個人年金保険とは?
個人年金保険とは、公的な制度とは別に、個人的に保険会社と契約を行ない、老後の生活資金などに備えるために付保する保険商品です。老後に備えて、若い世代の段階から準備しておくことができるので、多くの方が利用している人気の保険商品になります。
現在、個人年金保険とは、いろんな保険会社が提供している様々な種類のサービスになっていますが、保険会社によって返戻率に差があるなど十分比較する余地があります。今回は、個人年金保険のメリットやデメリット、たくさんの種類の中から選択する賢い判断とはどんなものか、等について解説していきます。
私的に契約する年金保険
個人年金保険とは、公的制度とは別で、自主的に私的に保険会社と契約を結び、老後に備える保険商品です。したがって、利用するかどうかは個人の判断にゆだねられます。年齢制限はなく、若いうちから保険付保を開始することができ、もちろん若いうちから始めた方が毎月の保険料負担は少なくて済みます。
個人年金保険の商品によって、払込期間や年金の受け取り期間、金額に差があるのは当然のことですので、自分が老後必要な資金の額、あるいは保険料として負担できる資金の範囲などを勘案して、利用する商品及び付保する保険料金額を決定しましょう。
個人年金の受け取り期間
個人年金保険を受給し始めてから、どれくらいの期間受給することができるのでしょうか。これは、商品によって異なります。個人年金保険とは、受給期間の性質で大きく二つに分類することができます。一定期間受け取れるタイプと、一生涯受け取れるタイプです。
一定期間受け取れるタイプは、受給開始から10年間など、期間が定められているタイプです。一生涯タイプは、受給を開始してから亡くなるまでずっと年金を受け取れるタイプのものです。どちらを選ぶかは、個人の考え方やそれぞれのメリットとデメリットを加味して判断するべきです。
保険料の払込期間
個人年金保険を契約すると、保険料を支払っていくことになりますが、この保険料払い込み期間とはどれくらいの期間になるのでしょうか。これは、個人年金保険の商品、あるいは支払い方法の選択によって異なってきます。
保険料支払いは、毎月払いを連想する方が多いかもしれませんが、一括で支払いをすることもできます。つまり、一度の支払いで必要分の保険料を支払う方法です。受け取り保険金の金額、受取期間などにより、支払保険料の金額も変動し、払込期間の設定も異なってくるのが、個人年金保険に関わらず保険商品の一般的な特徴です。
個人年金保険の種類と特徴とは?
個人年金保険と一言で言っても、様々な種類の商品が用意されていて、選択して契約することができます。自分の好みや受給したい保険金の金額を勘案して、自分に適した保険商品を選択することが重要になります。それぞれの商品の特徴を理解して、後悔のない選択をしましょう。
終身年金・一生涯受け取り可能
個人年金保険の一つ目は、終身保険です。これは、保険金の需給が開始されたら、被保険者が亡くなるまで永久的に保険金を受給することができるタイプの商品です。他の商品に比べて保険料が高くなる傾向がありますが、長生きをしてたくさんの保険料を受給すればするほど費用対効果は大きくなります。
終身保険とは、文字通り被保険者が終身的に受け取れる保険ですが、被保険者が亡くなると遺族は保険金を受け取ることができないというデメリットがあります。死亡保険金などの受け取りもできないので、遺族に対する保障はあまり充実していません。
確定年金・生死に関わず受け取り可能
個人年金保険の種類の二つ目は、確定年金です。確定年金とは、被保険者の生死にかかわらず受給することができ、なおかつ受給できる保険金が決まっているタイプの商品です。被保険者が亡くなっている場合は、遺族が代わりに受け取ることができます。
確定年金は、仕事を退職してから公的年金開始までのつなぎとして利用する方が多いです。60歳から受給を開始して、10年間定期的に保険金を受け取るという形式を選択することが多くなっています。多くの保険会社がそれぞれの特徴を踏まえた様々な種類の商品を提供してくれています。
有期年金・生存中は一定期間受け取り可能
個人年金保険の種類として三つ目は、有期年金です。これは、被保険者が生存中に限り一定期間年金を受け取ることができるという保険商品です。有期年金とは、被保険者が亡くなると遺族は保険金を受け取ることができないという特徴があり、その分支払うべき保険料は安くなるというメリットがあります。
被保険者が亡くなっても遺族に年金残額が支払われる保証を付保することもできますので、一定期間この保証を付保するケースが一般的です。この保証付きを付保しない場合、個人年金保険の種類の中では最も保険料が安くなります。
外貨建て年金・外貨で運用される変額年金
個人年金保険の種類の四つ目は、外貨建年金です。これは、言葉通り外貨建てで保険料資金を運用して年金原資に充てるという考え方です。受け取る年金金額が変動する変額年金の一種です。外国為替の変動に左右される保険で、為替変動次第ではかなり大きな利回りを実現できますが、逆に元本割れをするリスクというデメリットを持っています。
外貨建年金のデメリットとしては、他の個人年金保険に比べてコストがかかる点にあります。購入する時には表面に出ないことが多いのでわかりにくいですが、運用の中で差し引かれているケースが多いので、注意する必要があります。
変額個人年金・受け取り金は保険会社の運用次第
個人年金保険の五つ目は、変額個人年金です。変額個人年金とは、支払った保険料を原資として、保険会社が株式や投資信託などを活用して運用を行ない、その成績次第で年金額が変動する仕組みになっています。要するに保険会社の運用次第ということになります。
これは、株高や低金利の時代においては運用益を得やすい流れとなり、年金額が増加する傾向にあるため、変額個人年金が人気になることもありますが、現在はこの商品を利用する方はとても少なくなっています。外貨建て商品などよりリターンを期待できる商品が増えてきていることが背景にあるとみられています。
個人年金保険と公的年金の違い
個人年金保険が、個人が私的に契約を結び保険料を支払っていくタイプであるのに対し、国民年金をはじめとした公的年金とはすべての日本国民が加入している年金保険です。相互扶助の考え方に基づき、若年層が老齢層の年金受給金額の原資を担う仕組みです。
公的年金にも国民年金をはじめ、いくつかの種類がありますが、基本的には就労形態によって加入する年金団体が異なってきます。それぞれ特徴があり、各種手続きの際の申請先が異なりますので、自分が加入している公的年金がどれに当たるのか、把握しておくに越したことはありません。
公的年金は個人年金保険とは違い加入義務がある
個人年金保険とは異なり、国民年金をはじめとした公的年金制度はすべての日本国民が加入する義務があります。保険料納付を怠ると、納税の督促が来る仕組みになっています。就労形態や配偶者などの扶養に入るかどうかにより加入する年金団体が異なります。
公的年金には国民年金など三つの種類があります。国民年金はすべての国民が加入しますが、他の公的保険は加入するケースが異なってきます。自分がどの年金機構に入っているかどうか把握しておくことは、各種届出をする際の届け出先が異なるため、普段から理解しておくことをおすすめします。
公的年金の種類①国民年金
国民年金とは、日本国の年金制度において最も基礎的な部分を占めるものです。すべての国民に加入義務が課せられています。保険料もすべての国民が一律に定められています。被保険者は1号、2号、3号の三種類に分類されます。1号は、個人事業主など自営業を営む方などが該当します。2号は、会社員や公務員などで勤務する方が該当します。
国民年金の3号は、2号該当者を配偶者にもち、その扶養に入っている方が該当します。一定の年齢に達したら老齢基礎年金を受給したり、障害を持つと障害基礎年金が支給され、死亡すると遺族に遺族基礎年金が支給されるなどの制度となっています。
公的年金の種類②厚生年金
厚生年金は、公的年金の一種で、国民年金の上乗せ部分という認識がなされている部分です。会社員や公務員が加入するもので、国民年金のように日本政府が管理するものとは異なり、いろんな団体が管理運営をしています。
従って、どの厚生年金管理団体に所属するかは、どの企業に勤めるかによって異なってきます。基本的に徴収される保険料の料率はほぼ一律で設定されています。その料率は、国民年金と異なり毎年上昇傾向にありましたが、現在はしばらく一定の料率で保険料を負担することになっています。
公的年金の種類③共済年金
共済年金は、国家公務員にとっての厚生年金として位置づけられる年金制度で、厚生年金と同様国民年金の上乗せ部分として運用されていました。しかし、この共済年金は2015年10月で厚生年金制度に統一されました。会社員と公務員との制度上の統一性を持たせて、公平性を維持することが目的といわれています。
共済年金は、国家公務員用や地方公務員用などで細分化されていました。財源の一元化や、分かりやすさを期待して厚生年金と一元化することになりました。現在は、会社員も公務員も同様の制度のもと年金保険料を負担していることになります。
個人年金保険の返戻率
現在、個人年金保険はたくさんの保険会社がそれぞれ独自性を発揮していろんな商品を提供してきています。利用者は数ある商品の中から、自分の希望やライフプランに合った商品を選択することになります。
個人年金保険の商品を比較する際に重要な指標となるのが返戻率です。個人年金保険の加入メリットとしては、その保障部分の充実ぶりなどいろんな選択ポイントがありますが、やはり貯蓄性が最も大事な部分ですので、その指標となる返戻率を主眼に選択する方が大半になっています。
返戻率とは?
個人年金保険における返戻率とは、支払った保険料に対して収受できる保険金の金額の割合のことを指します。たとえば、返戻率が150%という商品は、支払った保険料の1.5倍の保険金が受け取れるという計算になります。
返戻率が100%を下回る商品の場合は、元本割れしていることになるので注意しましょう。個人年金保険には元本割れをする商品は少ないですが、中には保障内容を充実させることで逆に返戻率を下げた設定をする商品もあります。貯蓄性を重視する一般的な利用目的の場合は、これらの元本割れ商品を選択しないようにしましょう。
返戻率のシミュレーション
返戻率をシミュレーションするには、収受できる保険金を、支払う保険料の総合計で割ることで算出することができます。ただ、最近はほとんどの保険会社でシミュレーションをしてくれています。保険料の金額から返戻率を算出したり、逆に収受したい保険金の金額から、支払うべき保険料を算出することなど、自由にシミュレーションすることが可能です。
返戻率は、保険会社が商品を提供する際には必ず公表している指標ですので、必ずチェックしましょう。一度契約をすれば、返戻率は基本的に変わることはありません。返戻率は時事的要素で変動するので、納得がいけば早めに契約するのをお勧めします。
返戻率を上げる際のポイントとは?
個人年金保険の返戻率を上げるために、二つの方法を紹介します。まず第一に、早い段階から契約を行ない、保険料の支払いを開始することです。同じ金額を支払う中でも、早いうちに開始して積み立てていくことで、返戻率は大幅に上がります。
もう一つの方法は、保険期間満了の後、据え置き期間を設定することです。たとえば通常60歳から保険金を受領できる場合でも、65歳から受け取りを開始することで、返戻率はアップします。据え置き期間が長ければ長いほど返戻率増加の率も向上します。
二つ目の方法は、国民年金など公的年金にも同じことが適用できます。ただ、国民年金など公的年金の増加率に比べると、個人年金保険の方の返戻率増加割合はかなり低いとされています。公的年金の方が据え置きの効果は大きいのが一般的です。
個人年金保険のメリット
個人年金保険を利用するメリットについて解説していきます。個人年金保険は、老後の生活費のための貯蓄を目的として利用されるのが一般的ですが、貯蓄以外にもメリットがあります。一時的なメリットだけではなく、総合的に判断して、利用するかどうかを検討してみることをお勧めします。
計画的に積み立てができる
個人年金保険を利用するメリットとして、計画的に積立をしていくことができる点が挙げられます。毎月の保険料支払いで将来の年金資金を貯蓄していくことができる商品ですので、若いうちからコツコツと積立をしていく感覚に近いです。長期間で将来の資金を貯めていくので、ひと月に支払う金額はそれほど大きくなくて済みます。
個人年金保険料控除の特典がある
個人年金保険を利用するもう一つのメリットとして、確定申告や年末調整の際に個人年金保険料控除が受けられる点が挙げられます。支払った保険料の金額を所得控除の計算に算入することができます。結果として所得税及び住民税の節税対策につなげることができます。将来の積み立てをしながら毎年継続して税負担を軽減できるので、とてもお得です。
個人年金保険のデメリット
個人年金保険の利用には大きなメリットがあることを紹介してきましたが、同時にデメリットもあることを理解していく必要があります。どんなものにでも良い点があればデメリットの部分もあります。現実的に起こりにくいデメリットではありますが、リスクを含んでいる商品であることは理解しておいた方がいいです。
保険会社の破綻リスクがある
個人年金保険を利用するデメリットとは、第一に契約した保険会社そのものが破綻してしまった場合、何も保証がないために積立してきた資金が無くなってしまうということが挙げられます。保険会社自体が無くなるとはあまり現実的ではないデメリットだと感じる方も多いかもしれませんが、過去に破綻を迎えた証券系の会社もあるので油断はできません。
インフレリスク
個人年金保険のもう一つのデメリットとは、インフレリスクが挙げられます。インフレとは、各種経済要因により、物価が急上昇して相対的にお金の価値が極端に低下してしまう状態のことを指します。こうなると積み立ててきた資金の価値は相対的に下がってしまうことになります。
インフレリスクというデメリットに備えるには、個人年金保険をしないだけでは対処できません。お金以外の資産、たとえば不動産や金などを保有しておくなどの対処が必要になります。
個人年金保険以外の私的年金とは?
個人年金保険以外にも、老後の生活費を工面する目的で利用できる私的年金があります。それぞれメリットとデメリットがある商品ですので、自分の生活スタイルや好みに合わせて、どの商品を選択するかを決めていくことが必要になります。また、就労形態によって利用できる商品とできない商品があるので、利用可否の見極めも重要になります。
個人で積み立てる・個人型確定拠出年金(iDeCo)
個人年金保険以外の私的保険の第一として、個人型確定拠出年金(iDeCo)があります。これは、一定の金額を毎月出資し、あらかじめ決まった投資商品で運用し、将来的に年金として受け取ることができるという制度です。
税制面で大きなメリットがある商品です。運用益は非課税になりますし、積立金額はすべて所得控除の対象ですので節税につながります。ただ、企業型確定拠出年金に加入している方は利用できませんので、勤務先に確認して確定拠出年金に加入しているかどうかチェックしてみる必要があります。
元本保証がある・積立定期
年金的な商品とは若干性質が異なりますが、銀行がサービスを提供している積立定期も私的年金に近い性格を持っています。これは、月ごとに一定額を定期預金に積み立てていく形式のものです。銀行の預金ですから、預金保険制度の範囲内であるためにもし金融機関が破綻しても1000万円までは保証が確実に受けられるというメリットがあります。
ただ、これは他の商品に比べて返戻率が大幅に低いというデメリットがあります。現在定期預金の利息利率はまさにすずめの涙程度で、利回りを期待する方にはあまりお勧めできない商品といえます。
自営業向け・国民年金基金制度
正確には私的ではなく公的な制度ですが、国民年金基金というものがあります。これは、個人事業主など自営業者向けの商品になっています。これは、自営業者にとっての老後の生活資金として国民年金だけでは不足する懸念があり、対策として導入された公的制度です。会社員にとっての上乗せ部分である厚生年金制度に対応する制度とされています。
国民年金基金制度への加入は任意ですが、多くの自営業者の方が利用しています。掛金は自分で決めることができ、自由に増減設定することができます。支払った掛金は全額所得控除に活用できるなど、税制面での優遇もあります。
個人年金保険の最近の傾向
個人年金保険の商品を提供する保険会社は現在たくさんありますが、特に近年顕著に見られる傾向として、外資系保険会社の進出が増加しているという点が挙げられます。現在日本の金利は超低金利で設定されているため、返戻率の高い商品が出せない中、外貨商品を活用した利回りの良い商品が人気になっています。
外資系保険会社の進出が顕著
個人年金保険の最近の傾向として、外資系の保険会社が多くの契約を交わし、実績を伸ばしているという点が挙げられます。外貨建て商品の高利回り商品に魅力を感じる消費者がとても多くなっています。また、日本の保険会社でも外貨建て商品を積極的に扱うなど、ハイリターンの商品が好まれる傾向になっています。
個人年金保険とは公的年金を補う存在
ここまで、個人年金保険についての解説に加え、公的年金制度との違いや各種商品のメリットとデメリットを紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか。個人年金保険は公的制度の補完としての考え方が一般的です。公的年金で補償される金額では生活に不足が生じると判断される部分を私的年金で賄うという考え方が一般的です。