ヌバック生地のお手入れ方法を知りたい!
起毛した皮製品の総称をスエードやヌバックと言いますが、汚れがつきやすく、手入れの仕方を間違うと、ぺったりとした印象になってしまうので、敬遠されがちです。
しかしながら、ヌバック素材でできた登山靴やグローブなどは、丈夫で温かみもあり、うまく手入れすれば長く使える優れものなのです。
今回は、靴や財布など、様々な製品があるヌバック生地のアイテムを、上手にお手入れする方法と、詳しいお手入れ道具や手順についてご紹介します。
ヌバックとは?
ヌバックとは英語でNubuckとつづります。元々は、Newbackがなまったものと言われていますが、その語源の由来ははっきりしていません。
ヌバックは、財布、靴、グローブなど、革製品全般に使用されており、特に秋から冬にかけてのファッションでよく見かける生地です。
皮革を起毛加工したもの
ヌバック生地は、フランス語ではスエードと呼ばれていますが、その種類は、実は1タイプではありません。
皮革を起毛加工したものの総称として「ヌバック」という風に呼んでいますが、生地に使用される素材や加工方法の違いによって呼び方が異なります。
一般的にヌバックと呼ばれるものは、紙ヤスリや金属ヤスリで皮革製品の皮をバフがけして削っています。加工の度合いや加工する道具、そして使用される生地の素材によって、値段もピンキリです。
革の表面(銀面)を使用
ヌバック生地の作り方には、2通りあります。皮生地には、表面(銀面)と裏面(床面)の2つの面があります。ヌバックは、牛革の銀面にヤスリがけしたもので、通常価格が高く、高級生地に分類されます。
一方豚の皮の床面(つまり裏側)をヤスリがけしたものをスエードと呼びます。こちらは、ヌバック生地に比べて価格がやや安い傾向にあります。
牡鹿の皮を指していた
日本語ではヌバックと言う呼び方をしていますが、英語では「buckskin」と綴り、元々は牡鹿の皮という意味がありました。日本語では、裏(あるいは背面・背後)の皮という風に間違って認識されています。
ヌバックの本来の意味は、鹿の皮(Buckskin)という意味で、起毛加工していないものも、これに含まれます。日本では、ヌバックというと、裏皮、ベロア、スエードの総称とされていますが、誤りということは、一応知っておいてください。
ヌバックの手入れに使用する道具
登山靴、グローブ、財布など、様々な革製品に使用されているヌバック生地。ヤスリがけすることで、特殊加工を施し、柔らかく起毛しているのが特徴です。
ヌバック生地の製品を手入れするには、生地を傷つけないようにするために、専用の道具を使用します。ブラシ類、クリーム、ワックス、防水スプレーなど、いくつかのアイテムがありますので、アイテム別にご紹介していきます。
ブラシ
ヌバックのお手入れ道具として、最初に挙げられるのが「ブラシ」です。このブラシ類には、いくつかの種類がありますが、大まかな役割としては、ヌバック生地の表面の汚れを落とすということと、毛並みを整えるという2つの役割があります。
ヌバック生地は、起毛しているので、他の革製品に比べて汚れがつきやすく、繊維の間にホコリやゴミがたまりやすいという特徴があります。グローブなどは裏返して内側も手入れする必要があります。
スプラッシュブラシ
ヌバック生地のお手入れに使用する「スプラッシュブラシ」は、発泡ゴムや天然ゴムを使用したブラシです。
登山靴や財布など、ヌバック製品の表面の汚れ落としに使用します。密度が高く、柔らかい天然ゴムが、ヌバックの毛の間に入り込んだ汚れをそっと取り除いてくれます。
真鍮のブラシ
ヌバック生地のお手入れに使用するもう一つのブラシは「真鍮ブラシ」。その名の通り真鍮でできたブラシです。毛足の長いヌバック生地の靴や登山靴などは、履いているうちに、どうしても起毛の部分が潰されてしまいます。
生地の表面のゴミを取り除きつつ、ヌバックの毛を立ててくれる真鍮ブラシは、ヌバック生地の本来の質感を取り戻すのに、大きな役割を果たします。
防水ジェル
ヌバック生地のお手入れに欠かせないのが防水ジェルです。ヌバック生地は、一度水を吸うと、そこだけ色が変色して、シミのようになってしまいます。
特に、グローブなどは、手にはめていますので、雪や雨などでシミになりやすいアイテムですが、防水ジェルをしっかりと塗りこんで、手入れするとシミになりにくいのでおすすめです。
磨きブラシ
ヌバック製品のお手入れに使用するもう一つのブラシが「磨きブラシ」。こちらは、お手入れの最終段階で使用する仕上げ用のブラシとなります。
汚れを取り除いた後のヌバック生地は、ぺったりのっぺりとした印象になっていますので、起毛させるように、磨きブラシで整えると、生地本来の質感が戻ってきます。お財布なども、ポケットにずっと入れているので、潰れている毛をしっかりと起こしましょう。
ローション
ヌバック生地は、革製品ですので、栄養を与える必要があります。生地本来が持つ風合いや色をしっかりと発色させるためには、お手入れ用のローションが欠かせません。
綺麗に汚れを取り除き、ヌバック専用シャンプーやスポンジで洗った後は、ローションで皮に栄養を補給しましょう。
ワックス
ヌバック生地のお手入れの最終段階で使用するワックスは、汚れが再びつくのを防止する役割もあり、大変重要なアイテムです。
特に、登山靴やグローブなど、汚れがつきやすい製品の場合は、ワックスに加えて、ヌバック専用の防水スプレーをかけておくとよいでしょう。
ヌバックの手入れ【STEP1】
ヌバック製品のお手入れに使用する道具も分かったところで、ここからは、実際にどんな手順で手入れをしていくのかを見ていきましょう。
ヌバック製品のお手入れ方法は、大きく分けて「汚れを落とす」工程と「皮を保護する工程」そして「皮を復元する工程」「栄養補給の工程」の4つに分かれています。
汚れ落とす
お手入れの一つ目の工程は、汚れを落とすです。ヌバックのお手入れの肝となる部分ですので、この工程は特に丁寧に行いましょう。
ヌバック製品の汚れ落としには、先ほどご紹介したブラシ(スプラッシュブラシ、真鍮ブラシ)、そして、ヌバック用消しゴムなどをポイントで使用していきます。
1.手入れするものを準備
ヌバック製品の手入れを始める際は、まずは、汚れを落としたいものを用意します。登山靴を綺麗にするときは、下に新聞を敷くか、屋外など、汚れてもよい場所で手入れをしましょう。
財布、グローブなどの小物類でしたら、自宅の洗面台やキッチンなどでお手入れするのもOKです。いくつかのヌバック製品をまとめてお手入れすれば、道具の出し入れも一度で済むのでおすすめです。
2.細かいゴミを落としておく
お手入れしたいヌバック製品が準備できたら、まずは、細かいゴミを取り除きます。靴の場合は、靴用のブラシ、お財布やグローブの場合は、手持ちの洋服用ブラシなどを使用しても構いません。真鍮ブラシがあれば、それを使ってください。
ヌバック生地の目を見ながら、一定方向にささっとブラシをかけて表面の汚れやホコリをさっと取り除きます。靴底などにくっついているホコリは、ピンセットなどで取りましょう。
3.表面をスプラッシュブラシでこする
ヌバック製品の表面のホコリが取れたら、次はスプラッシュブラシを使用します。スプラッシュブラシで、細かい汚れを吸着させながらしっかりと汚れをかきだします。
あまりゴシゴシと生地を擦ると傷めますので、丁寧に行うようにしてください。特に、お財布やグローブなどは、縫い目のところに汚れがたまっていますので念入りに。
ヌバックの手入れ【STEP2】
ヌバック製品のお手入れ、最初のステップでクリーニングが終わったら、続いて、生地を保護する工程に入ります。
ヌバック生地は、ヤスリがけしているため、生地の表面が荒く、非常に繊細です。特に、水が付くと跡やシミになる性質がありますので、防水ジェルを使用して保護することが重要です。
防水ジェルで保護
ヌバック生地の専用保護ジェルは、生地の表面に刷り込むことで、ヌバック製品全体の風合いを保つ役割があります。
汚れ落としの方法として、ヌバック専用シャンプーを使用する場合がありますが、その場合は、シャンプーの工程が終わってから保護ジェルを使用してください。
1.ジェルを伸ばす
防水用の保護ジェルは、ヌバック製品の大きさによって使用量が異なります。登山靴などは、少し多めに500円玉1枚分ぐらいを、片方の靴ずつ使ってください。
お財布やグローブの場合は、100円玉一枚分ぐらいの量が片方の目安となりますが、デザインによって、裏表両方保護ジェルをつけた方がよい場合は、適宜広げてください。手で塗ってもよいですが、布を使用するとべたつかないのでおすすめです。
2.ブラシですりこむ
お手入れしたいもの全体に、保護ジェルを塗ったら、専用ブラシでしっかりと保護ジェルを刷り込みましょう。
グローブは内側から着用する人の手汗などもつきますので、念入りに行ってください。お財布も手で触れますので、防水ジェルは必須です。また、登山靴などは、アウター部分にしっかりと防水ジェルを塗りましょう。
ヌバックの手入れ【STEP3】
ヌバック製品のお手入れ、クリーニング、防水ジェルとここまで2つの工程を済ませました。続いては、皮の色落ちを防いで、風合いを復元する工程に入ります。
ヌバック生地は、表面を起毛させていますが、長時間使用していると、どうしてもぺったりと張り付いてしまいます。また、汚れを落としたり、紫外線の影響で皮が色落ちするという特性もあります。
ヌバックの色落ちを防ぎ復元する
そのため、ヌバック素材のお手入れでは、栄養を与える専用クリームやローションを刷り込み、皮の風合いを復元させる工程が欠かせません。
ヌバック専用ローション、またはクリームを少量取り、布に含ませてしっかりと刷り込んでください。クリームは、皮の色に合わせて様々なタイプが出ています。
1.ローションを全体に塗る
ヌバック専用ローションを少量取り、全体に塗り広げて行きます。塗り漏れがないように、均一に塗っていきましょう。
皮に栄養を与えると、ヌバック本来の色が戻って来ると同時に、だんだん自分好みの色合いに経年変化する風合いを楽しめます。
ヌバックの手入れ【STEP4】
ヌバック製品のお手入れ、靴、財布、グローブと、扱うアイテムによって、クリームなどの使用量に、多少の違いはあるものの、大まかなステップは同じです。
皮の色落ちを防ぐローションやクリームを塗ったら、最後に仕上げのワックスをつけて栄養補給をしましょう。
ワックスで栄養補給
ヌバック製品の手入れでもっとも重要なことは、次回使用したときに、できるだけ汚れをつきにくくさせるということです。
また、ワックスで栄養補給することで、汚れが付いても落ちやすい状態にしておけるので、将来的にもう一度お手入れするときに、汚れが落ちやすくなるというメリットもあります。
1.ワックスを指にとる
ヌバック製品のお手入れステップ3まで完了したら、ヌバック専用のワックスを用意してください。
ワックスを少量手に取って、登山靴やお財布など、お手入れしたいアイテムに付け、布などで丁寧に伸ばしながら磨いていきます。
2.キレイにしたい物につける
ヌバック専用ワックスは、無色透明タイプのものが多く、伸びのよさはメーカーによって異なります。
あまり大量にワックスをつけると、せっかくのヌバックの風合いが押さえつけられてのっぺりした印象になりますので、少しずつ付けるのがポイント。
3.ブラシですりこむ
全体にワックスが広がったら、今度は、ヌバック専用ブラシで全体にワックスを刷り込むようにして整えます。
ブラシを使う時は、製品の布目をよく見ながら、一定方向に揃えていくのがポイントです。余分なワックスもここで取り除けます。
4.手で磨く
ブラシを使って、製品全体にワックスを刷り込んだら、仕上げに手で磨いていきます。細かいところや手が届きにくい端の部分も丁寧に。
グローブの裏面、財布の内側なども忘れずに、ワックスを広げてください。ヌバック製品の生地全体に均一にワックスを広げましょう。
ヌバックの生地が使われているもの
秋から冬のおしゃれに欠かせないヌバック生地。ウエスタンスタイルのファッションに、よく見かけるアイテムです。
ヌバック生地を使用した製品には、どんなものがあるのか?ファッションのワンポイントも合わせて見ていきましょう。
登山靴
ヌバック生地が使用されているアイテムで、代表的なものと言えば登山靴。ヌバックの柔らかい生地は足にフィットするので、快適です。
登山靴は、3シーズン使用できるアイテムにヌバックを使用している場合が多く、雪山用の登山靴には使われていません。
財布
お手入れは少し大変なヌバック生地は、バッグなどにはあまり使用されません。ファッション小物としてはお財布によく使われます。
ヌバック生地のお財布を使う楽しみは、何といっても長年使っていくことによって生まれる「経年変化」。使えば使うほど手に馴染むようになります。
グローブ
同じくファッションアイテムとして、小物で取り入れたいのが、ヌバック生地でできたグローブ。秋冬のおしゃれに欠かせません。
ボルドーやブラウンなど、こっくりとした色合いのグローブは、引き締めアイテムにもなりますので、ファッションのアクセントに最適。
ヌバックの手入れを知りいつもキレイに!
登山靴、グローブなど幅広い製品に使用されているのはヌバック生地、ベストやバッグなどファッションアイテムにもよく使われています。柔らかくしっとりとした手触りが特徴です。
今回は、ヌバック製品の4ステップのお手入れ方法とアイテムごとに使用前にできる汚れ防止法などもまとめました。ぜひ、参考にしてみてください。