「案ずるより産むが易し」の意味とは?
「案ずるより産むが易し」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。上司や先輩、両親など目上の方や年配の方にこう声をかけられた経験のある方もいらっしゃるかもしれません。また、座右の銘としてこの言葉を使おうと思っている方もいらっしゃるでしょう。
「案ずるより産むが易し」とは、「心配するより実際にやってみたら案外簡単なものだよ」という、慰めや励ましの意味を持つことわざです。
「案ずる」は「心配する」「悩む」という意味、「易し」は「たやすい」「簡単」という意味。腰の重い人や、心配しすぎているように見える人に対して使われることが多いでしょう。
「案ずるより産むが易し」は、おおらかで明るい、前向きな雰囲気のことわざです。意味や由来を理解し、ぜひ使い方をマスターしてください。
「案ずるより産むが易し」の由来
昔から伝わることわざ、「案ずるより産むが易し」という言葉はどういうところから来たのでしょうか?時代は変わっていますが「案ずる」「産む」などの言葉からなんとなくシーンは想像できそうです。ここでは「案ずるより産むが易し」の由来についてご紹介します。
出産を控えた妊婦さんに伝える言葉だった
「案ずるより産むが易し」ということわざの、正確な由来は分かっていません。初産を控えた妊婦が不安に思い心配しているのを、年配の出産経験豊富な女性が「案ずるより産むが易い」と言って励ましたのが最初の由来であると言われています。
「案ずるより産むが易し」の由来としては妊婦さんに対してのものでした。しかし、悩むばかりでなかなか動こうとしない人、考えすぎて身動き取れない人などに対して広い場面で使える言葉だったため、今日まで残り続けたのでしょう。
「案ずるより産むが易し」の特徴
「案ずるより産むが易し」を使われる人には、どんな特徴があるのでしょうか。また座右の銘としてこの言葉を使う人の特徴はどんなものでしょうか?
「案ずるより産むが易し」と言われたときには意味を考えてわが身を振り返り、使う際には相手を思いやる優しい心で使いたいものです。ここでは、「案ずるより産むが易し」を使う人それぞれの性格やくせについて解説します。
使われた人:心配しすぎている
「案ずるより産むが易しだよ」と言われる人は、少し心配しすぎているように見えるということです。「とにかくやってみればいいのに」と相手はやきもきしていたかもしれません。
些細なことを思い悩んでいないか、振り返って考えてみましょう。考えすぎずに思い切って一歩踏み出せば、案外「案ずるより産むが易しだった」という結果になるかも。
もしあなたが「案ずるより産むが易し」の由来の通り妊婦さんだったなら、マタニティブルーもあるかもしれません。心配事は抱え込まずに上手に周囲に相談したり、頼ってみると良いでしょう。
使う人:前向きで楽天的になれる
「案ずるより産むが易し」という言葉をよく使う人は、おおらかで前向き、楽天的であると言えるでしょう。「なんとかなるさ」という精神で日々過ごしているので、問題が起こっても考えすぎずに対処することができるでしょう。
また「何とかできる」と思っているということでもあるので、自己肯定感が高く、良い意味での自信があり、自分を信頼している人物とも言えそうです。
また周囲に対して「案ずるより産むが易し」をよく使う人は、懐の深い人、度量のある人と受け止められるでしょう。しかし、あまり意味もなく考え無しに連発していると「無責任な人」になってしまうのでご注意を。
素早い行動をする習慣ができる
「案ずるより産むが易し」という言葉を座右の銘にしている人は、素早く頭を切り替えて行動する習慣が身についていることでしょう。難題が降りかかっても、「案ずるより産むが易しさ」とフットワーク軽く行動していそうです。
もごもごと答えの出ないことを思い悩む時間はほとんど無駄なことが多いもの。思考のループに入っているなと思ったら、頭の中で「案ずるより産むが易し」と唱えて行動してみましょう。
この言葉が座右の銘として板についてきたころ、思考と行動のパターンが良い方向に変わっているかもしれません。
「案ずるより産むが易し」の英語表現
座右の銘の候補としてよく使われる「案ずるより産むが易し」。この言葉を英語で何と言うのでしょうか?実は、対応することわざが英語にもあります。
「You never know what you can do till you try.」という英語のことわざは、「やってみないと自分が何ができるかなんて分からない」という意味。率直な表現が英語らしいことわざです。
また、英語で似た意味だと「fear overruns the danger」で「恐怖が危険を乗り越える」。そのまま直訳なら「it is easier to do something than worry about it」で「それを心配するより何かをする方が簡単」という英語の文になります。
「案ずるより産むが易し」の使い方
「案ずるより産むが易し」は、実際の会話でどのように使えばよいのでしょうか。意味と使い方を覚え、使いこなして教養ある大人を演出したいところです。座右の銘として使っている人も、実は知らなかった、なんてことがあるかもしれません。
誰かに「案ずるより産むが易しだよ」と急に言われて焦らないためにも、答え方も一緒に見ていきましょう。例文と使い方を合わせてご紹介します。
例文①激励や鼓舞
「案ずるより産むが易し」は相手を激励する場面で使うことができます。例文としては、「部下が大きなプロジェクト前に緊張しているので、案ずるより産むが易しだと伝えた。」というような文章になります。
この例文を会話にすると、「お前にとって初めての大きなプロジェクトだ。色々と心配もしているだが、それは案ずるより産むが易しというやつさ。全力でやってみろ。」「分かりました。ありがとうございます!」といった内容になるでしょう。
何か大きな仕事を控えた人や、初めての子育てに挑む人など、大仕事を前に委縮したり心配して悩んでいるなどの状況で相手を力づけるために使う使い方です。返事をする側は、「お気遣いいただきありがとうございます」など、相手の気持ちに感謝する一言を添えると良いでしょう。
例文②励まし
「案ずるより産むが易し」は悩んでいたり考えすぎている相手に寄り添い、励ます場面でも使うことができます。例文としては、「就活が心配で憂鬱になっている友人を、案ずるより産むが易しと励ました。」のような文章になります。
この例文を会話にすると「就活が始まるのが不安なの?心配しないで。案ずるより産むが易しと言うし、やってみたら結構すんなり決まるかもしれないよ。」「少し気が楽になったよ。ありがとう」というような内容になるでしょう。
場面を分けてお伝えしましたが、「案ずるより産むが易し」と相手に伝えるのは、言い方に差はあれど相手を心配し、励ます心からの言葉です。
激励の会話の際と同じく、言われた方は「お心遣いありがとうございます」「お気遣い感謝します」というような、相手の気持ちに感謝する一言を添えましょう。
「案ずるより産むが易し」の注意点
幅広い場面に対応できる「案ずるより産むが易し」のことわざですが、使う際にはいくつか注意点があります。使い方についてあまり心配しすぎるのも「案ずるより産むが易し」となってしまいそうですが、そこは社会人としての常識。
おかしな使い方にならないように、正しい知識を簡単に身につけておきましょう。以下では「案ずるより産むが易し」を普段使う際に注意するポイントについてまとめました。
「易し」を「安し」と書くのは間違い
「案ずるより産むが易し」を「安し」と書くのは間違いです。「安」には「値段が低い」の意味もあるので、由来のとおり「たやすい」の意味のある「易」の方を使うようにしましょう。
今書く必要があるが漢字を忘れてしまった、という状況になったら、ひらがなで「やすし」と書くようにすれば大丈夫です。なお、「易し」は間違えられませんが、「産む」を「生む」と書くのは特に問題ありません。
「案ずるより産むが易し」はやってみれば案外簡単という意味
「案ずるより産むが易し」は、「やってみれば案外簡単だ」「実際やってみると心配したよりずっとたやすい」という意味。言ったほうも言われた方も前向きな気持ちになれる、おおらかな雰囲気のことわざです。ぜひ、座右の銘にして使ってみてください。
使う際には注意点もありますが、それこそ「案ずるより産むが易し」。初めは慣れない言葉でも、座右の銘として使っていくうちに徐々になじんで、自分の言葉になっていきます。
悩んでいる相手や、自分が考えすぎていると感じたとき、「案ずるより産むが易しだよ」とさらりと言ってみてください。きっと気持ちが軽くなり、前向きに行動できるようになるでしょう。