Tシャツなどの服は染料があれば簡単に染められる
オリジナルのTシャツを作ってみたい、古い服や色あせた服、デザインが気に入らない服を染め直してみたいけれど、自分で染めるのは難しそうと尻込みする方が多いのではないでしょうか。
コットン(木綿)のTシャツや服なら意外に手軽にしかも安価に染める方法があります。また染める染料も市販の染料やオリジナルの染料、染める方法も何種類かあります。
Tシャツや服を色替えしたり模様をつけたり、自分でリメイクして染める簡単な方法やテクニックをこれから紹介していきます。
染料は市販・ハンドメイドのどちらか
Tシャツや服を染める染料には、市販のものと自分でハンドメイドした染料の2種類があります。市販のものには自分で染めたり染め直したりするための専用の染料としてカラーも豊富に揃っています。
コットンなどの天然素材だけでなく、ナイロンやレーヨンなどの化繊も染めることができる染料も販売されています。その種類やカラーや特徴などは後の章で詳しく解説しますのでここでは簡単に染色したり模様を描く染料があることをまず押さえておきましょう。
また自分でハンドメイドする染料もたくさん種類があります。植物が原料になっている染料が多く「草木染め」や「藍染(あいぞめ)」が有名ですが、その他身近な植物や果物などの食品で色や模様を染める方法があります。
一昔前までは色あせた服などは、ハンドメイドの染料を使って自分で染め直したものです。古い服も染め直せば新品のようにリフレッシュした気分で着ることができます。ハンドメイド染料の種類や染め方などは後で詳しく紹介します。
Tシャツなどの服を自分で染める方法は3通り
自分でTシャツなどの服を染める方法には、主に次の3通りがあります。1つ目は「市販の染料につける」方法、2つ目は自作の「ハンドメイドの染料で染める」方法、3つ目が「市販の染料をハケなどで飛ばす」方法です。
3通りの方法には、やり方や仕上がり方に違いがあります。それではそれぞれの染め方の方法と、その特徴と注意点などを詳しくこれから説明していきます。
服を濡らしてから市販の染料につける
市販されている染料はほとんどが化学染料で、仕上がりの色がカラフルなハッキリした色に染まるのが特徴です。優しく柔らかな色合いに仕上げたい場合には「草木染め」の染料を選ぶと良いでしょう。
染め方は、染料につける前にTシャツや服を一度水洗いをしてよく絞っておきます。これは染料をムラなく全体に染み込ませるためです。
次に好みの色の染料をお湯で溶かし塩を入れます。分量は説明書をよく読んでください。それから服を広げながら全体に染料が馴染むように浸して放置します。時々色むらを防ぐためにかき混ぜましょう。
時間は染料によって違うので説明書で確認しましょう。最後はしっかりと水洗いをして染料が出てこなくなれば完成です。
染料が手につくと落ちにくいのでかき混ぜ棒やゴム手袋を用意しましょう。Tシャツや服を染めるのは難しいと思っていた人にも市販の染料は意外に簡単に扱えるのでオススメします。
色止め液を使うのも有効
せっかく鮮やかに染めた色が、洗濯するたびに色落ちして褪せてしまうのは残念です。そんな心配がある場合はカラーストップという色止め液を使うと効果があります。
使い方は色止めする布が十分に浸る量のお湯に色止め液を入れて浸すだけです。時間やお湯の温度、入れる量は繊維の種類によって違うので説明書で確認してください。
市販の染料を使う際の注意点
市販の染料は、Tシャツや服の素材が綿・麻・レーヨンなら基本的にしっかり染まりますが、ナイロン・アクリル・ポリエステルや、撥水加工など特殊加工をした生地は染まりにくいので注意が必要です。
ポリエステルの場合は専用の染料があるので、それを使えばしっかりと染めることができます。しかし綿とポリエステル混合の場合には少し淡い仕上がりになります。
また縫い糸やステッチだけがポリエステルという服もあるので、普通の染料で染めるとその部分だけが染まらないので注意してください。
自作の染料を使って染める
市販の染料を買うと500円〜3000円程度かかります。自分で染料を作れば材料費はほとんどゼロ円です。例えば飲み終わった紅茶のティーバッグや玉ねぎの茶色い皮が染料になります。
普段捨ててしまうようなものに染料の原料になるものが意外にたくさんあります。染める材料にお金をかけたくない人や自分で色を作るのが楽しい人には自作の染料はオススメです。
自作の染料の作り方は後ほど詳しく紹介しますので、ここではハンドメイドで染料が作れることをまず頭に入れておいてください。
服にハケなどで市販の染料を飛ばしていく
この方法は意外性や独創性を求める人にオススメの方法です。ハケに染料を含ませて、Tシャツなどに向けてバシッと振って色を飛ばす方法なので、どのような模様になるか予想がつきません。
予想以上に色が飛ぶかもしれませんが逆もありえます。その加減が難しいので初めての人にとっては冒険です。しかし色も1色だけでなく何色も重ねることができるのでオリジナルの模様を作るには面白い方法です。また絵を描くよりも簡単なので初心者でもできます。
このようにTシャツや服を染める方法には、まんべんなくムラなく染める方法や自分でオリジナルな色を作るハンドメイドの染色、意外な模様を出す絵具を飛ばす方法など様々なのがお分りいただけたのではないでしょうか。自分の好みや感性に合わせてトライしてみてください。
Tシャツなどの服を染めるのにおすすめの市販の染料
Tシャツや服を染めるために市販されている染料は化学染料がほとんどで、鮮やかな色に染まるのが特徴ですが、布地の素材により色合いの効果はまちまちです。
市販されている染料には天然素材のものも種類は少ないですが含まれています。ここでは市販されている染料の特徴や適している布地や使い方、商品ごとにおすすめする理由などを詳しく紹介します。
ダイロン
ダイロンは英国製の染料で世界中で愛されるロングセラー商品です。コットン(綿)、麻、ナイロン(表面加工なし)、レーヨンなどを染めるには非常に効果があります。しかしポリエステルやアクリル、撥水加工など特殊加工をした布地を染めるには適しません。
しかし色落ちしにくいので、カラーストップを使わずに長い期間色があせないのが特徴です。価格も1袋500円〜とリーズナブルで色も50色以上揃っていて好みの色を選べるので便利で使いやすい染料です。
Rit染料
Ritの染料は、市販されているコストは1袋500円〜700円でダイロンとほとんど変わりません。ただTシャツ1枚に使う量はダイロンは25g「Rit」は8gと極端に違います。つまり約30%の量で染まるということはコスパが良いということになります。
しかし染色の色合いについては個人差があるので「ダイロン」「Rit」どちらとも言えませんが、コスパを重視する人には「Rit」がオススメと言えます。
SEIWA KONYA-I
「SEIWA KONYA-I」はジャパンブルーとも言われる藍染に特化した染料です。藍染だけが持つ独特な風合いと、深い藍色の美しさは時代を超えて人々の心を魅了してきた色です。
「SEIWA KONYA-I」は日本伝統の藍染を誰でも簡単に親しめるように開発された商品です。Tシャツや服だけでなく部屋を飾るファブリックなども簡単に染めることができます。
染める布は綿・麻・シルク・レーヨン・ウールなど天然素材の生地によく合い必要な助剤はすべて入っています。付属のマニュアルでは様々な模様を輪ゴムや割り箸を使って簡単に表現できる12種類の技法も紹介されています。和風の色合いや模様が好きな人にオススメの商品です。
PAC FABRIC DYE 繊維用染料
「PAC FABRIC DYE 繊維用染料」は、色落ちしたものを染め直す時、好みの色にカラーチェンジしたい時に最適な染料です。Tシャツや服だけでなくエコバック、帽子、靴下など身の回りのものをカラフルに仕上げます。
基本色は15色ですが、混ぜ合わせて好みの色にすることも可能です。セットには色止め剤が付いているのも親切で便利です。また黒には色あせた黒生地を染め直す「BACK TO BLACK」と淡色の生地を黒く染める「SUPUR BLACK」の2種類があり用途に合わせて選べるのが特徴です。
液体染料 クラフト染料
クラフト社製のクラフト染料は、革製品の染色に特化した液体染料です。Tシャツなどの服を染める染料とは基本的に使い方が違います。カラーも鮮やかなイエローからブラウン、ブラックまで24色揃っていて発色性や染着性に優れた染料です。
使い方のポイントは、染色する前に革全体をスポンジなどで水を含ませます。はじめは水で薄めた染料を重ねて塗り、徐々に濃くすると色むらなく仕上がります。ただ乾くと多少色が薄くなるので、乾いた時を想定して目的の色に近づけていくのがポイントです。
価格は色によって変わりますが100cc入りが¥580〜です。また色止め剤100cc入り¥400が別売りされています。柔らかな光沢には「レザーコート」自然なツヤ消しには「レザーコートマット」の2種類があります。バッグや靴などの革製品を染色したい人にオススメの商品です。
Tシャツなどの服を染めるのにおすすめなペンキ類
Tシャツやデニムなどの服を染める方法には、染色の他にスプレーやペンキを使ってオリジナルペイントをする方法があります。少し飽きてきた服などにワンポイントのペイントをするだけで、フレッシュなアクセントができて楽しく着こなせます。
流行りの今風の模様や、自分だけのオリジナルデザインが簡単にできます。ただスプレーやペンキは周りを汚してしまうことがあるので、ペイントする前には大きめのゴミ袋などでテーブルや床にガムテープで養生しておくことを忘れないようにしましょう。
その他用意するものは、用途によりバケツ、ハケ、マスキングテープ、ゴム手袋などです。それではオススメのペンキ類を紹介します。
ダイロン カラーファン
「ダイロン・カラーファン」は、布用の絵の具で筆やスポンジでペイントします。カラーは色々と多種あり税別500円前後で販売されています。
使い方は液をそのまま筆やスポンジで布地に描いてから乾かします。充分乾いてから描いた部分にきれいな布を当てアイロンまたはドライヤーで熱処理をして定着させます。色を重ねる場合はこの工程を繰り返します。
防水など特殊加工をした布や毛足の長いものには不向きです。また描く際には裏に色が染みないように裏当てをするようにしましょう。Tシャツや服、ファブリックにオリジナルの模様やデザインを描きたい人にオススメのペイントです。
ぺべオ 布に描ける絵具
ペペオの「布に描ける絵具」は、手書きで布に描く水性のアクリル絵具です。布それぞれの風合いを損なうことなく個性的で自由な発想のデザインや模様を綺麗に表現できる絵具です。
南仏生まれで顔料濃度が高く美しい発色に優れているのが特徴です。カラーは布に適した色調を厳選してラインナップされています。服だけでなくインテリア・ファブリックにも適したペイントです。使い方はダイロンとほぼ同じで価格は600円〜1,000円程度で販売されています。
ターナー色彩 アクリル絵具 布えのぐ
ターナー色彩社製のアクリル絵具「布えのぐ」は水彩絵具のようにチューブに入ったペイントで布に描くことを前提にしたアクリル材質の絵具です。
色は普通色24、蛍光色3、ラメカラー6、伝統色12で全45色揃っていて単品の場合は1本(20ml入り)270円で販売されています。他に9色・12色・18色のセットもあり2,000円〜3,800円と割安になっています。
色が多彩にあることと、描いた後のアイロンなどの熱処理が不要なところが特徴です。乾燥後はごわつきがなく洗濯が可能です。多彩な色で絵画感覚で描きたい人にオススメのペイントです。
マービー 布インク長持ちスプレー
マービー社製「布インク長持ちスプレー」は布地に直接吹きつけて着色できるスプレー式の布用インクです。スプレーで彩色した後に別の色のスプレーで重ねて彩色することも可能です。
またマスキングをして数色で色を塗り分けたり、自然な混ざり方で美しいグラデーション模様を表現することができるので色々な楽しみ方ができるスプレー式の布インクです。筆より簡単で早く模様や柄が描けます。
カラーは不透明色が8、メタリック色が2、リッチラメ色が一で全11色あります。使い方の注意点は、スプレーは非常に細かい霧状になって散布されるので、しっかりとマスキングをしないと隙間からインクの粒子が入り込み絵柄がにじんでしまいます。
また使い終わった後は、必ずスプレー缶を逆さまにし空吹きをしてインクがノズルに残らないようにして保管します。インクが残っているとノズルが詰まるので注意してください。自分で色々なグラデーション模様を楽しみたい人にオススメの布スプレーです。
デコアート 布用絵具 ソーソフト
デコアート社製の布用絵具「ソーソフト」は、発色がよく描き心地と仕上がりが滑らかで、乾きが遅いので色のブレンドが布上でできるのが特徴です。
また最後の熱処理がいらないのが利点です。しかし色数が少ないのが少し残念ですが、逆に混色が可能なので様々な色合いを作り出す楽しみがあります。
トランスペアレントメディウム(透明液)を併用すると水彩画のような柔らかいタッチが表現できます。繊細な模様や柄が好きな人にオススメの絵具です。
自作の染料での服の染め方
自分で染料を作り、自作のオリジナル染料でTシャツや服、ファブリックなどを染める方法に「草木染め」があります。市販の染料を使って染めるほど簡単ではありませんが、一度コツを覚えてしまえば意外に簡単に家庭でもできる方法です。
なんといってもメリットは身近な材料でできるのでコストが掛からないことです。しかも自然で優しく柔らかな色合いに仕上げることができます。草木染めには野菜や果物の皮、花や草や葉、自然のものならなんでも染めることができます。
いちばん簡単で綺麗に染めることができるのは玉ねぎの皮です。他の材料については後ほど紹介しますので、ここでは玉ねぎの皮を使って自宅で簡単に楽しめる草木染めの方法を紹介します。
材料を煮て出す
玉ねぎの茶色い皮をネットに入れて口をしっかりと縛ります。次にネットに入れた玉ねぎの皮を鍋に入れ、ひたひたに浸る程度まで水を張ります。
火をつけて沸騰させないようにグズグズとじっくり20分〜30分煮ると、キレイに濃い茶色の色が出たら玉ねぎの皮をネットごと取り出します。これで自分でハンドメイドした染料が出来上がりました。
Tシャツなどを布で煮る
染料を作っている間に、別の鍋で色をつけたいTシャツなどの服や布を10分ほど煮ます。これは服などについている汚れを落とすためで、汚れがついているとキレイに染めることができません。
キレイに洗濯した服でも空気中のほこりなどを意外に吸っているものです。染める前にはこの工程は必ずやりましょう。煮た後はよく絞って染色の工程に移ります。
Tシャツなどを染料と一緒に煮る
煮て汚れを取った服や布を、先ほど作った染料液の鍋に入れて沸騰しないように20分ほど煮ます。模様をつけたい場合には、Tシャツなどの一部を輪ゴムで縛ります。ビー玉などを包み込んでも面白い模様が作れます。
煮終わったなら水洗いして絞りますが、Tシャツなどの服を絞る時はねじらないように押さえるようにして水を切ります。こうすると染めムラなく仕上げることができます。先ほどのように輪ゴムで絞りを入れると面白い模様になるのでぜひ試してみてください。
ミョウバン液などで色止めする
一般的に草木染などの天然染料は色が定着しにくい性質があるのでミョウバンを使って色止め(定着)をします。ボウルに大さじ1杯のミョウバンを少量のお湯で溶かし、よく溶けたらに水1リットルを加えます。
その中に先ほど染色したTシャツや服などを入れ、長めのさいばしでユラユラと浸けていると、くすんだ茶色だったTシャツや服がパッと明るい黄色になってきます。これを染め用語で媒染(ばいせん)と言います。
玉ねぎの茶色の皮で染めるので茶色になると予想しがちですが、意外にも仕上がりは玉ねぎの皮から出た色とは思えない明るい黄色になります。後は陰干しをして完成です。
ミョウバン(アルミニウム成分)の他に媒染液には鉄や銅などの金属を使う場合もあり色合いはそれぞれで変わります。ぜひ家庭で草木染めを楽しんでみてください。
Tシャツなどを染めるのにおすすめの木の実・草木
Tシャツや服を染める草木染めの材料になる、木の実や草木にはどのようなものがあるのでしょう。またその材料を使うとどんな色に染めることができるのでしょう。
木の実といえば代表的なもので栗やどんぐりが思い浮かびますがそのどの部分を使うのでしょう。また意外な花や草が服を染める染液になります。
一般的に草木染めで染める服などの素材がウールやシルクなどタンパク質を含む場合は良いのですが、麻やコットンなどの植物系の服は豆乳などで煮るなどのタンパク処理をしないとよく染まらない性質があるので注意してください。
それでは草木染めに使える、木の実や草木の種類とミョウバンや金属などの媒染液による仕上がりの色の違いなどを紹介します。
栗
栗は食べる身の部分ではなく、捨ててしまう茶色の皮を染める材料に使います。染液の作り方や染めるTシャツなどの服の下処理や準備、後処理の基本は前述の玉ねぎの皮と同じなので省略します。
仕上がりの色は灰色がかった柔らかなブラウンになります。また渋皮煮を作った時に出る栗のゆで汁でも染めることができます。すべて捨ててしまう材料が使えるのでとてもエコです。
どんぐり
どんぐりの実は田舎に行けばあちこちで拾うことができますが、都会ではどんぐりの木がある大きな公園などに行かなければ拾うことができません。そのような場合は通販で購入することができます。
どんぐりには20種類くらいが自生していて、どの種類でも染めることができます。染液の作り方はどんぐりのヘタを取って実をよく洗い皮をむかずに鍋に入れて1時間ほど煮ます。煮終わったらザルやサラシでこします。後は栗や玉ねぎの皮と同じです。
また仕上がりの色は色止めに使う金属系の媒染液につけると色合いが変わります。鉄を使うと濃い灰色、銅やアルミニウム(ミョウバン)を使うとベージュ系の色になります。
くるみ
くるみを使って染める場合は、一般に販売されている乾燥したくるみでは草木染めはできません。まだ青いうちの生の果皮や樹皮、葉などを使って染めます。くるみの木が家にあれば良いのですがない場合は家庭でくるみ染めをするのは難しいかもしれません。
また染液に漬ける際も何度も染め重ねて染めるので手間がかかります。通販で染料になる果皮は販売されているので手間暇をかけて作ってみたい方はトライしてみてください。仕上がりの色は少し甘さのある優しいベージュになります。
渋柿
日本には柿の渋を使った柿渋染めという伝統技法がありますが、柿渋染めは初心者には難しいと言われています。しかし渋い青柿を使って簡単に服を染める方法があります。
まだ青い渋柿をすりおろして服に塗り媒染液に浸けると深くてシックな濃茶に染めることができます。また鉄媒染をすると紫がかった濃茶色になり、しかも色がどんどん変化していくので別な楽しみ方があります。興味のある方はトライしてみてください。
茜の根
茜(あかね)はつる性の多年草で、古く万葉集や古事記の時代から、茜の根汁を原料とした茜染めは主としてシルクを染める赤色の染料として用いられていました。「夕焼けが茜色に染まる」と言うように茜色は鮮やかな赤色です。
天然の茜を手に入れるのは難しいのですが、草木染め染料として市販されているもので茜染めをすることができます。インド茜なら100g300円程度で購入することができます。
染液の作り方やミョウバンなどの媒染液、コットンなどを染める時はタンパク処理をすることなどは他の草木染めと同様です。鮮やかな赤に染めたい時にはぜひトライしてみてください。
桜
桜染めに使用するのは、桜の枝をできるだけ細かく削って煮出して染液を作ります。桜の若葉や実でも染めることができます。木の枝は老木ではなくなるべく若い木の方が綺麗に染色できます。
また最初に煮出した液は色が悪いので捨て、もう一度同じように煮出します。これを何度か繰り返して染めたい色の染液を作ります。色が出づらい場合は重曹などのアルカリを加えると色が出ます。
染液は3日ほど寝かすと赤みのあるピンク色に変化します。オレンジがかった色に染めたい場合は寝かせずにすぐに染色にかかります。それ以外は他の草木染めと同様な作業です。
マリーゴールド
マリーゴールドは鮮やかなオレンジや黄色の花を咲かせる可愛いい草花です。染めるのに使うのはこの花の部分ですが、綺麗に咲いている花を摘んでしまうのはかわいそうなので、しおれた花を使います。
しおれた花を大量に集めるのは難しいので、積むたびに冷凍保存してためておきます。花がたまったら生ゴミネットなどに入れ煮出して染液を作ります。その後の方法は他の草木染めと同じです。仕上がりの色は花の色と同じ鮮やかな黄色になります。
Tシャツなどを染めるのにおすすめな食べ物
普段の食事で食べる野菜や果物などの食品や飲み物で、捨ててしまうような部分に草木染めの染液になるものがたくさんあります。
しかし想像している部分と違う部分を使う食品もあります。それでは草木染めの染液になるオススメの食べ物と染液の作り方を紹介します。
玉ねぎ
玉ねぎの皮で染める染色は、草木染めの中でも比較的初心者でも失敗なく簡単にできる素材です。玉ねぎは新玉ねぎではなく茶色の皮のものを使用します。染液や染め方は前の章で説明したので省略します。
媒染液にミョウバン(アルミ成分)を使うと明るい黄色に仕上がることは前に紹介しましたが、銅を使うと茶色に近い黄色に仕上がります。このように媒染液を変えて色々な色合いに変える楽しみ方ができます。
にんじん
にんじん染めには意外かもしれませんが、にんじんの葉を使います。赤い身の部分や皮では不思議ですがあまり色がつかないようです。
にんじんの葉で煮出した染液でTシャツや服を染めると、からし色や黄色になります。薄手で透け感のあるリネンストールなどを染めるとレモンイエローになり華やかです。にんじんの色からイメージすると赤やオレンジをイメージしますがイエローは意外です。
なす
なす染めは仕上がりの色が一番想像しやすい野菜です。染液には、なすの皮の部分を使用して煮出します。ミョウバンを加えると鮮やかな青紫色に染色できます。
また絞染めも綺麗にできるので、Tシャツや小物で慣れてきたら大きめの服で絞染めなどの模様を入れるのも楽しいです。草木染めは自分で工夫して色々なことができるのが魅力です。
よもぎ
よもぎは春先に全国どこにでも自生する香りの良い草です。よもぎ餅にしても美味しく、漢方の薬としても利用されています。よもぎを染料にするには鍋で15分くらい煮てから煮汁ごとミキサーで細かくします。
布などでこしてよもぎを取り除いたものが染液になります。仕上げはミョウバン、鉄、銅などの媒染液で色を定着させます。よもぎのような若草色に仕上げるには銅媒染がオススメです。
ぶどう
ぶどう染めには、紫色をしたぶどうの皮を使います。皮にはアントシアニンという色素が含まれていて染料にはピッタリの素材です。食べた後の皮をたくさん集めるのは大変なので、食べるたびに冷凍してためましょう。ジュースやワインも利用できるようです。
仕上がりの色はシックで優しい紫色になります。もちろん媒染の種類によって色合いは変わります。絞染めも効果があるので色々と自分で試してみましょう。
コーヒー
コーヒー染めは草木染めの中では邪道のように感じますが、コーヒーも植物ですから染料として使えます。白っぽいTシャツや服にコーヒーをこぼすとシミになり洗濯してもなかなか落ちません。この効果を染料に応用したのがコーヒー染めで歴史も古く長年利用されてきた方法です。
染液の原料にするのは、出がらしのコーヒー豆です。コーヒー豆をひいた粉やインスタントコーヒーでも構いません。またコーヒー染めの特徴は均一に染め上がらないことです。色の濃い部分と薄い部分がグラデーションのように不規則になるのが魅力です。
紅茶
紅茶染めはコーヒー染めと同様に草木染めの番外編です。原料は紅茶の葉を使います。安い紅茶の葉やティーバックで構いません。何と言っても最大の特徴は10分浸しただけで充分染まるので、ちょっとしたスキマ時間で手軽にできることです。
色はアンティークな雰囲気のあるブラウンになります。ナイロンなどの合成繊維は染まりにくいので、その性質を逆利用してコットンと合成繊維の混じった服を紅茶染めすると色に濃淡が出て面白い模様になります。この手法は他の草木染めにも応用できるので試してみてください。
Tシャツなどを染めて模様を作る方法
自分で着る服に自分だけのオリジナルの模様やデザインが染められれば、楽しくてウキウキする気分になること間違いありません。オリジナル模様を染める方法は色々あります。
いきなり服に挑戦するのは心配なら、最初はファブリックなどの布でテストして、次は捨ててもいいようなTシャツなどカジュアルな服、自信がついたら模様をつければ素敵だと思う服などとだんだんグレードアップしていけば良いでしょう。
それではTシャツや服、ファブリックなどに模様を染める方法、筆や道具を使ってペイントする方法、色々な絞り染めの方法などそれぞれの特徴を合わせて紹介します。
型紙の上から染料をふきかける・塗る
模様をつける方法の一つにステンシルがあります。ステンシルとは型紙を使って模様を描く技法のことで、型紙にはメタル製、プラスチック製、紙製のものがあります。
型紙をTシャツや服の上に貼り、その上から布インクをスポンジなどで叩くように塗る方法と、布用のスプレーで染料を吹きかける方法があります。インクが乾いたらアイロンやドライヤーで熱処理をして色止めをすれば完成です。
型紙は何度も使い回しが出来るので、恋人同士や親子兄弟でおそろい模様のTシャツを作る時などに便利です。ステンシルは割合簡単にできるので初心者でも安心です。
また型紙は100均で様々な種類が販売されています。色々な型紙やインクの色を組み合わせてオリジナル模様を染めることができます。
自分だけのオリジナル模様を作りたい場合は、カッティングシートをカッターで切り抜いて自分で型紙を作る方法があります。これには多少の技術が必要なので自信がある人はトライしてみてください。
輪っか絞りをする
輪っか絞りは、輪ゴムとビー玉やスパーボールなどを使って円形の模様を染める絞り染めの技法で、難易度はさほど高くありません。
白い生地の裏側にボールを乗せて輪ゴムやタコ糸でしっかりと留めます。輪ゴムで留めたボールの部分に染料が染み込まないのでその部分が円形に白く残ります。ボールやビー玉など大きさを変えたり並べ方を工夫すれば様々な円模様が描けます。
藍色や焦げ茶色など色合いが濃い方が濃淡のコントラスがよく出ます。好みによりコントラストをあまりつけたくない場合は淡い色の染料を選ぶと良いでしょう。
板締め絞りをする
板締め絞りは、格子状のチェック模様を染める絞り染めの技法で難易度は輪っか絞りより高めです。2度染めをする場合もあります。
まず生地を端から端までジャバラ状に折ります。折る幅により格子の大きさが変わります。最後まで折ったら今度は向きを変えて同じようにジャバラに折ります。折った生地を板で挟み上下を輪ゴムでしっかりと留めますしっかりと止めます。
板で挟んだ部分を染めずに白く残すためなので、留め方がゆるいと染料が染み込んでしまいます。しっかり固定した生地を染料に2時間ほど浸けておきます。2時間たったら板を外し流水でよく洗い干せば完成です。
板からはみ出た部分が場所によって異なり、格子柄の太さがまちまちになる場合があります。それはそれで面白いのですが、線の太さを揃えたい場合は乾いた後で同じ工程を繰り返す2度染めをします。板の変わりに割り箸を使うと線の太さが細くなり違った模様が染められます。
板締め雪花絞りをする
板締め雪花絞りは、花模様を染めるため板締め絞りを応用した技法です。板は三角形の板を2枚用意し、生地も端から三角形にジャバラ折りをします。
折りたたんだ生地を2枚の三角の板で挟み、太めの輪ゴムやタコ糸でしっかりと固定します。これを染料に浸けるのですが、全体をつける染め方や1辺だけを浸ける場合、角だけを浸ける場合など付け方によって模様が変わります。
また三角に折る折り方を小さくしてみたり、角の1ヶ所だけ色を変える、角と辺の色を変える、イメージする花の色と何色か重ね染めをするなどアレンジは無限に広がります。
花模様だけでなく様々な幾何学模様も作り出せます。このように板締め雪花絞りは、工夫次第で様々にイメージが広がる楽しい染め方なので、一度ハマるとやみつきになるほど魅力があり奥が深い染め技法です。
あらし絞り染めをする
あらし絞り染めは、さざ波のような模様に染め上げる技法で、難易度はさほど高くありません。用意する道具は巻きつけに使う塩ビパイプと輪ゴムにタコ糸です。
まず最初に生地が滑らないように塩ビパイプの端に輪ゴムを数本巻きます。それから生地を思いのままにぐるぐると巻きつけていき、最後まで巻き終わったらパイプの先端に向かってギュッと寄せます。その上からタコ糸をぐるぐる巻きつけて固定します。
あとは染料に2時間つけて、流水で洗い流せば完成です。また染料にパイプの先の方だけ浸けるとグラデーションのかかったさざ波になります。パイプの太さを変えると染まる面積も変わるので一味違う模様になります。
自由に書く
オリジナルの模様や絵やイラストを染める方法には、簡単な手法では前述のステンシルがありますが、布用絵具で自由に描く方法があります。最もオリジナリティがありますが難易度も高いです。
染め方の難易度は他と変わらないのですが、布に描く筆使いの技術や模様やイラストを描く絵心がないとうまくいきません。
簡単な方法としては布用のスプレーで染料を吹き付ける方法や、筆に絵具を含ませて飛ばす方法がありますが、しかしこれらはオリジナル性はありますが意外性を楽しむ染め方です。
自分で意図したものにしたいのなら、やはり筆で描くのが一番です。鉛筆などで下書きをして絵柄やデザインを決めてから布用絵具で着色していきます。最初は他のイラストやデザインを真似て練習をしましょう。筆使いや色使いに慣れてきたら自分の思うがままに自由に描いてみましょう。
Tシャツなどを染めるには専用染料がおすすめ
家庭でTシャツなどの服を自分で染めるには、市販されている専用染料がオススメです。難しそうに思えていた染色が意外と簡単に手軽にできてしまいます。
柔らかな自然な色にこだわりがある人は、天然素材を使った草木染めに挑戦するのも良いでしょう。絞り染めの技法を上手に取り入れてオリジナルデザインも作れます。
豊かな色は人の心を元気づけ明るくしてくれます。染色は服などのファッションライフだけでなく、敷物やコースターなどファブリックなどにも応用できインテリアライフも豊かにしてくれます。
ここまでの記事を参考にして、色々な染め方にトライして自分なりのオリジナルファッションや豊かな色彩でインテリアを飾って楽しんでください。