配偶者特別控除とは?改正内容・配偶者控除との違いなどわかりやすく解説

配偶者特別控除とは?改正内容・配偶者控除との違いなどわかりやすく解説

配偶者特別控除とは何でしょうか。配偶者特別控除とは一定の所得以下の配偶者がいる夫婦を優遇する税制措置ですが、最近大きな改正がありました。改正に伴い、配偶者の所得の額や申告書の書き方などがどう変わったのか、今回は配偶者特別控除の改正内容などについて紹介します。

記事の目次

  1. 1.配偶者特別控除とは
  2. 2.配偶者特別控除は配偶者控除とは何が違う?
  3. 3.2018年1月・配偶者特別控除の条件改正
  4. 4.配偶者特別控除の対象となる条件とは
  5. 5.配偶者特別控除の申告書の書き方
  6. 6.配偶者の所得判定に含めないものとは
  7. 7.配偶者特別控除を海外で申請する場合の書き方とは
  8. 8.配偶者特別控除とは節税の制度!改正により更に身近なものに

配偶者特別控除とは

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配偶者特別控除とは、配偶者の所得が一定の金額である場合に、その夫婦のもう一方の所得額を減額する節税の仕組みです。主に夫婦が共働きの場合に問題となります。配偶者特別控除を理解するにはまず配偶者控除を知っておくのが効果的ですが、いずれも似たような局面で問題となります。

自分よりも所得の高い配偶者の税金を安くする制度

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配偶者特別控除は、配偶者の年収が103万超201万円以下であるときに、本人である納税者(配偶者の連れ合い)の所得から一定の金額を減額します。この一定の金額は、配偶者の年収と本人の年収によって決まるため一様ではありません。

本人の年収は103万超201万円以下より大きいケースが多いので、配偶者特別控除は所得の高い方の夫婦の税金が所得の低い配偶者のおかげで安くなる仕組みであると言えます。

配偶者特別控除は配偶者控除とは何が違う?

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配偶者控除と配偶者特別控除とは何が異なるのでしょうか。配偶者控除とは、配偶者の年収が103万円以下の場合に、本人である納税者(配偶者の連れ合い)の所得から38万円を減額します。この38万円は本人の所得が大きい場合には、26万円又は13万円に減額されます。配偶者特別控除とは配偶者の年収レベルが異なります。

配偶者控除は自分よりも所得の低い配偶者の税金を安くする仕組み

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配偶者控除も配偶者特別控除も配偶者の年収が一定の金額の場合に、本人の所得を減額する点で共通しています。大きく異なるのは配偶者の年収です。配偶者控除の適用対象となる配偶者とは、基礎控除と給与所得控除の合算額を超えない収入しかない配偶者のことです。

これは何を意味するかというと、所得税が理論上掛からない配偶者を有している場合には配偶者控除が適用されるということです。当然ですが、配偶者控除を受けるには自分より所得の低い配偶者が必要です。

2018年1月・配偶者特別控除の条件改正

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近年夫婦を取り巻く労働環境は大きく変化しています。年功序列・終身雇用制が崩壊し、かつてのように夫婦片働きで家計を支えるのは困難になってきています。労働力不足も深刻化しつつあり、女性の就業促進を促す観点から、配偶者(特別)控除は見直しがされ、平成29年度の税制改正では、就業促進の観点から制度が改正されました。

この改正は2018年1月から施行され、夫婦の働き方についても影響を与えるものとして注目されています。

改正ポイント①所得制限の設置

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主な改正点の一つ目は、所得制限の設置です。所得制限は、すでに配偶者特別控除においては2018年1月以前から導入されていましたが、今回配偶者控除でも導入されました。

配偶者控除では、従来納税者本人の所得制限はありませんでしたが、改正により38万円一杯の控除を受けられるのは合計所得金額が900万円以下(年収ベースなら給与年収1,120万円以下)の人に限られることになりました。この年収が高くなるにつれ配偶者控除の額が38万円から減っていきます。

一定の所得を超えると、段階的に控除額が減額

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具体的には、年収が1,120万円超1,170万円以下の納税者は配偶者控除の額が26万円となり、38万円から12万円が減少します。また、年収が1,170万円超1,220万円以下の納税者は配偶者控除の額が13万円になり、全額のときと比べ3分の1程度に減少し節税効果が低くなります。

改正ポイント②年収201万円以下まで対象

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主な改正点の2つ目です。配偶者特別控除において、配偶者の年収の上限が引き上げになりました。配偶者特別控除は、配偶者の年収が上がれば上がるほど控除の金額が徐々に減っていく仕組みですが、配偶者の年収が201万円を超えると控除の額がゼロになります。改正前はこの配偶者の年収の上限がもう少し低い金額に設定されていました。

改正前は配偶者の年収が141万円以下

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改正前は、配偶者特別控除を受けることができる配偶者の年収の範囲は103万円超141万円以下でした。つまり、配偶者の年収が141万円を超えると配偶者特別控除の額はゼロになりました。しかし、2018年1月の改正により、配偶者の年収の上限は201万円まで引き上げられ、結果、多くの夫婦で配偶者特別控除の節税を受けられるようになりました。

改正ポイント③配偶者の年収が150万円までの場合満額38万円の控除が受けられる

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改正点の3つ目は、配偶者の年収が150万円までは、配偶者控除と同じ38万円の配偶者特別控除が受けられる点です。この効果は大きく、納税者本人からすると、配偶者控除か配偶者特別控除かの違いはあるにせよ、配偶者の年収が150万円までは38万円の所得控除が受けられるわけです。

改正前は、配偶者の年収が105万円以上から控除額が減り始めていましたが、今回の改正では150万円までは控除額が減ることはなく、年収を多く稼いでいる夫婦にありがたい仕組みとなりました。

配偶者控除と配偶者特別控除の違いをわかりやすく解説!仕組みや条件は? | 副業・暮らし・キャリアに関するライフスタイルメディア
所得税の控除には配偶者控除と配偶者特別控除がありますが両者の違いはなんでしょうか。これらの制度や違いを知らないと、税制上損をすることもあります。そこで今回は配偶者控除と配偶者特別控除の仕組み、年収などの条件や違いについてわかりやすく解説します。

配偶者特別控除の対象となる条件とは

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配偶者特別控除の対象となる条件を考えるには、控除を受ける人(納税者本人)の条件と、配偶者の条件とに分けて考えるとわかりやすいでしょう。控除を受ける人の条件は1つだけですが、配偶者の条件にはいくつか存在します。

なお、所得税の計算期間は1月1日~12月31日ですので、これらの要件は1年の最後の日である12月31日の時点で満たしておく必要があります。

控除を受ける人の条件

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控除を受ける人本人の条件は1つだけです。なお、夫婦どちらも年収が低く、以下に紹介する配偶者の条件を満たしている場合であっても、夫婦の間で互いに配偶者特別控除を受けることはできません。どちらの所得を控除するかは自由に選択できますが、片方の所得しか控除できないことに注意しましょう。

一年間(1/1〜12/31)の合計所得金額が 1,000万円以下であること

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これは「納税者本人が稼ぎすぎていない」という条件です。納税者本人が高額所得者の場合は配偶者控除を受けることができません。たとえ配偶者の年収が低く配偶者を扶養する必要性があっても、本人の収入が高いのであれば、税金を負担せよというわけです。この基準は、年の合計所得金額が1,000万円以下、収入ベースでいうと年収1,220万円以下です。

配偶者の条件

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次に配偶者の条件について紹介しましょう。配偶者特別控除の対象となる配偶者とは、以下に紹介する6つの条件をすべて満たす配偶者のことを指します。この基準は、基本的には配偶者控除の場合と共通です。異なるのは配偶者の年収だけと覚えておけば、特段問題はありません。

配偶者の一年間(1/1〜12/31)の所得が38万円超〜123万円以下であること

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上述のとおり、配偶者特別控除を受けるためには、配偶者の所得(年収)が一定の範囲内に収まっていることが必要です。その基準となる一年間の所得は38万円超123万円以下であり、収入(年収)ベースでいうと、103万円超201万円以下ということになります。なお、給与所得者の場合、給与収入から給与所得控除の額を引いた額が所得となります。

確定申告をする者と「生計を一」にしていること

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「生計を一にしている」とは、単純に言うと同じサイフで生活していることを意味します。通常、同居の場合は特段の事情がなければ同じサイフであると判断されますが、別居の場合であっても夫婦の一方からの送金等がある場合は同じサイフで生活していると言えます。別居していても必ずしも生計が異なることにはなりません。

民法の規定による配偶者であること

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「民法の規定による配偶者」とは、「法律婚」であるということを意味します。「法律婚」とそうでない結婚との違いは、「婚姻届」を役所に提出しているかどうかの違いです。いわゆる「内縁関係」や「事実婚」の場合は、配偶者特別控除の適用を受けることができませんので、注意が必要です。

ほかの人の扶養親族となっていないこと

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扶養親族とは、親族に扶養(養ってもらっている)状態を指します。扶養親族には扶養控除という制度が対象ありますが、配偶者がその連れ合いに扶養されている場合(専業主婦など)、扶養控除ではなく配偶者(特別)控除が適用になります。あくまで夫婦間では扶養控除は問題になりません。

配偶者が他の家族(親など)の扶養親族とされると、その家族の所得税で扶養控除が適用され、所得額の減税が受けられます。理屈の上では、ある家族が複数の者に扶養されていることはありうる話ですが、税制上、扶養の関係で減税されるのは被扶養者1人につき1人です。

青色申告者の事業専従者として給与の支払を受けていないこと

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夫が自営業で、妻が稼業の手伝いをしているような場合は、妻は従業員としての性格が強くなり、夫婦間の扶養の意味合いが薄れます。このケースで、夫が青色申告者で妻が「事業専従者」という条件を満たせば「青色事業専従者給与」を受けることができます。

つまり、配偶者特別控除とは別の控除を受けることができるので、この場合には配偶者特別控除を受けることができません。

白色申告者の事業専従者でないこと

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白色申告者の事業専従者も青色申告者の事業専従者とほぼ同様であり、このケースでは配偶者特別控除を受けることはできません。なお、「青色」なのか「白色」なのかで、控除を受けることができる配偶者の給与の額の上限に違いが生じます。青色の場合は、妥当性のある金額であれば全額が控除対象です。

配偶者特別控除の申告書の書き方

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配偶者特別控除の申告書は、配偶者控除の申告書と合体した様式を用います。正式には「給与所得者の配偶者控除等申告書」という名称の様式です。数字だらけで書き方が難しいという声もありますが、夫婦の年収を押さえておけば、それほど書き方が困難というわけではありません。

書き方の注意点①:本人と配偶者の年収を押さえる

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何はともあれ、本人と配偶者の年収が分からないことには配偶者特別控除の額を計算しようがありません。「給与所得者の配偶者控除等申告書」は通常、年末調整の際に必要となるので、毎月の給与明細書を用意して、1年間の年収額がいくらなのか見積額を算出しておきましょう。

書き方の注意点②:サラリーマンは給与所得控除の額を押さえる

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年収額が算出されると、次に所得の額を計算します。「所得=利益(収入)-費用」で算出されますが、サラリーマンの場合、費用は給与所得控除額として、給与収入に応じて一律に額が決まっています。給与所得控除の額は、申告書の記載要領などで表で記載されているので、確認してみましょう。

書き方の注意点③:給与所得以外の所得は、個別に丁寧に計算

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このように給与所得の場合、簡単に所得の金額が算出できるようになっていますが、事業所得や不動産所得など給与所得以外の所得がある場合は、少し手間がかかります。「収入」と「費用」をきちんと算出することが基本ですが、所得特有の計算方法の有無などについて、申告様式の記載要領や税務署などで確認する必要があります。

書き方の注意点④:控除額は表をみて算出

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本人と配偶者の所得の額が算出できれば、あとは配偶者特別控除の額を計算するだけです。これについては「給与所得者の配偶者控除等申告書」の中に表が書かれているので、表の縦欄(本人の所得の区分)と横欄(配偶者の所得の区分)をみて、控除額がいくらになるのかを確認してみましょう。

配偶者の所得判定に含めないものとは

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配偶者の所得といったとき、どういった収入が所得にカウントされ、あるいはカウントされないかは問題です。「そもそもカウントされない収入なんてあるの?」という声が聞こえそうですが、実はカウントされない収入があります。

所得としてカウントされて税金が掛かると、実質的にその収入が目減りしていることになります。特に失業中とか育休中などやむなく収入が少ないときには重大で、政策的に給付しているものの効果を縮減させてしまうことになりかねません。

このように所得税では一定の収入については、配偶者の年収にカウントしないことにして、失業中や育休中の給付をより実効的にしようと配慮されています。

退職後の求職者給付(失業手当)

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退職後の求職者給付、いわゆる失業手当は、会社を退職後、再就職するまでに一定の期間が空く場合に受給することができます。失業手当は、国民の最低限度の生活を保障するため支給されるものであり、所得としてカウントされてしまうと、最低限度の生活を受けられなくなるおそれがあります。

したがって、失業手当は所得税法上、所得としてはカウントされない(非課税)とされている収入です。

出産育児一時金(育休中)

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育休中にはいくつかの手当や給付金を受けることができます。育休中も仕事をすることができず収入が減少します。したがって育休中の生活の保障の観点からは、これらの手当等に課税しないことが理想的であるといえます。

出産育児一時金(育休中)は、一児につき概ね40万円程度が支給される手当で、育休中の生活保障に資するお金です。したがって、出産育児一時金(育休中)は所得税が非課税とされており、配偶者の年収にカウントする必要はありません。

育児休業基本給付金(育休中)

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上記の出産育児一時金(育休中)は、あくまで一時金ですが、育児休業基本給付金は育休中、毎月給付を受けることができる給付金です。育児休業基本給付金を受けるには、休業開始前の1月当たりの賃金の8割以上の賃金が支払われていないなどの要件があります。

言うまでもなく、育児休業基本給付金は育休中の生活費を支える給付であり、所得税では非課税となっています。したがって、配偶者の年収から除外することができます。

配偶者特別控除を海外で申請する場合の書き方とは

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上記の配偶者特別控除の条件で、生計が同一であるという条件がありました。これが主に問題となるのは夫婦別居の場合です。特に海外に住んでいるという場合、同じ生計で生活していることをきちんと立証しないと配偶者特別控除を受けることができません。夫婦の片方が海外居住の場合、書き方はどうすればよいのでしょうか。

確定申告に添付する

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書き方自体は配偶者が海外の場合も国内の場合も特に変わるところはありません。配偶者控除等申告書の欄に、「非居住者である配偶者」「生計を一にする事実」という欄があるので、それらに○をつければよいだけです。書き方よりもむしろ、一定の添付書類の提出が必要になりますので、これらの書類を用意するようにしましょう。

親族関係書類

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添付が必要な書類の一つ目が親族関係書類です。親族関係書類は、「戸籍の附票の写しその他の国(地方公共団体)が発行した書類及びその配偶者の旅券(パスポート)の写し」か「外国政府(外国の地方公共団体)が発行した書類(配偶者の氏名、生年月日及び住所・居所の記載があるものに限る)」のいずれかが必要です。

送金関係書類

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添付が必要な書類の二つ目が送金関係書類です。「送金関係書類」とは、配偶者の生活費・教育費に充てるため、必要の都度、送金を行ったことを明らかにするものをいいます。

具体的には「金融機関の書類で、その金融機関が行う為替取引により配偶者に支払をしたことを明らかにするもの」あるいは「クレジットカード発行会社の書類で、そのクレジットカードを提示してその配偶者が商品等を購入し、その代金相当額を納税者本人から受領したことを明らかにする書類」を指します。

配偶者特別控除とは節税の制度!改正により更に身近なものに

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今回は配偶者特別控除について紹介しました。改正によって配偶者特別控除を受けられる夫婦の数は拡大し、身近に感じられるようになったという人が多いと考えられます。しっかりと配偶者や本人の年収などの条件を確認し、夫婦で所得税の減税が受けられるようにしましょう。

たけかずや
ライター

たけかずや

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