老後の生活費は年金で足りる?
老後の生活費は年金で足りるのでしょうか。その答えはNoです。日本は資本主義社会で、国民負担率も諸外国に比べてそれほど高くありません。老後になったら全て国に面倒を見てもらえるなんて、そんな都合のよい話はありません。
これは多くの国民にとって共通認識だと思われますが、老後に年金2000万円必要という金融庁の報告は、金額の大きさもあり国民に大きなインパクトをもたらしました。
国民年金の平均月額は5万5157円
国民年金は基礎年金と呼ばれるように、国民全員が必ず加入することになっている年金です。厚生労働省年金局の「平成27年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」によれば、国民年金の老齢年金の平均年金月額は、5万5157円となっています。
平成28年度及び平成29年度の統計でも、国民年金の平均月額はそれぞれ5万5373円、5万5518円となっており、約5万5000円は老後に誰もが受給できる金額といえます。
厚生年金の平均月額は14万5305円
厚生年金は、国民年金に上乗せされて給付される被用者の年金です。同じく「平成27年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、厚生年金の平均月額は14万5305円です。この数値は平均であり、基礎年金も含めた厚生年金(老齢年金)の場合は15万5375円、基礎年金のない厚生年金の場合は7万9505円となっています。
この数値は、平成28年度、平成29年度の平均月額も大きく変わりません。すなわち、被用者保険に加入していると、老後に基礎年金と合わせて約15万円を受給できることになります。
公的年金のみだと難しい!
このように、老後に国民年金あるいは厚生年金から月々一定の額の給付を受けることができますが、一見してこの額で生活できるとは言えないでしょう。もちろん、生活費は人それぞれ違いがあります。老後の生活費は、住む家が持ち家なのかアパートなのかで異なるし、一人暮らしなのか夫婦で暮らすのかでも異なります。
公的年金だけで足りるのか、不足するとしてどれだけ不足するかは、収入面や貯金額だけでなく、老後の支出面(生活費)も併せて検証しなければなりません。
老後の生活費の平均額【夫婦の場合】
では、老後の生活費の平均はどうなっているのでしょう。ここでは、総務省の家計調査の統計データをもとに、夫婦の場合の老後の生活費の平均を分析します。なお、総務省の家計調査は、家計の収入や支出、貯蓄・負債などを毎月抽出調査されたものであり、景気動向の把握や生活保護基準の検討などに幅広く活用されています。
総務省の「家計調査」によると月23万7691円が必要
2016年の二人以上の高齢夫婦(世帯主が60歳以上の無職世帯)の消費支出は、月23万7691円となっています。翌2017年の同じ統計データをみても、平均は月23万5615円となっているので、無職の高齢夫婦の世帯が生活する場合には、概ね月23万円程度を要していることになります。
さきほどの年金の平均で、夫婦共働きで厚生年金を受給できる場合には、老後に月額28万円程度受給できる場合もありますが、夫婦片働き世帯(片方が厚生年金、もう一方は国民年金)の場合は、月額20万円程度の収入に留まり、平均の生活費と比較して3万円程度不足する計算になります。
老後の生活費の平均額【一人暮らしの場合】
次に一人暮らしの場合、老後の生活費の平均はどうなっているのでしょうか。ここでも、総務省の統計局のデータを活用します。家計調査年報(家計収支編)の60歳以上の単身世帯の収入・支出のデータからは、老後の消費支出額(生活費)の平均は14万円前後という数字が出てきています。
総務省の「家計調査」によると月14万8358円が必要
2017年の家計調査によると、60歳以上の一人世帯の消費支出額の平均は14万8358円となっています。前年の2016年をみると、平均は14万9552円となっているので、概ね老後の一人世帯では15万円弱の支出が必要です。厚生年金の平均月額が基礎年金含めると15万円なので、収支はトントンといったところです。
賃貸住まいの場合は3~5万円生活費が高くなる
賃貸住まいをしている場合、老後の生活費は上がります。上記の統計データには住居費という項目があり、月平均1万5372円となっています。これは平均なので、賃貸でない人の数も混在していて、これらのデータが数値を押し下げている可能性が高く、実際には3~5万円の家賃代を払っている人が多いでしょう。
賃貸住まいだと、毎月3~5万円の家賃が確実に老後の生活費としてカウントされますが、持ち家だとこのお金を払う必要はありません。マイホームを購入するかどうかは老後の生活費も見据えて検討したいところです。
老後の生活費を出費ごとに計算【ゆとりのある夫婦生活】
老後は、仕事も退職して子育てもひと段落して、自分の残りの人生をゆっくりと過ごしていく時期です。自分のために、趣味だとか楽しみのために時間とお金を費やすのが理想でしょう。上記の生活費の中でそのようなお金を捻出できればよいですが、少し厳しい印象を受けます。ゆとりのある老後を送るのであればもう少し資金が必要です。
ゆとりのある老後を夫婦で送るには約30万円が必要
公益財団法人生命保険文化センターが行った平成28年度「生活保障に関する調査」によると、ゆとりある老後生活費の平均は、34万9000円となっています。さきほどの統計調査の高齢世帯の夫婦の老後の生活費は23万円なので、ゆとりある老後生活を送ろうと思うと、そこからさらに10万円以上のお金が必要になります。
各出費の目安額を紹介
ひと括りで老後のゆとりは35万円必要といっても、どの項目にどれだけのお金が必要なのかは人それぞれです。「この項目は自分はそんなに掛けなくてもいいよ」という人もいるかもしれません。ここでは、各出費の目安額を紹介するので、「自分なら本当にそれだけ必要だろうか」とシュミレーションしてみましょう。
住居費は賃貸の場合5~10万円
まず住居費です。持ち家か賃貸かで掛かる費用は異なります。持ち家の場合は管理費が掛かりますが、通常時であればそれほど意識する必要はありません。特に自宅に修理する部分等がなければ、意識すべきなのは固定資産税くらいでしょうか。
一方の家賃は毎月定額の費用が発生します。ゆとりのある物件に住むのであれば、一人世帯なら5万円程度、夫婦世帯であれば10万円程度は必要でしょう。もちろん住む地域によって物価は異なります。住居費は、特に重要な費用です。老後に住む物件について、どの程度費用が掛かるか検討しておきましょう。
食費は1日2000円と言われている
食費も住居費同様に大事なコストです。自炊するのであれば、費用は低く抑えられますが、ゆとりのある老後生活をするのであれば、月に2,3回くらいは外食したいところです。
一人暮らしの食費は1日1000円(月3万円)が相場と言われています。老後で夫婦で暮らすことを考えると、単純にそれを2倍していいか悩ましいところですが、月額ベースで6万円くらい用意しておくと少しゆとりのある食生活が送れるのではないでしょうか。
光熱費は約23000円
光熱費は、水道、電気、ガスの代金です。総務省の家計調査(二人以上の世帯)では、光熱費は月平均2万3000円という統計です。光熱費の金額は日中に家にどれだけいるかで変わってきます。冬場や夏場にはエアコン使用による電気代などが気になりますが、あまり節約するようだと体にとっても良くないのである程度のコストは見ておく必要があります。
交際費の平均値は2万7009円
交際費は、それまでにどのような人間関係を築いてきたかで変わってきます。老後になっていきなり交際を開始するというのは少々考えにくいところです。総務省統計局の統計では2万7009円という平均値が出ていますが、社交的な人だと月5万程度掛ける人もいるでしょうし、全く掛けない人もいるでしょう。
ただ老後は引きこもりになりがちで、人づきあいや人間関係は大切です。ゆとりある老後生活を考えるなら、交際費に使えるお金を用意しておきたいところです。
医療費は月約2万円
健康な老後生活を迎えたいと思っても、いきなり健康になる人はいません。若いうちから、運動したり身体を鍛えるなどして、医療費が掛からない老後生活を迎えられるようにしたいものです。
それはともかく、老後は医療費は掛かりがちな費用です。厚生労働省の統計「年齢階級別一人当たり医療費、自己負担額及び保険料の比較」では、60歳以上では年額6~9万円くらいの自己負担を必要とします。月1万円は掛からないとしても7~8000円は掛かる計算です。
二人世帯だと1万5000円は掛かる計算です。保険外の医療なども考慮すると、1月2万円あればゆとりある老後生活は送れる計算です。
教養娯楽費は約2万5000円
教養娯楽費は、趣味や旅行などの娯楽に使う費用です。ゆとりある老後生活を送るなら娯楽にかけられる費用も用意しておくことが大事です。しかし、趣味や娯楽をいきなり老後に入ってから見つけるのは案外難しいことです。スポーツや趣味の習いごとなどをやるにしても、月会費は1つ当たりせいぜい5000円~1万円程度掛かります。
このほかにも旅行に行くことがあるとして、さらに1回当たり1万円だとすると、1か月当たり2万5000円を準備していればゆとりある老後生活を送れるはずです。
衣類・生活用品は5000円~1万5000円
衣類・生活用品は、老後になっても平均して掛かる費用です。人前に出ることが減ってくると、どうしても衣類などにお金は使わなくなるものです。よって、勤労世代に比べると高齢者世代の衣類の額は減ってくると思われがちです。
総務省の家計調査年報では、60代世帯(無職)における、被服及び履物は6458円、家具・家事用品は9608円掛かっています。人によっては全く服を買わないという人もいるので月5000円で足りるという世帯もあるでしょうが、月1万5000円あるとゆとりある老後生活であるといえるでしょう。
ペットには約7000円
老後は寂しいのでペット(犬・猫)を飼うという人もいるでしょう。ペットを飼う場合、当然ですがペットの食費や生活費、医療費などの費用が掛かります。
食費だけなら2000円~3000円で済みますが、ベット病院を受診したり、ペットの美容院に行ったりすると1月で1万円掛かったりすることもあります。平均的には1月7000円程度あれば、ゆとりある生活費になると考えられます。
新聞購読費は4500円
新聞購読も毎月一定の金額が掛かります。例えば毎日新聞も朝日新聞も月額購読料は4037円です。最近はデジタルで購読することができるので、その場合はもう少し安く済みますが、新聞は朝起きて紙面で読みたいという人もいるでしょう。とりあえず4500円あれば全国紙を1紙読むことが可能です。
全部合計すると30万円位になる
以上、住居費、食費、光熱費、交際費、教養娯楽費、衣類・生活費、ペット代、新聞購読代をすべて合計すると、生活費はだいたい30万円位に上ります。どの費目もゆとりをみて算出しているので、人によってはそんなに掛からないという人もいるでしょうが、ゆとりある老後の生活費を考えると、これくらいのお金は準備しておくことが必要です。
老後の生活費を出費ごとに計算【ゆとりのある一人暮らし】
では次に一人世帯についてみています。夫婦世帯の場合、実際の生活費23万円に対して、ゆとりある生活費は30万円でした。ゆとりに一人当たり3万5000円は必要という計算です。同じように考えれば、一人世帯の場合には、15万円弱に対して3万5000円を上乗せすると19万円くらいになると推測できます。
ゆとりのある老後の一人暮らしをするには約20万円が必要
一人暮らしだと一人でいる時間が長くなるので、趣味に没頭したり、交際したりするのに時間とお金を掛けたくなります。夫婦の場合、一人当たり交際費は1万3500円、教養娯楽費は1万2500円という数値でしたが、一人暮らしの場合はこれをそれぞれ5000円くらいはさらに上乗せしたいところです。
したがってさらに1万円は加算して、ゆとりある老後の生活費としては合計約20万円は用意しておきたいところです。
各出費の目安額を紹介
実際には、20万円をどの費目にどれだけ当てるかは個人の自由です。一人暮らしでも、持ち家か賃貸かで大きく違いますし、家族が近隣に居住しているかどうかでも異なります。住む地域が都会か田舎かで、掛かる経費が大きく変わってきます。以下、大まかに、老後の生活費の各出費の平均を紹介しましょう。
食費は4万5000円
一人暮らしの場合、自炊が億劫になる傾向があります。外食とかお店で購入して持ち帰ったりすることが増えてきて、夫婦に比べて食費が掛かりがちになります。食生活には気をつける必要があるとしても、ゆとりのある老後ということであれば、1日1500円と見積もって、1500円×30日=4万5000円は見ておくとよいでしょう。
住居には2万円
住居に係る費用は、夫婦の場合と同様、持ち家か賃貸かで異なります。持ち家の場合は毎月の住居費はほとんど掛かりません。ただし、建物の所有者には毎年固定資産税が掛かります。金額は建物にもよりますが10万円近くは必要ですので、月当たりの費用としては8000円程度の住居費が掛かっていることになります。
賃貸の場合は、固定資産税を負担する必要はありませんが、毎月家賃という形で費用を負担します。一人暮らしなので1LDKなどの少ない間取りの安い物件に住むことも可能です。それでも4~5万円の家賃は必要です。
一応、住居費を2万円としていますが、これはこのように持ち家と賃貸が混在した平均の値であり、統計的にはともかく、具体の金額としてはあまり意味のない数字であるといえます。
水道・光熱費は1万5000円
光熱費は夫婦の場合が約2万3000円だったので、それを単純に按分すると約1万1500円という数値になります。ただし、一人暮らしで自宅にいる時間が長くなると、電気代などは夫婦の場合に比べると高くなりがちです。少しゆとりをみて、水道・光熱費は1万5000円程度あると便利でしょう。
家具や家事用品は5000円
上述したとおり、総務省の家計調査年報では、60代世帯(無職)における家具・家事用品は9608円掛かっています。これを単純に按分すると一人当たり4800円程度必要ということになります。したがって、一人暮らしの場合は家具・家事用品は5000円は必要と考えてもよいでしょう。
衣類代は5000円
被服及び履物は、高齢の夫婦世帯が1月6458円掛かっています。それを按分すると、単身世帯の場合は3200円程度という計算になります。老後はこれくらいで十分という人もいるでしょう。ただし、娯楽や交流を積極的に行う人の場合、衣類代は思いのほか必要なものです。1着1000円~2000円さらに要するとして、5000円程度の生活費は必要でしょう。
医療費は5000円
医療費は、60歳以上では年額6~9万円くらいの自己負担が必要で、月額7~8千円は必要です。他の費用は多い方がゆとりのある生活になるのですが、医療費だけは別です。一人暮らしでゆとりのある老後を過ごそうと思うなら、健康が第一で、医療費は少ないに越したことはありません。
つまり、平均を下回るくらいの生活費を目指したいところで、月額5000円くらいが理想です。
通信・交通費は1万9000円
勤労世帯の通信・交通費は、全体の15%程度の割合を占めています。もちろん、退職後はこの割合は大きく減少し、1割以下に減少すると見込まれます。しかし、公共交通機関を利用したりすると、交通費の費用も必要になるので、1割程度は見込んでおきたいところです。
全体の生活費が14万円の場合は1万4000円程度で済みますが、全体の生活費が19万、20万円のゆとりを持つなら1万9000円程度はあると安心です。
娯楽費は3万円
娯楽・教養に係る月会費が1つ当たり5000円~1万円だとして、それを2つ行うと1万円~2万円必要です。これ以外に旅行1回に1万円掛けるとすれば、2万円~3万円の娯楽費が必要です。単身世帯の場合、娯楽費を充実させることが老後を長生きする上での秘訣です。ここはゆとりをみて3万円の生活費を準備しておきたいところです。
その他の諸費用に3万3000円
老後になるとその他の費用も掛かります。子どもや孫への小遣い、冠婚葬祭費、地域の会費、税金等々です。1日当たり消費税込みで1100円と見積もると、1か月当たりで3万3000円程度掛かる計算になります。もちろん、そんなにいらない人もいるでしょうが、それくらいの費用を予備費的に持っておくとゆとりが持てる老後生活となります。
合計すると17万7000円
上記の各費目の金額を足し上げると、全体の老後の生活費は17万7000円が必要という計算になります。ただし、医療費は健康を意識して若干低めに見積もっているのと、住居費は賃貸の場合は2万円では済まないので、これらを加味すると、全体では20万円程度の生活費があった方が安心といえます。
老後の生活費を節約する方法
上記の老後の生活費は高すぎる、貯金も少ないし収入面を考えるとこれではやっていけないと不安に感じる人もいるでしょう。「贅沢は敵」、ゆとりは必要だが、なるべくなら生活費は節約したい人も多いはずです。そこで、上記の生活費を少しでも減らすための工夫についてご紹介しましょう。
方法①出費を工夫して減らす
上記の出費を自分にあてはめてみて、工夫して減らす努力をしてみましょう。例えば、健康であれば医療費は少なくて済むので、健康になるためのウォーキングなどにお金を掛ければ、医療費は減らすことができます。健康を意識した趣味に力を入れれば、ゆとりある老後生活が送れるでしょう。
また、日中外で行う活動をしていれば、日中の水道・光熱費は掛かりませんので、水道・光熱費の全体の節約につながります。その日中の活動が健康にもよいものであれば、医療費の減少にもつながり、全体の生活費の節約にもつながっていきます。
月によっては節約に励み、貯金をすることができたりすると、次の月には余裕が生まれ贅沢をすることができ、充実した老後生活になること間違いありません。
方法②免許証を返納して車も手放す
車を保有していると、毎年の自動車税が3万円~4万円、ガソリン代等の燃料費が月数千円、事故時の保険料や駐車場代もかかるし、車検時には10万円近い費用も必要です。何かと車に係る費用は掛かるのですが、免許証を返納して車を手放すとこれらの費用は無くなります。
もちろん移動の自由の問題もありますから、車を手放すのがよいかは慎重に検討する必要があります。少なくとも、普通自動車を軽自動車にするだけでも車に係る費用は少なくなりますので、検討してみるのもよいでしょう。
方法③生活費の安い国に移住する
日本は物価が高く、生活がしにくい国になってきていると言われています。もちろん、治安がよいし、食べ物などの安全などサービスの質が良いという面もあります。中国や東南アジアなど物価が安い国はたくさんありますので、そういった国に移住するという英断を行えば、ゆとりをもった生活費で暮らすことができるようになります。
老後の生活費がどうしても足りない時にできること
収支のバランスをとる方法は、①支出を減らす②収入を増やすのどちらかしかありません。①支出を減らすのも一つの方法ですが、あまり、そちらを切り詰めるとゆとりのある老後生活にはなりません。そこで②収入を増やす方法も検討すべきです。
収入を増やす方法としては①仕事を行う、②投資を行う、③貯金を取り崩す方法が考えられます。②はリスクが高いと逆に損をすることもあるのでローリスクの投資がお勧めです。③の貯金は、現役世代の間にどれくらい貯金をしたかが鍵です。ここでは①の「仕事を行うこと」を紹介します。
できる範囲で仕事を続ける
退職後、全く仕事を行わないのではなく、仕事を少しでも行うことができれば、毎月一定の収入が見込まれるので、収支のバランスを保ちやすくなります。ただし、現役世代と同様に週5日勤務というのは体力的にも難しいかもしれません。
しかし、週に2,3日でも、嘱託職員、アルバイトなどで仕事を行えば、毎月2~3万円でも収入が得られるし、収支の不足分をまかなったり、あるいは老後でも貯金をすることができたりします。
健康面などにも留意しながら、自分にあった仕事が見つけられるかどうかがポイントです。派遣会社に登録したり、地域のシルバー人材センターなどに相談してみるのも一つの方法です。
老後の仕事は何をする?
70歳定年という議論も出始めているように、いつから「老後」なのかというのははっきりしない世の中になってきていますが、長く働くことが必要な時代になってきています。生活費の充実や健康的な老後生活の観点からは、年金暮らしを行うのではなく、仕事をして過ごすというのも一つの老後の過ごし方であるといえる時代が来ているのかもしれません。
再雇用・勤務延長
高齢者が退職後に全く新しい仕事で働くのは難しいことでしょう。会社としてもそれまでの経験を活かしてくれた方が人材活用の点からは有意義です。そこで再雇用や勤務延長でこれまでと同じ会社で働くケースが増えています。
再雇用は、定年後、勤務している会社と引き続き雇用契約を締結して働くパターンです。いったん退職の形を取るので、会社によっては、給与や役職が下がることがあります。
勤務延長(定年延長)は、定年を延長して働いてもらうパターンです。こちらの場合は、退職という形を取らないため、基本的には給与や役職は変わらず働くというケースをとります。
人材派遣
退職して、人材派遣会社に登録して、新しい会社で働くことも考えられます。もちろん、若者と同じ土俵で求職するのですから不利と言えば不利ですが、経験者を優遇する企業も実は多いといえます。ミドルシニア向けの求人サイトもあったりするので、それらで求人がなされてないか探してみましょう。
シルバー人材センター
シルバー人材センターは、高年齢者が働くことを通じて生きがいを得るとともに、 地域社会の活性化に貢献する組織で、行政の指定を受けた法人が運営する組織です。
シルバー人材センターから報酬という形で収入を得ることができます。シルバー人材センターに登録すれば仕事を見つける手間は減るでしょう。しかし、必ずしも希望する仕事で働けるとは限らず、またセンターが間に介在するため、収入額もあまり多くない点は問題です。
老後の生活費を貯金する方法
勤労とは別に貯金したお金を取り崩して生活するという方法があります。以前は若い頃に定期預金を組んで貯金し、その利息で老後を暮らすという方法もありましたが、現在の低金利では定期預金でお金を貯金することは困難です。そこで、老後への貯金のため、個人年金保険やiDecoが注目されています。
個人年金保険やiDeco
個人年金保険は、生命保険の一種で、公的な年金ではなく、私的な年金ということになります。若い頃に保険料を支払い、保険会社に運用してもらって、老後に年金を受け取ります。個人年金は、一生涯受け取るパターンと一定期間受け取るパターンの2通りあります。
iDecoは、金融機関等と契約し、自分で投資信託等の商品に運用して貯金していくものです。税制上の優遇措置もあり注目されています。このように、若いうちに老後に向けた貯金を行い、老後にその貯金を取り崩して不足分を補う方法もあります。
老後の生活費を計画的に貯金しよう!
今回は、老後の生活費について紹介しました。生活費の節約、収入の増加は老後になってからの対応ですが、貯金は老後になってからやっても遅すぎます。若いうちにムダ使いをせず、個人年金保険やiDecoなどで貯金していくことが大事です。老後の生活に困ることがないよう、計画的に貯金を行うことも大切なことでしょう。