犬食いの意味
楽しい食事をする際のマナー、あなたは守れていますか?食事は楽しく美味しく食べることを大切にしたいものです。ところが、楽しく過ごしたい食事の場を乱してしまう行為があります。食事のマナー違反です。
食事中のマナー違反の一つに「犬食い」という行為があります。これは一緒のテーブルで食事をする人を不快にさせてしまう行為です。不快な食事をしたところで胃は満たされても心は満たされません。
食事のマナー違反は周りの人の不快な食事を助長してしまう行為と認識しましょう。では、具体的に「犬食い」とはどんな行為なのでしょうか?次を見てきましょう。
器を持たずに顔を器に寄せる食べ方
犬食いとは「食卓に並べられている食器に直接顔を近づけて食べる行為」です。ペットの犬が餌入れからドッグフードを食べる姿に似ていることから形容された食べ方です。犬食いは立派な食事のマナー違反であり、はたから見ても違和感を覚える光景です。
では、一般的に違和感を覚える犬食いのような食事の仕方をするに至ったのは、どのような原因・心理的背景があるのでしょうか。直し方も含めて見ていきましょう。
犬食いになる原因
犬食いをするに至った原因は様々ありますが、ここで、よくありがちな原因を挙げていきます。なぜ犬食いをするに至ったのか、「家族が犬食い」「スマホを片手に持ちながらの食事」など、様々な外的要因を明らかにすることで、各々ごとに的確な直し方を見つけましょう。
①家族が犬食い
多くの人が食事マナーを学ぶ一番の場は「家族との食卓」であることが大半ではないでしょうか。食事は基本的に毎日摂ります。そんな家族との毎日の食卓での過ごし方は、食事マナーの確立にも多くの影響が出ています。
では、両親が犬食いの食べ方をしていた場合の影響はどうでしょうか。子供は親から多くのことを学び取ります。それは「直接言葉で伝えなくても」です。親の一挙動を子供は真似をして成長します。
「食べ方」も同様です。親が犬食いをしているところを見れば「犬食い=正しい食べ方」という考え方に自然となってしまいます。犬食いをしている自分は間違っていないという安心する心理が働くのでしょう。
②食べにくい料理・持ちにくい皿
食事をしていれば、普段食べ慣れていないもの、また滑りやす食べ物など、食べにくい料理と対峙することもあります。そういった場面で、どうしても食べ物が摘めないといった理由から食器に顔を近づけて犬食いをしてしまうこともあるでしょう。
また、持ちにくいお皿で食事をする際も同様に食器に顔を近づけて犬食いをしてしまうことがあるかもしれません。
③スマホを片手に持っている
最近は一人で食事をする際にスマートフォンを片手に食事をする人が増えています。この原因はガラケーからスマートフォンに移行し、ディスプレイを直感的に触って色々なコンテンツを楽しめるようになった背景からでしょう。
片手でスマートフォンを持ちながらの食事は必然的にもう一方の片手でお箸を持つことになります。両手が塞がり、顔を食器に近づけなければならなくなります。結果として犬食いのような食べ方になってしまいます。
④箸を上手に使えない
お箸を上手に扱えないと、お箸で摘んだ食べ物を口に運ぶ前にこぼれ落ちてしまいます。お箸を上手に扱えない人は、「食べ物をこぼすものか」という心理が働き、徐々に前傾姿勢となっていきます。結果的に犬食いの食べ方になってしまいます。
また、お箸で摘んだものをこぼしたくないという心理から、結果として「刺し箸」をしてしまうケースがよくあります。刺し箸はお箸で食べ物を刺して食べる食べ方です。これも食事のマナー違反になりますので気をつけましょう。
⑤椅子・机の高さがあっていない
机の高さも大切で、テーブルの高さが椅子とあっていない場合、高い位置へ食べ物を運ばなくてはならないため、食べ物を口へ運ぶ間に落としてしまう可能性が高くなってしまいます。そうならないように前傾姿勢となり、結果的に犬食いの食べ方になってしまいます。
また、座っている位置からテーブルまでの距離も同様なことが言えます。テーブルと体の距離はおよそ拳一つ分の距離が適正な距離と言われていますが、この拳一つ分の距離より離れていると食器から口まで食べ物を運ぶ間に落としてしまう可能性が高まります。
犬食いをする心理
犬食いをする人はどういう心理でその行為をしてしまうに至ったのでしょうか。せっかくの楽しい食事の場を嫌な雰囲気にしてしまう犬食い。犬食いを行ってしまうようになった心理的原因はどこにあるのでしょうか?心理的原因を探るとともに、直し方も一緒に探っていきましょう。
①子供の頃から違和感なく成長してきた
子供の頃、両親と食事をする中で家族が自然と犬食いをしている場合は、犬食いというマナー違反に対して違和感を覚えることができません。自分は自然に振舞っているという心理状況でしょう。
毎日自然と行っている行動一つ一つに対して意識を向けて生活している人はそうはいません。当然食事は毎日しますので、その所作一つ一つに意識を向けていない方が自然です。
子供の頃から違和感なく反復的に行ってきたことは、意識的に改善をしないと問題認識すら難しいのです。直し方は、「自分自身が犬食いをしている」という認識を持つことでしょう。犬食いをしている自分が恥ずかしくて嫌だという心理状況を作ることが大切です。
②異性の目を気にする必要がなかった
人間が成長するにつれ、恋愛という一大イベントが発生するでしょう。好意を寄せている相手に対し、お近付きになりたい、少しでも良く見られたいという心理が自然と働くものです。
この相手のことを想う時というのは、「自分の今までの行いが恥ずかしいものでなかったかどうか」を客観的に見直すことができるチャンスでもあります。
しかし、こういった異性の目を気にすることが無く成長すると、自分を見直すチャンスを逃すことになり、犬食いをしていた人はそのマナー違反に気づくことができないままになってしまうのです。積極的に異性にドキドキする心理をうまく使い、犬食いを矯正しましょう。
犬食いがマナー違反の理由
ここまで犬食いという食べ方に対するネガティブなポイントをお話してきました。しかしながら、なぜ食事中に犬食いをすることが一緒に食事をする周りの人たちをを不快にしてしまうのでしょうか?その心理的要因を明らかにし、なぜ犬食いの改善をしなければならないのかを明確にしましょう。
①日本では器を持って食べる習慣がある
日本の食卓に並べられる食器は主に「お茶椀や丼」「小鉢」「什器」「メイン料理の皿」などがあります。
メイン料理の皿を持って食べることはマナー違反になりますので、これは持たないことが正解です。一方、「椀や小鉢、什器」などについては、きちんと持って食べることがマナーとなります。
このように、食器毎に「持って食べるもの」「持たないもの」というルール決めがされています。食器を持たずに食器に顔を近づけて食事をする犬食いに対して、「ルールを無視する行為」という心理が働いてしまいます。結果としてマナー違反となるのです。
②食事を用意した人への礼儀
日本の美徳には感謝という考え方が大切にされます。当然食事においても感謝の気持ちは大切です。食事を作ってくれた人に対する感謝、食べ物に対する感謝など、きちんと咀嚼して味わうことが大切です。
また、感謝は姿勢で示すことで伝わります。食事であれば「いただきます」や「ごちそうさま」の一礼。または食べ方も感謝の姿勢が現れるところでしょう。犬食いをしていては、食事を作ってくれた人や食べ物に対しての感謝は伝わらないでしょう。
正しい食べ方と犬食いの直し方
食事は正しい食べ方を覚えることで、一緒に食事をする人との軋轢を産まずにすみます。「自分一生一人で食事するからいい」と言う方もいるでしょうが、人間誰しも一生一人きりで食事をすることはないでしょう。直し方を放棄する理由にはなりません。
普段から食事のマナーを気にせずにいると、いざ正しい食事のマナーを実践したくてもできません。日頃から正しい食べ方を意識することが犬食いをはじめとする食事のマナー違反を改善する第一歩です。では具体的な犬食いの直し方を見ていきましょう。
①自分の食べ方を客観的にみてみる
最初の直し方は自分自身を客観的に見ることです。自分自身を見ることで、それまで全く意識していなかった恥ずかしい行動や言動が明るみになり、「自分は恥ずかしいことをしていた」という認識ができるようになります。
自分の中で「どうして犬食いなんて恥ずかしいことをしていたんだ。一刻も早く直さないと。」という強いモチベーションを持つことで犬食い矯正への強い意思が確立されます。自分の嫌な部分を直視するのは心理的ストレスも大きいですが、「犬食いをする自分は嫌だ」と自分を強く律することが大事になる直し方です。
②椅子・机の高さの調整
食事をするテーブルと椅子の高さはあっていますか?「テーブルの天板までの高さ」と「椅子の座面までの高さ」を差し引いた高さを「差尺」と言います。この差尺は一般的に27〜30cm程が食事を摂りやすい高さとされています。
差尺が適正範囲より高い(30cm以上)と食器が近過ぎて食べづらく、逆に差尺が適正範囲より低い(27cm以下)と食器が遠過ぎて食べづらくなってしまいます。物理的に犬食いを矯正する直し方といえます。
また、子供と大人が同じテーブルで食事をすると、この差尺を適正にすることが難しいです。なので、子供用の高さを細かく可変できる椅子を使って食べやすい差尺にしましょう。
③使いやすい箸にする
「お箸なんてどんなものでもそこまで差はないでしょ?」という方もいるでしょう。しかし、犬食いをしてしまう人はこのお箸の使い方がそこまで上手でない方が多いです。
「お箸から摘んだ食べ物が落ちてしまう」。それ故、食べ物を早く口へ運ぶために食器に顔を近づけてしまうのです。原因は明白なので食べ物を摘みやすいお箸を使い、「食べ物が落ちない」という心の余裕を作ることで犬食いを矯正しようという心理的なアプローチです。
昨今は、「こんなにお箸の種類があるのか」というくらい「○○専用」と名のつくお箸があります。犬食いを矯正する時は、お箸の使い方に意識を向けてみてはどうでしょうか。
④背筋を伸ばして食べる
背筋をきちんと伸ばして食事をすることも大切です。背筋が丸まって前傾姿勢になると、犬食いの食べ方になってしまいます。
意識して背筋を伸ばしても、気がついたら元の姿勢に戻ってしまう。意識だけでなく、実際に広背筋を鍛えたり、ストレッチをすることで姿勢をただすことを目標としましょう。直接的な直し方ではないですが、健康面でも良い効果を期待できる直し方です。
また、「テーブルと椅子の高さ」で話ましたが、差尺を調整して姿勢を直すことも犬食い改善に効果的ですので試してみてはいかがでしょうか。
その他のNGマナー
犬食いは食事のマナー違反という話をしてきましたが、他の食事のマナー違反はどのようなものがあるのでしょうか?
「食事のマナーを意識しすぎて窮屈な食事になってしまうよ」と感じる方もいるでしょうが、マナーが確立している人からしたらマナー違反をすることが同様に苦痛なのです。
つまりどちらの面を普通としているかで、その逆をすることが窮屈・苦痛となるわけです。そうであれば正しい食べ方を普通としてしまえば、何のストレスもないことになります。
では、以下よりどんな食事のマナー違反があるのでしょうか。こちらも直し方も一緒に見ていきましょう。
①音を立てて食べる
咀嚼音を出して食べる、これは食事中のマナー違反の王道でしょう。俗にいう「クチャラー」です。
原因は食べ物を噛む時に口を開けて咀嚼するがために「クチャクチャ」という音が出てしまいます。直し方としては、単純に口を閉じて噛めば周りに漏れる咀嚼音はかなり軽減されます。
では、そもそもなぜ食事中の咀嚼音を不快に感じるのでしょうか?この心理が働くのは「音嫌悪症(ミソフォニア)」という脳の症状に原因があります。他人の咀嚼音に対し、脳の「島皮質前部」という部分が異常に興奮した状態になってしまう症状だそうです。
この症状が出ている人がどこにいるか、外見では判断できません。軋轢を未然に防ぐ意味でも、咀嚼音を立てずに食事をするのは周囲への気配りとして大切なことでしょう。
②口に食べ物が入ったまま喋る
口の中に食べ物が入ったまま喋ることもマナー違反にあたります。咀嚼途中の食べ物を相手に見せてしまえば、嫌な気持ちにさせてしまうでしょう。また、食べ物が口から飛び出てしまう危険性もあります。
直接的な直し方ではないですが、会話が楽しくなってしまい「食べ物を食べながらでもおしゃべりがやめられない」ということであれば、口に手を当てる等の気遣いで少しでもマナー違反を軽減できるでしょう。
③箸のマナーを守っていない
お箸の正しい使い方がきちんとできているかどうかは食事のマナーでとても大切なことです。一般的にお箸の使い方でマナー違反とされるのは、「刺し箸」「寄せ箸」「咥え箸」「握り箸」などでしょう。
各マナー違反の内容は以下の通り。刺し箸は「箸を料理に突き刺して食べる所作」、寄せ箸は「遠くの食器を手元に引き寄せる所作」、咥え箸は「箸を口にくわえたまま手で食器を持つ所作」、握り箸は「幼い子供のようにお箸を握るようにして食べる所作」。
どのマナー違反も、長年の食事で「マナー違反をマナー違反だと認識していない」ことが原因でしょう。効果的な直し方は、どういうお箸の使い方がNGなのかを学び、恥ずかしくないお箸の使い方ができるように矯正しましょう。
④テレビ・スマホに夢中
犬食いの原因ともなるスマホを見ながらの食事、またテレビを見ながらの食事もマナー違反にあたります。
テレビがテーブルの正面にない場合、必然的におへそがテーブルとは別の方を向いてしまい、お行儀の悪い不恰好な食事となります。もし一緒に食事をしている人がいる場合には会話がなくなるといった弊害もあります。
子供が犬食いをしてしまう
子育て中の方にとって、犬食いをしてしまう我が子の姿を見て「このまま犬食いが治らなかったらどうしよう」と不安に駆られているのではないでしょうか?
子供が食事中に行儀の悪いことをしたらきちんと注意をすること、根気よくできていますか?「犬食いをしない」の他にも「姿勢良く食べなさい」「手を器に添えなさい」「飲み込む前に口を開けて喋らない」など、食事のマナーに対しての注意は次々に出てきます。
しかしながら子供は毎度同じことを繰り返しては注意され続けています。さながら親と子供の根比べ合戦です。
子供の犬食いは結構ありがち
犬食いの直し方で、「テーブルの差尺」や、「食べやすいお箸を選ぶ」などの話をしましたが、子供はテーブルで食事をする際に高さの調整が親の感覚とは異なり、ベストな高さをしっかりと親が見極めなければなりません。
また、子供用のお箸は「食べ物を摘みやすいお箸」ではなく「子供でも扱いやすいお箸」のコンセプトのものが多いので、お箸できちんと口まで食べ物を運ぶことが難しく、犬食いになってしまいます。食べ物を掴みやすい形状にしてあげることも大切です。
これらの理由から、同じ食卓であっても子供の視点に立てば、親がしっかりとサポートをしてあげないと犬食いをしてしまう原因が沢山あるのです。
子供がよくやる犬食い以外のNGマナー
子供が食事の場でよくやるマナー違反は犬食い以外にもあります。「ごちそうさまの前に席を立ってしまう」「肘をついて食べる」などはよくあるマナー違反でしょう。
落ち着きがないことは子供にとっては普通なことですが、外食に行って、子供が廊下をバタバタ走っていたら危ないですよね?誰かを怪我させてしまったら、「子供だから」という言い訳は通用しません。きちんと「ごちそうさま」までは席に座っていることは覚えさせるべきです。
肘をついてしまうのは、先述したテーブルと椅子の差尺が問題でしょう。差尺を見直して改善しましょう。
善し悪しの判断を子供に伝える
子供は自分がしていることに対しての「善し悪し」のものさしがありません。自分がしている犬食いは善いことなのか、悪いことなのか、これは親がしっかりと示してあげなければ子供はいつまで経っても自立ができないでしょう。
食事中に「自分がしていることが周りを不快にしてしまうことなのか」の判断は到底無理でしょう。なので親は「これはいけないことだよ」と、根気よく教えていかなければいけません。
子供も頭ごなしで納得できないことには反発する
もちろん、子供も大きくなってくれば「納得」を求めます。「なんで犬食いがダメなの?」とちゃんと聞いてきます。食事のマナーは少々難しいことかもしれないですが、子供の理解度に合わせてきちんと納得できる理由を添えて注意してあげることが大切です。
親も完璧超人ばかりではないでしょう。しかし子供からしたら親は絶対的な存在です。まだ右も左も分からない子供にとって、親の考えや行動はものすごく重要な成長指針だと言えます。
子供に食事のマナーを教えてもすぐには守れない
「善しとする食事のマナーはこれだよ」「これはいけない食事のマナーだよ」ときちんと子供に伝えましょう。
ただし、すぐに犬食いは直りません。直らなくても「それが普通」と自分に言い聞かせて根気よくいきましょう。できるできないの結果ではなく、子供の善し悪しのものさしを形成してあげることが大切です。
犬食いは器を持たずに顔を近づけて食べること
犬食いは、言葉の通り犬が餌を食べる格好と同じような食べ方です。食事の際のマナー違反であり、周りへの配慮が足りていない食べ方と言えるでしょう。
犬食いの直し方は、その原因によって改善のアプローチが違います。今まで述べてきたように、どうして犬食いをするに至ったのか、その原因から効果的な改善アプローチをしていくことが大切です。
そして、子供が犬食いをしてしまう原因は、子供の目線に立って食卓の見直しをすること、親の寄り添いが大切になります。
美味しい食事を楽しむには大切なマナーがあること、ご理解いただけましたでしょうか?犬食いをすることで不快に感じる人もいます。しっかりと直し方を学び、周囲への配慮を忘れずに正しい食卓のマナーを心掛けましょう。食事は美味しく楽しく食べましょう。