退職金とは?
退職金とは、社員が会社を退職する際に支給される賃金のことになります。一般的には定年退職で貰えるイメージが強くありますが、定年だけが支給条件ではありません。また、正規社員しか貰えないとのイメージもありますが、非正規社員でも支給されることはあります。
このように、退職金は頻繁に支給されるものではありませんから、イメージが先行してしまい、誤った解釈をしてしまうことも少なくありません。そこで、退職金の支給条件について解説します。
企業の規定によって支給される
退職金については、法律で決まったルールがあるわけではありません。つまり、企業によって支給の有無や支給率が異なります。厚生労働省の調べによると、支給の有無については、従業員が1,000人を超える企業では9割を超える導入率となっています。
一方、30人から99人までの企業では7割を少し超える程度の導入率ですから、大きな企業になるほど、退職制度が導入されている確率は高いと言えます。
定年で無くても貰える
退職金と言えば、定年退職のイメージが強いため、ともすれば定年まで勤めなければ支給されないと思い込んでいる人も少なくありません。
しかし、前述のとおり、退職金の支給については各企業の規定に委ねられていますから、定年で無くても貰える企業が大半です。特に、バブル後の不況時においては、早期勧奨退職が推奨され、退職金が上積みされることが多くありました。
退職金と退職共済金の違いとは?
退職金制度には、いくつかの種類があり、その代表的なものが「退職金」と「退職金共済」になります。社員にとって退職金は、退職後のライフプランに大きく影響を及ぼすものです。それだけに、会社としては確実に退職金を支給する義務があります。
一方で会社の経営は、長い間には良い時期もあれば、悪い時期もあります。したがって、安定的に退職金を支払える制度設計が必要なのです。ここでは、安定的に退職金を支給する制度である、退職金と退職共済金の違いについて解説します。
退職金制度には種類がある
退職金には「退職金」と「退職金共済」の2つがあります。退職金とは、会社から直接支給される賃金になります。一方、退職金共済とは、会社が共済に加入して、共済制度を利用して支給される制度です。退職金のメリットは、その原資を会社でプールしているので、社内で流用できることです。
退職共済金は共済を通じて支給される
退職金共済のメリットは、退職金の原資を積み立てることによって、会社の経営状況に関係なく、安定的に退職金が支給されることです。
退職金共済には、商工会議所が運営する「特定退職金共済」と、中小企業退職金共済が運用する「中小企業退職金共済」などがあります。運用する共済組合を一つに絞る必要はなく、会社によっては、これら2つの組み合わせて支給されることもあります。
企業によって退職金の有無があるので注意!
退職金は、全ての企業で支払われるものだと思われがちですが、退職金制度のない会社もあります。また、正社員には支給されても、非正規社員には支給されない会社もあれば、退職金がなくとも、毎月の給与に上乗せされている会社もあります。したがって、就職する際には、退職金の有無や金額などを確認しておくことが大切です。
退職金の支払いは法律で定められていない
退職金の支給については、法律でルールが定められているわけではありません。したがって、退職金の支払いは各企業で異なります。ただし、退職金の有無や支給率については、経営陣に全てが委ねられているわけではありません。
退職金の支給内容にについては、社員の過半数を占める労働組合、もしくは過半数を超える社員から委任を受けた社員代表との交渉・協議によって決まります。そこで決まった内容が、各企業の就業規則や賃金規則に定められているのです。
企業規定を把握しておこう
自分の会社の退職金制度を把握するには、就業規則もしくは賃金規則などを確認します。これらの規則には、退職金にかかる制度内容が示されています。さらに、給与規定もしくは退職金規定には、退職金が支給される対象者や時期、計算方法などが詳細に記されています。
また、退職金の一部または全部を毎月の給与から積み立てている場合は、給与明細に「企業年金掛金」や「退職金掛金」、「確定給付掛金」といった項目がありますから、併せて確認しておくとよいでしょう。
2種類の退職給付制度とは
退職金については、退職時に一括で支給されると思われがちですが、退職給付制度には「退職一時金制度」と「退職年金制度」があり、7割の企業では併用しています。
退職一時金制度とは、退職する際に一括して一時金(退職給付手当、退職慰労金、退職功労報奨金等)を受け取る制度であり、一般的にイメージされる「退職金」です。
一方で退職年金制度とは、社員が退職した後、一定期間もしくは生涯にわたって、年金として一定金額を受け取る制度であり、高齢化が進むにつれ導入する会社が増えています。
退職金を計算するには
国内では9割近くの会社で退職金が導入されており、「支給されることは当たり前」だとする人がほとんどです。しかし、退職金の計算方法を知っている、もしくは現時点での退職金を試算したことがある人は、意外と少ないのが現状です。
定年であれ転職であれ、会社を退職する際には、その後の明確な生活設計が必要であり、退職金をどれくらい貰えるかが大きく影響することは言うまでもありません。そこで、退職金の計算方法について解説します。
退職金を計算する際の準備事項
退職金を計算する際には、まず就業規則を確認します。就業規則には、退職金の有無や支給範囲などが示されていますから、自分が支給対象に該当しているかを確認しておくことは、とても大切です。さらに、自分の勤続年数を算出し、給与規定もしくは退職金規定で、給付率や退職金を計算する際の付加要素を把握しておきます。
退職金の計算方法
一般的に退職金は「1月分の基本給×勤続年数×給付率」で計算することができます。つまり、業種や会社規模が反映されるのが「基本給」「給付率」となり、退職理由が反映されるのが「給付率」となります。ちなみに、自己都合の場合の給付率の平均は6割弱、会社都合の退職では7割弱が給付率の平均です。
また、退職金は給与と同じですから、税金が掛かることも忘れてはなりません。税金の負担を軽くする方法については後述しますが、計算結果と手取り額には差が生じることを理解しておきましょう。
退職金の支給額を決定づける要素とは
退職金の計算において、支給額を大きく左右するのは、「基本給」「給付率」となります。会社としては、会社に貢献してくれた社員にできる限り多くの退職金を支給したいと考えますから、いかに貢献度合いを反映させるかが、ひいては社員のモチベーションアップにもつながるのです。そこで、退職金の支給額を決定づける要素について解説します。
基本給による反映
会社への貢献度合いを反映させるには、給与をアップさせることが一番簡単な方法です。そのため、多くの会社では役職別に俸給表を作成し、同じ勤続年数であっても給与に差が出るようにしています。退職金の計算は基本給がベースとなりますから、ここで会社の貢献度合いを退職金に反映させることができます。
給付率による反映
給付率は、会社の意向が色濃く反映させられる要素の一つです。基本給にも、役職による貢献度合いや業績を反映させることができますが、給付率に差を設けることで、さらに顕著に貢献度合いを退職金に反映させることができます。
とりわけ、会社都合による退職の場合、給付率をアップさせることで、退職を促しくやすくなります。また、早期勧奨の募集に際しても、給付率をアップさせることで、会社が予定する人数を集めやすくなります。
勤続年数で支給額が大きく変わる
一般的に勤続年数が10年と15年では、大きく退職金の平均支給率が変わります。わずか5年の差ですが、平均すると1.5倍から2.0倍も大きくなるのです。これは、どこかに定めがあるわけでも、会社間で取り決めがなされているわけでもありません。つまり、各会社が勤続年数による会社への貢献度合いを、給付率に還元した結果だと言えのです。
退職金の平均・相場(定年退職)
退職金は勤続年数が長いほど高額になる傾向が強くなります。つまり、自己都合よりも定年退職の方が貰えるお金は平均的に多くなります。さらに、企業の規模や学歴によっても金額は異なりますから注意が必要です。
なお、退職金の平均・相場やその計算方法を知っておくことは、退職後の生活設計を立てたり、就職の際にも参考となります。そこで、定年退職における退職金の平均・相場について紹介します。
中小企業の退職金
中小企業の場合、大企業と比較すると経営基盤が盤石ではありません。そのため、人件費にかけられる費用も少なくなり、必然的に退職金の平均・相場は大企業より少なくなります。もちろん、将来にわたって業績が安定してアップすれば、退職金も増額が期待できます。
しかし、その反対に経営不振により、貰えるお金が少なくなることもあり得るのです。そこで、東京都産業労働局が公表している、中小企業(従業員10人~299人)の平均・相場を分析してみましょう。
高校卒の平均・相場「1080万円」
中小企業に高校卒で入社し、定年退職した場合の退職金は1,080万円が平均・相場です。従業員数で細分化すると、従業員数10人~49人では平均1,010万円、従業員数50人~99人では平均1,120万円、従業員数100人~299人では平均1,240万円となります。
つまり、従業員数が増えるほど、退職金の平均・相場がアップすることがわかります。また、退職給付制度別で比較してみると、退職一時金制度では平均1,040万円、退職年金制度では平均860万円、その両方を導入している場合だと平均1,220万円となります。
大学卒の平均・相場「1140万円」
中小企業に大学卒で入社し、定年退職した場合の退職金は1,140万円が平均・相場です。従業員数で細分化すると、従業員数10人~49人では平均1,060万円、従業員数50人~99人では平均1,170万円、従業員数100人~299人では平均1,280万円となり、高校卒を50万円~60万円上回ることになります。
つまり、大学卒も高校卒同様に、従業員数が増えるほど、退職金の平均・相場がアップします。また、退職給付制度別で比較してみると、退職一時金制度では平均1,020万円、退職年金制度では平均1,050万円、その両方を導入している場合だと平均1,400万円となります。
大企業の退職金
大企業の場合、中小企業とは異なり、経営基盤が盤石です。そのため、人件費も中小企業と比較すれば余裕があります。また、大企業は経営不振となっても、自力で立て直す力を持っていますから、不確定要素が少なく、退職金への影響もほとんどありません。
したがって、退職金は中小企業の平均・相場を大きく上回ります。そこで、中央労働委員会が公表している大企業(資本金5億円以上、従業員数1,000人以上)の平均・相場を分析してみましょう。
高校卒の平均・相場「2270万円」
大企業における、高校卒の退職金の平均・相場は、これまで2,270万円とされてきましたが、ここ数年で減少傾向にあり、現在は1,790万円が平均・相場です。ただし、産業別で見ると、建設業は平均2,270万円を維持しており、昨今の好景気を反映した形になっています。
その他には私鉄・バス、造船及び鉱業が平均2,100万円代の高い水準にあります。反対に厳しい結果となっているのが、食品・たばこ及び銀行業であり、ともに平均1,000万円を割っています。
大学卒の平均・相場「2500万円」
大企業における、高校卒の退職金の平均・相場は、これまで2,500万円とされてきましたが、高校卒と同様にここ数年で減少傾向にあり、現在の平均・相場は約2,250万円です。
産業別で見ると、保険業が平均3,330万円、新聞・放送業が平均4,650万円、商事が平均3,450万円と、平均・相場を大きく上回る高水準を維持しています。これに対して食品・たばこ及び銀行業は、高校卒と同様に平均1,100万円代と厳しい状況です。
自己都合による退職金平均比較
日本の企業においては、長らく終身雇用制が「常識」とされてきましたが、バブル崩壊以降、会社都合や自己都合による退職が増加してきました。とりわけ、少子高齢化により労働人口が減少し、労働環境の良い職場に転職する人が増えてくると、自己都合による退職が増加することが予想されます。そこで、自己都合による退職金平均比較を見てみましょう。
勤続年数30年(中小企業)
中小企業の場合、優秀な人材の確保は、企業の存続に直結する重要な課題です。そのため、要員を確保するための予算も大きくなります。一方で、人件費が高騰する勤続年数30年を超える社員に対しては、会社都合による退職を募集する企業も少なくありません。
自己都合の退職であれば、退職金を上乗せする必要はありませんが、これまでの功績に見合った金額を支給している企業が大半です。そこで、東京都産業労働局が公表している、中小企業(従業員10~299人)の平均を分析してみましょう。
高校卒・平均「620万円」
中小企業に高校卒で入社し、勤続30年(48歳)で自己都合により退職した場合、620万円が退職金の平均・相場です。定年退職の場合だと、1,080万円ですから12年早く退職する代わりに、貰える退職金が460万円少なくなる計算になります。
ちなみに会社都合の場合だと700万円となり、380万円少なくなる計算となり、いずれの場合も大幅なダウンは避けられません。それだけに、勤続30年で退職する際には、次の仕事のことなど、しっかりと計画を立てて退職することが大切です。
大学卒・平均「750万円」
中小企業に大学卒で入社し、勤続30年(52歳)で自己都合により退職した場合、750万円が退職金の平均・相場です。定年退職の場合、1,140万円が平均・相場なので、8年早く退職する代わりに、貰える退職金が390万円少なくなる計算になります。
ちなみに会社都合の場合だと860万円となり、それでも280万円少なくなる計算になります。高校卒の場合と同様、大幅なダウンは避けられませんから、勤続30年で退職する際には、しっかりと将来ビジョンを立ててから退職することが大切です。
勤続年数30年(大企業)
大企業においては、社員が定年を待たずに退職する確率が、年々高くなっています。そのため、自己都合及び会社都合の際の退職金の計算についても、制度が確立されています。
自己都合であれば、当然貰える退職金は少なくなりますし、会社都合の場合だと優遇されます。ここでは、中央労働委員会が公表している大企業(資本金5億円以上、従業員数1,000人以上)の平均を分析してみましょう。
高校卒・平均「1360万円」
大企業において、高校卒の社員が、勤続30年で退職した場合、退職金の平均は1,360万円とされてきましたが、ここ数年は減少傾向にあり、現在は1,030万円が平均です。
定年退職の場合の平均が1,790万円ですから、約760万円貰える金額が少なくなる計算になります。なお、産業別で見ると、私鉄・バス業は平均1,260万円、機械業は平均1,170万円といった高い水準を維持しています。
大学卒・平均「1940万円」
大企業において、大学卒の社員が、勤続30年で退職した場合、退職金の平均は1,940万円となります。定年退職の場合の平均が2,250万円ですから、約310万円貰える金額がすくなる計算になります。また、産業別で見ると、新聞・放送業が平均3,600万円といった高水準を維持しています。
勤務先の退職金を知っておこう!
終身雇用制が「当たり前」の制度ではなくなり、転職をする人が増えてきました。そのため、自己都合による退職が増え、その際に支給される退職金が非常に重要なものとなっています。また、年金の支給年齢が高齢化するなど、定年時の退職金が老後の生活を大きく左右します。
こういった状況において、勤務先の退職金制度については、しっかりと理解しておくことが大切です。ここでは、勤務先の退職金制度を把握する方法などを紹介します。
就業規則に記載されている
退職金の支給要件や支給金額などについては、経営陣だけで決められるものではありません。一般的に退職金制度は、就業規則に記載されますが、社員の過半数を占める労働組合、もしくは過半数の社員から委任された社員代表が了解しないと、有効とはならないのです。
とりわけ退職金は、労働条件に大きく関わる事項ですから、会社によっては、労働組合が大きく関与する場合もあります。
なお、就業規則に記載されているのは、退職金制度の概要であり、具体的な支給内容や範囲、金額については給与規定もしくは退職金規定に記されます。したがって、退職金制度を把握する場合には、就業規則だけでなく、給与規定もしくは退職金規定も確認しましょう。
最新の規定を必ず把握
退職金制度は、会社の経営状況や世相を反映して、時折、改正される場合があります。つまり、退職金制度は、就業規則及び給与規定もしくは退職金規定は不変のものではなく、変更されるものであることを理解しましょう。
なお、退職金制度の改正に伴う、就業規則の変更については、社員周知がなされるのが一般的ですが、ついつい聞き逃してしまうことも少なくありません。したがって、年に1回程度は就業規則に変更がないか確認しておくとよいでしょう。
退職金にも税金は掛かる!
毎月支払われる給与には、税金が掛かっています。勤続年数にもよりますが、退職金は給与の何倍ものお金が支給されるので、給与と同様の税金がかかるとすれば、大きな支出となります。
もちろん、退職金にも税金は掛かりますが、退職所得控除を活用することで、税金の負担を軽減することができます。ここでは、退職金に掛かる税金や控除額の計算方法について解説します。
退職所得控除を活用する
退職金が支給された際には、税金が掛かりますが、税制上の優遇措置があります。これが「退職所得控除」と呼ばれるものです。ただし、退職所得控除を活用するには、「退職所得申告書」を会社に提出しなければなりません。
退職所得申告書を提出すれば、会社の給与担当において、源泉徴収などの計算を行ってくれるので、スムーズに退職所得控除を活用することができます。退職所得申告書が未提出なってしまうと、退職金の全額が課税の対象となり、源泉徴収した金額から、20.42%を税金として納付しなければなりません。
控除額の計算方法とは?
退職金控除は、勤続年数によって計算方法が異なります。勤続年数が20年未満の場合だと「控除額=40万円×勤続年数」となり、計算結果80万円を下回る場合、退職金にかかる税金の控除額は80万円となります。
勤続年数が20年を超える場合には「控除額=800万円+70万円×(勤続年数-20年)」となります。例えば、勤続年数が30年の場合だと「800+70×(30-20)=1500」となり、退職金にかかる税金の控除額は1,500万円となります。
このとき、勤続年数の端数は2か月を1年に切り上げます。また、障害者になったことが直接の原因で退職する場合、これらの計算方法により算出された退職控除額に100万円を加えることによって、さらに税金の負担を軽減できます。
退職金にかかる税金の計算方法
退職金にかかる税金は、原則、他の所得とは切り離して計算します。その際、各会社の給与担当に「退職所得の受給に関する申告書」を提出していれば、税金(所得税額及び復興特別所得税額)を計算し、退職金の支払いに併せて、その金額に応じた税金の額が源泉徴収されます。したがって、原則、確定申告の必要は必要ありません。
ただし、「退職所得の受給に関する申告書」の提出をしなかった場合、退職金の支給額に対して20.42%の税金(所得税額及び復興特別所得税額)が源泉徴収されてしまいます。
万一、「退職所得の受給に関する申告書」の提出を忘れていた場合は、受給者本人が確定申告を行うことで税金(所得税額及び復興特別所得税額)の精算ができますので、慌てず税務署などに相談してみましょう。
会社を辞める理由が退職金に大きく影響する
会社を辞める理由には、定年退職を除くと「自己都合」「会社都合」のニ種類があります。退職金は、この理由によって大きく支給金額が異なりますので注意が必要です。基本的に、最も給付率が高いのが会社都合となり、次いで定年退職、自己都合となります。
また、勤続年数や業績なども大きく加味されます。とりわけ、転職を考えている場合には、退職の理由による退職金の差を十分に把握しておくことが大切です。そこで、会社を辞める理由が退職金に及ぼす影響について紹介します。
自己都合と会社都合の大きな差
自己都合による退職とは、転職や結婚、出産など自分の都合によって会社を退職することです。同じ勤続年数であっても、自己都合と会社都合では、その支給率に大きく差が出てきます。
会社都合による退職とは、経営不振に起因するリストラや会社合併など、文字どおり会社の都合により退職を促すことです。近年では早期退職制度を導入している企業も多くありますが、これも会社都合となります。
例えば、大学を卒業して中小企業に勤める勤続30年の社員が、会社都合で退職する場合、退職金の相場は850万円、自己都合だと750万円となり、約100万円の差が生じることになります。
会社都合なのに退職届を求められたら?
定年退職の際に「退職届」が必要ないのと同様に、会社都合で退職する際には退職届を提出する必要はありません。しかし、会社にとって、会社都合の退職者が出てしまうと、対外的なブランド力の低下や助成金の支給停止といったデメリットがあります。
そこで、会社都合の退職であるにも関わらず、退職届を求めてくる場合があります。また、いわゆるブラック企業では、会社都合の退職を勧奨しておきながら、自己都合にすり替えてしまう場合もあり、大きなトラブルに発展することも少なくありません。
もちろん、社内手続きの関係で、退職届を必要とする企業もあります。こういった場合には、退職届に「貴社、退職勧奨に伴い」など、会社都合であることが明確な退職事由を記入します。さらに、会社都合の退職である旨の通知を求めるとよいでしょう。
提出する必要はない!
会社都合であるにも関わらず、会社側から何の説明も通知もなく、退職届を求められた場合、提出する必要は全くありません。退職届の提出を拒否したからといって、退職金が減額されるなど、不利益を被ることは一切ありません。
万一、会社が理由を明らかにせず、退職届の提出を求めてきたり、そのことで不利益が生じた場合は、最寄りの労働基準監督署に相談しましょう。労働基準監督署には、労働者のための相談窓口が設けられていますので、無料で相談することができます。
勤務先の退職金の平均・相場を確認しておこう!
退職金については、法的な定めはありませんから、各企業において支給の有無や範囲、支給率などは委ねられています。これらの規則は就業規則などに定められていますが、恒久的なものではありません。企業の経営状況や世相などにより、変更される場合もありますから、常に最新の状況を確認しておくことが大切です。
退職金と言えば、定年時に支給されるものと思われがちですが、終身雇用制が崩れ、転職などによる自己都合退職も増えてきました。さらに、リストラや早期勧奨退職といった会社都合の退職もあります。
退職金の算出については、退職理由や勤続年数、学歴、会社規模、業績などによって異なります。さらに税金も掛かりますので、退職金の計算方法を理解するとともに、退職金の平均・相場は確認しておくことが大切です。