特定口座とは
NISAの制度が始まってから投資を始める人がどんどん増えています。証券会社で口座を作る際には特定口座を開設するか一般口座として開設するのかを選ぶ必要があります。しかし、投資初心者の方は特定口座や一般口座がどんな口座なのか知らない人もいるのではないでしょうか。
そこで特定口座と一般口座について、その違いや特定口座のメリット・デメリットなどについてご紹介しましょう。
投資家が簡単に確定申告・納税が出来る口座
特定口座とは一言でいえば「簡単に確定申告や納税ができる口座」のことを言います。特定口座を開設しておくと、口座内の取引に関する損益通算や税金を自動的に計算してくれます。
特定口座でも「源泉徴収あり」もしくは「源泉徴収なし」を選択するようになっており、「源泉徴収あり」を選ぶと自動的に確定申告まで証券会社が行ってくれます。「源泉徴収なし」の場合は自分で確定申告をする必要がありますが、年間取引報告書を証券会社が作成してくれるので、それを基に確定申告をすれば大丈夫です。
逆に一般口座を選択した場合は特定口座とは違い、確定申告や納税などを全て自分でやらなくてはいけません。確定申告の手続きなどはとても面倒なため、特定口座を開設する人が比較的多い傾向があります。
年間取引報告書の発行時期
年間取引報告書は、1月4日から12月30日(受取日ベース)までの特定口座内での取引が全てまとめて記載されている報告書です。証券会社によって多少違いますが、毎年1月頃に証券会社から投資家へ発行される確定申告で必要な書類になります。
もし紛失してしまったり届かない場合も再発行が可能ですので、何かある場合は早めに証券会社に連絡をする際にしましょう。
特定口座と一般口座の違いとは
では特定口座と一般口座の違いとは何なのかご紹介しましょう。先程も少しご紹介したように特定口座を開設した場合は確定申告や納税が簡単に手続きできますが、一般口座の場合は全て自分で管理・手続きを行う必要があります。その2つの口座の違いについて、もう少し詳しく説明します。
①特定口座
特定口座を開設すると、特定口座内の取引の記録や取引でどれくらいの税金がかかるのかを全て証券会社が計算してくれます。そして、それらが全て記載された年間取引報告書が作成され、投資家の方へ発行されます。
「源泉徴収あり」の場合は確定申告まで証券会社が行ってくれるので自分で確定申告や納税の手続きをする手間を省くことができます。また、「徴収なし」の場合は自分で確定申告をする必要がありますが、年間取引書を基に手続きするだけなので比較的簡単に手続きをすることが可能でしょう。
②一般口座
一般口座は特定口座とは違い、年間取引報告書が発行されません。そのため取引の記録や損益通算の計算をはじめ、確定申告や納税の手続きも全て自分で行う必要があります。取引の多い人ほど手間がかかりますし、専門的な知識も必要になるため投資初心者の方にはあまりおすすめはしません。
特定口座のメリットとデメリットとは【源泉徴収あり】
これまで特定口座と一般口座の違いについてご説明しましたが、次は特定口座の「源泉徴収あり」と「源泉徴収なし」の違いについてメリットとデメリットを中心にご紹介しましょう。
まずは「源泉徴収あり」のデメリット・メリットをみていきます。「源泉徴収あり」の場合は、確定申告など面倒な手続きが不要になる一方で、本来は支払わなくてもいい税金がひかれてしまうというデメリットもあります。
メリット①確定申告せずに所得税・住民税を納められる
特定口座で「源泉徴収あり」を選択したときの一番のメリットは、自分で確定申告の手続きをする必要がないということです。
投資で利益が出た際には利益額に応じて税金(所得税・住民税)を支払わなくてはいけません。「源泉徴収あり」を選択しておくと、利益が出るたびに自動的に計算して支払ってくれます。さらに損失が出た場合は損益通算も自動で行ってくれるので、とても便利です。
なお、年間取引報告書は源泉徴収の有無に関わらず発行されるので、確定申告の必要がなくても保管だけはしておくようにしてください。
メリット②いくら利益を出しても控除対象から外れない
特定口座で「源泉徴収あり」を選択している場合、口座内の譲渡益は扶養控除や配偶者控除などの控除を申請する際の合計所得金額に含めなくてもいいことになっています。そのため、投資で利益をどれだけ出しても控除対象から外れることはありません。
しかし確定申告をすると扶養控除から外れてしまう可能性もあるので注意しましょう。必要な手続き(上場株式配当等受領委任契約)を踏めば確定申告をしても控除から外れることはないので、口座を開設する際に証券会社に確認してみてください。
メリット③住民税・健康保険料が上がらない
2017年度の税制改正により、所得税と住民税で課税方式を選択することが可能になりました。住民税については申告不要制度をとっているため、健康保険料への影響もありません。そのため、特定口座内の取引でどれだけ利益が出ても、「源泉徴収あり」を選択していれば住民税や健康保険料が上がることがないという点もメリットの一つと言えるでしょう。
デメリット:利益20万以下でも所得税が引かれる
特定口座で「源泉徴収あり」を選択したときのデメリットは、投資における利益が20万円以下であった場合でも自動的に確定申告されて所得税が引かれてしまうということです。
会社員の給与以外の所得(投資など)が20万円以下の場合は、原則として確定申告は必要ありません。しかし、「源泉徴収あり」を選択すると利益額に関わらず源泉徴収されてしまいます。そのため、払いすぎた税金を還付するためには確定申告の手続きが必要です。
なお、利益が20万円以下の場合に確定申告をしなくてもいいのは所得税のみです。住民税は確定申告が必要となるため気を付けましょう。
特定口座のメリットとデメリットとは【源泉徴収なし】
続いて特定口座で「源泉徴収なし」を選択した場合のメリットとデメリットについてご紹介しましょう。「源泉徴収なし」の場合は、証券会社が作成した年間取引報告書を用いて自分で確定申告をする必要があります。ただ利益額によっては確定申告が不要というメリットもあり、さらに会社へ投資をしていることがバレる可能性がある等のデメリットもあります。
メリット:利益20万以下は確定申告不要
先程も述べたように、会社員の給与以外の所得が20万円以下の場合は確定申告の必要がありません。しかし「源泉徴収あり」を選択すると自動的に確定申告されてしまうため、利益が20万円以下だった場合は還付の手続きが必要です。
「源泉徴収なし」を選択した場合は、もともと確定申告は自分で手続きするようになっています。そのため、自動的に確定申告をされることもなく、利益が20万円以下であれば確定申告の手続きも不要となり、無駄な税金が徴収されることはありません。
ただし住民税は利益額に関わらず申告・納税をしなくてはいけないので、口座内の取引で利益が出た場合は必要な手続きをとるようにしましょう。
デメリット①利益が20万より多い場合は確定申告が必要
特定口座で「源泉徴収なし」を選択した場合に、利益額が20万円以下であれば確定申告は不要である旨ご紹介しましたが、逆に利益額が20万円より多い場合は確定申告をしなくてはいけません。「源泉徴収あり」と違い自分で確定申告をしなくてはいけない点が、「源泉徴収なし」を選択する一番のデメリットと言えるでしょう。
ただし、確定申告をする場合も証券会社が年間取引報告書を作成してくれるので、自分で計算したりする手間はかかりません。一般口座を選択した人と比べると、比較的簡単に簡単に確定申告が可能です。
デメリット②会社に配当所得が知られる
投資で利益を得ていることを会社に知られたくないという人もいるのではないでしょうか。会社にバレたくないという人は、住民税の申告方法に気を付けなくてはいけません。
住民税の納税方法を給与天引きにしていると、金額で会社に給与以外で収入があることがバレる可能性があります。そのため、会社にバレないようにするためには確定申告の際に「給与所得以外の所得に対する住民税」欄は「自分で納付」と記入して提出する必要があります。
デメリット③利益が出たら住民税申告が必要
これまでご紹介したように利益額が20万円以下であれば確定申告の必要はなく、利益額が20万円より多かった場合だけ確定申告の手続きが必要となります。しかし、住民税の申告は利益額がいくらであっても手続きしなくてはいけません。
利益額が20万円以下の場合は申告不要と所得税と同じように覚えている人も多く、申告を忘れてしまう人もいるので気を付けましょう。
特定口座の注意点とは
特定口座を開設するときには注意点がいくつかあります。金融サービスのなかには「源泉徴収なす」の特定口座に対応していないサービスがあったり、本来であれば源泉徴収の有無は口座開設後でも変更できるのですが、タイミングや条件によっては変更できない場合があります。
①源泉徴収なしに対応していないサービスも
基本的に金融機関が提供しているサービスのほとんどが特定口座の「源泉徴収あり」「源泉徴収なし」のどちらにも対応しています。しかし、最近できたサービスのなかには「源泉徴収なし」に対応していないサービスもなかにはあります。
もし特定口座の「源泉徴収なし」を開設している場合は、事前にそのサービスが「源泉徴収なし」に対応しているのかどうか確認をすることをおすすめします。
②源泉徴収あり・なしの変更が出来ない事もある
源泉徴収の有無は、口座開設後であっても必要な手続きを取れば変更が可能です。しかし条件やタイミングによっては変更が不可能であったり時間がかかってしまうことがあります。
条件は証券会社によっても違いますが、例えば口座内の金融商品(株式や投資信託など)を売却したり配当金の受け取りがあると年内の変更が出来なくなる証券会社があります。また、金融商品の受け渡し日や配当日にはスムーズに変更ができないことがあるので注意が必要です。
なお、一般口座から特定口座への変更も口座開設後でも手続き可能です。この手続きは比較的簡単にできますが、逆に特定口座から一般口座への変更に関しては受け付けていない金融機関もあるので注意しましょう。
NISA口座とは
一般口座と特定口座のほかにも、2014年1月からはNISA口座が開始しました。NISA口座は毎年120万円の非課税投資枠が与えられ、その後5年間は株式や投資信託から得た利益にかかる税金が非課税になる制度です。
現在ではジュニアNISAという未成年の子(0~19歳まで)を対象とした非課税制度が2016年度から開始したり、2018年1月からは一部の投資信託のみを対象としたつみたてNISAが始まったりと制度の幅が徐々に拡がっています。
NISAのメリット
NISAのメリットは何といっても配当金や売却益が非課税になるということです。本来は株式や投資信託から得た利益には利益額に対して20.315%の税金が課税されます。しかしNISA口座であれば口座内で保有している株式や投資信託から利益が出ても税金が徴収されることはありません。
年間で120万円の非課税枠が設定され、その後5年間は非課税になるため、長期保有しようと考えている人には特にNISA口座はおすすめです。また、非課税枠は毎年120万円ずつ新たに設定されるため、5年後には合計で600万円分の非課税枠ができることになります。
なお、5年間の非課税期間が終了した後は翌年の非課税枠に株式や投資信託を移行(ロールオーバー)させることが可能です。このときに120万円を超えていても全て移行することが可能なので、さらに5年間非課税のメリットを受けることができます。
NISAのデメリット
株式や投資信託から利益が非課税になるというメリットがある一方で、NISA口座にはいくつかのデメリットも存在します。
まずはNISA口座は1人1口座までしか開設することができません。そのため、どこかの金融機関でNISA口座を開設した場合は、他の金融機関では開設できないので注意しましょう。ただし、1年単位で金融機関を変更することは可能です。
NISA口座の対象は新たに買い付けした株式もしくは投資信託です。既に特定口座や一般口座で買い付けした商品をNISA口座に移行させることはできません。また、NISA口座の取引で損失が出たとしても特定口座や一般口座との損益通算をすることができず、翌年へ損失を繰越すこともできないので値下がりをしている時に売却する際は気を付けてください。
特定口座とは投資家が簡単に確定申告・納税が出来るもの
特定口座は、口座内の取引に関する確定申告や納税が簡単にできる口座です。税金や金融の知識がある人であれば大丈夫ですが、初心者の人やあまり詳しくない人が自身で確定申告の手続きを行おうとするととても大変です。少しでも確定申告などの負担を減らすためにも、証券会社で口座を開設するときには特定口座を選択することをおすすめします。