住宅ローン控除とは?
住宅を購入する場合、それまで経験したことの無いような大きな金額の住宅ローンを借り入れることが一般的です。住宅ローンを借り入れる場合、いくつかの条件を満たすと、住宅借入金等特別控除、通称「住宅ローン控除」を受けることができます。
この記事では、住宅ローン控除を受ける際に必要な確定申告の確定申告の手続き方法や、申告書などの必要書類の集め方などをご紹介します。
住宅ローン控除によって金利負担の軽減
住宅ローン控除では、借入残高の1%分を所得税や住民税から控除することで、住宅ローンを借り入れた際に支払う必要がある金利負担を軽減することを目的としています。住宅ローン控除による控除期間は、借り入れ開始から10年間(消費税10%時の購入だと13年間)となっています。
現在は、フラット35などの長期固定金利でも1%強の金利となっているため、住宅ローン控除期間は金利負担がほとんど無い形となっています。変動金利はほとんどの金融機関で1%未満ですので、住宅ローン控除期間は、いわゆるマイナス金利状態となっています。
住宅ローン控除を受ける為に確定申告をしよう!
では、住宅ローン控除を受けるための具体的な手続きについて説明します。住宅ローン控除を受けるためには、住居を購入した翌年2月~3月の間に、確定申告を行う必要があります。
サラリーマンの場合は、一般的に所得税の申告は年末調整で行いますので、経験がない方も多いかと思います。現在は、医療費控除や投資が一般的になってきましたが、このような申告を行う際は、確定申告が必要です。また、自営業の方はそもそも年末調整がありませんので、毎年確定申告をする必要があります。
①確定申告は税務署で手続きを行う
確定申告は税金の申告や控除を行うための申請ですので、市役所などではなく、税務署で行います。税務署で申告書を受け取り、必要事項を記入して、申告内容を証明する各種書類を添付して提出します。
また、住宅ローン控除を受ける場合は、通常の申告書に加え「住宅借入金等特別控除額の計算明細書」を添付する必要があります。確定申告を行う際の必要書類については、後ほど詳しく説明します。
②インターネットでも確定申告が可能
以前までは、確定申告を受け付けるようになってから税務署へ直接出向き、書類の記入などをその場でする必要がありました。しかしインターネットの普及に伴い、インターネットからでも申告書の作成や、確定申告自体が可能となりました。
自宅などで落ち着いて申告書の作成ができますし、「住宅借入金等特別控除額の計算明細書」は自動計算してくれる箇所もありますので、記載誤りの可能性を減らすことができます。
確定申告は毎年2月16日~3月15日
確定申告の時期は決まっており、毎年2月16日~3月15日までの1ヶ月間です。これは申告書などの必要書類を税務署へ提出する期間となっているため、申告書の作成自体はもう少し前から行うことが可能です。この期間は税務署が非常に混み合いますので、可能な限り事前に準備しておくと時間のロスも少なく済みます。
期間内に必ず確定申告を行う!
確定申告は必ず上記期間中に手続きを終わらせましょう。会社などの年末調整では、実際の提出期限から余裕を持って設定されていることが多いため、多少遅れても間に合いますが、確定申告はそうはいきません。万が一間に合わなくても、過去に遡って還付を受けることもできますが、基本的には期間内に手続きを完了させるようにしましょう。
2年目以降の手続きについて
初年度の住宅ローン控除に関する申請は、サラリーマンであっても確定申告が必要となりますが、サラリーマンの場合は2年目以降からは年末調整での申請で済みますので、慣れない確定申告を毎年行う必要はありません。以下の記事に2年目以降の手続きについてまとめていますので、合わせてご覧ください。
住宅ローン控除の必要書類とは?
住宅ローン控除を受けるためには、実際に住宅を購入したことを証明したり、借入残高がいくらあるのかを証明したりなど、必要書類がいくつか存在します。必要書類の種類と、それぞれの入手方法について説明します。
必要書類の一部は、既に手元にあるものをコピーする、あるいは郵送で送られてくるものになりますが、自分で用意しなければいけないものもありますので、確認してください。
必要書類は必ず揃えよう!
これから説明するものは、全て住宅ローン控除を受けるための必要書類ですので、必ず全て揃える必要があります。いずれか1つでも足りなければ、申請内容の証明ができないため、申告自体が受け付けられませんし、当然還付の手続きもされません。入手方法が分からない、もしくは手元にない場合にはどのようにすれば良いか、必ず税務署に確認しましょう。
大切な物なので必要書類の紛失に注意!
必要書類は全て、重要な書類となっています。記載されている内容は個人情報の塊ですので、必要書類を集めている最中に紛失しないように注意しましょう。
特に、不動産売買契約書の原本を紛失してしまうと、確定申告だけでなく、今後契約内容の確認も出来なくなってしまいます。コピーを取った後にどこかに放置して紛失してしまった、ということが無いように、特に注意してください。
必要書類①確定申告書
まず、確定申告を行うための申告書が必要です。サラリーマンの場合、必要な申告書は「確定申告書A(第一表と第二表)」と「住宅借入金等特別控除額の計算明細書」の2種類となります。
記入する情報は多いですが、必ず手書きである必要はなく、国税庁のサイトからオンライン上で必要な情報を記入し、印刷することも可能です。
必要書類②建物・土地の不動産売買契約書の写し
住宅を購入する際に、不動産業者などと交わす売買契約書のコピーを取り、提出する必要があります。この書類を提出することで、購入した住宅が新築なのか中古なのか、住宅の購入なのかそうではないのかを確認することができます。
ページ数も多くコピーは大変ですが、かと言ってどこかのページを省略することはできません。自宅にコピー機がない場合は、コンビニ等を利用しましょう。
必要書類③住宅ローンの残高証明書
確定申告書に年末時点の借入残高を記入しますが、その借入残高を証明するための書類です。この借入残高によって、住宅ローン控除の控除額が決定されます。住宅ローンを借り入れた金融機関が発行しますので、確定申告が始まる時期までに手元にない場合は、金融機関へと問い合わせましょう。
必要書類④建物・土地の登記事項証明書
住居を購入した際、建物と土地の情報を登記するのですが、その登記内容が正しいことを証明するための書類です。建物と土地の取得年月日、所有者、持分割合、面積など、確定申告書に記載した内容が正しいかどうかを確認するために使用されます。
住宅ローン控除を受けるための条件の1つに「床の登記面積が50平方メートル以上であること」というものがあり、これを確認するためにも使用されます。
住宅ローン控除の必要書類の入手方法とは?
各必要書類の内容についてはご理解いただけかと思います。続いて、それらの書類の入手方法について説明します。どの書類も、入手方法自体はさほど難しくありませんので、順番に見ていきましょう。ただし、先にも述べたとおり、集めている最中での紛失には、十分注意してください。
①確定申告書の入手方法
申告する内容を記入する確定申告書は、確定申告が始まる少し前から、税務署へ出向くことで入手できます。サラリーマンの場合、必要な申告書は先にも述べましたが「確定申告書A(第一表と第二表)」と「住宅借入金等特別控除額の計算明細書」の2種類です。入手する申告書を間違えないよう注意しましょう。
税務署やPDF印刷
税務署へ出向くことで入手できますが、自宅にPCと印刷環境があれば、PDF印刷することでも入手可能です。最近はスマホに保存したPDFを印刷するサービスもありますので、そちらも利用可能です。
なお、国税庁のサイトでは、オンライン上で記載内容を記入したものを印刷することもできます。「住宅借入金等特別控除額の計算明細書」については、一部数値を自動計算してくれるため、計算ミスによる申告誤りを防ぐことができます。
②建物・土地の不動産売買契約書の写しの入手方法
不動産売買契約書は、住居を購入する際に不動産業者等と契約を交わした際に、原本を渡されています。そのため、不動産を購入した業者からわざわざ取り寄せるといったことは不要です。売買契約書に限らず、住居を購入する際に交わした各種書類は、1つのファイルにまとめておくと、探す手間が省けます。
自宅に保管している契約書をコピー
売買契約書の原本は購入した本人が所持していますので、それを全ページコピーして提出します。場合によってはかなりの枚数になることもありますが、面倒臭がらず、全ての内容をコピーして提出しましょう。
自宅のプリンターにコピー機能がある場合は、それを利用すれば問題ありません。A4サイズまでのコピー機能の場合は、ページ端が切れないように注意しましょう。
③住宅ローンの残高証明書の入手方法
住宅ローン控除の控除額を決定するための、年末時点の借入残高を証明する書類です。時期になったら郵送されてきますので、自分で発行しに行く必要はありません。年末時点の借入残高が記載してあり、確定申告書に記載された金額と差異が無いかどうかを確認するための書類です。
お取引店での発行
住宅ローンを借り入れた金融機関が発行し、郵送されてきます。通常は10月~11月頃に郵送されてきますが、初年度の場合は借り入れた翌年の1月頃に郵送されてきます。もし、確定申告の時期になっても手元に届いていない場合は、借り入れた金融機関に問い合わせましょう。
④建物・土地の登記事項証明書の入手方法
住居を購入した際に登記した情報を証明するための書類です。登記事項の証明になりますので、市役所等ではなく、法務局から発行してもらう必要があります。サラリーマンの場合、滅多に利用することがない施設ですが、証明書の発行手続き自体は、市役所で各種証明書を発行してもらう手続きとあまり差はありません。
法務局の窓口や郵送
登記事項証明書を発行してもらうには、法務局へ出向き、発行手続きを行います。また、オンラインから申請だけ行い、受け取りだけ法務局へ出向く方法や、法務局へ取りに行く時間が取れない場合は、登記事項証明書を郵送してもらうことも可能です。
ちなみに、最も発行手数料が安く済むのは、オンラインで申請して、法務局の窓口へ受け取りにいく方法になりますが、郵送の場合でも+20円で済みますので、あまり差はありません。
夫婦や親子で住宅ローン控除を受ける場合
住宅を購入する場合、単独名義ではなく、夫婦や親子など、複数人名義で住宅ローンを組む場合もあります。その場合、名義の登録方法によっては、名義人それぞれで住宅ローン控除を受けることが可能となります。では、どのようにすれば、複数人での住宅ローン控除を受けることが可能になるのでしょうか。
連帯債務であれば複数人で住宅ローン控除が受けられる
フラット35などで設定される「連帯債務」の場合、名義人それぞれが持分に応じた債務を背負うことになるため、それぞれが住宅ローン控除を受けることが可能となります。しかし、「連帯保証」は主の名義人が返済できなくなった場合に、他の名義人が債務を負うことを保証する形になるため、住宅ローン控除を受けることはできません。
たとえば5000万円の住宅を連帯債務で購入する際、夫は3000万円、妻は2000万円の債務となるよう持分を設定すると、夫は3000万円分、妻は2000万円分の住宅ローン控除を受けられます。
住宅ローン全体の借入残高である5000万円分の住宅ローン控除を夫婦それぞれが受けられるわけではないため、注意してください。
複数人で住宅ローン控除を受ける場合はそれぞれで手続きが必要
複数人で住宅ローン控除を受ける場合は、住宅ローン控除を受ける人それぞれが確定申告を行う必要があります。同じ物件の住宅ローン控除だからといって、1つにまとめることはできません。当然、必要な書類は1人の場合より多くなりますし、記入する書類の量も1人の場合より増えます。
住宅ローン控除は所得税や住民税からの控除であることを忘れずに
以下の記事でも紹介していますが、住宅ローン控除は所得税や住民税からの控除となります。夫婦で連帯債務とした場合に、妻が出産等で会社を辞めて夫の扶養家族になると、所得税や住民税が発生しなくなるため、妻の住宅ローン控除の権利が消滅してしまいます。
更に連帯債務で住宅ローンを組んだ場合は、妻の債務を夫が肩代わりすることになり、夫婦の持分比率によっては、贈与税が発生することもあります。住宅ローン控除を受けられるからと安易に連帯債務にせず、今後の計画をしっかり見据えた上で決定しましょう。
住宅ローン控除の必要書類は余裕を持って準備!
以上が、住宅ローン控除の申請に必要な書類と、その入手方法となります。種類も多く、必要書類によっては窓口に直接出向くこともあることは、ご理解いただけたでしょうか。
連帯債務で住宅ローンを組み、債務者それぞれで住宅ローン控除を受ける場合は、1人の場合と比べて手間も時間も掛かります。必要書類の発行などに時間も掛かりますので、より入念な準備が必要です。
必要書類集めは大変
今回ご紹介した必要書類以外にも、申請する住宅に住んでいることを証明する住民票や、会社員の場合は源泉徴収票も必要となります。自分が何の書類を準備しなければいけないのか、それぞれの書類はどこに発行してもらわなければいけないのか、把握しておきましょう。
紛失してしまった書類がある場合には、再発行の手続きが必要となる場合もありますし、再発行に時間が掛かるケースも想定されます。
確定申告期間が迫ってきたら少しずつの準備を!
事前に必要書類を整理せずに受け取りに行くと、あとで同じところに別の書類を発行しに行かなければいけない、といったことにもなりかねません。確定申告の受付が始まってから準備を始めると、仕事の都合などで証明書を取りに行く時間が取れなかったりしてしまい、結局期限ギリギリの申請になってしまいがちです。
事前に準備しておける書類もいくつかありますので、確定申告期間が始まってからではなく、期間前から少しずつ準備を進めましょう。書類発行のため、平日に時間を取ることもありますので、仕事との都合を付ける必要も出てきます。
確定申告の際の住宅ローン控除の必要書類は余裕を持って揃えよう!
住宅ローン控除は控除額も大きく、実感しやすい減税政策の1つとなっています。サラリーマンの場合は必要書類を揃えたり、確定申告書に記入することに不慣れで面倒に感じるかもしれませんが、最大で40万円の還付や減税を受けられるため、ぜひとも手続きを行いましょう。
まずは何の書類はどこに行けばもらえるのか、この記事を参考にして入手方法を確認し、必要書類を準備するスケジュールを立ててください。