特定口座とは
株式投資を始める場合、証券会社に口座を作る必要があります。証券会社で口座を作る場合、「一般口座」か「特定口座」を選ぶ必要があり、どちらを選べばよいのかわからないという人も多いのではないでしょうか。ここでは、特定口座とは何なのかを詳しくご紹介致します。
更に、特定口座にも「源泉徴収あり」と「源泉徴収なし」の2種類があります。源泉徴収ありと源泉徴収なしにはそれぞれメリットとデメリットがありますので、併せてご紹介致します。
投資家が簡単に確定申告・納税が出来る口座
特定口座とは、投資家が簡単に確定申告や、納税が出来る口座です。通常、投資などの利益が出ると、その利益を投資家自身で申告しなくてはいけません。個人で、年間の利益から損失を引き、純利益に対して税金を計算して納税することは、非常に手間と労力がかかると言えます。
そんな時、特定口座を利用すると確定申告・納税にかかる手間を簡略化することが出来ます。特定口座を利用していると、証券会社が株式や投資信託で得た利益や損失を計算してくれ、更に1年間の取引内容をまとめた「年間収支報告書」を送付してくれます。
自身で確定申告する場合でも、その年間収支報告書を参考にすれば、簡単に確定申告を終えることが出来ます。
特定口座で確定申告が不要に?
前述のとおり、特定口座を選択しておけば、確定申告・納税の手間を簡略化できます、しかし、年間収支報告書を受け取っただけでは納税は完了しておらず、それを元に確定申告する必要があります。しかし、特定口座で、確定申告を不要にすることも可能です。ここでは、特定口座で確定申告を不要にする方法をご紹介致します。
特定口座・源泉徴収有無を選ぶ必要がある
証券会社で口座を開設する場合、一般口座か特定口座を選ぶ必要があります。そして、特定口座の場合、源泉徴収ありと源泉徴収なしを選ぶ必要があります。源泉徴収「あり」を選択した場合、証券会社があらかじめ住民税と所得税を差し引いて代わりに納税してくれているため、確定申告が不要となります。
必要以上に納税してしまう場合がある
源泉徴収ありを選択した場合、利益が出た取引に対しては所得税・住民税が源泉徴収されます。しかし、損失が出た取引に対しては、特に何か還付があったりという事はありません。
1年を通してみると、利益50万円、損失40万円という結果が出たとします。本来なら差額の10万円に対してのみ課税されるはずが、源泉徴収は取引ごとに行われますので、利益が出た50万円に対して所得税・住民税を支払っていることになります。
確定申告をして還付金を受け取る
株の売買などで損失を出してしまい、1年を通してみると、所得税・住民税を払いすぎている場合、確定申告を行い、損益通算をしましょう。損益通算を行うことで、払いすぎた税金を還付してもらうことが出来ます。源泉徴収ありで本来なら確定申告が不要な場合でも、損益通算によって還付金が返ってくる場合は、確定申告を行った方が良いでしょう。
特定口座で確定申告が必要な場合
源泉徴収ありを選択すると、投資家に代わって証券会社が所得税と住民税を納税してくれるため、確定申告が不要となります。一方源泉徴収「なし」を選択した場合は確定申告は不要にならず、投資家個人で確定申告をする必要があります。ここでは、どのような場合に源泉徴収なしを選べばよいのかや、源泉徴収なしを選択した場合のメリットをご紹介致します。
特定口座(源泉徴収なし)・確定申告が必要
特定口座の源泉徴収なしを選択した場合は、証券会社があらかじめ所得税・住民税を差し引くということはしてくれません。そのため、証券会社が作成してくれた年間収支報告書を元に、投資家自ら確定申告を行う必要があります。確定申告が不安に感じる人は、確定申告が不要な源泉徴収ありを選択しておくと良いでしょう。
特定口座(源泉徴収なし)・メリットとデメリット
株の売買などで、年間20万円以下の利益しか出なかった場合は、確定申告は不要になります。特定口座の源泉徴収ありだと、年間の最終的な利益が20万円以下になった場合でも、取引の都度、源泉徴収されてしまっています。そのため、本来なら納めなくても良い税金を支払うこととなってしまいます。
株や投資を始めたばかりの人や、年間の利益が20万円を下回ると予想される場合は、特定口座の源泉徴収なしを選ぶと良いでしょう。源泉徴収のあり・なしは後からでも変更が可能であるため、一旦は源泉徴収なしを選んでおくというのも一つの手です。年間の利益が20万円をコンスタントに超えてくるようならば、源泉徴収ありに切り替えると良いでしょう。
さらに、源泉徴収なしにしておくと、源泉徴収ありのときよりも資金効率を高くすることが出来ます。そのため、投資にある程度の資金を投入するようになった場合は、源泉徴収ありからなしに、再度切り替える人も多いようです。例えば、株を売却した場合に受け取るのは、源泉徴収された額であるため、源泉徴収なしの場合より少なくなってしまいます。
源泉徴収された分の資金も再投資に回すことが出来れば、資金効率を上げることができ、利益額を増やすことも可能になります。源泉徴収なしの場合、投資家個人で確定申告をする必要があるというデメリットがありますが、あえて源泉徴収なしを選ぶ場合もあることを覚えておきましょう。
特定口座の確定申告と住民税
確定申告では、所得税をいくら支払うのかを計算しますが、住民税はどのように決まるのでしょうか。サラリーマンの方は年末調整で会社が計算してくれるため、今まで気にしたことが無いという人が多いでしょう。また、会社に副業を知られたくないという方も多いのではないでしょうか。
収入が増えれば、もちろん住民税も高くなります。会社以外で収入を得ていることが分かってしまう原因のほとんどは、住民税が高くなるからです。そのため、会社に副業を知られたくない人は、住民税の納税方法には注意が必要となります。
住民税は前年の所得で決まる
サラリーマンの場合、年末調整で確定した所得によって、翌年の住民税が決まります。所得税の確定申告をした場合は、確定申告書の写しが市区町村に送られて、市区町村がそれに基づいて住民税を計算してくれます。そして、普通徴収もしくは特別徴収によって住民税を支払います。
普通徴収と特別徴収
住民税はどのように納めるのでしょうか。サラリーマンの方は、毎月給料から住民税が天引きされており、会社が代わりに納めてくれています。自営業の方などは、市区町村から支払い通知が届き、年4回に分けて支払っているという人が多いようです。
住民税の納税方法には、「普通徴収方式」と「特別徴収方式」があります。普通徴収方式は、市区町村から直接納税者宛に通知書が届き、年4回に分けて納める方法です。一方、特別徴収方式は、サラリーマンの方のみが利用できます。特別徴収方式では、通知書が勤務先に送付され、12カ月に分けて給料から天引きされています。
一般口座や、特定口座の源泉徴収なしを利用している人は、確定申告の際に、普通徴収か特別徴収を選択できます。会社に副業を知られたくない人は、確定申告の際に普通徴収を選択しましょう。そうすれば、副業にかかる住民税の支払いは会社に知られることは無いため、バレずに済みます。
また、特定口座の源泉徴収蟻を利用している人は、証券会社が代わりに住民税を納めてくれますので、会社にバレる心配は無いでしょう。
特定口座の確定申告で還付金受け取り方法と書き方
所得税は、前年の課税所得に税率を掛けて算出されています。確定申告を行い、各種控除を利用すれば、課税所得をゼロにすることができ、源泉徴収された所得税・住民税が還付される可能性があります。
例えば、主婦の方が、他で収入を得ていない場合、基礎控除という38万円の控除を受けることが出来ます。株などの売買によって30万円利益が出たとすると、源泉徴収ありであれば、30万円から所得税・住民税を差し引かれます。しかし、確定申告によって、基礎控除を考慮すると、課税所得は30万円-38万円で0円となります。
課税所得が0円ということは、もちろん所得税も住民税も0円です。そのため、このように所得控除を利用できる場合は、確定申告をして、払いすぎた税金を還付してもらいましょう。ここでは、還付金を受け取るための確定申告の書き方もご紹介します。
譲渡損失の繰越控除
還付金がある場合だけではなく、株の売買などで損失が出た場合も、確定申告をしておくと良いでしょう。この「譲渡損失」は、確定申告を行っておくことで、その損失を翌年以降の利益と相殺することが出来るのです。さらに、この損失は、翌年以降3年間にわたって繰越控除することが可能です。
例えば、去年30万円の損失が出て、確定申告をおこなっていたとしましょう。今年は、株の売買で40万円の利益が出た場合でも、去年の損失30万円と相殺し、10万円とすることが出来ます。つまり、10万円分に対してのみ、所得税・住民税を支払えばよいということになります。
ただ、注意すべき点は、NISAの口座との繰越控除はすることが出来ません。特定口座をNISAの口座は別物と覚えておくと良いでしょう。
確定申告の書き方
特定口座を利用していても、確定申告の必要がある場合があることは前述の通りです。確定申告を行ったことのない人にとっては、確定申告書の書き方がわからず、不安に思う人も多いでしょう。ここでは、そんな書き方に不安を持つ人のために、確定申告の書き方を簡単にご紹介します。
確定申告の書き方は3通りあります。1つはe-Taxを利用してインターネット上で確定申告する方法です。他には、国税庁のホームページで必要事項を入力したものを出力して税務署に提出する方法と、税務署で書類を受け取り記入して確定申告する方法があります。
この中で一番おすすめなのが、国税庁のホームページの「確定申告書等作成コーナー」で確定申告する方法です。書き方も、源泉徴収票と証券会社から送られてくる年間収支報告書を見ながら埋めていくだけなので簡単に行うことが出来ます。
確定申告が不安な方は税務署で
確定申告書の書き方は、まず、必要となる源泉徴収票と確定申告書、添付書類を用意します。添付書類は、証券会社から送付される年間収支報告書をそのまま提出するだけでよく、確定申告書はその年間収支報告書を参考に記入していけばいいので簡単に確定申告が出来ます。
しかし、それでも確定申告書の書き方などに不安にを感じる方は、税務署に直接赴き、税務署にあるパソコンを使って確定申告をすると良いでしょう。書き方に分からないところがあれば、その場で職員の方に質問も出来ますので、安心です。
特定口座は複数開設することが出来る?
税制面で有利であったり、確定申告手続きを簡略化できたりと、様々なメリットがある特定口座ですが、特税口座は複数開設することが出来るのでしょうか。手数料などをはじめ、各金融機関によってそれぞれ強みとなる部分が違うため、取引や目的に応じで口座を使い分けたいと考える人も多いでしょう。ここでは、特定口座を複数開設できるかご紹介します。
複数の金融機関でそれぞれ特定口座を作ることはできる
特定口座は、複数開設することが可能です。ただし、複数の金融機関でそれぞれ開設は可能ですが、1つの金融機関に複数特定口座を開設することはできません。
特定口座を複数の金融機関で解説することのメリットとしては、それぞれの金融機関の強みのサービスを享受できることです。また、IPO投資の場合は当選確率をあげることができるため、ほぼすべての金融機関で特定口座を作っているという人も多いのではないでしょうか。
デメリットとしては、管理が大変であったり、資金を分散させなくてはならないという点が挙げられます。また、引っ越しなどで手続きが必要な場合、全ての金融機関に変更届を出さなくてはいけなくなるなどのメリットもあります。
確定申告することによって複数の特定口座の損益通算が出来る
片方の特定口座では利益が出て、もう片方の特定口座で損失が出た場合も、それぞれの金融機関から送付された年間収支報告書を元に確定申告をすることによって、損益通算をすることが可能です。複数の金融機関で特定口座を利用している場合は、税金を支払いすぎているケースが多いようなので、注意しておきましょう。
特定口座でも確定申告を行うと節税対策に繋がる!
特定口座では源泉徴収ありを利用すれば、確定申告が不要になります。そして、特定口座を利用していても確定申告が必要な場合と書き方、還付申告の方法を紹介しました。特定口座でも、確定申告を行うと払いすぎた税金を還付してもらうことが出来る場合があるため、絶税対策に繋がります。