかというと、約1ヶ月後になります。申請した内容に不備がない場合、確定申告から約1ヶ月後に指定した口座に還付金が入金されることが多いようですが、これは税務署によって若干の違いがあります。
なお、還付金として入金されるのは所得税からの控除分のみで、住民税からの控除分は、その年の住民税から減税という形で控除されます。入金された金額が借り入れ残高の1%より少ない場合は、住民税から減税されているか、確認しましょう。
正式書類は10月頃に郵送される
住宅ローン控除の申請が無事に通り、還付金が入金された後、「住宅借入金等特別控除申告書兼証明書」というものが税務署から届きます。いつ届くかと言うと、大体10月頃が多いようです。住宅ローン控除の申請が正式に受理されたことを示す書類となり、翌年以降の住宅ローン控除の申請に必要な書類が同封されています。
残り期間である9年分(消費税10%時の購入だと12年分)の申請書類が同封されていますので、失くさないように注意しましょう。万が一なくした場合は、税務署へ再発行依頼する必要があります。
初年度の住宅ローン控除の申請方法等を理解して確実に申請しよう!
初年度の住宅ローン控除を申請するために必要な書類や、いつに申請を行うのか、また注意事項について解説しました。住宅購入後、翌年の確定申告ができなかった場合でも、5年間は遡って還付申請できるとはいえ、先延ばしにするメリットは特にありませんので、翌年に確実に申請できるよう、早いうちから準備をしておきましょう。