「よろしいでしょうか」の意味
「よろしいでしょうか」という丁寧な表現をビジネスシーンなどで使うこともあるでしょうが、いざその意味はどうだろうかと考えると、意外に思い浮かばないものです。そして、何気なく使うことも多く、意味を考えなくても大きな問題になることはありません。しかし、意味を考えずに使うよりも、わかって使うほうがいいので、詳しく解説しましょう。
①相手に許可を求める
「よろしいでしょうか」と相手に聞く場合は、許可を求めています。簡単に言い換えると、「これでいいですか」「これを受け入れてくれますか」ということですが、これではぞんざいな感じがするので、より丁寧に「よろしいでしょうか」という場合が多いです。したがって、相手によってはこの丁寧な表現が好まれます。
➁相手に問題無いか確認する
「よろしいでしょうか」には相手に許可を求める意味のほかに、目の前の事柄に問題がないかを確認する意味もあります。たとえば、「この課題はこれでよろしいでしょうか」と聞けば、問題があるのかないのかを穏やかに質問していることになります。「よろしい」には、差し支えないという意味があるので、このような質問ができるわけです。
「よろしいでしょうか」の漢字表記
「よろしいでしょうか」という言葉は、会話で使うので、漢字表記を意識することはあまりないでしょうが、念のためにご紹介します。「宜しいでしょうか」と書きます。意味はひらがなでも漢字でも変わりません。「宜」自体の意味は、「都合がいい」「適切である」ということですが、「宜しい」という形で使うことはあまりありません。
「よろしいでしょうか」は正しい敬語
「よろしいでしょうか」の「よろしい」は、「よい」という言葉を丁寧にしたものです。「でしょうか」には丁寧語の「です」が使われています。したがって、「よろしいでしょうか」で、れっきとした敬語表現です。ただ、敬語の中の尊敬語や謙譲語は使われていませんが、丁寧語が含まれているので、敬語以外の何物でもありません。
目上の人にも使える表現
「よろしいでしょうか」には、敬語の尊敬語や謙譲語が使われていないと説明しましたが、それでも丁寧な表現なので、目上や上司に対して使えます。したがって、ビジネスシーンなどで許可を求める場合でも、問題がないか確認する場合でも、敬語表現として安心して用いて構いません。つまり、使い方において遠慮の必要はないのです。
「よろしいですか」には注意が必要
「よろしいでしょうか」に似た表現に「よろしいですか」があります。これも敬語表現ではありますが、「よろしいでしょうか」に比べるとワンランク下の敬語表現です。言葉の響きもややぞんざいな印象があります。したがって、目上や上司に使う場合は注意が必要だし、可能なら使うのを避けたほうが無難でしょう。
同僚や目下には使わない
「よろしいでしょうか」という言葉には、尊敬語も謙譲語も使われていませんが、敬語表現として使うものなので、同僚や目下に用いると少し変です。少しどころか、何を改まっているのかといぶかしく思うでしょう。したがって、「よろしいでしょうか」という表現は、敬語として目上や上司に使うのがふさわしいです。
「よろしかったでしょうか」という表現にも注意
「よろしいでしょうか」に似た敬語表現として「よろしいですか」を紹介しましたが、「よろしかったでしょうか」という言い方があります。しかし、この敬語表現の使い方にも注意が必要です。というのも、過去形の「た」という字が使われているので、同じ敬語表現でも現在の事実に対する許可や確認には使わないのです。
「よろしゅうございますか」はあまり使わない
「よろしいでしょうか」という敬語をさらに丁寧にした「よろしゅうございますか」という言い方もあります。しかし、現代ではあまり使う人はいません。年配の女性などがまれに使うことはあっても、それ以外にビジネスシーンで用いる人はほとんどいないでしょう。この表現は敬語表現と言っても丁寧すぎるからです。
「よろしいでしょうか」の言い換え
丁寧な敬語表現である「よろしいでしょうか」には、さまざまな言い換え表現があります。したがって、時と場所に応じて言い換えをしてみると面白いでしょうし、応用範囲も広がります。そのような言い換え表現をいくつか紹介するので、ビジネスシーンなどでぜひ使ってみてください。言い換え表現により、言葉のレパートリーが広がります。
①いかがでしょうか
「いかがでしょうか」という表現にはいくつか意味があります。欲しいかどうか聞く、状態や様子を尋ねる、提案をするなどの意味ですが、このうち提案をするという部分が「よろしいでしょうか」の意味と似ています。提案をして、許可を求めているからです。したがって、「いかかがでしょうか」は「よろしいでしょうか」の言い換え表現になります。
「いかがでしょうか」の使い方を見てみましょう。提案して、許可を求める場合は、「このような計画を立てました。いかがでしょうか」のように使います。これを「よろしいでしょうか」と言い換えても意味は変わりません。
「いかがでしょうか」と聞かれたら、返事には、「それでいいよ」「それで構わない」「少し問題がある」「再検討してほしい」などのパターンがあります。提案して、許可を求めている相手に対しては、許可を与えるかどうかが返事におけるポイントとなります。
➁お間違いないでしょうか
相手に問題がないか確認をする場合に、「よろしいでしょうか」をどう言い換えるかも考えてみましょう。このケースでは、「お間違いないでしょうか」という言い方があります。この表現も目の前のことに問題がないかどうかを確認しています。ただ、「お間違いないでしょうか」には、問いただしているような感じもあるので、使い方に注意が必要です。
「お間違いないでしょうか」の使い方も見ておきます。「先日頂戴した報告書のことですが、このように理解しておいてお間違いないでしょうか」となります。これを、「よろしいでしょうか」と言い換えでも全く問題はありません。
「お間違いないでしょうか」と部下から尋ねられた上司は、次のようの返事をすればいいでしょう。「間違いないよ」「それでいい」「少し問題がある」「直してほしいところがある」などです。確認を求めている部下に対して、正しい返事をしてあげましょう。
③構いませんでしょうか
「構いませんでしょうか」は、相手に許可を求める表現で、英語で言うと「OKか」ということです。したがって、「よろしいでしょうか」と言い換えが利きます。そして、「構いませんでしょうか」も丁寧な表現であり、「よろしいでしょうか」のような使い方ができます。実際に使う場合は、どちらにしても構いません。
「構いませんでしょうか」の例文を載せましょう。「このマニュアル通りに進めて構いませんでしょうか」。ビジネスシーンなどで聞かれそうな例文ですが、これも「よろしいでしょうか」に言い換えられます。
「構いませんでしょうか」と聞かれたら、返事は「構わないよ」「いいよ」「ちょっとまずい」「ほかの日にしてくれ」などのようになります。許可を求めている相手に対して、許可を与えられるかどうか返事ではっきりさせましょう。
④可能でしょうか
「可能でしょうか」という表現では、相手にできるかどうかを尋ねています。ニュアンスに多少の違いはありますが、「よろしいでしょうか」の許可を求める意味や問題がないか確認をする意味に重なる部分があります。そのため、「よろしいでしょうか」の言い換え表現になります。ただ、やや強い表現なので、使い方には注意が必要です。
「可能でしょうか」の使い方を示しておきましょう。「この線で行くことは可能でしょうか」となります。これを、言い換えると、「この線で行ってもよろしいでしょうか」のようになります。わずかに言い方が違っていますが、ほぼ同じ意味です。
「可能でしょうか」と聞かれたら、返事は次のようにすればいいでしょう。「可能だよ」「大丈夫だ」「ちょっと難しい」「別の案にしてくれ」などのようになります。相手はできるかどうか尋ねているので、素直に返事をしてあげるといいでしょう。
⑤問題はございませんでしょうか
かなり丁寧な表現になりますが、「問題はございませんでしょうか」という言い方があります。この場合は、「ございます」という特に気を使った表現を用いていますが、これも「よろしいでしょうか」の言い換え表現です。「問題はございませんでしょうか」と聞いて、確認を求めているからです。この表現は、特に敬意を表した相手に使うといいでしょう。
「問題はございませんでしょうか」の使い方を見てみましょう。「会議でこのような結論となりましたが、問題はございませんでしょうか」となります。ビジネスシーンで用いたい例文ですが、「よろしいでしょうか」の言い換え表現としても適しています。
「問題はございませんでしょうか」とビジネスシーンで聞かれたら、問題があるのかないのか返事ではっきりさせるといいでしょう。「問題なし」「OK」「ちょっと気になるところがある」「いささか問題があるようだ」などのように返事をすれば、相手も納得します。
⑥差し支えないでしょうか
「差し支えないでしょうか」の「差し支え」とは、「妨げ」「支障」「都合が悪い事情」という意味です。したがって、「差し支えないでしょうか」で、「支障はないか」「都合が悪くないか」と、確認を求めていることになります。ということは、「よろしいでしょうか」の言い換えになる表現ということです。
「差し支えないでしょうか」の例文を挙げておきます。「明後日に重要会議を開く予定ですが、差し支えないでしょうか」となります。この「差し支えないでしょうか」は、そのまま「よろしいでしょうか」と言い換えられます。
「差し支えないでしょうか」の返事は、「大丈夫だ」「何ら問題はない」「ちょっとまずい」「都合が悪い」などのようになります。差し支えがある場合は、正直に返事で伝えればいいでしょう。
⑦大丈夫でしょうか
「よろしいでしょうか」に比べると、やや丁寧さが欠ける表現となりますが、「大丈夫でしょうか」という言い方があります。「大丈夫」とは、「間違いがない」「確かだ」という意味なので、「大丈夫でしょうか」で「間違いがないでしょうか」と確認を取っていることになります。つまり、「よろしいでしょうか」と言い換えることが可能だということです。
「大丈夫でしょうか」の使い方を示しますが、やや丁寧さが欠ける表現なので、ビジネスの場で使う場合は慎重にしなければいけません。例文は、「この案で進めて、大丈夫でしょうか」となります。
「大丈夫でしょうか」と聞かれて、失礼だなと感じる上司もいます。しかし、返事をするのならば、「大丈夫だ」「心配ない」「ちょっと問題がある」「少し不安点がある」などのように答えます。
「よろしいでしょうか」の使い方と例文
「よろしいでしょうか」の意味や言い換え表現がわかっても、使い方が理解できなければ意味がないので、例文を示しながら使い方を見てみましょう。「よろしいでしょうか」という表現は、ビジネス会話でよく使いますが、日常会話やメールでも用いることがあるので、それぞれのケースごとに使い方を考えてみます。
①ビジネス会話で使用
ビジネス会話でよく用いられる「よろしいでしょうか」の使い方のうち、まず相手に許可を求める例を紹介しましょう。いくつか例文があります。「今度の火曜日、休暇を取ってよろしいでしょうか」「会議の最中に、メモを取ってよろしいでしょうか」などです。それで「よろしい」という返事があれば、許可を得たことになります。
次に、同じビジネス会話でも、相手に問題がないか確認する場合の「よろしいでしょうか」の使い方です。たとえば、「ご質問された問題は、この件に関することでよろしいでしょうか」。その通りなら、丁寧に答えてあげましょう。
ビジネスシーンでは、「よろしいでしょうか」という表現はよく使いますが、これは敬語表現なので、目上や上司に使っても差し支えありません。もし目上や上司に聞きたいことがあれば、ぜひこの表現を使ってください。
「よろしいでしょうか」の前にも丁寧な言葉を
ビジネス会話で、「よろしいでしょうか」を使う場合は、その前にも丁寧な敬語表現を添えるのが普通です。たとえば、「お時間をいただいてもよろしいでしょうか」とすれば、「よろしいでしょうか」の前に、「お」という丁寧語と「いただく」という謙譲語が用いられています。この例文のようにすれば、相手に敬意を示せます。
同じような例をもう一つ取り上げてみましょう。「お伺いしたいのですが、よろしいでしょうか」です。「お伺い」の「お」は丁寧語、「伺う」は謙譲語です。このように敬語をうまく組み合わせることで、「よろしいでしょうか」という言葉が引き立ちます。
店員がお客さんに
ビジネス会話の中でも、店員がお客さんに依頼する場面での、「よろしいでしょうか」の使い方を見てみましょう。たとえば、サインを求める場合、「この紙にサインをしていただいてもよろしいでしょうか」と聞けます。また、「明後日の午後3時にお越しいただいてもよろしいでしょうか」という表現も使えます。
➁日常会話で使用
「よろしいでしょうか」は、ビジネス会話で使うことが多い表現ですが、日常生活でも使わないことはありません。特に目上やあまり親しくない人相手の場合に使用することがあります。例文を示しましょう。「ここに写真を貼ってよろしいでしょうか」「同席してもよろしいでしょうか」などです。いずれも許可を求める質問です。
日常会話で「よろしいでしょうか」を使う場合、許可を求めるのと問題がないか確認するのと両方の意味がかぶさっている場合もあります。上記の例文の場合、許可を求める質問だと説明しましたが、問題がないか確認しているとも取れます。
③メールで使用
親しい人同士のメールでは、あまり「よろしいでしょうか」という表現は使わないでしょうが、ビジネスメールでは頻繁に登場します。日程確認、書類の内容確認などの場面では、非常に使いやすい表現です。例文は、「会議の予定を5月15日13時としますが、よろしいでしょうか」です。
もう一つビジネスメールの例文を示しておきましょう。「報告書を添えましたので、チェックしていただいてもよろしいでしょうか」となります。例文はいくらでも考えられますが、自分の立場に応じた丁寧な表現を使ってください。
「よろしいでしょうか」に対する返事
「よろしいでしょうか」の言い換え表現に対する返事の仕方はいくつか載せておきましたが、「よろしいでしょうか」という表現自体への返事はまだなので、これから紹介します。「よろしいでしょうか」という質問は丁寧な言い方なので、できれば返事でも丁寧に答えたほうがいいですが、そのような例を取り上げてみます。
①お願いします
「よろしいでしょうか」と相手が許可を求めてきた場合、その答えがOKなら、「お願いします」とすればいいでしょう。このように答えれば、単に「いいよ」「構わないよ」と返事をするよりも、丁寧な表現となり、お互いの関係もよくなります。なお、「お願いします」よりもさらに丁寧に返事をしたければ、「お願いしたします」と答えます。
➁差し支えありません
「差し支え」という言葉の意味についてはすでに説明してあります。「支障」「都合が悪い事情」ということです。この「差し支え」という言葉を使えば、「よろしいでしょうか」という問いにうまく返事ができます。その場合は、形を変えて否定形となり、「差し支えありません」となります。「支障はない」「都合はいい」ということです。
③大丈夫です
「よろしいでしょうか」と聞かれて、問題がないようなら、簡単に「大丈夫です」と返事をしても構いません。「大丈夫」で、「問題はない」「確かだ」という意味なので、これで十分に意は伝わります。ただ、「大丈夫です」の一言では物足りないので、「大丈夫です。その予定通りに進めてください」などのように言葉を添えます。
「よろしいでしょうか」の英語表現
ビジネス会話でもよく登場する「よろしいでしょうか」という表現を英語で言ってみたいという人も多いでしょう。そこで、このコーナーでは、日本語独自の表現である「よろしいでしょうか」を英語でどう表現すればいいのかを考えてみます。その場合、許可を求める英語表現と問題がないか確認する英語表現に分けて紹介します。
相手に許可を求める
まずは。「よろしいでしょうか」の意味のうち、相手に許可を求める場合の英語表現を見てみましょう。いくつか表現方法がありますが、英語では次のように聞きます。「Can I 〜?」「May I 〜?」「Could I 〜?」などの言い方になります。このうち、「Could I 〜?」が一番丁寧で、以下「May I 〜?」「Can I 〜?」の順になります。
別な英語表現もあります。かなり丁寧な言い方になりますが、「Would you mind if I 〜?」と相手に聞けば、「~しても気にならないですか」という質問になり、日本語で「~してもよろしいでしょうか」ということになります。
許可を求める英語例文
許可を求める場合の英語例文を挙げておきましょう。たとえば、「May I smoke ?」と聞けば、「タバコを吸ってもよろしいでしょうか」となります。最近はタバコを吸う人は肩身が狭いので、必ずこのように聞かなければいけません。
もう一つ英語例文を見ておきましょう。「Would you mind if I open the window ?」です。「窓を開けてよろしいでしょうか」という意味です。どの英語表現もそれほど難しくはないので、実際に使ってみるといいでしょう。
問題がないか確認
次に、問題がないか確認する場合の「よろしいでしょうか」の英語表現を見てみましょう。この場合は、「Is it OK ?」「Is it all right ?」となります。「これで大丈夫か」「これで問題がないか」という意味です。これも簡単な英語なので、ビジネスシーンでも日常会話でもどんどん使ってみましょう。
確認の場合の英語例文
問題がないか確認する場合の英語例文も見ておきましょう。「Is it OK if I make a report ?」という例文になりますが、これは、「私がレポートを作成して問題はないでしょうか」「よろしいでしょうか」という意味になります。もう少し丁寧な英語表現にしたければ、「Would it be OK if ~?」という言い方もあります。
ビジネスシーンでは正しい敬語を
今回は、「よろしいでしょうか」という表現を中心に勉強をしましたが、ビジネスシーンでは正しい敬語の使い方ができないといけません。「よろしいでしょうか」に限らず、目上や上司に使うべき言葉、同僚や部下に使ったほうがいい言葉などがあるので、置かれた立場により上手に使い分けをしましょう。
「よろしいでしょうか」は許可を求める際に使う
ここまで、「よろしいでしょうか」の意味、言い換え、使い方と例文、返事の仕方などについて考えてみました。「よろしいでしょうか」という表現を普段使うことがあるかとも思いますが、その意味は相手に許可を求める、相手に問題がないか確認するということです。したがって、この意味をしっかり頭に入れて、上手にこの表現を使うようにしましょう。