雑所得とは
雑所得とは一体どんな収入のことなのでしょう。所得とは収入金額から必要経費や基礎控除、保険料控除など所定の控除を差引いた後の、商売で言えば「儲け」に相当する金額のことです。
所得は10種類に区分されていて、その中の一つが雑所得で、サラリーマンの給料も「給与所得」という所得に区分されます。
給与所得は特殊な場合を除き、確定申告など申告の必要はなく、会社が行う年末調整で税額が計算される点が雑所得とは違います。
年末調整後に渡される源泉徴収票の中にある「所得控除金額」がサラリーマンの場合の「経費」にあたります。
他9種類の所得のいずれにも当たらないもの
所得には「利子所得」「配当所得」「不動産所得」「事業所得」「給与所得」「退職所得」「山林所得」「譲渡所得(資産の売買益)」「一時所得(クイズなどの賞金)」があります。
これら9つのどれにも当てはまらない所得を「雑所得」といい、この雑所得を合せた合計で所得は10種類に区分されます。また「雑所得」の主なものには公的年金、原稿料や印税、講演料や出演料などが相当します。
雑所得の必要経費はどこまで認められる?
所得税法上の必要経費とは「所得を得るために必要な経費」と定められていて、雑所得の場合は雑収入から必要経費を差引いた金額が20万円を超えている場合は確定申告する義務があるとされています。
しかし雑所得の場合どこまでが必要経費として認められるのかが非常に分かり難いのが実情です。公的年金には経費は存在しませんが、一定の金額が控除として認められてこの控除が経費の替わりになります。
文筆家の原稿料や印税の場合は、作品を作るために必要な原稿用紙やペン、インク、パソコン、下調べの旅費、調査費用、色々ありますが、私的利用のものは必要経費とは認められませんが、その線引きが難しいのも事実です。
副業収入から必要経費を引いた金額
最近はインターネットの普及にともない、ユーチューブやアフィリエイト、ラインスタンプ、仮想通貨などによる副収入が手軽にできるようになり、雑所得や副業の形態が様々に広がり変化しています。
副業が手軽なだけに雑所得としてお金を稼いでいるという感覚があまりありません。しかし金額が大きくなれば副業も課税対象になります。
このような雑所得で何が必要経費になるかは、前述の原稿料などの雑所得に比べ、半分遊びの感覚で稼いでいるので判断はさらに難しくなります。
必要経費とは
必要経費とは「所得を得るために必要な経費」のことで、物販をする事業の場合は、品物を仕入れた金額、販売するために広告宣伝した費用、販売するためにかけた人件費、店舗を借りた場合は家賃、水道光熱費などになります。
たとえば花屋さんの場合は、花が売上原価(仕入)になり、飲食店の場合は料理を作る食材が仕入になります。物販の場合は売るものが仕入なので非常に分かりやすいです。
しかし雑所得の場合は、収入や売上につながるものにハッキリとした形がない場合が多いので、何が売上原価(仕入)なのかよく分かりません。
たとえば副業でアフィリエイターをして雑所得を得た場合、いったい何を売上原価(仕入)や経費とすれば良いのでしょう。
このように事業所得も雑所得も必要経費の基本原則は同じですが、雑所得の場合は必要経費が明確でないところに判断の難しさがあります。
雑所得の必要経費として可能な項目
雑所得の場合、物販のように売上原価(仕入)に相当する明確なものがありません。そのため雑所得の場合は、仕入に見合うものも必要経費として大きくとらえる必要があります。
原則は税務署が雑所得を得るために必要と認めたものが必要経費です。では必要経費と認められる項目にはどのようなものがあり、判別し難い場合はどのようにすればよいのでしょう。
パソコン費用は必要経費?
現在は文筆家でもパソコンを使う方がほとんどです。またユーチューバーやアフィリエイターにとってパソコンは雑所得を得るために、なくてはならない必須のアイテムです。
つまり雑所得を得るためにパソコンは必要不可欠な必需品なので、それに関連する費用は必要経費として認められます。
パソコンの費用には、本体の購入費用はもちろんですがプロバイダ料金やサーバー使用料も含まれます。プロバイダ料金やサーバー使用料は私的利用と業務利用が取引の記録などから明確に区分できれば必要経費として認められます。
パソコンが私的なものと業務用とハッキリ2台に分かれている場合は、業務用の本体購入費用は雑所得の経費として算入できます。価格が15万円未満であればその年度内で、15万円以上の場合は減価償却費として数年に分けて経費計上ができます。
1台で共有している場合は、利用の度合いで案分することも可能ですが、その証明がなかなか難しい場合は認められないケースがあります。後々のことを考えるならパソコンは業務専用にすることをおすすめします。
交通費は必要経費?
交通費は業務遂行上必要と認められれば、雑所得の必要経費として計上が可能です。交通費には電車やバスなどの公共交通機関のほか、自家用車のガソリン代、高速料金、駐車料などを含みます。
ただし、しっかりとした領収書が必要です。スイカなどのICカードの場合は、チャージした時の領収書ではなく利用履歴明細が必要です。これは雑所得だけでなく他の所得でも同じです。
この利用履歴はICカードを入れて20件〜50件まで行き先と使った金額が表示されるので、必要経費の証明になります。
また雑所得を得るための業務打合せなどで利用した交通費は認められますが、家族旅行など私的な利用は経費にならないのはパソコンの場合と同じです。
家賃は必要経費?
副業として雑所得を得ている場合、自宅で業務を行っている方が多いのではないでしょうか。その場合の賃貸住宅の家賃は雑所得の必要経費として認められるのでしょうか。
たとえば自宅の中で業務をする部屋が独立している場合は、住宅の総面積と業務をしている部屋の面積割合を申告すれば、割合に応じた家賃が雑所得の必要経費として認められます。
しかしその部屋が独立していない場合には証明が難しくなるので、なるべく業務は独立した専用の部屋を設けるようにおすすめします。水道光熱費も同様な考え方です。
雑所得の必要経費の上限額
雑所得の必要経費には上限額があるのでしょうか。雑所得とは雑収入から必要経費を差引いた金額のことです。
かつては業種によって必要経費の算入経費率が存在していて上限額が制限されていましたが、現在では算入できる経費の上限額に制限はありません。
しかし上限額に制限がないからといって雑所得の収入以上に必要経費がオーバーすれば赤字になり問題外になります。
確定申告で上限金額はない
雑所得の確定申告の必要経費には上限額はないので雑所得の税金を節税をしようと、あらゆる領収書をかき集めて申告してもすべてが認められる訳ではありません。
たとえば宛名が明記されていないレシートや領収書では、誰が支払ったのかが不明なので経費として認められません。
何を買ったのか明細や但書きがない領収書も、雑所得の業務に必要な経費かどうかが判別できないので認められません。また日付も重要で確定申告の申告する期間に見合っていないものは認められません。
雑所得の確定申告をするために領収書をもらう時には、日付を確認すること、宛名が「上様」や但書きが「お品代」はさけて、きちんと宛名が書いてあることと、何のために支払ったかを但書きに書いてもらうようにしましょう。
根拠ある正確な経費を申告
雑所得の確定申告の際、領収書に宛名や但書きがキチンと書いてあっても「お弁当代として」「飲食代として」などの但書きで雑所得を得るための業務とかけ離れた内容では申告では認められません。
雑所得を得るための業務打合せで注文した弁当で、それが証明される根拠があれば経費として認められますが、根拠がない領収書は認められないので注意が必要です。
たとえ雑所得が副業であっても確定申告を想定して、根拠のある正確な領収書で経費を申告するように普段から気をつけるようにしましょう。
雑所得の経費は正確な申告をしよう!
雑所得は副業の場合が多く、サラリーマンの給与の他の副収入として行う人が非常に多くいます。しかし副業としての雑所得が20万円を超えれば確定申告が必要になります。
雑所得の税金を節税するためにも、ここまでの雑所得の必要経費に認められる経費や注意点を参考にして、雑所得の業務に必要な根拠のある正確で正しい経費を申告するようにしましょう。