「渡す」の敬語表現を覚えよう!
日常でも使われる『渡す』という言葉ですが実は様々な言い方があり、その場にあった敬語の使い方があります。敬語、謙譲語、尊敬語と言ったその場に相応しい『渡す』の敬語表現についてご紹介します。
日常で『渡す』という行動をしても、『渡す』という言葉は使うことが少ないです。ビジネスシーンや式典などの大事な場面では『渡す』ことを言葉にして行動にすることがあります。場面にあった『渡す』の敬語を正しく覚えて使いましょう。
「渡す」の敬語表現
最初にご紹介するのは『渡す』の敬語での表現についてです。様々な場面で『渡す』という言葉を使い、様々な場面で『渡す』を敬語で使います。
しかし敬語と言っても謙譲語や尊敬語、丁寧語といった種類があります。それぞれの敬語に分けて、『渡す』の敬語での表現をいくつかに分けてご紹介します。
謙譲語では「お渡しする」「お渡しいたす」
まず初めにご紹介する『渡す』の敬語は謙譲語での表現についてです。謙譲語は『けんじょうご』と読みます。失礼があってはいけない人など、先輩や上司、目上の人に向けて使う敬語です。
謙譲語を使った『渡す』の敬語表現は「お渡しする」「お渡しいたす」です。これらの敬語の表現は文面などで使われることが多いです。相手に向けて「お渡しする」や「お渡しいたす」を言うことはありません。
謙譲語は自分が目上の人に対する時に使う敬語で、「お渡しします」「お渡しいたします」といった使い方で謙譲語にします。
尊敬語では「お渡しになる」「渡される」
続いてご紹介する『渡す』の敬語は尊敬語の表現についてです。尊敬語は『そんけいご』と読み、『尊敬』という言葉通り、相手を敬う際に使う言葉です。謙譲語と異なり、相手の行動に対して使う言葉です。
目上の人から渡される時に『渡す』の敬語である「お渡しになる」を使います。「社長がお渡しになる」というような使い方があります。「これから本社より渡される試作品は」「これからお渡しになる製品は」などの使い方ができます。
丁寧語では「渡します」「渡してください」
次にご紹介するのは丁寧語での『渡す』の敬語の表現方法です。丁寧語は一般的に使われ、一番疲れる敬語での表現になります。謙譲語や尊敬語と異なり、「です」「ます」「ました」「でした」などの助動詞が使われます。
そのため『渡す』を丁寧語にすると「渡します」「渡してください」など、謙譲語や丁寧語と異なり、そこまでかしこまらない場面などで使います。
ビジネスシーンでの「渡す」の敬語表現の使い方
続いてご紹介するのはビジネスシーンでの『渡す』についてです。『渡す』は様々な敬語の使い方があります。そのため、敬語を使うビジネスシーンでは目上の方やお客様などに対して失礼な言葉はつかえません。『渡す』の失敗のない正しい敬語表現の使い方についてご紹介します。
取引先への使い方
ビジネスシーンでは様々な場面で『渡す』を使います。その中でも取引先に使うことは多々あります。契約書やパンフレットなど、取引先相手に使う際の『渡す』の敬語での使い方は「お渡しします」などの主に謙譲語が使われます。
物を渡す際には「お渡しします」「お渡しいたします」を使い、配っていただきたい時には「お配りください」「お渡しください」というように使います。取引先なので、相手を敬った敬語の使い方で話します。
上司への使い方
ビジネスシーンの中で『渡す』を使うのは取引先だけではありません。もちろん上司への敬語も正しく使わなければなりません。取引先もそうですが、上司のことも敬った言葉を使わなければいけません。
こちらもまた謙譲語を主に使い、渡す際には「報告書をお渡しします」や「企画書をお渡しいたします」のような使い方をします。自分から見た上司から上司への受け渡しの場合にも「部長よりお渡しする」や「課長より渡される書類は」というように使います。
お客様への使い方
次にご紹介するのは部署などによって、ビジネスシーンで最も大事なお客様への『渡す』の使い方についてです。パンフレットを渡す時、製品を渡す時などお客様には何かと渡す時が多いです。
失礼のないようにしなければならないので、渡し方だけでなく渡す時の敬語も気を付けなければなりません。信用問題にも影響するので正しく覚えましょう。
お客様に対しても『渡す』を敬語にするときは、謙譲語と尊敬語を使います。使い方はこれまでと同じように「お渡しいたします」や「今からお渡しするご案内は」というように使います。
先輩への使い方
続いてはビジネスシーンにおいて、最も話すことの多い先輩に対しての『渡す』の敬語の使い方です。先輩は上司とも異なり、かしこまった言い方をしなければいけない相手ではありません。
謙譲語や尊敬語を使うよりは、丁寧語を話すことの方が多いでしょう。普段から使う敬語のままで間違いはなく、何かを渡す際にも「預かったので渡します」や「渡してください」という使い方でいいです。
しかし役職があったり、年齢が離れている場合には丁寧語よりも謙譲語や尊敬語の方が使いやすく話しやすいです。
ビジネスシーンでの「渡す」の敬語表現の例文
続いてご紹介するのもビジネスシーンでの『渡す』についてです。先ほどは使い方をご紹介しましたが、次は例文を用いて『渡す』の敬語での表現についてご紹介します。間違いのない場面で『渡す』を敬語で正しく使えるように、場面に沿った例文でご説明します。
請求書を渡す場合
まず一つ目の使い方の例文は請求書を渡す場合です。ビジネスシーンではお客様に請求書を渡すことがあります。商品を買っていただいた際に必ず発生します。買ってもらうまでも大切ですが、次に買ってもらうためにも失礼のないように話さなければなりません。
そのため、お客様に対応する時の敬語の使い方である謙譲語や尊敬語で話します。請求書を渡す際には謙譲語を使い、使い方の例文としては「請求書をお渡しいたします」や「請求書をお渡しします」などのように使います。
香典を渡す場合
続いてご紹介する例文は『香典を渡す時』です。香典は死者を弔う際に供える花やお線香の代わりに供えるものです。葬儀には必ずといってもいいほど必要な香典ですが、親族を亡くしたばかりの身内の方へ渡すものなので言葉選びも大切になります。
近しい間柄であっても丁寧語を使うよりは、謙譲語、尊敬語を使うべきでしょう。ですが香典を渡す場合「香典をお渡しします」とは言いません。お悔やみの言葉をかけながら「この度はご愁傷様でございます。謹んでお悔やみ申し上げます」というように言葉を添えて香典を手渡します。
もう一つの例文としては社員の家族に不幸があった場合、「社長が社員のご家族に香典をお渡しになる」や「社長が渡される香典を上司が受け取る」などのような使い方があります。
連絡先を渡す場合
続いてご紹介する例文はビジネスシーンで『連絡先を渡す場合』です。取引相手への連絡先の渡す時には名刺が使われる場合が多いです。マナーに気をつけて取引先やお客様へと連絡先を渡します。
例文の一つ目は「〇〇会社営業担当の〇〇〇〇と申します。〇〇さんが会社に戻られた際にはこちらの連絡先にご連絡ください」です。二つ目の例文は「こちら私の連絡先になります。何か気になることがございましたらご連絡ください」と使います。
「名刺をお渡しします」や「連絡先をお渡しいたします」といった例文のように謙譲語を使うように気を付けて渡しましょう。
お土産を渡す場合
次にご紹介する例文は、長期休暇をいただいたあとにお土産などを買ってくることがあります。社会人になりたてや、慣れていない人だとどう言って渡したらいいのか分からないことがあります。ですがそう言った時も謙譲語や丁寧語で渡すと間違いありません。
「休暇をいただきありがとうございました」「いつもお世話になっています」と一言付け添えてお土産を渡します。
上司からいただいたお菓子を渡す時には「これから皆さんにお渡しするのは部長から頂いたお土産です」「部長よりお土産を頂きましたので皆さんにお渡しします」というような例文の使い方ができます。
「渡す」の敬語表現の類語
『渡す』には類語があります。今回はその中から三つの『渡す』を敬語に表現した場合の類語をご紹介します。よく使うような言葉も類語の一つだったりします。『渡す』の類語の使い方と例文をご紹介しますので、ぜひ『渡す』と比べてその場にあった言葉を選んで使ってみてください。
差し上げる
初めにご紹介する『渡す』の敬語で表現した場合の類語は『差し上げる』です。よくご近所さんへと使う「たくさんもらったので差し上げます」も丁寧な言葉遣いで、『渡す』の謙譲語に値します。
『渡す』の類語の一つですが、意外なことに『差し上げる』を使う機会は多いです。「たくさんもらったから会社の皆さんに差し上げて」と奥さんが旦那さんに言うこともあるでしょう。「娘さんに差し上げて」「お孫さんに差し上げて」というような使い方もされる類語です。
譲る
続いてご紹介する類語は『譲る』です。『譲る(ゆずる)』も『渡す』を敬語表現した場合の類語の一つです。『譲る』はへりくだった言葉で「誰かに道を譲る」というように、自分のことより誰かを優先させます。
なので『譲る』は敬らなければならない相手などに使う『渡す』の類語です。先ほどご紹介した『差し上げて』よりも日常では使いやすい言葉で、類語の中でも一番親しみがある言葉になっています。
与える
最後にご紹介する『渡す』の敬語表現の類語は『与える』です。「友達にお土産を与える」「後輩に仕事を与える」「愛犬に餌を与える」など、類語の中では日常でもビジネスシーンでも使うことができる類語です。
『与える』は類語の『渡す』と意味が異なります。与えるの類語である『渡す』は「相手にものを渡す」という意味ですが、渡すの類語である『与える』は「相手にものを渡し、そのものを相手のものにする」という意味です。
類語なので意味は似ていますが、使い方が異なるので気を付けて使ってみてください。『渡す』の類語ですが、目上の人などに『与える』という言葉は使わないので注意が必要です。
「渡す」の英語表現
最後にご紹介するのは『渡す』の英語表現についてです。これまで敬語、類語とご紹介してきました。英語でも『渡す』の表現はあるので、この機会にぜひ覚えてみてください。英語で表現した場合の使い方を例文に沿ってご紹介させていただきます。
hand over
『渡す』を英語表現した場合の一つ目は「hand over」です。英語の「hand over」は「ハンドオーバー」よ読みます。日本語の意味は「引き渡す」「譲り渡す」「手渡す」です。
「hand over」の使い方の英語の例文は「Hand over the house」です。この英語を日本語にすると「家を引き渡す」となります。もう一つの英語の例文は「Hand over seats」です。この英語を日本語にすると「席を譲り渡す」になります。
「handing over」を使った英語の例文は「handing over presents」です。「hand over」を現在分詞にしたもので、この英語を日本語にすると「プレゼントを手渡す」になります。
「hand over」は権力や責任と言った、大きなものの「引き渡し」や「譲り渡す」「手渡す」ことへの意味になります。「渡す」の敬語と同じような使い方、言葉の響きを持っています。
hand to
『渡す』を英語表現した場合の英語の二つ目は「hand to」です。「hand to」は「手に」という日本語の翻訳で、意味は「回す」「手渡す」「取ってやる」です。人に食べ物やものを「回す」「手渡す」「取ってやる」というような使い方されます。
英語の「hand to hand」は「手をつないで」という意味になりますが、英語の繋げ方によっては様々な表現ができます。
日本語と同じで文章によって英語の選び方が変わるので、その英語にあった「渡す」の英語の表現を選んで使ってみてください。
目上の人へ「渡す」の敬語表現を正しく使おう
敬語で表現する『渡す』は相手の立場などによって、敬語の種類の選び方や使い方が変わってきます。年上や上司など、相手を敬う時の敬語は「謙譲語」や「尊敬語」で『渡す』を使います。ビジネスシーンではお客様や取引先相手には必ず使います。
「丁寧語」の『渡す』は日常などで一般的に使われる敬語で、「渡します」や「渡してください」と言います。『渡す』を敬語で使う場面によっても、言い方は変わってきます。ご紹介した「香典を渡す時」「お土産を渡す時」でも、親しい間がらだとしても言葉の選び方が変わります。
かしこまった場だけではなく、その場にあった『渡す』の敬語表現で、ビジネスシーンや日常の場面などでも活用してみてください。