国民年金と厚生年金の違いを覚えておこう!
日本に住んでいる人は、年金を納めなければならない義務があります。そしてその年金の制度は、公的年金制度である、国民年金と厚生年金の2種類あります。この国民年金と厚生年金の違いはご存知でしょうか。
現在ご自身が納めている年金が、どちらなのか分からなかったり、違いがあることを知らない方も少なくありません。そこでこの記事では、国民年金と厚生年金とはどういった年金なのかを解説し、2つの年金の違いを比較します。
国民年金と厚生年金の違いを比較!
まず、国民年金と厚生年金のそれぞれについて、どんな年金制度なのかを解説します。2つの年金制度の内容が理解できれば、国民年金と厚生年金の違いについても理解しやすいでしょう。
ここでは、国民年金と厚生年金の年金制度の内容について、わかりやすく解説していきます。国民年金と厚生年金についてそれぞれの内容を解説し、どんな違いがあるのかを確認しましょう。
国民年金とは?
国民年金は、一番基本的な年金制度と言えます。年金は3階層に分かれていて、その基礎的な位置づけにあるのが国民年金となります。
国民年金のみに加入していると、その分しか年金を受け取ることができませんが、厚生年金に加入していると、国民年金と厚生年金の分を受け取ることができる仕組みになっています。
ちなみに3階層目の年金制度は、企業年金・年金払い退職給付という年金で、公務員や一部の企業が加入しています。この年金に加入していると、国民年金・厚生年金とこの年金分を受け取ることができます。
国民年金に加入しているのは、第1号被保険者と第3号被保険者と呼ばれる人達です。第1号被保険者とは、自営業や農業、漁業、学生や無職の人のことです。第3号被保険者とは、厚生年金に加入している人(第2号被保険者と呼びます)に扶養されている人のことです。
20歳~60歳未満は必ず加入
年金の基礎的な位置づけの国民年金だけでなく、年金は日本国内に住んでいる人で、20歳~60歳未満の人が全員加入しなければいけない制度となります。
今までは、将来年金を受け取れる条件が、25年以上年金保険料を納めていることとなっていましたが、2017年8月からは、10年以上納めていることに変更されました。とはいえ、年金保険料を納めている期間が長いほど、将来受け取れる年金額は多くなります。
厚生年金とは?
厚生年金は、3階層になっている年金制度の2階層目の年金です。厚生年金に加入する人は第2号被保険者と呼ばれ、会社員など厚生年金に加入している企業に勤めている人となります。
厚生年金の保険料は、会社側と本人で折半して納めています。会社員の方は、毎月の給与からこの厚生年金保険料を天引きされていることでしょう。
国民年金に上乗せされる給付金
厚生年金は前述のとおり、加入している人は、国民年金の受給金額に加えて、厚生年金の受給金額も将来受け取れることになります。ですので、国民年金だけに加入している人よりも、受け取れる年金の金額は多くなります。
個人事業主の方でも、従業員の1/2以上の人が厚生年金に加入することを同意していれば加入の申請をすることができます。将来受け取れる年金の金額を増やしたいのであれば、厚生年金に加入することも考えておくと良いでしょう。
厚生年金と国民年金の関係とは?
国民年金と厚生年金それぞれの年金保険について、保険に加入する対象者や、それぞれの年金保険の仕組みについて解説しました。年金制度は3階層あり、1階層目の基礎的な年金が国民年金となり、2階層目が厚生年金となっています。
厚生年金と国民年金の関係はどうなっているのでしょうか。ここからは、厚生年金と国民年金にはどのような関係があるのかを解説します。
厚生年金に加入すると自動的に国民年金にも入る!
厚生年金に加入している、第2号被保険者と呼ばれる人たちは、厚生年金にだけ加入しているという訳ではありません。
日本に住んでいる20歳~60歳までの全員が、年金に加入しなければなりませんが、基礎的な年金となる国民年金には、その対象者全員が加入していることになります。
つまり、厚生年金に加入すると自動的に国民年金にも加入していることになります。厚生年金にだけ加入して、国民年金には加入していない、ということにはなり得ません。
厚生年金は適用事業所では強制加入
また、厚生年金に加入している企業に就職した場合、その人が厚生年金に加入することは強制となります。厚生年金に加入する・しないを選ぶことはできません。
ですので、毎月の給与から厚生年金保険料を引かれるのが嫌で、厚生年金から脱退したくてもできません。厚生年金の保険料を支払いたくない場合は、厚生年金に加入していない企業に勤めるか、個人事業主となるかなどの方法が考えられます。
国民年金と厚生年金の貰える金額とは?
公的年金制度における、国民年金と厚生年金の位置づけや仕組み、年金に加入する対象者の違いや、2つの年金の関係性について詳しく紹介しました。
では、実際に国民年金と厚生年金では、将来もらえる年金の金額はどのくらい違いがあるのでしょうか?ここからは、国民年金と厚生年金でどのくらい受け取れる金額に違いがあるのかを紹介します。
国民年金の受給金額
まずは、国民年金の受給金額について解説します。国民年金は65歳から受け取ることができます。国民年金の受給金額は、厚生年金よりも計算方法は簡単です。
なぜなら、国民年金の受給金額の満額(年額)は定額となっているからです。この国民年金の受給金額は、毎年改定されています。受給が開始となる場合は、その年の年金金額を確認するようにしましょう。
40年間納付で平均「78万円」
国民年金の満額は年に77万9,300円(平成30年4月からの金額)となっています。満額とは、20歳~60歳までの40年間分の保険料を納めていたときにもらえる金額となります。年間に約78万円ということは、月額に直すと約6万5,000円となります。
この、納めるべき40年間に未納があった場合は、その分の年金額が満額から差し引かれることになります。月に6万円弱しかもらえないとなると、仮にご夫婦だったとしても13万円ほどにしかならず、生活するには厳しい金額といえます。
ちなみに将来もらえる国民年金の金額の計算は、国民年金満額約78万円×(保険料を納めたの月数÷480ヶ月)となります。例えば2年間未納だったという場合は、約78万円×((480ヶ月-24ヶ月)÷480ヶ月)=約74万円となります。
国民年金が未納の月が多ければ多いほど、将来もらえる年金金額が減ってしまいます。そもそも少ない国民年金の受給額なのに、未納があるためにもっと減ってしまうという事になりかねません。
厚生年金の受給金額
厚生年金も国民年金と同じく、65歳から受け取ることができます。ただし、厚生年金の中には65歳未満でも受け取れる「報酬比例部分」「定額部分」と呼ばれるものが存在します。これらを受け取れるのは決まった年齢の人のみとなります。
厚生年金は、加入していた期間及び給与の金額によって受給金額に違いがあります。個人の収入によってもらえる金額が違うので、計算しようとしても手間がかかってしまいます。
もし現在の受給金額が知りたいということであれば、年金事務所に確認するか、「ねんきん定期便」という書類が日本年金機構から届いているはずですので、そちらで確認すると良いでしょう。
40年間納付で平均「188万円」
例えば、会社員の平均収入の約43万円が給与の場合、厚生年金に20歳~60歳までの40年間加入していたとします。その場合の年金の受給金額は、約188万円となります。月額にすると、約15万7,000円もらえることになります。
ご夫婦で、夫が上記の収入があって妻は専業主婦だとすると、妻は国民年金の金額である約78万円もらえることになります。月額は約6万円なので、ご夫婦合わせると22万円ほどの金額となります。
厚生年金の方が圧倒的に多い!
国民年金と厚生年金で受給金額を比較すると、圧倒的に厚生年金の方がもらえる金額が多いことがわかります。国民年金と厚生年金の関係でも説明しましたが、厚生年金に加入すると国民年金にも自動的に加入します。
そのため、年金を受給する時には、国民年金からも厚生年金からも年金が給付されることになるのです。厚生年金に加入している方が、年金額が多くなるという仕組みになっているのです。
金額についても比較をすると、国民年金だけの受給金額だと、ご夫婦合わせても生活するには物足りない金額しかもらえないことがわかります。一方厚生年金に加入していれば、なんとか生活できるくらいの金額はもらえることになるでしょう。
老後の為にしっかりと備えておこう
将来もらえる年金の金額を比較すると、現在国民年金だけに加入している人は不安に思うかもしれません。自営業の方やフリーターで、国民年金に加入していて、さらに配偶者がいなくて独身である場合、将来に不安を覚えても仕方ありません。
国民年金の満額での給付金額は、毎年更新されます。ですので今もらえる金額よりも少なくなってしまう可能性も無いとは言えません。自分自身の将来設計を考える際、老後の生活費を年金だけではまかなえないと真剣に考えなくてはなりません。
国民年金と厚生年金の保険料の違いとは?
国民年金と厚生年金を比較すると、将来もらえる年金の金額も大きく違いがあることがわかりました。国民年金だけに加入しているよりも、厚生年金に加入している方が、将来もらえる年金の金額は多くなります。
では、毎月納めている年金の保険料は、国民年金と厚生年金とで比較するとどのような違いがあるのでしょうか。ここからは、年金の保険料の違いを比較していきます。
国民年金の保険料
国民年金の保険料は、収入があってもなくても保険料の金額が決まっています。ただし、前年の収入よりも一定の金額以下に収入が減ってしまった場合や、失業してしまった場合など、条件を満たしている場合は、保険料の納付を免除、または納付できるまで猶予期間がもらえる事があります。
また、保険料を納めなければならないのは、第1号被保険者で、第3号被保険者は保険料を納める必要はありません。第3号被保険者は、第2号被保険者の扶養となっているため、保険料は第2号被保険者が納めていることになります。
国民年金の保険料は、毎年更新されます。令和元年度の国民年金の保険料は1万6千410円となっています。毎月納付するよりも、まとめて前納した方が割引されるためお得になっています。
厚生年金の保険料
厚生年金の保険料は、現在の給与の金額によって違いがあります。厚生年金保険料の計算方法は、給与の標準報酬月額と賞与の標準賞与額れぞれに、保険料率をかけて計算されます。
標準報酬月額とは、手取りの給与ではなく給与の総支給額から決められている金額のことです。標準賞与額とは、税金が引かれる前の賞与の金額から1,000円未満を切り捨てた金額のことです。そして厚生年金の保険料率は、平成29年9月から18.3%と固定されました。
厚生年金保険料の計算方法
例えば標準報酬月額が26万円で、標準賞与額が41万円の場合、まず給与にかかる厚生年金保険料は26万円×18.3%=4万7580円となります。賞与にかかる厚生年金は41万円×18.3%=7万1030円となります。
厚生年金の保険料は、会社と折半で納めることになりますので、個人の負担額はそれぞれ、2万3790円と3万7515円ということになります。
上記の計算方法でわかるとおり、厚生年金の保険料は給与と賞与の標準額が多いと納める保険料も多くなります。国民年金の保険料と比較してしまうと、かなり多く納める印象があるのも事実です。
国民年金と厚生年金は両方払える?
国民年金と厚生年金のもらえる年金金額を比較しました。また、両方の年金の保険料についても比較しました。国民年金はもらえる金額も納める保険料も両方決まった金額なのに対し、厚生年金は両方とも収入によって金額が異なります。
では、国民年金と厚生年金を両方とも納付することはできるのでしょうか?両方の年金には密接な関係があると前述しましたが、両方とも納付した場合どのように処理されるのかを解説します。
基本的には両方払う事は出来ない!
基本的に年金は、重複して納めることができないような仕組みになっています。前述したとおり、厚生年金を納めていれば、国民年金には自動的に納入していることになるため両方を納めていることになっています。
ただし、学生などが就職して国民年金から厚生年金へ変更した場合や、退職して厚生年金から国民年金に変更した場合などの、年金を切り替えるタイミングで年金を両方納めてしまっているケースがあります。
なぜ重複してしまうのかというと、年金保険料を前もってまとめて納めている場合、もうすでに年金を納めている期間中に年金を切り替えて、新しい年金の保険料を納めてしまう場合があります。
もしも重複していた場合には?
国民年金と厚生年金を両方とも納めてしまって、納付が重複してしまったという場合にはどうすればいいのでしょうか。基本的に年金は、過払いなどがないように管理されています。
両方の年金を重複して納付してしまった場合、年金事務所から「国民年金保険料過誤納額還付・充当通知書」というものが届きます。この通知書は過剰に納めてしまった年金保険料の金額が記載されています。
この通知書には「国民年金保険料還付請求書」が同封されています。この請求書に、過剰に納入してしまった保険金を返還してもらう銀行口座の情報を記入し、返送する必要があります。返送後、指定した銀行口座へ振り込まれます。
学生時代の未納は影響ある?
日本に住んでいる人で20歳~60歳までの人は、必ず年金保険料を納める義務があります。働いている人なのか学生なのか、または働いていない人なのかという区別はされていません。
この年齢に当てはまる全ての人が対象となっているため、年金を納め始める時期が、まだ学生だったという場合もあります。20歳になれば、学生だとしても年金を納める義務が発生します。
ただ、社会に働きに出ていない学生の場合、年金とは何かわからないなど、年金の納付義務や仕組みについて理解できておらず、年金の納付をしない学生も少なくないでしょう。
このように、学生時代に年金を納めておらず、未納となっている場合はどんな影響があるのでしょうか?学生時代の年金の未納について解説します。
未納の分は減額される!
学生時代に年金保険料を納めていないと、将来もらえる年金金額は、その未納分の保険料の分減額されてしまいます。たとえば学生時代の2年間、国民年金を納めていない場合、約4万円程将来もらえる年金金額が減額されることになります。
ただし、学生の場合は「学生納付特例制度」という年金の制度を利用できる場合があります。この制度は、学生であることを理由に、年金の納付が猶予される制度です。この制度は自分で申請しないと利用することができません。
この制度を利用しても、年金の納付が「免除」された訳ではありません。年金を納付する期間に「猶予」があるだけです。この猶予期間分の年金を納めておかないと、将来の年金金額から減額されてしまいます。
余裕のある時に未納分を払っておこう!
学生時代に年金を納めていなかった場合や、学生納付特例制度を利用していた場合、そのまま納めなかった年金保険料を放っておくと、将来もらえる年金金額が減額になります。
未納分の年金は後から遡って納付ができます。できるだけ納めておいた方が将来のためにも安心です。ただし、未納分を後から納付する場合には遡れる期間が決まっています。
学生納付特例制度の場合は、10年まで遡って納付することができます。この猶予期間の年金保険料を後から納付することを「追納」といいます。しかし、保険料の未納分を後から納める場合は「後納」といい、2年までしか遡ることができません。
平成30年9月までは「後納制度」という制度が適用されていて、5年まで遡ることができましたが、後納制度は終了してしまったため、2年までに期間が縮小されてしまいました。年金保険料の未納がある場合は、できるだけ早めに納入した方が良いでしょう。
国民年金の保険料免除制度・猶予制度とは?
学生は「学生納付特例制度」という国民年金の制度が利用できることがあります。その他にも、国民年金には保険料が免除となる制度や、猶予期間が与えられる制度などがあります。
国民年金の納付が厳しいという方は、このような制度に該当しているかを一度確認してみることをおすすめします。これらの制度を利用するにはご自身で申請しなければなりませんので注意してください。
制度が適用される対象者
保険料が免除される制度は、所得が少ない人が対象となります。所得の金額によって、全額免除となるか、4分の3となるか、半額となるか、または4分の1となるかに分かれています。
保険料の納付猶予の制度は、20歳~50歳未満の人が対象となります。所得が一定の水準以下の場合に適用されます。これらの制度は、学生納付特例制度と同様に、10年以内であれば後から保険金を納付することができます。
保険料が免除される場合も、納付期間に猶予がある場合も、その期間の保険料は納付されていないため、将来もらえる年金の金額は減ってしまうことになります。
将来もらえる年金の金額を満額に近づけたい場合で、納付する余裕がある場合は年金保険料を納付した方が良いでしょう。
国民年金と厚生年金の違いを理解して老後に備えよう!
いかがでしたでしょうか。国民年金と厚生年金を比較して、仕組みや制度の内容について解説しました。国民年金と厚生年金は両方とも公的年金制度ですが、比較してみると違いがあることがわかります。
国民年金と厚生年金を比較すると、将来もらえる年金の金額にも違いがあり、納める保険料にも違いがあることがわかりました。将来のことを考えると、厚生年金に加入していた方が、もらえる金額が多くなります。
また、両方の年金を納めてしまった場合や、学生時代の制度など、年金は様々な制度があり、納付金額や加入している保険も一人ひとり管理されています。年金制度について今一度確認して、将来のために備えておきましょう。