「ダブルチェック」の意味
ダブルチェックという言葉を何となく使っている方も多いのではないでしょうか。ダブルチェックはビジネスでは必須のプロセスであり、決まった方法が確立されています。ここでは、ダブルチェックの本来の意味と使われ方について具体的に見ていきましょう。
複数人が同じ内容を確認すること
本来の意味のダブルチェックは、ひとりのスタッフが同じ内容を繰り返しチェックすることではありません。ひとりでのダブルチェックの方法はどうしても視野が狭くなり、効果が薄れてしまいます。
ビジネスにおけるダブルチェックは複数人が同じ内容の書類などをチェックし、品質を確かめるための方法です。
さまざまな方法でダブルチェックを徹底することで、書類など公的文書や製品の品質、誤字脱字、全体の文脈、プログラム上のバグなどを事前に見つけることができるという効果があります。
特に、重要な契約書や機密書類、薬品、医療品、介護用品などはわずかなミスが品質はもちろんのこと、企業全体の信頼低下につながりかねませんので、ダブルチェックがよりいっそう重要な意味をもちます。
ビジネス以外でも用いられている
ダブルチェックはビジネス以外でもさまざまな場面で行われています。たとえば、介護業界では大事故につながるヒヤリハットを防ぐため、介助の度に手順をダブルチェックで確認することが求められています。
また、介護施設の服薬指導の際にも、薬の種類と服用する利用者の名前をダブルチェックでしっかりと確認することによって薬にまつわるヒヤリハットを防ぐシステムがととのえられています。
あるいは、精密機器の製造過程では厳正さが求められるため、オーソドックスなダブルチェックだけでなく、トリプルチェックが行われる場合もあります。
介護業界のダブルチェック
介護の場面ではつねに一瞬、一瞬の機転と対応力が求められますので、ダブルチェックの重要性も高まっています。
実際の介護では、車椅子や介護用リフトなど、特殊な機器をヘルパー自身が扱う必要があり、それらの扱い方を少しでも誤ればただちに取り返しのつかない事故につながりかねません。
どんなに熟練したヘルパーであっても、介護にあたっては必ずひとつひとつのプロセスについてダブルチェックを行うことが原則です。
医療現場でのダブルチェック
医療現場でももちろんダブルチェックが重要です。特に、病棟業務では毎日の業務がルーティン化していますから、ダブルチェックを徹底しなければ深刻なトラブルにつながってしまいます。
病棟業務では毎日服薬指導が必要となり、薬の内容もほぼ同じであるため、慣れたスタッフほどルーティンを過信してしまい、薬の誤配や種類の混同などのミスを起こしてしまいます。
服薬指導は看護業務の基本であり、ひとつ間違えれば命にかかわるプロセスですから、厳正なダブルチェック、トリプルチェックが求められます。
「ダブルチェック」の効果
では、ダブルチェックは本当にビジネスにおいて効果があるのでしょうか。ビジネスシーンでのダブルチェックの役割と意味、効果についてさらに詳しく見ていきましょう。
ビジネスシーン以外でのダブルチェックの意味と必要性についても具体的にお伝えしていきますので、ぜひとも参考になさってください。
書類チェックによる事故防止
ビジネスにおけるダブルチェックは8割方、書類のチェックを意味します。企業は毎日のように膨大な量の書類を扱い、外部にむけて発行することも少なくありません。
特に、外部向けの契約書類は公的文書としての側面が強く、わずかな誤字脱字によって内容のニュアンスが異なり、予期せぬトラブルにつながりかねないため、慎重なダブルチェックが不可欠となります。
また、製品の製造過程を記載した書類の場合、たったひとつの数値にミスがあるだけで品質が大きく左右されてしまう可能性がありますので、ダブルチェックが重要な意味を持ちます。
もちろん、社内の会議資料などでも、誤字脱字や内容のミスがあれば間接的に製品の品質に影響を及ぼす可能性がありますので、ダブルチェックは欠かせません。
生産性の向上
ダブルチェックをまったく行わない場合、書類などのケアレスミスを防ぐことはできないと言われています。
書類チェックや製品の生産プロセスの最後にダブルチェックをもうけることによって全体の生産性が飛躍的に向上し、品質の安定化の面でも有効性が証明されています。
分業体制の強化
ほとんどの企業では、書類や製品の生産プロセスとダブルチェックを完全に分けており、専門のスタッフをそれぞれ配置して有効性をさらに高めています。
分業によるダブルチェックは、心理学的な観点からも有効性が認められています。生産から検品までを同じスタッフが担当するシステムでは、どうしても疲労の影響があり、同じダブルチェックでも効果がまったく変わってきます。
また、スタッフの中でも、「最後は検品部門がしっかりダブルチェックしてくれる」という信頼関係が結ばれることで、連帯感と安心感が生まれ、職場全体がポジティブな雰囲気に包まれます。
信頼性向上
ビジネスにおけるダブルチェックは本来、書類や製品の致命的なミスをなくし、クオリティや有効性を最終的に確かめ、出荷に向けたゴーサインを与えるためのプロセスです。
当然、厳しいダブルチェックを通過した製品や書類はより高品質であると判断され、ダブルチェックを徹底していることそのものが企業全体の信頼性向上につながります。
過去に不祥事で追及された一般企業を見ると、多くの企業がダブルチェックをおろそかにしたり、有効性を認識していなかったりした結果深刻なトラブルにつながっているケースが多く、検品と品質の関係性がうかがえます。
日本の企業は本来、ダブルチェックが得意であると言われており、何重にもおよぶ検品システムを通過した製品は海外でも有効性が認められており、高品質であると評価されています。
「ダブルチェック」の2つの方法
本来の意味のダブルチェックには大きく分けて2つの方法があり、それぞれにメリットとデメリットがありますので、状況や業務内容に合わせて使い分ける必要があります。ダブルチェックの2つの方法について具体的に見ていきましょう。
2人で同時にチェック
ふたりで同じ業務内容についてチェックするのも、ダブルチェックの方法です。特に、医療や看護、介護の場面では業務遂行と同時にダブルチェックが必要になるため、この方法が有効になります。
同時のダブルチェックを徹底することで看護、介護の場面で最も避けるべきヒヤリハットを防ぐ効果があり、新人教育の一環としてもダブルチェックが導入されています。
ただ、同時のダブルチェックはスタッフの人数が2倍必要になり、業務が立て込んで忙しいタイミングではかえってダブルチェックもおろそかになり、トリプルチェックが必要になってしまう、ということにもなりかねません。
同時のダブルチェックではスタッフの組み合わせも重要となり、たとえば新人看護師とベテラン看護師など、キャリアにあまりにも差がありすぎると効果が薄れてしまいますので、人員配置にも配慮しましょう。
2人が時間差でチェック
ビジネスの書類や製品の場合は、複数人が時間差でチェックするタイプのダブルチェックが有効です。
シングルチェックでは見落としてしまった細かいミスや不具合でも、あえて時間差を置いて再度チェックすることで確認できる場合があり、信頼性の向上にもつながります。
時間差によるダブルチェックは同時チェックよりもスタッフのスケジュールが組みやすい、というメリットがあり、検品作業に集中しやすくなる、という効果もあります。
「ダブルチェック」の有効性を高める
ダブルチェックの意味と有効性についておわかりいただけたでしょうか。ここからは、ダブルチェックの有効性をさらに高めるための方法について詳しくお伝えしていきます。
ビジネスシーンだけでなく、幅広い業界で応用できる方法を御紹介しますので、ぜひとも参考になさってください。
人と機械のダブルチェックで品質向上
ここ数年は人工知能の有効性が認められ、一般企業でも人間と機械を組み合わせたダブルチェックが主流になりつつあります。
人間の目だけだとどうしても細かい不具合を見落としやすくなり、製品の品質を完璧にチェックできるとはかぎりません。
特に、チェック項目が具体的に列挙できる工業製品などはAIによるチェックが有効となり、人間とは違って疲労による能率低下などがないため、長期的な視点でのコストパフォーマンス向上にもつながります。
今のところはまだ、人間のミスを人工知能がカバーする、という段階ですが、将来的には人工知能の細かいミスを人間がカバーする、という形になるのではないか、とも言われています。
スキルを均一にする
2人でペアになって行うダブルチェックの場合、スタッフ同士のスキルや熟練度を考慮することで有効性をさらに高めることができます。
どちらか一方がまったくの新人、あるいは未経験に近い状態では、片方がどんなに緻密にチェックを行っても結局はシングルチェックと変わらなくなってしまい、意味がありません。
ペアによるダブルチェックの際には必ず、2人のスキルや能力が均一になるように人員を配置することで製品の品質をより確実にチェックすることができます。
また、2人の関係性も重要で、心理的にわだかまりのある組み合わせでは正常なダブルチェックを行うことができませんので、目に見えない部分についてもしっかりと把握しておくことがポイントです。
情報を共有する
ダブルチェックを効果的に行うためには、前提となる情報をスタッフ間で共有することが不可欠です。製品や書類がいつ生まれたか、など、基本的な情報を残さず共有することによってチェックの精度が向上します。
また、時間差によるダブルチェックの場合、最初のチェックで見つかった不具合や品質上の違和感についてチェック時刻を含め細かく記載し、共有することによってチェックの見落としを防ぐことができます。
「ダブルチェック」の注意点
効果的なダブルチェックを行うためには、事前にいくつかの注意点をふまえておく必要があります。ダブルチェックを行ううえでおさえておくべき注意点について、現場の視点からより実践的にお伝えしていきます。
ダブルチェックへの頼りすぎはNG
ダブルチェックはビジネスシーンはもちろんのこと、医療、看護、介護など幅広い業界において必須のプロセスであり、有効性も認められています。
ただ、ダブルチェックの過信は禁物です。ダブルチェックに頼りすぎると本来の業務がおろそかになり、本来ならば防げるはずのミスも増えてしまいます。
ダブルチェックはあくまでも品質チェックの最後の砦、という程度に認識しており、本来の業務におけるミスを最小限におさえることを最優先に考えましょう。
チェックの時間帯も重要
ダブルチェックの効果を最大限に高めるためには、時間帯も考慮しなくてはなりません。脳科学や心理学の分野では、人間の集中力が1日のうちで最も高まるのは午前中であると言われています。
したがって、同じ量の作業であれば午前中に行ったほうが効率的であると考えることができ、また、深夜のダブルチェックが非常に非効率であることも推察することができます。
業務がすべて終了し、疲労が蓄積した状態でダブルチェックを行ったところで能率的ではありませんし、ミスの見落としも増えるため、コスト的に見ても損失であると考えることもできます。
ダブルチェックはできるかぎり午前中や、午後の早い時間に行うのが望ましく、その日のうちに生産したものを翌日にチェックする、というパターンも充分に効果的です。
ミスを責めない
ダブルチェックは、「人間は必ずミスをするものだ」という前提のもとで行う必要があります。仮に、ダブルチェックで重大な品質上のミスが発見されたとしても、それを単なるミスとしてとがめたのでは現場は委縮します。
ダブルチェックの本来の役割は、ミスを責めるのではなく、目の前のミスをなくし、同じパターンのミスを繰り返さないようにすることです。
特に、上司がミスをすぐに責める体質では職場全体にミスを覆い隠す風潮が根づいてしまい、深刻なミスがますます見えにくくなってしまいます。
そもそもダブルチェックは、ミスを表に出さないために行うものです。「どうしてミスをしたんだ」ではなく、「ミスが見つかってよかった」という気持ちで臨むことがダブルチェックの基本であると言えます。
「ダブルチェック」は複数人が同じ内容を確認すること
ダブルチェックとは、複数のスタッフによって同じ業務をチェックし、書類の誤字脱字や製品の品質をチェックするためのプロセスです。
ダブルチェックはビジネスシーンだけでなく、医療や看護、介護の分野では必須のプロセスとなっており、同時チェックと時間差チェックの2つの方法があります。
ダブルチェックは時間帯も重要で、集中力が最も高まる午前中のうちに行うのが望ましいとされています。