「持っていく」の敬語表現
突然ですが日本語の敬語について使い方はご存知でしょうか。ビジネスマンであれば使用するシーンは色々ありますが、取引先、上司、就職活動や転職活動での面接などです。例として「持っていく」という表現では尊敬語、謙譲語、丁寧語で言い方が異なるのをご存知でしょうか。
では実際に「持っていく」という表現が敬語によってどのような表現になるのか、使用シーンはどのようなシチュエーションなのか、間違った表現も含めてご紹介いたします。
敬語表現①尊敬語
尊敬語は目上の人に対して等、相手を敬う時に使います。部長や上司など目上の人に対して「何かを持っていく」時に使用します。「持っていく」を尊敬語で表現すると「部長がお持ちになる」や「部長がお持ちくださる」となります。逆にこちら側には尊敬語は使用しません。
敬語表現②謙譲語
謙譲語は自分がへりくだって取引先や目上の人など相手を立てる時に使います。「持っていく」を謙譲語で表現すると「持参します」や「持参いたします」になります。こちら側、つまり自分がへりくだっているので「お」や「ご」は付けてはいけません。
ここでは「持っていく」の敬語に「お」や「ご」を付けたくなりがちですが、付けないようにしましょう。二重敬語という形になるため、表現としては間違っていますので、注意しましょう。
敬語表現③丁寧語
丁寧語は話している人、つまりこちら側が聞き手である相手に対して丁寧に話す言葉です。 「です」「ます」「ございます」をつけて使いますので、普段の日常生活でもよく使用されているのではないでしょうか。
こちらは目上の人など相手やシチュエーションは関係ありませんのでどのような場面でも使えます。「持っていく」を丁寧語で表現すると「持参します」や「持っていきます」など、伝えたい言葉に「です」や「ます」「ございます」をつけます。
丁寧語は誰でも難しく考えなくて良いので、とても使いやすいです。しかしながら謙譲語や尊敬語に「です」「ます」を重ねてつけると二重敬語になる可能性がありますので、注意しましょう。
尊敬語における「持っていく」の使い方と例文
敬語には尊敬語、謙譲語、丁寧語と3種類あり、「持っていく」一つについても様々な表現がありました。ではその「持っていく」をどのように使えばいいのか、例文と合わせて使い方を詳しくご紹介いたします。悩んだら是非参考にしてみてください。
尊敬語の使い方・例文①お持ちくださる
尊敬語の使い方として「持っていく」は「お持ちくださる」になります。「お持ちくださる」は取引先の方や目上の方に何かを持っていくようお願いする場合に使用する敬語の表現になります。
例えば「お忙しいところ申し訳ございませんが、○○をお持ちくださいますよう、よろしくお願いいたします。」のように使用します。ビジネスメールでは取引先の方に対してよく使われる敬語の表現になります。
しかしながら目上の方にこちらからお願いすることのはこちら側としてはとても気を使うし避けたいです。目上の方には、どうしてもお願いしないといけない、やむを得ない事情がある時に使いましょう。
尊敬語の使い方・例文②お持ちになる
2つ目の「持っていく」を尊敬語にした表現としては「お持ちになる」になります。こちらは来客の方や上司など目上の方が何かを持っていく時に、その動作をおすすめする場合に使用します。
例えば「よろしければ、プレゼンの発表で皆様に聞こえるようにマイクをお持ちになりますか?」などの表現になります。相手に対して提案していることがお分りいただけますでしょうか。
「お持ちになる」は、相手を気遣う目的として考えられた敬語になります。そのような敬語は「持っていく」の他にも多数存在していますので、覚えておくととても便利です。
尊敬語の使い方・例文③持っていかれる
最後の尊敬語「持っていく」の表現として「持っていかれる」があります。「持っていかれる」という表現は、目上の人が資料などの何かをどこか別の場所に持っていく場合に使用します。例えば上司など目上の方へ「こちらが本日の会議で持っていかれる資料になります。」となります。
謙譲語における「持っていく」の使い方と例文
始めに「持っていく」の尊敬語についてご説明いたしましたが、次は謙譲語についてご紹介いたします。自分をへりくだって「持っていく」を使用する場合どのような表現になるのか、使い方と例文をみて様々なシチュエーションで使えるようにしましょう。
謙譲語の使い方・例文①持参します
まず「持っていく」を謙譲語の表現に言い換えると「持参します」という形になります。例えば、取引先の相手へ提案するプレゼンの内容に対して「次回こちらの提案内容をイメージするサンプル品を持参します。」という表現になります。
「持参します」という表現は、堅苦しく感じる方もいらっしゃいますので、好みによります。「持参します」と同じ意味で「持って参ります」という表現がありますが、こちらの方が自然で使いやすいという方もいらっしゃいます。
どちらも間違っておらず正解ですので、ご自身が使いやすいと思う表現をビジネスシーンなどで使うようにしましょう。自信のない言葉を使用すると、逆に間違った表現になってしまいますので臨機応変に対応しましょう。
謙譲語の使い方・例文②持って参ります
謙譲語で「持っていく」を言い換えた表現として2つ目は「持って参ります」があります。ご自身が目上の方に対して、何かを届ける旨を伝えるために使用します。
かなりへりくだった表現ですので、自分より立場が低い人に使う敬語ではありませんので注意しましょう。例えば社長に「すぐに書類を持って参ります。」と話すシーンなどで使用します。
謙譲語の使い方・例文③お持ちします
最後の謙譲語として「持っていく」の敬語表現は「お持ちします」になります。相手のために自分が何かを持っていく、または届ける場合に使用します。ビジネスシーンでは部長など上司から何かを持ってくるように言われた場合、「すぐにお持ちします。」と使用します。
逆に、目上の方に何か持ってきてもらいたい場合でも使用することができます。その場合は「お持ちします」が「こちらの資料をお持ちになって頂くことは可能でしょうか?」と変わります。
「お持ちする」という敬語の表現は自分自身が行う動作のことですので、相手に行動してもらうという意味をこめた「お持ちになって」という敬語が正解になります。
丁寧語における「持っていく」の使い方と例文
最後に「持っていく」を丁寧語に置き換えた場合、どのような敬語表現になるのでしょうか。敬語を使うのが自信がない人や使い慣れていない人にとっては、使いやすい言葉ではないでしょうか。実際にビジネスシーンや日常生活でどのように使用しているのか詳しくご紹介いたします。
丁寧語の使い方・例文①持っていきます
最初に「持っていく」を丁寧語として使われる敬語は「持っていきます。」になります。これは日常生活でも一番聞き慣れた敬語ではないでしょうか。敬語の種類でも使われる頻度がとても多い表現になります。
自分が何かを持っていく時に使用する敬語の表現で、こちら側の意思を表示するために使われることが多いです。例えば「私が資料を持っていきます。」という表現で使用します。
丁寧語の使い方・例文②お持ちいただきます
最後にご紹介します「持っていく」を丁寧語で言い換えた表現としては「お持ちいただきます」になります。「お持ちいただきます」という表現は尊敬語と丁寧語の混ぜ合わせた形になります。
例えば相手に何かを持ってきてもらいたい時に使用し、「当日はご自身のお名前と顔写真が入った本人様確認の証明書をお持ちいただけますでしょうか?」とお伝えします。
「持っていく」を丁寧語に変えた「お持ちいただきます」という表現は、上記の例文のように事務的手続きの場面で使用されることが多い敬語になります。日常生活でも市役所などで窓口の方に言われた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
「持っていく」の間違った敬語と使い方は?
「持っていく」という表現は様々なシーンで敬語を使い分けるので、とても難しい言葉です。自分自身では合っているつもりでも、実は間違っていたという場合も少なくありません。では改めて「持っていく」という言葉を敬語に直した場合、どのような表現が間違いなのかご紹介します。
間違った敬語・使い方①こちらをお持ちしてください
「持っていく」を間違えやすい敬語の表現としては「お持ちしてください」があります。「お持ちする」という表現は、自分自身が行う動作について使用する敬語なので「お持ちしてください」は間違いです。正しくは「こちらをお持ちになってください。」という表現になります。
間違った敬語・使い方②メモをご持参します
「持っていく」を間違えた敬語表現の2つ目は「ご持参します」になります。ビジネスシーンなどで敬語をよく使用されている方は、すぐに違和感を感じるでしょう。しかしながらこの表現は間違っているにも関わらず比較的多く使用されています。
「持参する」という表現は謙譲語になりますが、これは自分を低くへりくだって表す言葉になります。そこに「ご」をつけることで、自分に敬語を使っていることになりますので立場がおかしくなります。
相手に対して「持っていく」の敬語として「ご持参ください」という敬語表現も間違っています。「ご持参ください」のうち「ご持参」が二重敬語となっていますので、間違った敬語になります。
しかしながら一般的という程広く使われているので、正しい敬語として定着しつつあります。周りに敬語に厳しい人がいる場合には、使わない方が無難です。
間違った敬語・使い方③書類をお持ちになります
最後に「持っていく」の間違えやすい敬語表現としては「書類をお持ちになります」になります。「自分が書類を持ちます」という意味で使用した場合、この言葉を使用している自分自身を敬う表現になりますので間違いです。
この場合は「私が書類をお持ちいたします。」という正しい表現に言い換えましょう。語尾部分の敬語表現を変えるだけで意味合いがかなり変わってきますので注意しましょう。
「相手が書類を持っていることの確認」として「持っていく」の敬語を使う場合も、伝わりづらいので止めましょう。この場合は、「〇〇様は書類をお持ちですので、このままお手続きいたします。」と表現すると自然な形になります。
「持っていく」を敬語で表現する際のポイント
日常生活やビジネスシーンで頻繁に使われる「持っていく」。その時々のシーンで「持っていく」を敬語にして対応する必要性が求められます。では「持っていく」を敬語で表現する際に気をつけるべきポイントについて詳しくご紹介いたします。
二重敬語に気を付ける
敬語は「誰が主語」か「相手はどのような人」かで、尊敬語、謙譲語、丁寧語を使い分ける必要があります。「持っていく」の敬語表現では、謙譲語である「持参」、類語である「届く」、尊敬語を使う時に二重敬語にならないようにする点に気をつけましょう。
二重敬語は「敬語変えた言葉に更に敬語を重ねる」ことを指します。 二重敬語を使うと逆に印象が悪くなってしまうので注意が必要です。 二重敬語になってしまっている例文として「○○がお持ちになられています。」があります。
「持っていく」を謙譲語にした後に「~られる」という言葉をつけ足している点が誤りです。 「~られる」をつけてしまうと二重敬語になってしまいます。正しい表現では「○○がお持ちになる」になります。
「届ける」には尊敬語がない
「持っていく」という言葉は「届ける」が類語となり言い換えて使用できます。しかしながら「持っていく」と使い方が異なりますので使い方に注意しましょう。「届ける」を敬語で表現すると、謙譲語であれば「お届けに参ります」丁寧語だと「お届けします」です。
「届ける」は「お届けなさる」という尊敬語として使いたくなりますが、「届ける」という言葉にはそもそも尊敬語がありません。「持っていく」と同じように尊敬語もあると考えがちですが、気をつけましょう。
仕事では「持っていく」の敬語の使い分けが大切
いかがでしたでしょうか。「持っていく」という言葉には様々なシーンに合わせて尊敬語、謙譲語、丁寧語と使い分ける点が難しく感じてしまいます。実際にビジネスシーンなどで「持っていく」の敬語を使用すると使い分けが理解でき、自信になります。是非使用してみてください。