失業保険と扶養の関係性は?受給中に扶養家族になることや控除は受けられる?

失業保険と扶養の関係性は?受給中に扶養家族になることや控除は受けられる?

退職で収入が大きく減る時、失業保険と扶養控除のどちらが得なのかが気になります。扶養から外れると国民年金と国民健康保険料の負担が必要です。失業保険の給付を受け家族の扶養にも入るのはバレる可能性が高い不正行為。一体どうするのが最も良い方法なのでしょうか。

記事の目次

  1. 1.扶養とは
  2. 2.失業保険と扶養の関係性
  3. 3.失業保険受給中で扶養に入る場合
  4. 4.失業保険と扶養はどちらが得?
  5. 5.2018年1月から新たに「年収150万円の壁」が
  6. 6.失業保険と扶養の同時受給のリスク
  7. 7.扶養に入る場合と外れる場合の手続き
  8. 8.失業保険の給付が受けられるかどうかは退職前に要確認
  9. 9.扶養は入るタイミングが大切

扶養とは

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「扶養」とは、自分の生活を自分で維持できない人を援助する行為のことです。援助される側の人を扶養家族といいます。

ただし扶養には法律の違いにより2種類あります。関連する法律は「健康保険法」と「所得税法」で、健康保険法上の扶養の場合は「被扶養者」、所得税法上の扶養の場合は「扶養親族」と定義され、それぞれ条件が異なります。

年金と健康保険の扶養

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健康保険の「被扶養者」になれるのは、健康保険の被保険者と生計を同一とする家族や配偶者で年収が130万円未満(被保険者と被扶養者が同居の場合、被扶養者の年収が被保険者の2分の1未満)の人です。被扶養者は国民健康保険の保険料を支払う必要がありません。

厚生年金の被保険者の配偶者で年収が130万円未満の場合は、国民年金保険料の支払いを免除されます。ただし保険料は支払い続けているものとして金額と期間が加算されます。 

税制における扶養控除

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所得税の扶養控除は、納税者と同一の生計の家族などでその年の1月から12月までの合計所得金額が38万円以下(給与所得のみの場合は給与収入が103万円以下)の人が対象です。被扶養者になると、生計を立てている納税者の課税所得から38万円が控除されます。被扶養者が配偶者の場合は、扶養控除ではなく配偶者控除が適用され同様に38万円が控除されます。

失業保険と扶養の関係性

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失業保険の受給条件として「結婚などにより家事に専念し、すぐに就職することができないとき」は失業保険を受給できない、という規定があります。結婚を機に退職し配偶者控除の対象になる場合などは、失業保険を受け取る対象から外れることになります。

また「定年などで退職して、しばらく休養しようと思っているとき」も、失業保険を受給できません。したがって、退職して家族の扶養に入ろうと考えている場合も失業保険の受給対象から外れることになります。

扶養に入る条件は家族の収入が関係

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先ほど『健康保険の「被扶養者」になれるのは、健康保険の被保険者と生計を同一とする家族や配偶者で年収が130万円未満(被保険者と被扶養者が同居の場合、被扶養者の年収が被保険者の2分の1未満)の人』だとお伝えしました。同居の場合と別居の場合とでは条件が異なりますので、家族の扶養に入れる条件から外れる場合について確認しましょう。

同居の親族の場合

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扶養に入ろうとする人の年間収入が130万円未満(60歳以上または障害厚生年金が受給できる人は180万円未満)かつ被保険者本人(扶養する側の家族)の年間収入の半分に満たない金額である場合は被保険者の扶養に入ることができます。

例えば妻が夫の社会保険の扶養に入るには、被保険者である夫の年収が妻の年収の2倍以上である必要があります。妻の年収が120万円だった場合には夫の年収が230万円だと夫の社会保険の扶養対象から外れることになります。

ただし、家族の年収が被保険者本人の年収の半分以上であっても、被保険者の年収を下回っており世帯の生活状況を総合的に判断して「家族に生活の面倒を見てもらっている」と認められる場合には、被扶養者として認定されることがあります。

別居の親族の場合

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扶養に入ろうとする家族の年間収入が130万円未満(60歳以上または障害厚生年金が受給できる人は180万円未満)かつ被保険者からの援助(仕送り)額以下の場合には扶養に入ることができます。例えば月10万円の収入がある親は、月3万円の仕送りをくれる子の扶養の対象からは外れるわけです。

失業保険受給で退職理由は問われる?

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失業保険を受給する際に、基本的に退職理由は問われません。結婚や妊娠、家族の介護が退職の理由であっても失業保険の受給対象から外れることはありません。

妊娠や家族の介護が原因の退職の場合、体調の悪化や出産後すぐに働くことができない等の理由で求職活動が難しいかもしれません。すぐに求職活動ができない場合には失業保険の受給期間の延長もできます。まずはハローワークに相談しましょう。

扶養控除と配偶者控除の違いを徹底調査!特徴や条件・金額を分かりやすく紹介 | 副業・暮らし・キャリアに関するライフスタイルメディア
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失業保険受給中で扶養に入る場合

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妊娠や出産、家族の介護や本人の病気やケガ等の事情によりすぐに働くことができない場合は、手続きをすることで失業保険の受給期間を延長することができます。失業保険の受給期間延長中は給付金は支給されませんので親族の扶養に入れます。収入がない期間中は当然ながら扶養に入るほうが金銭的にお得です。

失業保険の給付制限中

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自己都合退職の場合でも、7日間の待機期間があるのは会社都合の退職の場合と同じです。違うのは、その後に3ヶ月間の給付制限期間があることです。この(待機期間7日プラス)給付制限3ヶ月間は失業保険は支給されないため家族の扶養に入ることができます。失業保険の給付を受けられない期間が長いので、家族の扶養に入れることは大きなメリットです。

失業保険の待機期間

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退職後にハローワークで失業保険の受給手続きをすると、最初に7日の待機期間があることは先ほどもご紹介しました。この期間は失業保険の受給期間から外れるので、家族の扶養に入ることは可能です。

ただし、離職理由が会社都合の場合は待機期間の7日間が満了した翌日から失業保険の支給がスタートします。このケースでは、失業保険の受給が終わった後に家族の扶養に入る手続きをとることをお勧めします。

失業保険と扶養に入る条件

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失業保険の受給条件をよく確認しましょう。すでにご紹介しましたが、「結婚などにより家事に専念し、すぐに就職することができないとき」「定年などで退職して、しばらく休養しようと思っているとき」は失業保険の受給対象から外れることになります。

退職したあと失業保険の給付を受けたほうがよいのか、扶養に入るほうがよいのかどちらがお得なのでしょうか。

失業保険と扶養はどちらが得?

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会社を退職したのち、失業保険の給付を受ける以外にも選択肢は色々あります。就職活動を始めてすぐに次の仕事が見つかるかもしれませんし、失業保険の給付を受けるのではなく家族の扶養に入ってパートやアルバイトとして働く選択もあるかもしれません。自分にとってどの選択をするのが一番お得なのかを考えてみましょう。

失業保険を受給する場合

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失業保険を受給する場合は家族の扶養には入れません。そのため健康保険料や国民年金保険料を支払う必要があります。これら二つの保険料の納付金額が失業手当の受給金額を上回る可能性と手続きの手間を考えると失業保険の給付を受けることで金銭的には損になる場合があります。

フルタイムで働いていた場合は、国民年金保険料(2019年度の保険料は月に1万6410円)と国民健康保険料(自治体によって異なる)の合計金額よりも失業手当の受給金額が多くなることが多いはずです。

その場合には失業保険の手当を受給し、2つの保険料を負担すると赤字になるようであれば扶養に入るのが金銭的に損をしない選択です。家族の扶養に入れる条件をよく確認し、対象から外れるようでなければ一時的にでも扶養に入るのはおすすめの選択です。

家族の扶養に入る場合

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社会保険の被保険者の扶養に入ることには大きなメリットがあります。まず家族の社会保険料が値上がりすることはありませんから、収入はなくても出費を抑えることが可能です。また、健康保険の被扶養配偶者と認定された人は、国民年金の第3号被保険者となります。つまり国民健康保険料を支払わずに加入期間と金額が加算される対象になります。

所得税の面でも、たとえば妻が夫の扶養に入ると配偶者控除の対象になり、結果として夫の所得税が安くなります。家族の扶養に入るか失業保険の給付を受けるのかは充分に検討する価値のある問題です。

扶養は年収103万円以下で調整する方が得

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失業保険の給付を受けると国民年金や健康保険の保険料の金額のほうが支給額を上回るし、かといって収入ゼロでは生活が苦しいという場合には、失業保険の給付を受けずに年間の収入が103万円以下になるよう調整しながら家族の扶養に入るのがよいでしょう。この他にも失業保険と扶養の関係について知っておくと役に立つ知識をご紹介します。

2018年1月から新たに「年収150万円の壁」が

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夫の扶養に入った状態でパートなどで働く人の場合、なるべく税金の負担は抑えたいと思う人が多いでしょう。所得税の面では2018年1月から「配偶者控除」と「配偶者特別控除」の条件が改正されました。今までとどう変わったのか、「103万円の壁」と「130万円の壁」とはどう違うのかを知っておく必要があります。

2017年までのパート主婦の年収の壁「103万円の壁」とは

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2017年までの年収の壁「103万円の壁」とは、「働いている妻の年収が103万円以下であれば税金面で優遇される」というものです。年収が103万円以下の人は所得税を払う必要がありません。さらに、妻の年収が103万円以下なら夫は配偶者控除として38万円の所得控除を受けることができます。

「103万円の壁」とは、自分が所得税を支払わなくて済み夫も配偶者控除が受けられて夫婦共に所得税が軽減されるラインを表現した言葉です。

2018年1月からの「150万円の壁」とは

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そもそも『配偶者控除』や『配偶者特別控除』は、所得が少ない配偶者がいる世帯の世帯主の税負担を軽くするための制度です。2018年1月からは、夫婦のうち配偶者が妻の場合妻の収入が103万円(年間所得38万円)以下なら『配偶者控除』、103万円超201万6千円以下の場合は『配偶者特別控除』が適用されることになりました。

控除額の満額は、『配偶者控除』も『配偶者特別控除』も38万円ですが、『配偶者特別控除』は妻の年収が150万円を超えて上がるにつれ段階的に控除額が減ります。これがいわゆる「150万の壁」です。さらに201万6千円を超えると控除額が0円になります。

150万円超えでも201万までは配偶者特別控除で夫の所得税が優遇

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妻の年収が150万円を超えても201万6千円までは、夫の所得額と妻の所得額に応じて段階的に配偶者特別控除が適用されます。ただし、夫の年間の合計所得金額が1,000万円(給与収入のみの場合、年収1,220万円)を超える場合には適用されません。すなわち扶養に入っている妻の場合「年収150万円」「年収201万6千円」を意識して働くことが重要です。

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失業保険と扶養の同時受給のリスク

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退職して収入が途絶えることの不安は非常に大きいものです。失業保険の給付金と扶養手当の両方を同時に受給することはできるのでしょうか?もし扶養に入ったまま失業保険の給付金を受給してその事実がバレると、状況にもよりますが基本的には「不正受給」とみなされペナルティの対象になります。

不正受給でペナルティがある

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失業保険を受給しつつ扶養に入るなど、失業保険の給付金を不正に受給したことがバレるとペナルティが課されます。金銭的にも大きな負担になるので注意しましょう。

たとえば「国民健康保険料を遡って納付」「医療費の保険負担分である7割を返金」「国民年金保険料を遡って納付」など、不正がバレると大変なことになります。手続きが面倒に感じるかもしれませんが、バレることを心配しながら不正受給するより安心して正当な手当を受給したいものです。

マイナンバーでバレる可能性

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2016年1月からマイナンバー制度が導入され、失業保険の給付金の不正受給がバレる確率は飛躍的に高まりました。マイナンバーを利用して調査を簡単かつ正確に行えるようになったためです。

マイナンバーが登録されていれば、例えば一定の期間内に厚生年金に加入していたかどうかを簡単に調べることができます。厚生年金は会社に雇用されている人のみ加入できるため、不正に厚生年金に加入している事実がバレる可能性は十分にあります。

扶養に入る場合と外れる場合の手続き

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家族の扶養に入る場合と外れる場合の手続きにはどんな書類を準備して、どのような手続きをすることが必要なのでしょうか。「税制における扶養の手続き」と「健康保険の扶養に関する手続き」の二つの手続きがありますので、それぞれ必要な書類や申請の手順をご紹介します。

税制における扶養の手続き

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税制上の扶養に関する手続きでは「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を扶養者の勤務先に提出します。配偶者控除を希望する場合も同じです。書式を見れば「あの年末調整のとき見る書類ね」とピンとくる人もいるでしょう。その年の最初に給与の支払を受ける日の前日(中途就職の場合は、就職後最初の給与の支払を受ける日の前日)までに提出します。

健康保険の扶養に関する手続き

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健康保険の扶養に関する手続きでは「健康保険被扶養者(異動)届」に記入し、扶養に入ることを希望する人の収入を確認できる書類(退職証明書や雇用保険受給資格者証の写し、年金受け取り金額を記載した書類など)と、被保険者と被扶養希望者の続柄を確認できる書類(世帯全員の住民票など)を、被保険者の勤務先に提出します。

扶養に入ると扶養者が加入している健康保険に入るので、退職してから扶養に入るまでの間に国民健康保険に加入していた場合は、脱退手続きをする必要があります。

手続きせずに放置すると二重で健康保険料を払うことになってしまいます。保険料の支払いで損をすることがないように、新しい保険証が届いたらお住いの地域の市区町村で国民健康保険脱退の手続きをしましょう。

失業保険の給付が受けられるかどうかは退職前に要確認

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自己都合であれ会社都合であれ、退職して収入が途絶えることには不安がつきまといます。失業保険の給付金は収入のない期間の生活を支えてくれる大切な存在ですが、受給手続きの前に「今給付の申請をするべきか」よく考えてからでも遅くはありません。

雇用保険の基本手当(いわゆる失業保険)の給付は、原則として離職日以前の2年間に「被保険者期間」が通算して「12カ月以上」あることが条件です。

「被保険者期間」とは、雇用保険の被保険者である期間のうち、離職日から1カ月ずつ区切った期間内に賃金支払いの基礎となった日が「11日以上」ある月を1カ月と計算します。勤務日数が少ない月に何日も休み、有給休暇がなく欠勤扱いになったりすると日数を満たさない月ができることもあります。離職日以前の2年間の勤務状況をよく確認しましょう。

扶養は入るタイミングが大切

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離職する人にとって、失業保険の給付金をどのくらい受け取ることができるかは非常に重要です。家族の扶養に入る場合も、年金や健康保険の保険料などを計算したうえで適切なタイミングを選んで扶養に入るようにしたいものです。

扶養に入りつつ失業保険の給付を受けることは不正行為なのでやめましょう。不正がバレるとペナルティが課され、かえって出費が増えてしまいます。バレる可能性が高い不正に手を染めることなく、バレるかバレないかとドキドキする必要がない生活をしましょう。

社会保険の扶養から外れてしまうと、国民健康保険と国民年金の保険料負担が重くのしかかります。数ヵ月でも扶養に入ることができれば、場合によっては10万円以上の保険料を節約できます。このように、バレるような安易な不正行為は慎んで、面倒臭がらずに正当な手続きすることをお勧めします。

affyokko
ライター

affyokko

幸せな人生をつくるお金の使い方を追求しています。

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