「お願いできますでしょうか」は正しい?
「お願いできますでしょうか」という表現は、相手に何かをお願いするときに使う言葉です。相手を敬うへりくだって言い方です。「お願いできますでしょうか」は、主にビジネスシーンで使うことが多いです。
「お願いできますでしょうか」は日常生活の中でも使われることがあり、違和感を感じることなく実際に使っているという人も多いようです。
二重敬語と言われる誤った敬語
「お願いできますでしょうか」という言葉は、「二重敬語」と言われる誤った敬語です。二重敬語とは、ひとつの単語に対し同じ種類の敬語を二重に使うことを言います。具体的には「謙譲語+謙譲語」または「尊敬語+尊敬語」という表現を指します。
「お願いできますでしょうか」には、「ます」と「でしょうか(です)」という二つの丁寧語が使われています。先ほどご紹介したように、「丁寧語+丁寧語」も二重敬語に当てはまるため、「お願いできますでしょうか」という表現は文法上の誤りと言えます。
文化庁が公開している「敬語の方針」によると「二重敬語は一般的に適切ではないとされているが、習慣として定着しているものもある」と記載されています。つまり、文法上誤った敬語(二重敬語)でも、習慣として定着している言葉は許容されているということです。
「お願いできますでしょうか」の正しい敬語表現
「お願いできますでしょうか」という言葉は一般的に習慣として定着している言葉ですが、二重敬語と言われる文法上誤った敬語表現であることがわかりました。
では、「お願いできますでしょうか」の二重敬語を使わない正しい敬語表現は、どのような言葉になるのでしょうか。
「お願いできますか」が正しい
「お願いできますでしょうか」の正しい敬語表現は、「お願いできますか」となります。非常にシンプルで分かりやすい表現です。「です」の丁寧語「でしょうか」は必要ないということです。
「お願いできますでしょうか」という言葉に慣れてしまっている人は、「お願いできますか」という言葉では丁寧さが足りないような、失礼な表現と感じてしまうかもしれません。
「お願いできますでしょうか」という言葉が習慣として定着しているのは、相手と接するときは丁寧な言葉を選ぶことを心がけている日本人らしさの表れではないでしょうか。
「お願いできますでしょうか」の類義語や言い換え
「お願いできますでしょうか」という言葉は、二重敬語と言われる文法上誤った敬語表現であり、「お願いできますか」という言葉が正しい表現であることが分かりました。
「お願いできますでしょうか」という言葉には、同じような用途で言い換えができる類義語がいくつかあります。言い換えができる類義語はそれぞれ意味が違ってくるため、相手がどのような関係性の人なのか判断して使い分ける必要があります。
「お願いできますでしょうか」の言い換えができる類義語をいくつかご紹介しますので、いつでも対応できるように使い方を覚えましょう。
お願いいたします
「お願いできますでしょうか」は「お願いいたします」という類義語を使い、言い換えることができます。
「お願いできますでしょうか」の類義語「お願いいたします」は、謙譲語の接頭語「お」+「いたす」の謙譲語「する」+丁寧語「ます」で成り立っています。二つの謙譲語が使われているため、「お願いいたします」は二重敬語に当てはまります。
しかし、「お願いいたします」は「お願いできますでしょうか」より一般的に使われている言葉であり、使用に問題はありません。
「お願いいたします」は、同僚や部下など目上の人以外に「何かをしていただく」ときに使う言葉です。同僚や部下など目上の人以外に何かをしていただく場合は、「お願いできますでしょうか」の類義語「お願いいたします」を使い言い換えることができます。
使い方の例文をいくつか見ていきましょう。「ご検討のうえ、ご返答いただけますよう、よろしくお願いいたします」「ご確認のほど、よろしくお願いいたします」「引き続きお願いいたします」などの使い方ができます。
「お願いいたします」の類義語や言い換えは、「お願いしたく存じます」「お願いします」「お願いいただけますか」「懇願する」「お頼みします」などがあります。
「お願いいたします」「お願い致します」正しいのは?
「お願いいたします」と「お願い致します」は、漢字とひらがなの表記が違っているだけと思っていませんか?「いたす」には動詞としての意味と補助動詞としての意味があります。詳しく見ていきましょう。
動詞の「致す」は、「至らせる・届くようにする」や、「そのことが原因で良くない結果を引き起こす」といった意味があり漢字表記が正しいです。例文は「私の不徳の致すところです」となります。
補助動詞はひらがなを使うという決まりがあります。「お願いいたします」の「いたす」は補助動詞のため、平仮名表記が正しいと言えます。しかし、現状では「お願い致します」を使う人も多く一般的に広まっているため、将来的には許容されているかもしれません。
~して頂いてもよろしいでしょうか
「お願いできますでしょうか」は「~して頂いてもよろしいでしょうか」という類義語を使い、言い換えることができます。
「お願いできますでしょうか」の類義語「~して頂いてもよろしいでしょうか」も一般的に使われている言葉で、中継番組などで耳にしたこともあるでしょう。しかし、非常に回りくどい表現で「過剰敬語」だと感じる人もいるでしょう。
「~して頂きたいと考えておりますが、可能でしょうか」のように、文章を区切ることで分かりやすい表現にすることができます。
「~して頂いてもよろしいでしょうか」は、「してもらう」謙譲語の「していただく」+「よい」の丁寧語「よろしい」+「ですか」の丁寧語「でしょうか」で成り立っています。
「~していただいてもよろしいでしょうか」は「~していただいてもよろしいですか」という疑問文ですが、お願いをしている表現になります。
使い方の例文をいくつか見ていきましょう。「お時間少しだけいただいてもよろしいでしょうか」「弊社までお越しいただいてもよろしいでしょうか」「こちらでお待ちいただいてもよろしいでしょうか」などの使い方ができます。
「~していただく」の類義語や言い換えはありません。ご紹介したように、「していただく」は「してもらう」の謙譲語ですが、「してもらう」の類義語に謙譲語はありません。
「よろしいでしょうか」の類義語や言い換えは、「お間違いないでしょうか」「構いませんでしょうか」「可能でしょうか」「いかがでしょうか」などがあります。
「~していただいてもよろしいでしょうか」「~して頂いてもよろしいでしょうか」正しいのは?
「~していただいてもよろしいでしょうか」「~して頂いてもよろしいでしょうか」は、漢字とひらがなの表記が違っているだけと思っていませんか?「いただく」には動詞としての意味と補助動詞としての意味があります。詳しく見ていきましょう。
動詞の「頂く」は、「飲む・食べる」や、「もらう」といった意味があり漢字表記が正しいです。「お茶を頂く」「食事を頂く」「お土産を頂く」などの使い方ができます。例文は「こちらの飲み物を頂いてもよろしいでしょうか。」となります。
補助動詞はひらがなを使うという決まりがあります。「~していただいてもよろしいでしょうか」の「いただく」は補助動詞のため、ひらがな表記が正しいと言えます。しかし、現状では「~して頂いてもよろしいでしょうか」を使う人も多く一般的に広まっているため、将来的には許容されているかもしれません。
お願い申し上げます
「お願いできますでしょうか」は「お願い申し上げます」という類義語を使い、言い換えることができます。
「お願いできますでしょうか」の類義語「お願い申し上げます」は、謙譲語の接頭語「お」+「言う」の謙譲語「申す」+補助動詞「上げる」+丁寧語「ます」で成り立っています。「お願いいたします」
「お願い申し上げます」も「お願いいたします」や「お願いできますでしょうか」と同じく二重敬語に当てはまりますが、一般的に使われている言葉なので使用に問題はありません。
「お願い申し上げます」は「お願いいたします」と同じ謙譲表現ですが、より丁寧な表現になります。「お願いいたします」が同僚や部下など目上の人以外に「何かをしていただく」ときに使う言葉に対して、「お願い申し上げます」は上司や目上の人に「何かを申し上げる」ときに使う言葉です。
上司や目上の人に何かを申し上げる場合は、「お願いできますでしょうか」の類義語「お願い申し上げます」を使い言い換えることができます。一般的には、挨拶やお礼、お詫びの際に使われる言葉です。
上司や目上の人へメールを送る際は、「よろしくお願いいたします」よりも「よろしくお願い申し上げます」を使った方が印象がよいでしょう。
使い方の例文をいくつか見ていきましょう。「ご多忙の中、ご面倒をおかけして誠に申し訳ございません。何卒、よろしくお願い申し上げます」「先日の件について、ご検討お願い申し上げます」「今後とも末永くお付き合いくださいますよう、お願い申し上げます」などの使い方ができます。
「お願い申し上げます」の類義語や言い換えは、「希望いたします」「お頼みいたします」「切望いたします」「要望いたします」「お願いしてもよろしいでしょうか」などがあります。
取引相手など社外の人には「お願いしたいと思います」を丁寧に言い換え「お願いしたく存じます」と言い換えるいかえることができます。さらに丁寧な言い換えは「いただきたくご依頼申し上げます」という言葉になります。
「していただけると幸いです」という類義語もありますが、控えめであいまいな表現になってしまいます。必ず行動に移してほしいビジネスシーンなどでは適切な言葉とは言えません。
「お願いできますでしょうか」の使い方と例文
「お願いできますでしょうか」という言葉は、どのようなときに使う言葉でしょうか。また、どのような使い方ができるのでしょうか。
ここからは、「お願いできますでしょうか」の電話での使い方と例文、メールでの使い方と例文をご紹介していきます。
〇〇様をお願いできますでしょうか
電話で「お願いできますでしょうか」という言葉を使うときは、「〇〇様をお願いできますでしょうか」という使い方になります。電話に出た人に対して、自分が話をしたい人と交代して欲しいときに使う丁寧な表現です。
使い方の例文を見ていきましょう。「お忙しいところ恐れ入りますが、○○様をお願いできますでしょうか」「お世話になっております。経理の○○ですが、人事の○○様をお願いできますでしょうか」などの使い方ができます。
「お願いできますでしょうか」という言葉の電話での使い方はほかにもあります。伝えてほしいときは「お取次をお願いできますでしょうか」、折り返しの電話が欲しいときは「折返しのお電話をお願いできますでしょうか」という使い方ができます。
電話で会話している本人にお願いするときの例文は、「先日納品していただいた商品について、内容のご確認をお願いできますでしょうか」「こちらの不手際により書類をなくしてしまいました。大変申し訳ございませんが、再度発注をお願いできますでしょうか」などの使い方ができます。
ご返信をお願いできますでしょうか
メールで「お願いできますでしょうか」という言葉を使うときは、「ご返信をお願いできますでしょうか」という使い方になります。メールで返信をお願いするときに、メールの文面で使う丁寧な表現です。
使い方の例文を見ていきましょう。「ご多忙のところ大変恐れ入りますが、7月20日までに社員旅行の出欠のご返信をお願いできますでしょうか」などの使い方ができます。
「ご返信をお願いできますでしょうか」という表現は、メールの相手から返事をもらいたいときに使う言葉です。返信を受け取ったら、お礼を伝えましょう。
敬語での返事のお礼の例文は「ご返信、確認いたしました。ありがとうございます。これからもよろしくお願いいたします」となります。
「お願いできますでしょうか」への返事
ここまでは、こちらから相手にお願いするときについて「お願いできますでしょうか」の使い方や例文などご紹介しました。
では、相手にお願いをされたときの返事は、どのような言葉を使えばよいでしょうか。ここからは、「お願いできますでしょうか」への返事についてご紹介していきます。
問題ありません・承知いたしました
相手に「お願いできますでしょうか」とお願い・依頼されたときは、「問題ありません」や「承知いたしました」と返事しましょう。
ほかには、「問題ありません」を「丁寧な表現で問題ございません」と丁寧に表現したり、「承知いたしました」を「承知しました」、また「かしこまりました」なども正しい表現です。
「大丈夫です」と返事することもありますが、ビジネスシーンや目上の人に対して使う言葉としては不適切です。「大丈夫です」は敬語表現でないため、「問題ありません」や「承知いたしました」などの表現を使い返事しましょう。
「お願いできますでしょうか」の英語表現
「お願いできますでしょうか」の日本語表現について、言い換えや例文などご紹介しました。では、「お願いできますでしょうか」を英語で表現すると、どのような文面になるのでしょうか。
今後ますます英語の必要性は高まっていくため、最近は小学校から英語教育を始めている地域もあります。さまざまなシーンで使える言葉なので、「お願いできますでしょうか」の英語表現をマスターしましょう。
それでは、「お願いできますでしょうか」の英語表現を、例文も交えてご紹介していきます。
ビジネスシーンでの依頼
「お願いできますでしょうか」と依頼をするときによく使われる英語の表現は、「Will you please...?」「Can you please...?」「Would you please...?」「Could you please...? 」の四つです。違いを見ていきましょう。
「Will you please...?」は物理的に可能であることを前提とし、「やる気はありますか」と相手の意思や気持ちを尋ねる時に使います。「Can you please...?」は物理的に不可能かもしれないことを前提とし、「可能であるかどうか」を尋ねるときに使います。
「Will you please...?」よりも「Can you please...?」の方が丁寧な英語表現になります。
では、「Would you please...?」や「Could you please...? 」はどうでしょうか。「would」は「Will」の過去形で、「Could」は「can」の過去形です。英語は過去形にすることで、より控えめで丁寧な表現になります。
つまり、「Will you please...?」よりも「Can you please...?」よりも、「Would you please...?」や「Could you please...? 」の方が丁寧な表現ということになります。
四つの英語表現を丁寧な順に並べると、「Would you please...?」「Could you please...? 」「Can you please...?」「Will you please...?」となります。
「Could you please...?」は「~していただけませんか」、「Would you please...?」は「~してくださいませんか」、「Can you please...?」は「~していただけますか」、「Will you please...?」は「~してくださいますか」という日本語の意味になります。
ビジネスシーンでの「お願いできますでしょうか」と依頼するときは、「Could you please...? 」が一番よく使われる英語表現です。次に「Would you please...?」、少し砕けた表現になりますが「Can you please...?」も良く使われる英語表現になります。
静かにして欲しいときに「Will you be quiet, please?」と英語で表現すると、「静かにしてもらえますか」という丁寧な意味と違って、「静かにしてくれないか!」という命令に近い口調の表現になるため、ビジネスシーンでは不適切となります。
電話で来てもらうよう依頼するときは、「Can you come here, please? 」こっちに来てもらっていい?、「Could you please come here? 」こちらに来ていただいてもよろしいですか?となります。メールで依頼するときは、「I was wondering if you could come to our office. 」弊社までお越しいただけませんでしょうか。となります。
ビジネスシーンで英語を使った電話対応の例文を、電話をかけるパターンと電話を受けるパターンに分けていくつかご紹介していきます。
「お願いできますでしょうか」電話をかけるときの英語の例文
「Could you transfer me to the sales department?」営業部に取り付いてもらえますか、「Could you tell him I called?」電話があったことを伝えていただけますか、「Would it be possible to change the time?」時間を変更させていただいてもよろしいでしょうか、などの使い方ができます。
「お願いできますでしょうか」電話を受けるときの英語の例文
「Could you repeat your name?」もう一度お名前をいただけますか、「Could you hold for a moment, please?」少々お待ちください、「Would you like to hold? 」このままお待ちになりますか、「Could you call again tomorrow?」明日もう一度おかけ直しいただけないでしょうか、などの使い方ができます。
ビジネスマナー【二重敬語】
ビジネスシーンでは、「お願いできますでしょうか」以外にも二重敬語であるが許容されている言葉があります。
「お伺いします」は、謙譲語の接頭語「お」+「訪問する・聞く」の謙譲語「伺い」+丁寧語「ます」で成り立っており、二つの謙譲語が使われています。
「お召し上がりください」は、尊敬語の接頭語「お」+「食べる」の尊敬語「召し上がる」+丁寧語「ください」で成り立っており、二つの尊敬語が使われています。
「お願いできますでしょうか」は二重敬語となる
「お願いできますでしょうか」という言葉はご紹介したように、「ます」と「でしょうか(です)」という二つの丁寧語が使われている二重敬語です。文法上の誤りではありますが、一般的に使われており許容されている二重敬語のひとつです。「お願いできますでしょうか」の類義語を使って言い換えることもできるので、適切な表現をしましょう。