扶養控除・配偶者控除の特徴の違い
扶養控除と配偶者控除は、どちらも扶養しているされている人に関係する控除というイメージがあり詳しい両者の違いはどこにあるのかと気になったこともあるのではないでしょうか。どちらの控除も給与所得者の場合は、年末調整で払い過ぎた分の税金の還付を受けることが出来ます。個人事業主の場合は確定申告をすることで還付されます。
では、この2つにはどの様なメリットや違いがあるのでしょうか。それぞれの特徴を細かく解説しながら、控除金額やそれぞれの制度が適用される範囲など詳しくみていきましょう。
①扶養控除
扶養控除とは、家族を扶養している人は扶養している人数や年齢などに応じて課税所得から一定の金額を控除することができる控除のことを指します。この扶養控除を受けることで「所得税」と「住民税」を差し引く事ができます。また扶養に入っていれば、社会保険は免除となりますが、年金は免除されませんので注意が必要です。
②配偶者控除
配偶者控除とは扶養控除の一部です。配偶者にだけ適用することのできる控除で、普通の扶養控除よりもさらに優遇されています。納税者に収入の少ない、または無い配偶者がいる場合に納税者の総所得金額などから控除をする仕組みです。そのぶん「所得」が少なく計算されることになるので、最終的に収める税金が少なくなります。
扶養控除・配偶者控除の条件の違い
扶養控除と配偶者控除には共に適用されるための条件がいくつかありますが、それぞれ条件が違います。また配偶者控除は扶養控除の一部であるので、扶養控除の条件を満たしていて更に配偶者控除の条件を満たしている場合のみ配偶者控除が適用されます。
基本的には配偶者控除の条件から外れてしまう場合は扶養控除が適用されることになります。扶養控除と配偶者控除を1人が重複してうけることはできません。
①扶養控除の条件
扶養控除が適用されるのは、次からの条件を全て満たしている場合となります。まず、「配偶者以外の親族であること」です。ここでいう親族とは6親等内の血族と3親等内の姻族までです。かなり広い範囲ではありますが、「生計を同じくしていること」も条件の1つです。生計が同じであれば扶養控除の場合は同居は必須の条件ではありません。
次に、「年間の合計所得が38万円以下であること」です。給与所得のみの場合は103万円以下の場合となります。昨今耳にすることが増えた103万円の壁の1つがこれです。次に、「個人事業主の場合は家族を従業員として雇用していないこと」が上げられます。
次に「16歳以上であること」です。15歳以下の子どもは扶養控除には適用されません。理由は、医療費助成や子ども手当てがあるためにそれと引き換えに対象外となっています。最後に「重複して控除をされていないこと」です。1人を扶養するのは1人までなので、重複して2人以上の控除をうけることはできません。
②配偶者控除の条件
配偶者控除を受けるのは扶養控除の条件を満たしていて、更に次からの条件を全て満たしている場合となります。まず「籍を入れていること」です。今のところは同姓婚や事実婚では配偶者控除を受けることはできないのが現状です。また、配偶者控除も1人が重複して2人以上を扶養することはできません。
次に「配偶者の年間の合計所得が85万円以下の場合、給与所得の場合は年収150万円以下である場合」です。扶養控除は上限が103万円なので、扶養控除よりも配偶者控除の方がかなり引き上げられています。
配偶者控除の改正
2018年度からの改正で配偶者の所得制限が引き上げられました。この背景には配偶者の労働促進効果の期待があります。配偶者控除があるために所得の調整が必要になり労働時間を減らすパートタイム労働者が多くいるためです。
そのために、配偶者控除の廃止も検討されましたが、この制度を全て撤廃してしまうと税負担が増えてしまう家庭も多いことから配偶者控除の廃止は見送りとなり、所得制限が引き下げられることになりました。
配偶者控除の見直しによる変更点
変更点として、配偶者控除の所得制限が103万円から150万円に引き上げられました。この150万円というのはパートタイマーとして1日6時間を週5日働いた場合の年収を少し上回る程度の金額です。
また、控除を受ける給与所得者の合計所得金額が1,000万円を超えないという条件も追加されました。申告をする本人の収入が多いと、控除がうけられないので注意が必要です。
またサラリーマンの場合は、基礎控除や給与所得控除があるので実際に控除を受けられなくなる給与の年収は1,220万円以上になります。
扶養控除・配偶者控除の控除金額
この2つの控除の違いは控除金額にもあり、扶養控除・配偶者控除のそれぞれ控除をうけられる年収の制限にも違いがあります。年収の制限を超えてしまうと配偶者特別控除に切り替わり、収入に応じて段階的に控除額がさがっていきます。それらをしっかりと確認し、控除がもれなく受けられるように確認した上で、勤務時間等を調整することが必要になってきます。
①扶養控除・年収
扶養控除は年間の合計所得38万円以下であるか給与所得のみの場合は年収103万円以下であることが控除の条件となります。扶養控除は扶養する対象の年齢や状況などによって控除額が変わってきます。
16歳未満の場合は0円・16歳~19歳未満の場合は38万円・19歳~23歳未満の場合は63万円・23歳~70歳未満の場合は38万円・70歳以上で別居の場合48万円・70歳以上で同居の場合は58万円と細かく設定されています。
②配偶者控除・年収
配偶者控除は配偶者の年収が85万円以下・給与所得の場合は年収が150万円以下である場合に適用されます。これに該当すれば、年齢にかかわらず一般の控除対象配偶者の場合は一律で38万円の控除をうけることが出来ます。103万円を超えると「配偶者特別控除」に切り替わり所得金額に応じて段階的に控除される額は減っていく仕組みになっています。
控除を意識した働き方とは
扶養控除や配偶者控除を意識して改めてこれからの働き方を考えてみることも大切です。いくら個人の収入を増やせても、結果的に世帯全体で見た場合の手取りが減ってしまうこともあります。しっかりと自分の家族構成と控除の条件を確認した上で、一番納得のいく働き方を考えてみましょう。
子どものアルバイトは103万円を超えない範囲で
子どもがアルバイトをして収入を得る場合、年収103万円を超えると扶養から外れてしまいます。19歳から23歳の間は特に控除額が多く設定されていますので、よく検討してから働き方を考えましょう。
また、年収が100万円を超えると翌年に住民税を払わなくてはなりません。103万円を超え扶養から外れると、さらに所得税も課せられます。もしも130万円を超えてしまうと社会保険を自分で払わなければならなくなってしまうので注意が必要です。
扶養控除・配偶者控除は重複可能?
扶養控除・配偶者控除は世帯の合算で受けることができます。1人につき扶養にできるのは1人という点で重複は出来ないということはかわりませんが、その点を守れば家族構成によってはかなり所得税や住民税を低く抑えることが出来ます。とても金額の大きな控除ですから受けられる控除は最大限に受けられるようにしましょう。
重複した控除額の例
ある家庭の扶養控除と配偶者控除を重複させた場合の合算の一例を上げると、扶養内の妻と大学生の子どもと高校生の子どもと別居の70歳以上の親が1人いる場合ですと、控除額は38+63+38+48で187万円の控除を受けられる計算になります。
また、所得が高い人が扶養をした方が控除額は大きいので夫と妻、収入が多い方の扶養に入っていた方が良いです。所得が多ければ多いほど、住民税や所得税の額が上がるからです。夫婦の収入が同じ位の場合には、子どもが2人でしたら夫婦で1人ずつ扶養に入れた方が世帯で払う税金の合計が低くなる事もありますので確認が必要です。
扶養控除と配偶者控除は対象となる人が違う
扶養控除と配偶者控除は似ているようで対象となる人に違いがあります。配偶者控除は籍を入れた配偶者だけが受けられる控除で、税制面で扶養控除よりも有利なことが多いのが特徴です。扶養控除は配偶者以外の人が受けられる控除で、同居をしていなくても生計が一緒であれば適用されます。
この2つの控除は控除額も多く手取りを大きく左右するので、受けられる控除を最大限にいかした働き方を毎年意識することが大切です。