国民年金保険料の納付は義務化されている
国民年金保険料の納付は国民の義務として法律で決められています。国民年金制度というのは、働いてお金を稼いでいる現役世代が国民年金保険料を納付することで、国民年金の受給世代を支えているシステムです。このようなシステムですから、国民年金保険料の納付を義務化することで、未納を減らすように作られています。
国民年金保険料の納付を義務化しなくても、国民年金という制度が円滑に回転するのであれば、わざわざ義務化などしなくても問題ないところです。しかし、国民年金の納付の実例を見れば、義務にしておかないと国民年金保険料の未納が多くなって、国民年金という制度がまともに機能しなくなるのは明らかです。未納防止のために義務化されています。
国民年金保険の納付は20歳からの義務
国民年金保険料の納付は20歳からの義務になっています。これは法律で決まっていることですから、強制力があります。法律というのは、その規定ぶりによって、訓示しているだけで強制力がないものと、実際の強制力を伴うものに分かれます。国民年金保険料の納付は強制力が伴う方の対象になっています。強制力の有無を判断する方法があります。
それは罰則の有無です。守ってほしいけれど、強制まではしないという訓示規定には罰則がありません。それに対して、必ず守らなくてはならない法律については違反した場合の対処法が罰則という形で規定されています。国民年金の場合でも見ても、保険料を払わずに未納のままだと、法律違反として罰則適用の対象になります。
国民年金は貯金ではない
国民年金についての誤解が、国民年金を自分が払ったお金が将来利子がついて増えて戻ってくる貯金のように考えられていることです。このように誤解している人が少なくありませんが、国民年金は引退した高齢者世代を現役世代が支えるシステムですから、貯金とは根本的に違います。このように、貯金と国民年金の違いを押さえておきましょう。
国民年金保険料を未納すると差し押さえられる?
国民年金保険料の徴収は国家の権限ですから、強制力執行の対象になります。国民年金の支払いをせすに未納にしていると差し押さえの対象になります。差し押さえができると法律で規定していても、実例としての差し押さえが行なわれなければ、実効性に疑問が出るでしょう。しかし、差し押さえが実例として行なわれているのは明らかです。
保険料の未納が続くと差し押さえられる
国民年金保険料を未納にしているとすぐに差し押さえの対象になるわけでもありません。実例を見ても、保険料の未納が続いた場合に差し押さえ対象になっています。法律では差し押さえすることができるという規定ぶりになっていて、差し押さえを実際に執行するかどうかを行政の裁量に任せています。実例を見ながら判断する余地を残しています。
国民年金保険料の未納を理由とした差し押さえがどのタイミングで行なわれるかは地域によっても差がありますが、未納期間が長ければ、差し押さえが行なわれる可能性が高くなります。近年の実例を見れば、その傾向がさらに高くなっています。その背景として、国民年金保険料の未納が増えている現実があります。
国民年金の差し押さえは裁判所を通さない
本来であれば、差し押さえを執行するには裁判所での勝訴判決を得ないとできないのが原則ですが、国民年金については例外扱いになっていて、裁判所を通さずに差し押さえをすることができます。民間人同士の金銭などの争いであれば、裁判所抜きで差し押さえができないのとは対照的ですが、それだけ国民年金未納の重さがあるからでしょう。
裁判所を通さずに差し押さえができることの特徴は民間の金融機関からの差し押さえなどと比較して、スピードが速いことです。民間の金融機関であれば、裁判所が入る分、どうしても時間がかかるところを、国民年金保険料については、未納から差し押さえまでのスピードが速いことに注意する必要があるでしょう。
未納による差し押さえの実例
国民年金保険料の未納を続けていると、差し押さえが行なわれますが、差し押さえの実例の数が近年増えています。かつてはそれほど差し押さえがどんどん行なわれていなかったものですが、現在の実例を見れば状況がかなり変わっているのがわかります。その背景としては、国民年金のための財源が少子高齢化で足りなくなっていることが大きいです。
国民年金保険料の未納による差し押さえの流れ
国民年金保険料の未納があると差し押さえが行なわれることは、これまでの多くの実例を見ても間違いありません。しかし、いきなり差し押さえが行なわれるわけではなく、差し押さえに至るまでに督促状が届くなどの流れがあります。督促状が届いた段階ですぐに未納分を解消するのが一番ですが、督促状から先の段階まで進むことが多いです。
①特別催告状が届く
国民年金保険料の納付期限は納付月の翌月末になっています。この期限を超えて未納にしていると、日本年金機構や委託業者から特別催告状が届きます。この段階ではまだ差し押さえがすぐに行なわれるわけではありません。特別催告状には納期限が書かれていますから、その期限内での支払いをするように努力すべきでしょう。
特別催告状は書面ですが、書面だけでなく電話による催告がくることもありますし、訪問される場合もあります。電話や訪問の対象になるかは、それまでの支払い状況によっても変わってくるでしょう。これまでの実例を見れば、未納期間が長くなるほどに電話や訪問の対象になります。未納の国民年金保険料は何としても徴収するという姿勢です。
②最終催告状が届く
特別催告状には納付期限が書かれていますが、その期限内に未納の国民年金保険料を払わないでいると、次には最終催告状が届きます。最終催告状は督促状が届く前の段階ですが、特別催告状に比べて中の文章が厳しい内容になります。2017年度の実例では103,614件も送付されています。そして、次の段階では督促状が届くことになります。
③督促状が届く
最終催告状が届いたにもかかわらず、それでも未納にしていると、いよいよ督促状が届くことになります。督促状が来る段階になると、かなりの長期間の未納が続いた状態ですから、未納金額に対して延滞料が発生します。この延滞金は年率14.6%ですから、小さくない負担になります。2017年度の実例を見ると、66,270件の督促状が送付されています。
④差し押さえ予告状が届く
督促状が来ても、それでも国民年金保険料の未納にしておくと、ついには差し押さえ予告状が届きます。差し押さえ予告状は名称通りに差し押さえを予告する文書であり、未納者に対する最終通告とも言えるでしょう。差し押さえ予告状には未納にしている国民年金保険料の最終的な納付期限と差し押さえの実施日が記載されています。
しかし、いくら未納が続いていても、差し押さえという強制徴収については、執行のための基準が定められています。2018年度の基準では、各種控除後の所得が300万円以上で、なおかつ7ヶ月以上の未納がある場合が対象なっています。これらの2つの条件を満たしていなくても、悪質な未納だと判断されれば、差し押さえの対象になることがあります。
⑤差し押さえの実施
差し押さえ予告状に記載された最終的な納付期限を過ぎても未納状態であれば、いよいよ本当に差し押さえが執行されることになります。2017年の実例では14,344件の差し押さえが行なわれましたから、かなりの件数です。これらの実例を見ても、督促状が来た段階までには未納を解消しておくべきでしょう。
国民年金保険料の未納による差し押さえの対象
督促状が来ても、差し押さえ予告状が来ても、国民年金保険料を未納にしておけば、いよいよ差し押さえに至るわけですが、どのようなものが差し押さえの対象になるかをご紹介します。差し押さえの対象はかなり広いですが、無限ではありません。未納者の生活などのことを考慮して、差し押さえができる対象が決められています。
差し押さえ対象①給与
まず第一に差し押さえの対象になるのが給与です。勤め人であれば会社から支払われている給与が差し押さえの対象になります。差し押さえる側としても徴収しやすい対象ですが、給与の全額が差し押さえになるわけではありません。年収の4分の1までという差し押さえ禁止額が決まってますので、それ以上の金額が差し押さえになることはありません。
差し押さえ対象②預金口座や有価証券
次に差し押さえの対象になるのが預金口座や有価証券です。有価証券なら隠せるのではないかと思われるかもしれませんが、差し押さえを行なう前に差し押さえ対象を確認するため、念入りに財産調査がなされますから隠し通すことは非常に困難です。未納者のほとんどが持っている預金口座はもちろん、有価証券も差し押さえられてしまいます。
差し押さえ対象③不動産
不動産も差し押さえの対象になります。不動産として最もイメージしやすいのが自宅でしょう。しかし、不動産として認定されて差し押さえ対象になるものは意外に範囲が広いのは実例を見てもよくわかります。投資用に所有しているマンションなども不動産として差し押さえ対象になりますから、督促状が届いた段階で未納を解消するのが賢明でしょう。
差し押さえ対象④生活必需品以外の物
生活必需品以外の物も差し押さえの対象になります。生活必需品かどうかを判断するには、生活する上で必要不可欠かによって違ってきます。車が良い例です。車がないと非常に不便な地域に住んでいるのと、交通機関が便利な場所に住んでいるかによって、差し押さえ対象にすべきかの評価が大きく違いますから、ケースバイケースの判断になります。
宝石などの装飾品や贅沢品であれば無条件で差し押さえの対象になりますが、生活必需品になるかが時代によって変わってきたものもありますから、差し押さえの対象を決めるのは意外に簡単ではありません。エアコンなどはかつては生活必需品とは言えないと解釈されていた時代もありましたが、現在では実例に即して、生活必需品とされています。
差し押さえの対象外になるもの
生活必需品と認められる物は差し押さえ対象になりませんので、車やバイクであっても、それがなければ生活に支障が出る場合であれば、差し押さえ対象になりません。生活必需品以外の動産は差し押さえ対象になるという建前になっていますが、現場での実例を考えると、生活必需品かどうかを区分けするのは簡単ではありません。
国民年金保険料の未納による差し押さえの対処法
国民年金の未納が続くと、最終的には給与や口座預金などが差し押さえになってしまいますが、それに対する対処法もあります。最も根本的な対処法は督促状が来た時点で未納分の保険料を支払ってしまう対処法ですが、保険料未納の実例を考えると現実的ではありません。そこで、差し押さえに対する効果的な対処法を3つご紹介しましょう。
国民年金の免除制度と猶予制度を活用
差し押さえに対する対処法としての一つ目が国民年金の免除制度を利用することです。国民年金の免除制度とは、失業しているなどの経済的な理由により国民年金保険料を払えない人が申請書を提出することにより、保険料の納付が免除になる対処法です。免除される金額は所得により、全額、4分の3、半額、4分の1の4種類が用意されています。
差し押さえに対する対処法としての二つ目が国民年金の猶予制度を利用することです。免除制度の場合は未納額の全額から4分の1までが支払いを免除されますが、猶予制度は支払い自体はするものの、その支払いの時期をしばらく待ってもらう対処法です。待ってもらえれば支払いが可能な場合に使える対処法です。この対処法はかなり普及しています。
未納分を少しずつ返済する
差し押さえを回避するための対処法として使える三つ目の方法が未納の保険料を分割払いにするなどして、少しずつ返済する対処法です。分割できる回数は担当者との相談次第ですが、未納分を支払う意思を見せれば、無理のない金額まで分割してくれる可能性があります。少しずつでも未納分を支払っていけば、差し押さえを回避できる対処法です。
国民年金保険料未納による差し押さえが増えている理由
近年、国民年金保険料の未納を理由とした差し押さえが増えています。かつてと比べて、差し押さえに至る比率が高くなっているのは、実例の数字が物語っています。国民年金という制度は、保険料の納付によって維持できるものですから、差し押さえの件数が増えることは国民年金制度にとって大打撃です。差し押さえが増えている理由をご紹介します。
理由にその①:国民年金の財源が苦しくなっている
差し押さえが増えている理由の第一が国民年金の財源が苦しくなっているという現実です。少子高齢化の影響で、保険料を支払っている現役世代が減り続ける中で、国民年金の財源を確保するのが年々難しくなっています。そのため、未納に対して甘くできなくなっていき、強制的に徴収する必要に迫られて、督促状をどんどん出している実例が多いです。
理由その②:未納者が増えている
差し押さえが増えている第二の理由が保険料の未納者が増えていることです。未納者が多ければ多いほど、国民年金の財源が減るのは当然です。国民年金の財源が減り続けている状況で未納者が増え続けているため、国としては差し押さえという強引な対処法に頼らざるを得ないのが現状です。しかし、未納者の方としては、払えない事情もあります。
国民年金保険料を支払っていない人たちの中には、払えるのに払わない人もいますが、その多くは、経済的に苦しくて払えないというのが本当のところです。日本人の年収は年々下がり続けていますから、現在の状況はさらに悪化する可能性が高いでしょう。そのため、督促状が来ても、やむをえず未納を続けてしまう人が少なくありません。
理由その③:国民年金保険料が高くなっている
差し押さえが増えている第三の理由として考えられるのが、国民年金保険料が劇的に高くなっていることです。現在の保険料は月額16,410円ですから、収入が少ない人にとってはかなりの負担になっています。もともと国民年金制度が始まった1961年当時は、保険料が月額1,000円でしたから、実に16倍以上にも値上がりしています。
当時と現在とでは物価もかなり違っていますから、単純に比較できないものの、現在の方が負担が大きいことは間違いありません。保険料がすごく高くなっている反面、所得が減っているのが現在の状況です。それを考えれば、未納金額が増え続けているのも当然かもしれません。未納が多いから保険料が上がるという悪循環になっています。
理由その④:未納分に対する強制徴収の基準が厳しくなった
差し押さえが増えている第四の理由が未納分に対する強制徴収の基準が以前よりも厳しくなっていることです。現在の未納率は3割以上になっていますから、かつてのような緩い基準で差し押さえをしていると、やはり財源の確保が難しくなっています。もともと国民年金という制度は、人口が右肩上がりで増えることを前提にして作られています。
戦後の高度成長期に作られた制度なのでやむを得ない面もありますが、いろいろな矛盾が現在の状況にマッチしなくなっています。その矛盾を解決できないまま、未納額の徴収をするために、差し押さえという対処法になっている面が強いです。近年、国民年金の問題が注目されていますが、督促状が来た時点で対処法を考えるようにしましょう。
国民年金保険料は安易に考えない方が良い
国民年金保険料を未納にしていると最悪、給与や銀行口座などの財産が差し押さえになる可能性がありますから、決して安易に考えないようにした方が良いでしょう。督促状などが来ても放置していると、本当に差し押さえになる可能性が高いです。ご紹介したように、差し押さえを回避する効果的な対処法がありますから、実行するのがおすすめです。