配偶者が着目すべき確定申告のポイント
扶養に入っている配偶者(妻)は一見すると確定申告と無関係のように思えます。しかし、夫婦を合わせた税金という観点でいうと節税効果に差が出ることがあります。どのようなところに注意したらよいのでしょうか。結論からいうと、なるべく夫が支払ったということにして、夫の所得から控除を多く受けられるようにするのがポイントです。
専業主婦はふるさと納税納税で控除される税金がない
ふるさと納税は、自治体に寄付をすると、寄付した額の2,000円を除いた額が所得税及び住民税から軽減される制度です。これだけなら税金が寄附に形を変えただけなのですが、ふるさと納税は、寄付した額の3割程度に相当する返礼品(特産品など)を自治体が贈るのが通例になっており、寄付者においしい制度となっています。
所得税については確定申告を行うことで控除・還付を受けることができ、住民税は翌年の住民税に反映され税金の額が軽減されます。通常のサラリーマンであれば、給与の支払いのとき、所得税が源泉徴収されるので、確定申告ではこれを取り戻すイメージです。
しかし、専業主婦の場合、所得税を納めていませんので取り戻すべき税金が存在しません。このように、ふるさと納税を行うのであれば収入のある配偶者名儀で行うことをおすすめします。
医療費控除は収入の高い人で申告する
医療費控除は所得控除の一種で、支払った医療費が一定の額を超える場合の減税措置です。医療費控除の金額や条件などはここでは詳述しませんが、大きな手術とか継続的な通院などがないとなかなか条件を満たしてくれないのが医療費控除です。
医療費控除は、自己又は自己と生計同一とする配偶者・その他の親族のために支払った医療費が対象となります。
これについてもふるさと納税と同様、所得がない配偶者からは減税効果を受けることができませんので、収入が多い配偶者が支払ったことにして、その者の所得税で医療費控除の申告をするのがお得です。
配偶者控除で確定申告をした方が良いシーン
配偶者控除とは、配偶者を持つ納税者が一定の要件を満たしたときに、その納税者の所得金額から一定の金額を控除することができる税制上の軽減措置です。一般には専業主婦をもつ片稼ぎ世帯への税制上の優遇制度であると理解されています。
ここでは、配偶者控除の対象となるケースで、夫または妻が確定申告をした方がよいシーンについてご紹介します。
専業主婦の夫が確定申告をする場合
配偶者控除の要件は、年間の合計所得金額が1,000万円以下の納税者が一定の要件を満たす配偶者を持つことです。
通常のサラリーマンの場合、所得税の確定申告を行う必要はありません。年末調整で所得税の課税関係は終了するからです。年末調整の段階で、配偶者控除に係る申告書を会社に提出すれば配偶者控除を受けることができ、所得税の還付金を受けることが可能です。
ただし、年末に結婚したなど年末調整できなかったケースや、他の所得があって確定申告をする義務が生じた場合などは、確定申告で忘れずに配偶者控除を申告することをおすすめします。
専業主婦本人が確定申告する場合
給与所得者の場合、給与所得控除65万円と基礎控除38万円があるため、年収103万円以下であれば所得税を納める必要はありません。多くの専業主婦はこの金額の条件によって所得税の納付をしていないことになります。
注意が必要なのは、結婚や出産などを理由に年の途中で仕事を辞めた場合です。源泉徴収される所得税は年間トータル収入を考慮していません。そして、このケースでは年末調整が行われないので所得税が納め過ぎの状態になっています。この場合は確定申告を行って還付を受けることが可能です。
残念ながら税務署から「納め過ぎになっているので確定申告をして還付を受けてください」などという気前のいいお知らせは来ませんので、覚えておいてしっかりと確定申告をしましょう。
確定申告はいつ行うのか?
毎年2月くらいになると確定申告がはじまったというニュースがテレビなどで流れます。主婦には関係がないと思って聞き流している人もいるかもしれませんが、上記のようなケースでは確定申告するメリットがあります。確定申告を行う時期をしっかりと頭に叩き込んでおきましょう。
確定申告を行う時期
確定申告の期間は、原則、毎年2月16日〜3月15日と決まっています。それぞれの日付が土曜日・日曜日・祝日の場合には、それぞれその翌日にずれます。1月1日~12月31日までの1年間の所得に関する必要書類を1月~2月上旬に揃えて、2月半ば~3月半ばの1月かけて、確定申告を行うイメージです。
個人事業主などの事業所得の申告等でなければ、確定申告書の作成はそれほど手間ではありません。自宅で簡単に作成できますし、e-Taxという電子申告も可能です。
用がない限りなるべく税務署には近寄りたくないものですので、できる人は自宅でササっと申告書を作成して提出してしまいましょう。
還付申告は確定申告期限を過ぎても大丈夫
実は確定申告の期限を過ぎたからといって申告が受け付けてもらえないわけではありません。税金を納めるべき人が申告しない場合はいわゆるペナルティが発生しますが、申告書自体は受け付けてもらえます。これを「期限後申告」といったりします。
逆に納め過ぎの税金を返してもらいたいという場合はどうでしょう。納め過ぎの税金を取り戻す申告を「還付申告」と呼びますが、還付申告は、確定申告の期限とは関係なく、申告対象となっている年の翌年1月1日~5年間の間は申告可能です。
したがって、3月15日を過ぎたからといって焦る必要はありません。とはいえ、忘れないうちに早めに申告して還付を受けることをおすすめします。
配偶者控除が認められる条件はある?
配偶者控除が認められるには、本人の収入条件(年間の合計所得金額が1,000万円以下。給与年収ベースでいうと1,220万円以下)に加えて、配偶者が一定の条件を満たす必要があります。これらの条件は1年の終わりの日(12月31日)を基準に満たす必要があります。では、配偶者にはいったいどういう条件が課せられているのでしょうか。
配偶者控除が認められる条件は4つ
配偶者控除の対象となる配偶者の条件は4つあります。1つ目は「民法の規定による配偶者であること」です。法律婚であるという意味です。2つ目は「納税者と生計を同一にしていること」です。同じサイフ(会計)で暮らしているという意味です。
3つ目は「配偶者の年間の合計所得金額が38万円以下であること」です。給与の年収ベースに換算すると年103万円以下ということになります。4つ目は「事業専従者として給与をもらっていないこと」です。店主(納税者)の従業員等として給与をもらっていないという意味です。
配偶者に給与所得がある場合は?
配偶者控除は専業主婦を想定した制度です。では配偶者に給与所得が発生して専業主婦でなくなったら適用がなくなるのでしょうか。実は、配偶者に給与所得があっても配偶者控除が受けられなくなるわけではありません。専業主婦といっても、少しでも稼ぎが必要なのはどの夫婦も同じことで、稼ぎ出したからといって税制上配慮されないわけではありません。
給与所得の金額103万円の壁
給与所得があっても年38万円以下、給与年収ベースで年103万円以下であれば、配偶者控除を受けることが可能です。これを「103万円の壁」と呼びます。103万円の壁は配偶者控除適用の壁であるとともに、配偶者本人に所得税の納税が発生し始める壁でもあります。
そのため、多くの専業主婦が年収が103万円以内に収まるよう就業調整をしている、配偶者控除が女性の社会進出を阻害しているとの指摘があるところです。
配偶者特別控除とは?
配偶者特別控除は、配偶者控除の特別版です。配偶者の給与年収が103万円を超えても、納税者の年収に応じて一定の額を特別に控除できるとするものです。
納税者の年収は「1,120万円以下」「1,120万円~1,170万円以下」「1,170万円~1,220万円以下」の3区分があり、それぞれの区分ごとに、配偶者の給与年収103万円~201万円まで、配偶者の年収が増えるに従って控除額が徐々に減っていくという仕組みです。
配偶者控除と配偶者特別控除は同時に受ける事ができる?
このように、配偶者の年収が103万円以内の場合に配偶者控除が、配偶者の年収が103万円を超えると配偶者特別控除が適用されるという関係ですので、配偶者控除と配偶者特別控除を同時に受けることはできません。
なお、配偶者控除も配偶者特別控除も控除額の上限は38万円です。ただし、配偶者が公的年金受給者などの高齢者の場合は、公的年金等の最低控除額が120万円(65歳未満は70万円)になり、配偶者控除額の金額も48万円に上昇します。
確定申告で配偶者控除を受ける場合の必要書類は?
配偶者控除を受ける場合の必要書類は何でしょうか。申告書類には要件に該当していることを証明する書類を添付するのが通常ですが配偶者控除の場合も同じでしょうか。
配偶者控除は上記4つの要件を満たす必要があるので、必要書類としては戸籍、通帳、配偶者の源泉徴収票などが想定されます。しかし、結論からいうと、これらいずれの書類も必要書類ではありません。
確定申告で必要な書類
確定申告での必要書類は所得の種類によって異なります。納税者本人の確認書類としてマイナンバーがわかる書類を添付しますが、配偶者控除を受けるからといって、配偶者との婚姻や配偶者の収入等を裏付ける書類は必要ありません。
特別に配偶者が国内に居住していないレアなケースでは、親族関係書類(戸籍など)及び送金関係書類(外国送金依頼書の控えなど)を用意する必要があります。
ただし、これらの必要書類は、通常のサラリーマンが年末調整を行う際、会社に提出していれば、確定申告の際あらためて税務署に添付する必要はありません。
年金をもらっている場合
納税者が公的年金等を受給している場合には、公的年金等の源泉徴収票が確定申告の必要書類となりますが、これは給料の場合の源泉徴収票と同じ類のものなので、年金をもらっているからといって特別に要求されているものというわけではありません。
また、配偶者が公的年金等を受給している65歳以上の老齢者の場合は、控除金額が変わってくるので注意が必要ですが、こちらの場合も配偶者の所得に係る書類が必要書類となるわけではありません。
むしろ年金の場合は、給与と異なり年末調整が行われません。公的年金は雑所得として扱われ、給与所得とは取り扱いが異なります。年金受給者の場合は確定申告を行うケースが多くなりますので注意が必要です。
配偶者控除の書類の書き方
上記のとおり配偶者控除の要件さえわかれば、配偶者控除の書類の書き方はそれほど難しいものではありません。書き方の問題というよりも、実際いくらの金額の控除が受けられるかを算出できるかどうかが問題です。
特に配偶者特別控除については、納税者と配偶者の収入の状況で控除できる金額が変わってきますので、これらをしっかりと把握して控除額を算出することが大事です。
勤務先から配布された用紙へ記入する
サラリーマンの場合、年末調整で「給与所得者の配偶者控除等申告書」を提出します。勤務先の経理や総務などの担当者からもらえるので、その様式に記載して会社に提出します。書き方が分からない場合は様式裏面の記載要領を確認するか、勤務先に問い合わせればたいてい解決します。
書き方①本人情報欄
申告書様式の一番上の欄です。納税者本人の情報を記載します。具体的には「所轄税務署長」「給与支払い者の名称」「給与支払い者の法人番号」「給与支払い者の所在地」「あなたの氏名」「あなたの住所」です。
「所轄税務署長」欄や「給与支払い者の法人番号」は会社の担当者の方で記載しますので、空欄で問題ありません。
書き方②「あなたの本年中の合計所得金額の見積額」
あなたの本年中の合計所得金額の見積額を記載します。合計所得金額が1,000万円を超えると適用になりません。また900万円以下なのか900万円超950万円以下なのか、950万円超1,000万円以下なのかで控除できる金額が違ってきます。
収入と所得の関係については、給与の収入金額から給与所得控除(費用)の額を引いたものが給与所得となります。様式の裏面の記載要領に表が記載されているのでそちらで確認するとよいでしょう。
書き方③「配偶者」「配偶者の本年中の合計所得金額の見積額」
ここは配偶者に係る情報を記載する欄です。具体的には「配偶者の氏名」「個人番号」「生年月日」「同居でない場合の住所」「老人配偶者に該当」「非居住者に該当」「生計同一の事実」「配偶者の所得金額の見積額と該当する区分」を記載します。
「配偶者の所得金額の見積額と該当する区分」で、配偶者控除の適用なのか、それとも配偶者特別控除の適用があるのかが判定されることになります。
書き方④「合計所得金額の見積額の計算表」
この欄は、あなた及び配偶者の合計所得金額を計算するための表です。給与所得だけであればともかく、公的年金など他の所得もあると頭の中だけでは整理できませんので、この表を使って算出します。
この表の所得金額を数字を、書き方②「あなたの本年中の合計所得金額の見積額」及び書き方③「配偶者の本年中の合計所得金額の見積額」に転記します。
書き方⑤「控除額の計算」
配偶者控除及び配偶者特別控除の控除額が分かる表になっています。ここまでの記載で、納税者と配偶者の所得金額が算出されましたので、この表を用いて実際の配偶者控除又は配偶者特別控除の金額を算出します。
この表の中の控除額が年末調整又は確定申告において、納税者の所得金額から控除できる金額となります。
配偶者控除を受ける場合は確定申告のポイントを把握する
確定申告で配偶者控除の申請する方法や書き方、必要書類などについて紹介しました。やはり、配偶者控除を受けるポイントは夫婦の収入額ということになります。制度のポイントや条件をしっかりと理解し、確定申告では確実に配偶者控除の節税メリットを受けられるよう、正しく申告するようにしましょう。