株で損をした時の確定申告の節税ポイント
株式投資等により「損失」が発生した場合、「確定申告」により「損失」を補填できる可能性があります。株式投資による「損失」は、「損益通算」や「損失の繰越控除」という制度を利用し必要書類を添えて「確定申告」を行うことにより、翌年以降の「利益」と相殺が可能となり、節税につなげることができるためです。
税金には必ず控除制度が存在
税金は「課税の公平性」に基づき、納税者個人の税金を負担する能力や様々な条件に応じて決まります。そのため、納税者個人のさまざまな事情に配慮した「所得控除」を適用することにより、納税者間の不公平感ができるだけ小さくなるよう税金制度は設計されています。株式投資等に関して節税を受けるには、税金制度をきちんと理解する必要があります。
控除を受ける為には確定申告が必要
株式投資に関する「所得控除」を受けるためには、会社員であったとしても「確定申告」が必要となります。会社員であれば年末調整時に自動的に控除されることが多い「保険料控除」や「配偶者控除」 とは異なり、株式投資に関する損益については年末調整で控除されないため、節税のためにも個別に「確定申告」を行う必要があります。
株で損失したらできる確定申告とは
株式投資により発生した「損失」は、「確定申告」を行うことにより最大3年間繰り越すことができ、各年分の「株式等譲渡所得」から控除することが可能となります。一定額以上の「利益」が発生した場合の「確定申告」は必須ですが、「損失」が発生した場合の「確定申告」は必須ではありません。
ただし、「確定申告」により発生した「損失」を翌年以降に繰り越しておけば、「利益」が出た年に繰り越した「損失」と控除することができますので、節税対策として「確定申告」を行うことをお勧めします。
①損益通算・利益と相殺出来る
「損益通算」とは、株式取引等において発生した「損失」を「利益」と相殺できるよう翌年度以降に繰り越すことです。株式投資等による譲渡益や配当などの「利益」を得た場合は、税法で定められた税金を支払う必要がありますが、繰り越した「損失」と相殺することにより株式投資に関する節税につなげることができます。
「損益通算」には、株式取引における譲渡損益を「通算譲渡損益」とするやり方と「配当金を通算」するやり方の大きく分けて2パターンあります。
②繰越控除・株の損失を3年間繰越
複数年にわたり株式投資等に関する「繰越損失」が発生した場合、最も古い年の「損失」から控除されることになります。ただし、「繰越損失」発生後3年以内に控除しきれなかった場合、4年目以降に繰り越すことはできません。
言い換えると、株式投資等に関する「損失」は3年を上限として繰り越しが可能な「損益通算」対象となり、「株式取引」などによる譲渡益や配当などの「利益」と相殺し切れなかった分は翌年に繰り越され、「損益通算」に組み込まれることになります。
株・確定申告のやり方とは
「確定申告」書類の作成や提出する方法はいくつかあります。国税庁WEBサイト「確定申告書等作成コーナー」で必要書類を作成した場合、「国税電子申告・納税システム(e-Tax)」を利用して、必要書類を印刷または郵送等により提出することができます。もちろん、税務署で申請書を作成し、提出することも可能です。
国税庁のホームページで簡単確定申告
国税庁WEBサイト「確定申告書等作成コーナー」を利用すれば、「源泉徴収票」と「特定口座年間取引報告書」を見ながら数値を打ち込んでいくだけで必要書類が完成します。作成した必要書類は、「国税電子申告・納税システム(e-Tax)」を利用して、必要書類を郵送または税務署に持参すれば「確定申告」が完了となります。
「国税電子申告・納税システム(e-Tax)」の利用に際しては、「e-Tax」が利用できるパソコンの用意、「開始届出書」の提出、「電子証明書」の取得(マイナンバーカードに標準的に組み込まれているもの)、「e-Tax」への登録、「IC カードリーダライタ」の用意などが必要なやり方となります。
特定口座・源泉徴収なしは確定申告を
「特定口座」とは、申告分離課税が適用になる上場株式等の譲渡益課税について、証券会社が損益の計算を行い、「特定口座年間取引報告書」を交付する制度です。「特定口座」には、証券会社が源泉徴収を行い納税する「源泉徴収あり」と、証券会社が源泉徴収を行わず口座保有者自身で「確定申告」を行い納税する「源泉徴収なし」の2種類があります。
確定申告・必要書類
「確定申告」を行うには、申告書以外で別添えが必要になる場合があります。別添えの必要書類には、「所得控除」や「税額控除」を受ける2種類のやり方があります。また、給与所得を証明する必要書類については、「源泉徴収票」の添付が必要となります。
また、「本人確認書類の提示又は写し」の添付について「e-Tax」を利用する場合は、マイナンバーカード等に組み込まれている電子証明書などで本人確認を行うため不要となりますが、税務署へ提出する際は必要となります。
①特定口座年間取引報告書
「特定口座年間取引報告書」とは、1月1日から12月31日までに受渡が済んでいる特定預りの譲渡や、「特定口座」内で受取った国内株式、投資信託、特定公社債等の損益や配当金・分配金・利金について証券会社が作成し、特定口座保有者へ交付するやり方を指します。
なお、「特定口座」種別(「源泉徴収あり」、「源泉徴収なし」)に基づいて「特定口座年間取引報告書」が作成されることになります。
②源泉徴収票
「源泉徴収票」とは、給与所得者などが「1年間でいくら給料をもらい、いくら税金を徴収されたか」が記載された小さな紙のことです。令和元年時点では、「e-Tax」を利用して「確定申告書」を提出する場合、「源泉徴収票」の提出は不要ですが、紙で申告する場合には添付が必要とされています。
しかし、平成31年度税制改正大綱の添付不要書類へ源泉徴収票が盛り込まれたことにより、令和2年4月1日以後は、源泉徴収票の提出は不要になる見込みです。
③印鑑
「確定申告」の書類に印鑑を押す理由は、「必要書類に本人が確認して作成した」という意味をもたせるためです。そのため、本人確認の意味をなさない印鑑は使用できません。
本人確認の意味をなす印鑑の例をあげます。「実印」・「銀行印」・「認印」は本人確認とみなせることからOK、「シャチハタ」・「屋号の印鑑」は本人確認用としてみなせないことからNGとなります。
特定口座・源泉徴収ありは原則として確定申告不要
「源泉徴収ありの特定口座」のメリットは主に5つあります。1つ目は、証券会社による源泉徴収のみで課税処理が終了となり口座保有者個人としての納税手続きなどは不要になるやり方のことです。2つ目は、売却の都度、損益計算が行われ、所得税・住民税が源泉徴収または還付されるやり方のことです。
3つ目は、源泉徴収ありの特定口座内の譲渡益は、配偶者控除や扶養控除等の適用の有無を判定する際の配偶者等の合計所得金額に含めることは不要となるやり方のことです。
4つ目は、源泉徴収あり・なしにかかわらず、特定口座内の譲渡損益は証券会社から発行される「年間取引報告書」を使って、簡易な手続きで確定申告をすることが可能となるやり方のことです。
5つ目は「源泉徴収ありの特定口座」に受け入れた配当等と譲渡損失が自動的に「損益通算」された結果、個人の手続きは不要となり、これらの所得に係る税金を証券会社が納付または還付するやり方のことです。
損失が出た場合には確定申告を
「株式取引」などにより「損失」が発生した場合、「確定申告」を行う義務はありません。しかしながら、「確定申告」により「損失」を3年間繰り越すことができる「損益通算」と「繰越控除」という特例を受けることにより翌年以降、「損失」を「利益」で相殺できる可能性があるため、節税の観点で「確定申告」することをお勧めします。
株で損失・確定申告のメリット
「株式取引」で「損失」が発生した場合には、「確定申告」を行うことにより「所得税」を減らすことができます。
「株式取引」で一定額以上の「利益」が出た場合と異なり、「損失」が発生した場合には「確定申告」を行う必要はありませんが、「損失」を繰り越すことにより翌年以降に発生した「利益」と相殺が可能になるため、「損失」が発生した場合にも「確定申告」を行った方が節税できる可能性が高まります。
翌年以降の税負担を軽減
「繰越控除」とは、「損失」を翌年以降の3年間にわたり繰り越すことができる制度です。言い換えると、発生した「損失」を翌年以降3年間以内の範囲で「利益」と相殺できるということになります。例えば、100万円の「損失」が発生した場合、翌3年間は100万円以上の利益をあげるまでは課税されないため、結果として節税につなげることができます。
株で損失した際の確定申告の注意点
「株式取引」で損失が発生した場合には、泣き寝入りするか一刻も早く記憶から消し去りたいという衝動に駆られますが、「確定申告」による「損益通算」と「繰越控除」特例を利用することにより株式投資等に関する「損失」を「利益」が出た際に相殺し節税につなげることができます。
ただし、「繰越控除」は、繰り越す年以降と翌3年間は毎年確定申告をしなければなりません。その期間は、「株式取引」を行わない年も「確定申告」は不要ではなく必要になりますので、注意が必要です。
①株の損切りには要注意
「株の損切り」とは、正式には「譲渡損失の繰越控除」と呼ばれています。上場株や投資信託、FX取引で損失が出た場合、その損失額を翌年以降へ最長3年間繰り越し、翌年以降の株式売却益や配当所得と相殺できる仕組みです。
主な収入が年金だけの方の場合、「確定申告不要制度」と呼ばれる制度があります。「確定申告不要制度」とは、平成23年税制改正により、公的年金等の収入金額の合計額が400万円以下かつ公的年金等に係る雑所得以外の所得金額が20万円以下である場合には、所得税の確定申告をする必要がなくなった制度を指します。
公的年金の収入が400万円以下かつ、それ他の所得が20万円以下の人は、所得税と復興特別所得税の確定申告をしなくてもいいと定められていますが、「確定申告」により株式売却益を含む「その他」の所得が20万円以上とみなされた場合、社会保険料が上がってしまう可能性もありますので、注意が必要です。
②損益通算にも落とし穴がある
「確定申告」により所得税が軽くなったとしても、前述のとおり「社会保険料」が上がってしまうことや「その他控除」を受けられなくなることが、確定申告最大の「落とし穴」であるといえます。
例えば、70歳以上の場合、配偶者控除額は最大48万円となっていますが、株式売却損が発生し「損益通算」に計上するため「確定申告」を行った結果、控除から外れ税金が逆に高くなってしまう逆転現象になることも考えられます。
また、介護サービスの利用に関しては、同一世帯の65歳以上の人数が1人で前年の合計所得金額と前年の年金収入の合計が80万円以上340万円未満の場合は2割負担となりますが、340万円以上の場合は3割負担となってしまいます。
確定申告しなかった場合、脱税になるのか
一般的に会社員の場合は会社が税金の支払いを代行するため、個人での納税作業は不要です。個人事業主の場合は、自分で計算して納税しなければなりません。会社員でも副業をした場合、その収入が20万円を超えると「確定申告」をしなければなりません。「確定申告」を行わなかった場合発生は、脱税行為とみなされてしまいます。
脱税はばれるのか
近年では、働き方改革の拡大や副業解禁により、会社員であっても副業することが身近になりつつあります。副業と言っても、その収入額が20万円を超えた場合は、「確定申告」の実施と納税義務が発生します。小規模だからバレことはないので納税不要と高をくくっていると意外にばれてしまうものです。
脱税がバレてしまう理由としては、口座やインターネットなどを通じて取引が行われた結果、金銭の取引があったという記録が残ってしまうことが主な理由となります。申告をせずに納税を怠ったことが、税務署に発覚した際に面倒なことになってしまいます。副業であってもきちんと「確定申告」を行い、納税しなければならないことを忘れてはいけません。
株で損失が出た時には注意点を理解して確定申告をしよう!
資産運用で株式投資を始めたものの、「損失」が発生してしまうこともあります。しかしながら、株式投資等において「利益」が出ていないから「確定申告」は必要ないと思ってしまう方は要注意です。
「確定申告」には、株取引等による「利益」を申告して納税額を確定する側面があるほかに、「損失」が出た場合、「損失」金額を申告して、次年度の「利益」と相殺できる側面もあるためです。株式投資等で「損失」を出してしまった場合も、必要書類を用意し、次年度を見越して確定申告をしておくことをお勧めいたします。