配偶者控除とは何かわかりやすく解説!計算や申請の方法・節税対策も!

配偶者控除とは何かわかりやすく解説!計算や申請の方法・節税対策も!

配偶者控除とは何でしょうか。税金用語はわかりやすくならないか日頃疑問に感じている人も多いはずです。節税対策を行うにはその内容を知っておく必要があります。そこで今回は、配偶者控除とは何か、計算や申請方法などをわかりやすく紹介します。

記事の目次

  1. 1.配偶者控除とは
  2. 2.配偶者控除の意義
  3. 3.税制改正が配偶者控除に与える影響とは
  4. 4.配偶者控除と「103万円の壁」とは
  5. 5.103万円の壁が重要視される理由とは
  6. 6.103万円の壁を越えてしまった時は
  7. 7. 配偶者控除の申請方法をわかりやすく解説
  8. 8. 配偶者控除を受けるためには103万円の壁を意識すべし!

配偶者控除とは

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税金の世界で配偶者控除という言葉を聞くことがありますが、配偶者控除とは何なのでしょうか。節税できる、給与所得者にメリットがあるということであれば、その恩恵を受けない手はありません。どうすれば恩恵にあずかれるのか、まずは配偶者控除とは何なのかについて理解しましょう。

配偶者控除の基礎知識をわかりやすく解説!

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配偶者控除は所得税の所得控除の一種です。所得控除とは所得から引くことができる項目を指します。配偶者を持つ納税者が一定の要件を満たすと、その納税者の所得から一定額を控除することができる税制上の優遇措置です。

所得税は、所得の額が基準となって税金の額が計算されます。したがって、配偶者控除で所得額が減れば、その結果税金も安くなり、節税効果があるというわけです。

控除の対象となる配偶者とは?

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控除の対象となる配偶者とはどういう配偶者なのでしょう。要件としては、「法律婚であること」「生計が同一であること」「1年の合計所得金額が38万円以下であること」「事業専従者として給与をもらっていないこと」の4つが挙げられます。

このうち、いちばん問題となるのは「1年の合計所得金額が38万円以下であること」です。配偶者の年収が多いと対象にはならないことがわかるでしょう。この点についてはのちほどわかりやすく紹介します。

配偶者控除の額

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配偶者控除の額は最大で38万円です。配偶者が70歳以上の老人の場合は最大48万円です。といっても、どれだけの節税効果があるのかピンとこないかもしれません。

例えば給与年収が500万円のサラリーマンに控除対象となる配偶者がいるケースで計算してみます。配偶者控除や他の控除がないという前提だと、給与所得控除と基礎控除により課税所得が308万円、これに税率10%が乗じられ、所得税は30万8千円となります。実際には、所得に10%の住民税も掛かります。

一方、配偶者控除を受けられるとすると、課税所得は270万円まで減り、所得税は27万円となり、3万8千円の節税効果が得られます。このように、配偶者控除があることにより年数万円の節税を受けることができるのです。

配偶者控除の意義

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このように配偶者控除はありがたい制度のように思われます。しかし、制度設計上、明らかに夫婦片稼ぎ世帯を想定した優遇措置です。少しでも生活費を得るために働かざるを得ない共稼ぎ世帯に対して、この制度の配偶者の年収要件が足かせとなっているとか、女性の社会進出を妨げているなどの弊害が指摘されています。

内助の功に対する評価

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配偶者控除は、「夫の所得の稼得に大きな貢献をしている」ことへの評価であると理解されることがあります。しかし、最近の内閣府の男女共同参画白書によれば、共働き世帯数が専業主婦世帯数を上回っており、専業主婦世帯だけを優遇することの意義を考える必要があると考えられます。

最低生活費非課税

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所得のうち本人およびその家族の最低限度の生活を維持するのに必要な部分は担税力を持たず、配偶者控除は最低生活費非課税の性質を有していると理解されることがあります。年38万円が最低生活費なのかという問題はありますが、同じ生計で暮らす夫婦の場合、所得を有する他方配偶者に頼っている点も否めないので、このように理解することは可能でしょう。

税制改正が配偶者控除に与える影響とは

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夫婦を取り巻く労働市場は依然と大きく変化しており、配偶者控除は過渡期を迎えているといえます。これまで配偶者控除は廃止も含めて政府内で議論が進められ、平成29年度の税制改正では、制度を縮減する方向で改正がなされました。この改正は、平成30年分の所得税から施行されています。

従来は納税者の年収は関係なく配偶者の要件だけを満たせば配偶者控除を受けることができていたところ、納税者の年収の要件も加えました。

わかりやすく解説!納税者の年収と配偶者控除

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配偶者控除の額で上限38万円を受けられる人は合計所得金額が900万円以下(年収ベースでいうと給与年収1,120万円以下)の人に限られます。すなわち、年収が上がると配偶者控除の額が38万円から減っていくのです。

具体的には、年収1,120万円超1,170万円以下の納税者は控除額が26万円、年収が1,170万円超1,220万円以下の納税者は控除額が13万円という計算になり、節税効果も低くなります。

高額所得者は配偶者控除の対象外に!

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このように納税者の年収額に応じて、配偶者控除の額は段階的に縮小していき、年収が1,220万円超の納税者の場合は、配偶者控除をいっさい受けることができなくなります。

2017年の民間給与実態統計でも年収1,000万円超の男性給与所得者(独身を含む)が約203万人いることから、多くの既婚男性が配偶者控除の改正の影響を受けているものと推測されます。

配偶者控除と「103万円の壁」とは

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配偶者控除の配偶者の要件に「1年の合計所得金額が38万円以下であること」というのがありました。これを給与年収ベースに計算しなおすと、年103万円以下ということになります。つまり配偶者の年収が103万円以内にとどまる限り、配偶者控除を受けられ節税効果を受けることができるということです。

税金や社会保険料などの負担が重くなる収入の境目を壁ととらえて、よく「○○の壁」という形で表現されます。配偶者控除の話題でよく言われるのが「103万円の壁」というものです。

103万円の壁とは?わかりやすく解説

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配偶者(妻)の給与収入が年103万円までであれば、給与所得控除(65万円)と基礎控除(38万円)によって妻本人に課税されず、さらに、夫の方には配偶者控除の適用を受けることができます。いわゆる「103万円の壁」とは、一般的には課税が発生しないよう配偶者控除の適用可能な範囲内で就業を調整するものと解されています。

所得税の計算方法をわかりやすく解説

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わかりやすく単純にいうと、税金の額は「課税標準額×税率」で計算されます。所得税の課税標準額は「1年の所得の金額」です。一方、税率は累進税率となっており、所得の多寡に応じて5%~45%と変動します。金持ちほど税金をたくさん納めてもらい所得を再分配する仕組みです。

所得は収入から費用を引くことで計算されます。所得には、給与や不動産、配当や事業など合計10の種類が存在しており、それぞれの種類ごとに収入や費用の考え方が定められています。

それぞれの所得は合算されます。各納税者の個人的事情を加味する控除項目が14設けられており、これが「所得控除」と言われるものです。配偶者控除はこの所得控除に該当します。所得控除は、各種所得が合算された後控除される計算です。

103万円の壁が重要視される理由とは

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すでに説明したとおり、103万円の壁は、妻本人に所得税がかかるかどうかの分岐点の壁であるとともに、夫には配偶者控除が適用されるかどうかの基準となる壁です。つまり、103万円を超えると妻も増税、夫も増税となり、夫婦にとってダブルパンチを喰らうことになりかねません。そのため、103万円の壁はとても重要視されているのです。

メリットをわかりやすく解説

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年収103万円というと、月収換算では月8~9万円となります。共働き夫婦の片方が日給5千円で週4日勤務するイメージでしょうか。生活費の足しにはなりますが、必ずしも十分ではないという家庭もあるでしょう。

例えば給与年収が500万円のサラリーマンの夫がいて、妻の年収が106万円だとすると、103万円のときと比較して、夫は3万8千円、妻は1,500円増税の計算となります。しかも年収の増加は夫婦でプラス3万円にとどまりますので、結局、税金後の手取りは以前より減少してしまうという逆転現象が発生します。

所得税は0!世帯主の節税効果も

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手取りの逆転現象が起きないよう給与年収を103万円以内に調整しようとする人が多いといわれています。103万円以内であれば、給与収入の必要経費に相当する給与所得控除が最低65万円、さらに誰にでも認められる基礎控除(所得控除)が38万円あることから、課税所得がゼロになるというわけです。

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実際には103万円を超えても配偶者特別控除があるので節税効果は引き続き得られるのですが、103万円の壁のインパクトは大きく、103万円に就業調整しようとしている人が多いのが実態です。手取りが十分であるかという問題はありますが、103万円以内にとどめる限り、節税効果が大きいのは間違いありません。

扶養に入る事が出来る!

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年収103万円以内は無条件に扶養に入ることができます。扶養に入るということは、扶養義務者に養ってもらっていることになりますので、健康保険や厚生年金などの各種社会保険料を払う必要がありません。なお、会社の規模によりますが、実際には年収が106万円未満か又は130万円未満であれば、扶養の範囲内となります。

103万円の壁を越えてしまった時は

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年収要件を基準に、税金や社会保険料の納付あるいは各種手当の支給が定められていますが、年収103万円を超えてしまってもそれだけで負担が増えたり、手取りが減るわけではありません。税金や社会保険は法律で定められている一方で、会社の手当などは会社の規程によりますので、これらをきちんと確認しておく必要があります。

103万円を超えても大丈夫!配偶者特別控除とは

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税金に関しては配偶者(妻)の年収が103万円を超えると、課税所得が生じてきますので、妻も納税者として所得税を納める必要が出てきます。

ただし、これはあくまで給与所得控除と基礎控除のみを前提とした話であり、ほかにも生命保険料や社会保険料の支払いがあれば、それぞれ生命保険料控除、社会保険料控除の適用により課税所得が生じず、引き続き所得税を納めなくてよいという可能性もあります。

一方、夫のほうですが、妻の年収が103万円を超えると配偶者控除の適用がなくなります。しかし、代わりに配偶者特別控除の対象となり、夫と妻の年収額に応じて、一定の額の配偶者特別控除を受けることができます。

例えば給与年収1,120万円以下の夫の場合、妻の年収が150万円までであれば、上限一杯の38万円の配偶者特別控除を受けることができます。

社会保険の加入義務について

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社会保険の加入義務は、会社の規模に応じて異なります。一般に大企業の場合は年収106万円を超えた場合で、中小企業の場合は年収130万円を超えた場合に、社会保険料を支払う必要があります。

社会保険には主に年金と健康保険があります。社会保険料の額は「標準報酬月額」を基準に一定の率を乗じて計算するようになっています。この率は月額に応じて逓減したりしないので、収入が低い層には負担が大きくのしかかります。

社会保険の負担による逆転現象

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例えば標準報酬月額が9万5,000円(年収約114万円)のパート労働者で介護保険料を負担する必要のないもの(40歳未満)の場合、1年間で、年金は約10万円、健康保険は約6万円の負担が生じます。

この労働者が前年の収入が106万円だとすると、社会保険については、収入が増えたが手取りは減るという逆転現象が生じることになります。もちろん、社会保険への加入は年金や手当など保障の充実の面もありますが、壁を少し超えた程度の年収の場合は、負担のほうが大きいというケースが生じるのは否めません。

配偶者控除と配偶者特別控除の違いをわかりやすく解説!仕組みや条件は? | 副業・暮らし・キャリアに関するライフスタイルメディア
所得税の控除には配偶者控除と配偶者特別控除がありますが両者の違いはなんでしょうか。これらの制度や違いを知らないと、税制上損をすることもあります。そこで今回は配偶者控除と配偶者特別控除の仕組み、年収などの条件や違いについてわかりやすく解説します。

配偶者控除の申請方法をわかりやすく解説

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配偶者控除を受けるには様式に必要な情報を記載して申請をする必要がありますが、どこに申請すればよいのか、申請書はどう書けばよいのかわからない人もいると思います。配偶者控除の申請の仕方には2つありますので、以下それぞれの申請方法についてわかりやすく解説します。

①年末調整

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年末調整で配偶者控除を申請する場合は、「給与所得者の配偶者控除等申告書」という様式の書面を会社に提出します。

この申告書には、本人・配偶者の氏名、住所などの基本情報のほか、配偶者の所得、本人の所得などの情報を記載します。注意すべきなのは、所得と収入は異なる点です。申請書は所得で判断するようになっているので、収入から所得を算出する必要があります。

収入と給与所得控除(必要経費)の額がわかれば所得は判明します。申請書様式の裏面に記載されていますが、わからない場合は、会社で年末調整の申請書を提出する際に会社の経理の人に確認することをおすすめします。

②確定申告

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通常のサラリーマンの場合は、年末調整で課税関係は終了し、確定申告を行う必要はありません。しかし、年間の給与収入が2000万円以上の人や、給与を2か所以上からもらっていて源泉徴収をされていない給与の額が20万以上ある人など、一定の要件に該当する人は所得税の確定申告を行う義務があります。

この場合において、配偶者控除の適用を受けようとする場合には、税務署に確定申告書を提出することになりますが、配偶者控除特有の申請書は提出する必要はありません。

配偶者控除を受けるためには103万円の壁を意識すべし!

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今回は、配偶者控除についてわかりやすく紹介しました。配偶者控除を受けるには103万円の収入を超えるかどうかを考える必要があります。しかし、配偶者控除がなくても実際の手取りが減ることがない場合もあります。社会保険の負担も踏まえながら、実際の手取りがどれくらいになるのか意識して就業を計画することが大切です。

たけかずや
ライター

たけかずや

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