トウガラシの基本情報
ナス科のトウガラシには色々な品種があり、辛いものから甘いものまで様々です。原産地はメキシコで野菜として食したり、香辛料として広まっています。一般的に辛いとされているのは、赤トウガラシいわゆる鷹の爪やハラペーニョです。辛くない代表は万願寺トウガラシで、白い花が付き、花が終わると実が空に向かって伸びてきます。
トウガラシの栽培時期
トウガラシの栽培で、種まきからの育て方は2月の中旬頃に種まきをします。5月の上旬頃には葉も数枚出ていますので、それを苗として植え付けます。苗を購入した場合は5月上旬くらいに植え付けです。収穫出来る時期は大体7月上旬頃から10月中旬くらいまでの長い期間収穫が出来ます。トウガラシは夏の暑い時期の食欲不審に貢献してくれます。
トウガラシの品種
トウガラシの品種はスーパーチリ、ハラペーニョなども含めて多くの品種がありますが、ここでは、代表的な野菜として食される品種の育て方に絞って記載します。どの苗も手に入りやすく栽培も簡単ですので、初めての方でも十分に立派なトウガラシが収穫出来ます。育て方なども参考にしながらトウガラシを是非種まきから栽培してみて下さい。
鷹の爪
鷹の爪とは日本で代表的な赤い辛いトウガラシの品種です。約5~6cmの細長いトウガラシで、実は初め緑色で熟してくると赤くなります。何故鷹の爪と言うのでしょうか。これは見たままです。鳥のタカの爪に似ているからです。実を乾燥させて粉末になったものが、辛い辛い一味唐辛子です。
伏見トウガラシ
伏見トウガラシは、初め江戸時代に栽培したのが京都の伏見地区のため、伏見トウガラシと呼ばれますが現在では各地で栽培され、その名も伏見甘長トウガラシや甘長トウガラシ、伏見甘などと生産地で名前が変わりますが、どれも甘くて美味しいです。京都では実だけを食すのではなく葉っぱも煮物や佃煮などで食べられています。
万願寺トウガラシ
万願寺トウガラシは、伏見トウガラシ系の品種とカリフォルニア・ワンダー系という品種の交配で、大正から昭和にかけて京都の舞鶴市万願寺地区で栽培された品種です。とても柔らかくて甘みがあって種も少ない食べやすいトウガラシです。別名トウガラシの王様とも言われます。今では京野菜の代表と言っても良いくらい馴染みのある野菜です。
トウガラシに含まれる主な栄養素
トウガラシに含まれている主な栄養素の一番主要になるものは、辛み成分のカプサイシンで体内に入るとアドレナリンの分泌を活発にするだけでなく、胃腸も刺激して消化の増進にもなります。また疲労の回復や肌荒れなどにも効果のあるビタミンCや、ビタミンAに変換されて視力や呼吸器系統を守るカロテン、生活習慣病予防のビタミンEも豊富です。
トウガラシの栽培方法
では、家庭で一般的に行なわれているトウガラシの栽培のポイントを解説しましょう。ホームセンターで苗を買ってきて植えるのが簡単ですが、ここではあえて種まきから栽培する方法を解説します。苗を買ってきた方は、これから解説する植え付けの所から参考にして下さい。種まきの前に苗を作るのに必要なものは、土と育苗箱かセルトレイです。
種まき
育苗箱かセルトレイに土を入れます。土は、育苗用の土をおすすめします。そして約1cmの溝に種を一粒ずつ1cm~2cmくらいの間隔を空けて種まきし、軽く土を被せて(約5mm)水やりをして日当たりの良いところで発芽を待ちます。大体5日から7日くらいで発芽します。温度は25°~30°くらいを保つことが栽培のポイントです。
育苗
発芽後、ふたばが出て本葉が1~2枚出ましたら、ポットに移します。ポットに移す時には隙間が出ないように土をしっかりポットに詰める事がポイントです。土は種まきの時と同じ土です。そのまま日当たりの良い所に置いて本葉の枚数が増えるのを待ちます。水やりは乾いたらしっかりとあげる事が栽培のポイントです。
畑・土作り
本葉の枚数が増えるのを待つ間に土を作りましょう。トウガラシの栽培の土は、弱酸性~中性がベストですので苦土石灰(くどせっかい)を蒔いて馴染ませる必要があります。赤玉土6とバーミキュライト1と腐葉土3に苦土石灰を約150g入れて混ぜます。1週間経った時にその土に完熟堆肥と元肥化成肥料をそれぞれ加えて混ぜます。
植え付け
植え付けをする前に畝を成形します。幅約70cm×長さ2m×高さが15cm~20cmの畝を作ります。たっぷりの水やりをしてから土の温度乾燥を防ぎ害虫から守る黒のポリマルチを張りましょう。マルチを張ったら、苗と苗の間隔を約50cm空けてポリマルチに穴を開けます。穴に苗が入る程度の窪みを付け浅めに植えるのがポイントです。
支柱立て
トウガラシは植える時に浅めに植えますので、草丈が伸びてくると倒れやすくなります。そこで植え付ける時に一緒に支柱を立てる事が栽培のポイントです。支柱の長さは80cmくらいのものを用意します。支柱と枝を紐などでしっかり結んでおきます。こうすることが、トウガラシが風にあおられて倒れることを防ぐコツです。
整枝
整枝とは、不要な枝を取り払うことです。一番花が咲いたら、その下から伸びているわき芽を取り除きます。横の枝は2~3本残すのがコツです。これは必ず最初の花が咲いてから行なって下さい。花が咲く前にわき芽を取ってしまうと株そのものが弱ってきますので、必ず一番花が咲いてから行なうのがポイントです。忘れずに支柱も立てましょう。
収穫
トウガラシの収穫は青トウガラシと赤トウガラシで時期が違います。青トウガラシの場合はトウガラシの実が4cm~5cmくらいの大きさの実をはさみで収穫し、赤トウガラシの場合は赤い実になってから収穫します。赤く熟したトウガラシの場合ははさみを使わず、株ごと引き抜いて収穫するのがポイントです。乾燥が楽に行えます。
トウガラシ栽培【成功ポイント・コツ】
トウガラシの栽培を成功させるためのコツをご紹介します。比較的簡単なトウガラシの栽培ですが、失敗例も多々あります。これは、温度の管理が出来ていない場合が多いです。トウガラシは高温にはとても強いのですが、低温に本当に弱いです。少しでも霜にあったりすると途端に元気がなくなりますので温度管理のポイントを押さえましょう。
肥料は定期的に追肥する
植え付けをしてから2~3週間経過した頃に1回目の追肥をします。その後は2~3週間毎に追肥をするのが育て方のコツです。追肥は植え付けの時にしたマルチを片方だけめくります。化学肥料を約30gほど株の根元に土と軽く混ぜるように行ないます。マルチを戻して反対側も同じ要領で行ないます。
連作障害を避けるために栽培間隔をあける
連作障害というのは、一度食物を植えた後にまた植える時に前の植物の影響で害虫や病気の原因を引き起こす事です。土の中にはその植物が必要とする肥料では補えない栄養素が含まれていますので、同じ科の野菜ばかり続けて植えていると、どんどん栄養不足になって障害が出て来ます。一度植えた野菜と同じ科の野菜は植えないというのが栽培のコツです。
ラッカセイと植えると良い
トウガラシを植える前に気を付けるポイントは植物が連鎖をしていないかを知ることがです。その点ではラッカセイが最適でしょう。マメ科の植物はトウガラシと同じ温度管理で栽培出来ますのでこのコツを覚えておいてラッカセイの後にトウガラシを栽培すると全く同じ環境で生育して最高の相性で栽培出来ます。
マルチングをしよう
マルチングとは、植え付けの時にもご紹介しましたが、トウガラシは冷たい土の中ではすぐに弱りますからマルチングという作業は必要です。植え付けの時に忘れてしまっても気づいた時にすぐに取りかかれば復活しますが、成長は遅れるでしょう。トウガラシには寒い環境はタブーですので、しっかりと土の温度を下げないような育て方をします。
プランターで育てることも可能
トウガラシの栽培は広い庭や畑がなくてもベランダでプランターを使った育て方もできます。むしろ、初めてトウガラシを栽培するのであれば連鎖障害の心配もありませんので育て方が楽です。苗を買ってきて植えても種まきからでもどちらでも出来ます。方法は種まきからと同じで植え付ける時にプランターに植え付ければ良いだけですので簡単です。
プランターのサイズ
プランターのサイズは、深さが30cmほどで少し大きめの60cm程度が良いでしょう。鉢底に底が見えなくなるくらいの石を敷いてから土を入れます。土は野菜栽培用の土でも良いですし、赤玉土6、バーミキュライト1、腐葉土3の割合で配合した土でもいいです。マルチングは要りませんので土を入れた後はしっかりと水を与えて下さい。
プランターでの育て方
土の準備が出来たら植え付けです。土にポットの大きさくらいの窪みを浅めに作ります。60cm程度のプランターでは2株が限界です。株と株の間は25cm~30cm間隔を取り、ポットの株を土に入れたら土をかけ、軽く押さえ支柱を立てます。支柱の設置が出来たら水を底から流れるくらいたっぷりと与えます。
栽培したトウガラシの保存方法
収穫したトウガラシを保存する方法はいくつかあります。乾燥させても生のままでもいろんな料理に使えます、青トウガラシは成長の途中で切ってしまいますので、赤トウガラシとは保存の仕方が少し違います。では、株のまま収穫したトウガラシと、個別にの場合の保存の仕方を分けて解説します。
株で収穫をした場合
株毎引き抜いた赤トウガラシをそのまま軒下やベランダなどに吊します。種まで完全に乾燥するのを待ちましょう。また、株毎収穫したトウガラシの実を外してザルなどに広げて軒下などの風通しの良い所で干すという方法もありますが空気に触れると変色します。干す時に完全に乾燥したかどうかの見極めのコツは、振ってカラカラ音がすれば完成です。
個別に収穫をした場合
個別に収穫したトウガラシはすぐにジップロックなどの密封出来る袋に入れて、冷蔵庫なら約1週間程度で冷凍保存も可能です。冷凍したトウガラシを使う時には解凍の必要はありません。醤油漬けもおすすめです。生の青トウガラシを種が付いたままみじん切りにして、保存瓶に入れ醤油をひたひたになるまで注ぎます。あとは蓋をして冷蔵庫で保存します。
栽培中のトウガラシに多い病気・対策法
トウガラシのかかりやすい病気はいくつかあります。特に苗の時です。株が大きくなってくるとそれほど病気の影響はないのですが、小さい時には病気にかかりやすくなっています。これも温度や湿度の管理で防げますので、多湿にならないようにするのがコツです。ではどんな病気があるか見てみましょう。
青枯病
ナス科に限らずかなりの野菜がこの病気で枯れしまいます。葉っぱが青いまま晴天の日に枯れてしまう病気です。茎を切ってみると、白い液体が出て来ることが証拠です。土の中にある細菌が根っこに傷があるとそこから侵入します。梅雨時から夏にかけての時期に水はけの悪い場所で発生しますので一度発生したら同じ土で植物を育てることは避けます。
疫病
この病気は植物全体がかかる厄介な病気です。梅雨時や秋の長雨の時などに多く発生します。症状は、葉っぱに水を流したような斑が入り、温度が高いと白くかびの様で温度が低くなると茶色く枯れた様になります。酷くなると茎もやられて全体に茶色い模様が出て腐ってきます。一度かかると復活は難しく葉っぱだけが枯れる初期なら薬で効果が出ます。
モザイク病
このモザイク病は、病気にかかった植物の汁をアブラムシが吸って、次に別の植物の汁を吸う事で感染させます。元々の細菌は汚れたはさみや人の手、衣服などに触れた時などに発生します。症状は葉っぱに出ます。モザイクの様な模様が出てそこから腐ります。この病気に効果のある薬はありませんので、はさみや手などをしっかり消毒して予防しましょう。
萎凋病
これは「いちょうびょう」と言って、根っこや茎の栄養が流れる導管に発生しますので、病気の部分から上には栄養が行かずに枯れます。日中にしおれた状態になっても夜には復活しますので気づきにくいですが、この症状を繰り返していくうちに株が弱ってきます。かかった株は抜き取って土壌を熱湯で消毒した後に薬を散布すれば死滅します。
黄化えそ病
これは葉っぱの先から黄色くなって、葉っぱに茶色い斑点ができ枯れる病気です。温度が高い時に発生しやすいです。この病気にかかると伝染しますので、かかった株は焼却処分してその土は二度と使わないようにします。処理をしている時にはさみや手にも付いている恐れがありますので、しっかり消毒しましょう。効果のある薬はありません。
白絹病
これは土の中で発生する病原菌ですので、根っこやその周りがやられて立ち枯れします。土を掘り返すと分かりますが根っこの周りに白い絹のような菌がいっぱい付いているはずです。梅雨時に多く発生しますので、梅雨前の植え付けでは土も消毒しておくと防げます。球根に発生しやすいですので、前作にそういう植物でなかった事を確認します。
苗立枯病
この苗立枯病(なえたちかれびょう)は、苗の状態の時に立ったまま枯れてしまう病気かと思われがちですが、立ったままな場合はほとんどなく株元から倒れてしまいます。種のときから病原菌に感染している場合は、芽も出ずに腐ってしまいます。効果のある薬は「ダコニール1000」が有効です。
栽培中のトウガラシにつく害虫・対策法
トウガラシの育て方で最も懸念されるのが数々の害虫が付くことです。温かい夏に栽培しますので、高温を好む虫が寄ってきます。それぞれ害虫によって悪さする内容や駆除の方法も違いますので、虫の種類別で解説していきます。害虫の発生は、往々にして高温多湿の風通しの悪い場所で起こります。
モモアカアブラムシ
アブラムシの品種はたくさんあって、特に野菜に影響を及ぼすのに一番多く発生するのが、この害虫です。この虫は、葉っぱの裏全体に成虫も幼虫も分散して寄生し、寄生された葉っぱは黄色くなって、すす病を発症して枯れ最終的には、株全体が枯死します。防ぐ方法は、植え付けの時にマルチで覆います。アブラムシを見かけたら薬を散布します。
ホオズキカメムシ
ナス科の植物の天敵です。集団でやって来て茎や葉っぱの汁を吸います。新芽からやられます。手で掴もうとすると、とんでもない臭いを出しますのでご注意下さい。大きさはアブラムシに比べると大きいですから見つけやすいので、ピンセットなど手作業で取り除くのが効果的ですがその前にマルチで覆うのが侵入させないコツです。
タバコガ
このタバコガは幼虫が曲者です。茎や実に潜り込んで食べて穴をあけます。ナス科の植物が大好きなタバコガは、6月から8月頃の夜に成虫が飛んで来て葉っぱに卵を産み付けます。その幼虫が孵化して柔らかい新芽から食べ始めます。幼虫の形はイモムシ系です。見つけたら手で取り除きますが、幼虫がまだ若い時に薬を散布すると効果的です。
ハスモンヨトウ
この害虫は、イモムシ系で幼虫の時期が異常に長いです。それぞれの時期で植物の食べる箇所が違います。葉っぱが透けて見えるような食べ方をしていれば、まだ若い幼虫ですのでその時期に薬を散布すると効果的です。マルチをしていてもその上に卵を産むことがあり、孵化した幼虫がマルチの隙間から入る可能性もありますので気を付けましょう。
ミナミキイロアザミウマ
日本の害虫ではなく1978年に海外から宮崎県に入ってきて、ピーマンとナスがやられ、その後キュウリにも被害が出ました。今は全国的に被害が出ています。初期には葉っぱの葉脈に沿って小さな斑点が出る程度ですが、そのうち葉っぱは枯れ株までいくと枯死します。予防策が一番ですのでマルチを張って入って来ないようにするのがコツです。
チャノホコリダニ
この害虫はとにかく小さいので、肉眼では確認出来ません。被害は葉っぱの裏に出ます。そして葉っぱが裏側に巻いたような形をして、新芽も蕾も開かず成長が止まります。乾燥にも強く雑草によく寄生するため、トウガラシの周りの雑草は駆除することで防げます。葉っぱに異常が出て来たら、薬を葉っぱの裏を中心に散布します。
テントウムシダマシ
成虫がテントウムシに似ているのですが、この害虫は表面が毛深いです。幼虫にはトゲが生えています。成虫も幼虫もナス科の天敵で特に幼虫は、葉っぱから食べ始め、終いには茎や実まで食べ尽くします。春にジャガイモに卵を産み、ナス科やウリ科に移る習性がありますので、近くにジャガイモ畑がないかどうかのチェックで防げます。
ハモグリバエ
この害虫は、別名エカキムシとも呼ばれ、葉っぱの中に卵を産み付け孵化した幼虫が、トンネルを掘りながら葉肉を食べ進みますので、葉っぱに絵が描かれたようになるためです。見つけた場合には描かれた絵のような筋を辿って最終地点にいる虫を手で潰します。葉っぱ毎取り除いても構いません。薬は水溶性の薬が効果的です。
トウガラシの栽培をする際には病気や虫に注意しよう
これまでトウガラシの栽培に関して見てきましたが、種まきから収穫までの育て方は分かっても、病気や害虫に対しての意識は過敏なくらいが丁度良いのかも知れません。折角苦労して育てても病気や害虫に無駄にされるのは悲しいものです。予防をしっかりして、対策も取りながら丈夫なトウガラシを栽培したいものです。