住民税非課税世帯とは?収入などの条件やメリット・デメリットも解説!

住民税非課税世帯とは?収入などの条件やメリット・デメリットも解説!

保育料の減免や国民健康保険料の免除など何かと恩恵がありそうな住民税非課税世帯ですが、収入などの条件について聞かれて答えられる人は多くないでしょう。そこで今回は、住民税非課税世帯の条件とは何か、住民税非課税世帯のメリット・デメリットなどを紹介します。

記事の目次

  1. 1.そもそも住民税とは?
  2. 2.住民税非課税世帯とは?
  3. 3.住民税非課税の条件
  4. 4.住民税非課税世帯はどれくらいある?
  5. 5.住民税非課税世帯の所得水準の目安は?
  6. 6.住民税非課税世帯のメリット
  7. 7.住民税非課税世帯のデメリット
  8. 8.住民税非課税世帯の手続き方法
  9. 9.住民税非課税を申告する際は所得合計額を明確にしておく

そもそも住民税とは?

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住民税とは、住民であることにより課税される地方税であり、都道府県民税と市町村民税の2種類があります。住民税は個人にも法人にも掛かります。よく住民税は「地域の会費的性格」と言われますが、町内会の会費を地域に拡大したものとイメージしてもらえばよいと思われます。 

これらの「会費」は市町村や都道府県が住民向けに行うサービスの原資であるので、住民税は基礎的で極めて重要な税金だと考えられています。

年間の収入に応じた税金

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住民税にはいくつかの「割」が存在します。これらの「割」が合体して一つの住民税を構成しています。メインとなる住民税の「所得割」は基本的には年間の収入に応じた税金であるといえますが、このほかにも「均等割」「利子割」「配当割」「株式等譲渡所得割」が存在します。

住民税の構成要素・均等割

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「均等割」とは書いて字のごとく、均等に掛かる税金です。個人の場合は、標準的には都道府県民税が1,500円、市町村民税は3,500円となっています。法人の場合は、資本金等の額に応じて、都道府県民税が2万円~80万円、市町村民税が5万円~41万円(従業員数50人超の法人は12万円~300万円)となっています。

これらはあくまで法律が定める「標準」であり、自治体の条例で金額を上乗せすることができます。多くの都道府県で森林環境税と称して、都道府県民税の均等割に超過税率が掛かっているので、実際はこれより多くの「均等割」を納税していると考えられます。

住民税の構成要素・所得割

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住民税の「所得割」とは、所得に応じて課される税金であり、課税所得に10%が乗じられて算出されます。この10%の内訳は都道府県4%、市町村6%ですが、指定都市(横浜市、名古屋市、大阪市などの大都市)に住所を有する者については、都道府県2%、市町村8%となります。

所得割のベースとなる所得は、所得税の所得とほぼ同じです。所得税で確定申告を行えば、住民税の申告は基本的には不要です。

住民税非課税世帯とは?

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住民税非課税世帯とは、世帯の全員が住民税非課税である世帯を指します。ここでいう非課税とは、計算の結果住民税の税額がゼロであるということではなく、はじめから住民税(均等割・所得割)を課すことができないものとして法律(条例)で定められているものを表します。

世帯全員が住民税非課税となる状況

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世帯全員が住民税非課税となるのはいったいどういう状況でしょうか。世帯全員が地域の会費を一切払わなくてもよいとされている世帯ということになります。一般的には、憲法に定める最低限度の生活の保障の観点から税制面での援助が必要であると考えられる程度の低所得世帯がそれに当たるとされています。

住民税非課税の条件

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しかし何でもかんでも会費を免除していたら会費不足で住民サービスは低下し、地域経営は成り立ちません。多くの住民が会費を支払っていることを考慮すると、住民税非課税は他の納税者からの納得が得られるものでなければいけません。では、具体的にどのような条件が設けられているのでしょうか。

住民税非課税の条件は3つ

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住民税が非課税となる条件は3つあり、以下のいずれかに該当すれば非課税です。一つ目は「生活保護法による生活扶助受給者」です。二つ目は「障害者、未成年者、寡婦(寡夫)で、前年の合計所得金額が125万円以下のもの」です。

三つ目は「均等割のみを課すべき者のうち、前年の合計所得金額が一定の基準に従い市町村の条例で定める金額以下の者」です。この金額は多くの市町村では国の基準どおりになっており、35万円(基本額)に世帯人員数(本人、控除対象配偶者、扶養親族)を乗じ、これに控除対象配偶者又は扶養親族がいる場合には21万円(加算額)を加えた額となります。

基本額及び加算額は、生活保護基準の級地区分に応じて変動します。上記は1級地の例であり、2級地(1級地の0.9倍)であれば基本額31.5万円、加算額18.9万円、3級地(1級地の0.8倍)は基本額28万円、加算額16.8万円です。

住民税の非課税限度額

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このように住民税の非課税限度額は、生活保護と連動していますが、均等割と所得割では別々に基準額が設定されています。均等割は前年の生活扶助基準額を、所得割は前年の生活保護基準額を基にしており、均等割より所得割の方が基準額が高めになっています。

つまり、所得割は納めなくてよいが、均等割は納める必要がある所得層が存在しているということです。

住民税が非課税になる例

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例えば、横浜市(1級地)に夫婦と未成年(所得無し)の子供2人がいるケースを考えます。夫婦が生活扶助を受けていれば、上記条件の一つ目と二つ目に該当し、均等割・所得割非課税となります。

一方、夫婦が生活扶助を受けていないとすると条件の三つ目の所得を考える必要があります。つまり、夫の前年の合計所得が161万円(35万円×4+21万円)以下であれば、住民税非課税世帯に該当します。給与年収ベースでいうと夫の給与年収が255.7万円以下であれば、住民税非課税世帯に該当します。

住民税非課税世帯はどれくらいある?

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住民税非課税世帯はどれくらいあるのでしょうか。ちなみに2018年の「住民基本台帳による人口、人口動態及び世帯数調査」によると、日本には約5,800万世帯が存在しています。日本の人口は年々減少していますが、世帯数に関しては年々増加しているという傾向を示しています。

国民生活基礎調査から推計

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厚生労働省の平成28年国民生活基礎調査からは、住民税非課税世帯は約1,394万世帯数存在していると推計されます。また、住民税世帯非課税の対象者数は3,100万人程度という推計がなされており、ここから推測するともう少し1,500万世帯程度は存在しているという推計も成り立ちます。

住民税非課税世帯の所得水準の目安は?

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住民税非課税世帯の所得水準は、世帯の構成や居住地の級地区分によって異なります。以下、所得基準が国の基準どおりであるとして、給与所得者と公的年金等受給者の場合の1級地における所得水準の目安がどうなっているかをご紹介します。

非課税限度額(所得ベース)は、2級地の場合は1級地の金額の0.9倍、3級地の場合は1級地の金額の0.8倍に相当するので、居住市町村の級地区分に応じて換算してみてください。

給与所得者の場合

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単身世帯は所得35万円以下です。給与年収ベースでは100万円以下です。夫婦のみ(配偶者を扶養)のケースでは、所得91万円以下で、給与年収ベースでは152万円以下です。

夫婦と子供1人(配偶者と子供を扶養)のケースでは、所得126万円以下で、給与年収205万円以下です。また、夫婦と子供2人(配偶者と子供を扶養)のケースでは、所得161万円以下で、給与年収255万円以下です。

給与所得控除額が一定の計算式によっていることから、所得と収入の関係は一定の計算式で表現できます。所得が108万円以下の場合は、0.6で割り戻せば収入が算出され、所得が108万円を超え234万年以下の場合は、18万円を加えた額を0.7で割り戻せば収入が算出されます。

公的年金等の受給者の場合

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公的年金等は雑所得に該当し、給与所得よりも控除の額が大きくなっています。したがって、年金受給者は、給与所得者と所得の限度額は同じでも、年収ベースに換算しなおすと、違いが生じてきます。また、年金受給者が65歳未満か65歳以上かでも金額が異なります。

65歳未満の単身世帯は年収105万円以下、夫婦(配偶者を扶養)は171万円以下です。所得が60万円以下の場合は70万円を加え、所得が60万円を超え270万円以下の場合は37.5万円を加えて0.75で割り戻せば収入が算出されます。

65歳以上の単身世帯は年収155万円以下、夫婦(配偶者を扶養)は211万円以下です。所得が210万円未満の場合、120万円を加えれば年収が算出されます。

住民税非課税世帯のメリット

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住民税非課税世帯のメリットは何でしょうか。住民税非課税世帯は最低保障の観点から給付を受けられたり、各種負担を免除されたりすることがあります。ここでは、主なメリットをいくつか紹介します。ただし、この点は自治体ごとに減免の取り扱いが異なり、恩恵も多種多様にあることから、お住まいの市町村に確認することをおすすめします。

臨時福祉給付金が受けられる

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臨時福祉給付金とは、平成26年の消費税の引き上げによる影響を緩和するため、住民税(均等割)が課税されない者を対象に、暫定的・臨時的な措置としてなされた給付です。したがって、恒久的な制度ではなく、現在は支給も終了しています。今後の消費税再増税時に実施される予定は今のところありません。

国民保険の免除

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国民年金は、生活保護受給者等については保険料が全額免除(法定免除)されています。また、住民税非課税世帯については、申請により保険料が全額免除されるというメリットがあります。ただし、年金保険料の支払いが免除されるということは、将来の年金受給額も少なくなるということに注意が必要です。

NHKの受信料が免除

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NHKの受信料が免除されるのもメリットです。ただし、全額免除されるには住民税非課税世帯の身体障害者、知的障害者、精神障害者である必要があります。また、手帳の交付を受けているなどの条件も満たす必要があります。NHKの受診料の免除の対象・適用条件は、「日本放送協会放送受信料免除基準」に定められています。

国民保険料が免除

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国民健康保険料も税と同様に低所得者世帯に対する軽減措置が用意されています。多くは、住民税非課税世帯をベースに、一定の所得金額以下の者にその所得に応じて軽減措置を設けています。住民税非課税世帯の場合は、2割~7割の軽減措置を受けられますが、自治体によって取り扱いが異なるので、住んでいる市町村に確認する必要があります。

 医療等の自己負担額の免除  

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国民健康保険で受けられる給付には、診察や治療、薬の処置、入院・看護などがありますが、給付を受けるときには自己負担が発生します。住民税非課税世帯はこの自己負担が軽減・免除されていることが多く、一般世帯よりも優遇されています。これも大きなメリットです。

例えば、70歳未満の高額療養費は、標準報酬月額26万円以下の者は57,600円の自己負担限度額であるところが、住民税非課税世帯は35,400円まで軽減されています。

住民税非課税世帯のデメリット

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上記のとおり、住民税非課税世帯は世帯の構成員全員が非課税の要件を満たす必要があります。したがって、それを満たそうと思うと、条件を満たさない者を世帯から除外することが必要です。これを「世帯分離」といい、一つの住民票上の世帯を2つ以上の世帯に分けることです。これにより、非課税を満たしている者だけの世帯を作ることができます。

各種控除が適用されない

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しかし、世帯分離にはデメリットが存在します。世帯分離に伴い、生計を別々にしてしまうと、税法上の各種控除で要件としている同一生計を満たさなくなります。これにより配偶者控除や扶養控除から外れてしまい、結果、所得税の負担が増すことにもなるので注意が必要です。

収入基準が居住地域で異なる

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上記のとおり、住民税は地域の会費的性格を有しており、それが非課税であるかどうかは居住地域によって異なり一律ではありません。別の地域に移り住んだ結果、住民税非課税世帯ではなくなったといったケースも想定されるので、級地別の収入基準をしっかりと確認しておく必要があります。

住民税非課税世帯の手続き方法

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住民税非課税世帯になるには特別の手続きが必要なわけではありません。一般の場合と同様に市町村に前年の所得等に関する申告を行えばよいだけです。申告は3月15日までに行う必要があります。なお、所得税の確定申告書を提出している者や、勤務先から給与の支払い報告書の提出がなされている場合には申告は不要です。

住民税非課税の手続きは6月1日から実施

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住民税の徴収は前の年の所得を基準に6月1日から始まります。申告期限が3月15日までですが、そこから市町村の税務担当者において課税対象者を把握し、市町村民税の税額を決定する作業が行われます。そして6月1日までには税額が決定され、給与等から特別徴収されるという仕組みです。

つまり、この手続きの流れの中で、税額決定の前に非課税であることが認められれば、住民税を徴収されることはないことになります。

手続きには非課税証明書が必要

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住民税が非課税であることが決定されたら、非課税証明書を入手しましょう。この非課税証明書は各種の補助や国民健康保険料の減免、保育料の免除などの手続きの添付書類とされる重要書類です。非課税証明書の交付には、交付申請書と本人確認書類があれば容易に入手できます。

住民税非課税を申告する際は所得合計額を明確にしておく

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今回は住民税非課税世帯について紹介しました。まずは居住地の生活保護の級地区分と自分の収入・所得を把握し、住民税非課税に該当していないかどうか確認してみることが必要です。住民税非課税世帯になると、財政的な負担軽減が大きく、家計のやりくりもスムーズになりますので、該当する場合はぜひしっかりと手続きしましょう。

たけかずや
ライター

たけかずや

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