契約社員とは?
契約社員とは、企業や団体などの雇い主と期間の定めのある労働契約を結んで職務に従事する労働者のことを指します。それに対して、期間の定めのない労働契約を結んで職務に従事する労働者のことを、「正社員」とか「正規社員」「正規職員」「正規労働者」などと呼んだりします。
契約社員といっていますが、契約をしている社員のことではありません。契約自体は期間の定めがあろうとなかろうと、すべての労働者が締結しています。
したがって、「無期社員」とか「有期社員」といった方が意味を捉えているといえますが、契約社員という表現が一般的には定着しています。
雇用期間が定められた労働者
期間の定めがあるということは、雇用期間(働く期間)が決まっているということです。期間とは、始期(はじまり)と終期(終わり)で構成されます。「締結日から○年間」とか「4月1日から○年○月○日まで」という意味での期間です。
一方、正社員の場合は、期間の定めはないとされています。しかし、正社員も定年を迎えれば退職します。その点では厳密には正社員の契約も「契約締結日から定年まで」という期間の定めがあると理解することも可能です。
契約社員の雇用期間の定めは、労働基準法上、一定の事業の完了に必要な期間を定めるもののほかは、3年(高度専門職などは5年)を超えてはならないとされています。あまりに長い期間にすると、契約社員を不安定な地位に置くことになるからです。
雇用形態の種別
雇用形態の違いは、雇用期間以外にも、直接雇用か否か、勤務日数や勤務時間などについても存在します。通常の社員よりも勤務日数等が短い社員のことをパートとかアルバイトと呼んだりします。このほか、労働者派遣事業所から派遣された社員(派遣社員)も存在します。
現実にはパートやアルバイトも正社員と同じように働いているケースがあるため、正社員や契約社員、パート・アルバイトとの区別が明確でない場合があります。一般には、雇用期間の定めがあることを前提に、フルタイムであるのが契約社員、パートタイム労働(短時間労働)のパート・アルバイトであると理解されています。
非正規の種類
このように、日本の労働市場には、非正規の労働者がたくさん存在しており、その呼び名は企業や組織内での呼び方の違いもありまちまちです。いずれの場合でも、雇用期間の定めがある有期雇用であるということが前提であり、その点ではすべての非正規雇用者は契約社員であるといえます。
パート
パートはpart(部分)が語源です。短時間労働者のことをパートタイム労働者というように、勤務時間(タイム)が一部(パート)である労働者を指します。短時間労働者とは、法令上の用語であり、1週間の所定労働時間が同一事業所の労働者のそれと比べて短い労働者のことです。
アルバイト
アルバイトは、ドイツ語で「仕事」を意味するAlbeitに由来する外来語で、期間の定めのある労働契約に基づき雇用される従業員を指す俗称です。バイトとも呼ばれます。アルバイトとパートや契約社員との区別は慣習的なものがあります。
アルバイトは、学生など本務が別にある者が行う場合に使われることが多く、主婦などが行う短時間労働はアルバイトではなくパートという表現が使用されます。
派遣労働者
派遣労働者は、労働者派遣法に基づき、派遣元となる人材派遣会社に登録されている者で、派遣先となる事業所に派遣されて、派遣先の指揮命令のもと労働する労働者のことです。派遣労働者も期間の定めがあるので、その点では派遣社員とは外観上見分けはつきません。
ポイントは、派遣労働者は派遣元の会社の社員でありながら、指揮命令は派遣先の会社から受けるという点です。会社が自分のところの社員でない者に指揮命令できるという例外的措置です。
契約社員は多いの?
平成30年の労働力調査の速報値によると、役員を除く雇用者(雇われて働く者)は5,596万人いて、そのうち正規の職員・従業員は3,476万人、非正規の職員・従業員は2,120万人存在します。非正規が多い印象がありますが、傾向としては、ここ10年で正規は横ばい、非正規は増加傾向を示しています。
非正規の職員・従業員のうち、パート・アルバイトが1,490万人、派遣社員は136万人、契約社員・嘱託が414万人となっています。パート・アルバイトも含めると多くの契約社員(有期社員)が存在していることが分かるのではないでしょうか?
契約社員のメリット・デメリット
契約社員になるメリットとしては、仕事を変えやすい、責任が少なく気楽に働ける、副業が禁止されていないことが多い、人間関係が固定化しない、仕事一筋にならず自分自身のプライベートな時間を大切にできるなどが挙げられます。
契約社員のように仕事を変わるというのは、環境が変わるので勇気が必要なことかもしれません。しかし、特定の技能や能力を有している労働者としては、その分野での人材の需要がある限り、再就職は比較的容易だったりします。
最近では、いったん結婚や出産を機に退職した看護師や保育士などが、子育て等がひと段落した後、再就職する話をよく聞きます。たとえいったん離職しても、資格を持っている者の場合は再就職も有利です。
契約社員のデメリット
契約社員は雇用期間が終われば無職になるという不安定な地位に置かれる点は否めません。また、契約社員は、給料や賞与が安く給料面での待遇が悪い、福利厚生が充実していないなどのデメリットもあります。契約社員がよいかどうかは、会社の規約等を調べ、自分のライフプランも含め十分に吟味する必要があります。
契約社員が退職する時は正社員とは違う
ここで、契約社員の労働契約の終了理由について整理しておきしょう。一般的には、労働契約の終了理由には、期間の満了、労働者の死亡、辞任(辞職)、解雇(クビ)、合意解除あたりが挙げられます。これらは、社員が正社員であるか契約社員であるかに関係なく共通する終了理由です。
期間満了と死亡は当然に終了する!
このうち、契約や会社の就業規則等に従って、契約が当然に終わるのが「期間満了」です。時の経過に伴って当然に終わるものです。特に会社や労働者から「辞めます(辞めてくれ)」などの意思表示は不要です。また、労働者が「死亡」すれば当然に労働契約は終了します。労働契約上の地位は相続の対象とはなりません。
「辞職」と「解雇」は意思表示を伴う
それに対して、「辞職」と「解雇」は解約の意思表示を伴います。社員の意思に基づく解約(辞めたいという意思表示)が「辞職」、会社側から言い渡す解約(辞めてくれという意思表示)が「解雇」です。言い出しっぺが異なるというわけです。これらの点を整理したうえで、正社員と契約社員との退職は何が異なるのでしょうか。
正社員と同じ退職方法は出来ない
正社員と契約社員で退職の取り扱いが異なるのは「期間満了」と「辞任」です。「期間満了」は、正社員の場合は存在せず(しいてあげれば定年)、契約社員の場合は雇用契約に定められた期間が到来することを意味します。
次に「辞職」です。これが最も異なる点です。正社員の場合、辞職は自由です。期間の定めのないことの裏返しで、いつでも退職を行うことができます。ただし、退職の申入れ(届け出)の時期には制限があります。一般的には辞める日の2週間前に届け出をしないといけないとされています。
契約社員の辞職は制限される
のちほど詳述しますが、契約社員の場合、契約開始から1年経過するまでは自由に退職することはできませんが、1年を経過すれば自由に退職することができます。
例外的に契約開始から1年経過前でも、やむを得ない理由があれば契約社員は退職できるとされています。ただし、この場合は会社側から損害賠償を求められる可能性があるので注意が必要です。
企業規約を把握しておく
上記は労働契約法令上の定めですが、実際には企業規約(就業規則)がこれらの取り扱いを定めているケースが多いので、一度確認しておくことをおススメします。なお、企業規約と法令が異なる場合、労働者に不利な取り決めについては企業規約よりも法令が優先されます。
例えば、契約社員は2年経過するまでは自由に退職できないと規約で定められていても、その部分は無効です。したがって、1年を経過した契約社員は、理由なく退職することが法令上は可能です。
ただし、実際問題として、会社規約の無効を主張して、さっさと理由なく辞めてしまうのは円満退職とは言えません。会社側も事情があって規約を定めているので、なるべくであれば規約通りの手続きを踏みたいところです。いずれにしても、退職の理由を説明するなどして、お互いが納得の上で円満退職になるのが理想です。
契約社員の退職は契約によって変わる
契約社員の退職時の取扱いの概要については上記のとおりで、基本的には雇用期間が1年を超えるかどうかが重要になります。ここでは、もう少し具体的に契約社員の退職について見ていきます。上述したとおり、円満に退職するなら、企業規約に沿った形で、お互いが納得の上で退職することが理想です。
1年に満たない契約の場合
契約締結時に「5年間働く」とか「定年まで働く」ことを約束したとしても、時の経過とともに個人の生活の事情というものは変わります。したがって、そのような約束(合意)に未来永劫拘束されないといけないというのは不合理です。
したがって、雇用期間が長い場合にはその拘束性を緩めてあげる必要があります。一方で短い期間の契約については、そのような要請は不要です。契約社員の雇用期間が1年に満たない場合には、原則として自由に退職することができないとされているのはそのような事情からです。
やむを得ない理由以外は退職不可
ただし、どんな理由があっても契約社員は1年間は仕事を辞められないとするのは働く側にとって酷な話です。したがって、契約期間が1年未満でもやむを得ない理由があれば退職することができるとされています。
やむを得ない理由の例としては、パワハラや労働条件の変更、病気や親の介護などの事情が挙げられます。これらの理由があれば1年未満でも退職することができますが、なければできないということになります。
なお、仮にやむを得ない理由が契約社員にあるとしても、契約期間の途中で辞めるのは会社側の事情ではなく、契約社員の側の事情です。したがって、会社に迷惑が掛かっているとすれば(掛かってなくても)、謙虚な姿勢でもって、会社に退職する旨伝える必要があるでしょう。
1年以上の契約の場合
雇用期間が長期になってくると、長期契約の締結によって労働者を足止めするなどの人身拘束の弊害が問題になります。そこで労働基準法では、労働契約期間に3年又は5年の上限を設けるとともに、1年を超える有期労働契約については、働き始めてから1年が経過していれば、いつでも退職することができるとされています。
1年以上働いていれば退職可能
つまり、労働契約期間が3年と定められていても、働き始めて1年を経過すれば、契約社員は自由に退職することができることになります。ただし、自由に退職できるといってもいきなり「明日から会社辞めます」」というのでは非常識です。この場合、辞めることはできても、会社に対して損害を賠償する必要が出てきます。
前もって退職を予告するなど、なるべく会社に迷惑が掛からないような形で、しっかりと手続きを踏んで退職するよう配慮しましょう。
会社の合意があれば契約途中でも退職可能
今までの話は、契約社員が一方的に解約を申し入れる場合です。会社の合意があれば、たとえ契約期間の途中で業務開始から1年を経っていないときでも、契約社員は退職することは可能です。この場合は、いわゆる合意解除(解除契約)であるので、労働期間の制限などは問題になりません。
したがって、一方的に辞めるのではなく、会社の合意を得た上で退職した方がトラブルも防げますので、しっかりと理由を説明した上で退職の手続きをとるのがよいでしょう。
自分の意志を伝える
会社を辞める時には、どちらの事情で辞めるかをきちんと考慮しましょう。たとえ、契約社員にやむを得ない理由があって退職する場合でも、契約社員の側の事情で辞めている以上、会社に対して迷惑をかけているという意識は持ちたいところです。謙虚でいて、かつ、しっかりと自分の意志を伝えるようにします。
契約社員は退職金を受給できない?
今年の2月、非正規社員(契約社員)にも退職金の一部を認める判決が東京高裁で出されました。東京メトロの子会社の元契約社員ら4人が、駅構内の売店で同じ業務をしていた正社員と賃金に差があったのは不当だとして、差額や退職金支給などを求めた訴訟の控訴審判決です。
これは画期的な判決だとされています。これまで、契約社員は退職金を受ける権利を有しないというのが通説であったからです。
退職金は基本的に無い
退職金は基本的に正社員のみを対象としています。また、法律上では退職金を定める規程はなく、会社の就業規則・退職金規程で退職時の支給ルールを定めるのが一般的です。つまり、退職金の支給は会社ごとのルールに委ねられており、従来はそのルールが尊重されてきていたのが日本の労働慣行であったといえます。
退職金は、賃金の後払い的性格、功労報償的性格、生活保障的性格を有しているとされています。同一労働同一賃金の観点や、長寿化による老後の資産形成の重要性などを鑑みると、契約社員であることを理由にした退職金不支給は一律に容認しがたい傾向が広まりつつある現状ではないでしょうか。
満了金が貰える事も?
ただし、上記の事例は非正規社員が正社員と実質的に同様の業務を行っているなどの条件下で出された判決であるので、一般的には契約社員に退職金を受ける権利があるとまでは断言できないといえます。
したがって、基本的には会社の取り決めが尊重され、合理性のない正社員と契約社員の取り扱いの差が判決等で否定されるということでしょう。実際には、退職金は出されないとしても、契約期間満了などにより、契約社員に対して満了金という名目のお金を出す会社も存在しています。
契約社員でも有給は取れる!
退職金のほかに、有給休暇(有給)の取り扱いも問題となることがあります。有給とは、労働者の休暇日のうち、使用者から賃金が支払われる休暇日のことです。有給は、正確には年次有給休暇と表現しますが、有休、年休、年次休暇などさまざまな略語が使われます。
ここで契約社員は正社員と異なり有給が取得できないのではないかとの疑問がわきます。実際のところはどうなのか、契約社員における有給の取り扱いについて紹介します。
年次有給休暇とは?
年次有給休暇とは、労働基準法第39条で認められた権利です。法律上は、雇入れの日から6月経過し、全労働日の8割以上勤務していれば、10日間の有給が付与されることになり、その後は1年ごとに付与されます。「有給」とあるように、行使しても給料が支払われる休暇です。
ところで日本の会社では、有給を取得しにくい風潮があるのが実態です。統計上、社員に与えられた有給日数に対して、そのうちの半分も消化できていないという実態が存在しています。
このような現状に鑑み、2019年4月から、法律が改正され、すべての企業において「年10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対して、そのうち年5日については、使用者が時季を指定して取得させる」ことが必要となりました。
会社に届けを出せば可能
このように、有給は、雇い入れから6月継続勤務し全労働日の8割以上出勤した労働者に対して与えなければならないとされている権利ですので、この要件を満たす限り契約社員でも有給は認められることになります。
また、有給は事業の正常な運営を妨げる場合を除き、労働者の請求する時季に与えなければならないとされています。したがって、会社に届け出手続きを行えば、原則としては、契約社員が望む日に有給を取ることが可能です。
退職前には有給消化手続き
退職前に残っている有給を消化するのも一つの方法です。この場合、有給をとるのに何か特別な手続きが必要なわけではありません。しかし、退職前は残務処理や引き継ぎなどで忙しくなかなか有給が取れないというケースもあるでしょう。
では、有給を会社に買い取ってもらうことはできないのでしょうか。一般的に、休暇を妨げることになりかねないため、会社に有給を買い取ってもらう手続きは法令違反とされていますが、退職時には労使合意のもと認められる場合があるようです。会社との交渉次第となりますので、相談してみる価値はあるでしょう。
契約社員でも退職届は提出?
退職届を書くシーンをドラマなどでよく見たりします。「退職届」とか「退職願」というタイトルが表面に印字され、「一身上の都合により~」という文章で書きだすアレです。一般的には、退職届は必要であると考えておいた方が無難ですが、退職理由によっては不要なこともあります。
契約満了での退職には原則必要無い
定年でもそうですが、あらかじめ期限の到来によって退職となる場合には、届け出など特別な手続きは必要ありません。会社もいつ退職になるかを把握している事実であり、そのような手続きを従業員に取らせることは無意味だからです。したがって、契約社員が契約満了で退職する場合には退職届は原則必要ない手続きです。
会社から求められたら提出
一方で会社の規約等で、契約満了の場合でも会社の手続き上届け出が必要とされているケースもあり、その場合は届け出の手続きを経ることが無難です。
また、契約によっては雇用期間を設けつつ、退職届出が提出されない場合には、同じ期間で契約を更新するというスタイルの雇用契約も存在します。この場合には、当然のことながら退職届出がないと自動更新になりますので、退職するためには届け出手続きを踏む必要があります。
契約社員の規約を把握しておこう!
今回は契約社員の退職について紹介しました。契約社員の届け出の有無など退職手続きについては契約や規約などで定められていることが多いので、退職前に一度確認しておくことをおすすめします。円満に解決するには、手続きをきちんと踏むことが大事ですので、契約社員の方は遺漏なく手続きを行うようにしましょう。