「頂きたく存じます」の意味
「頂きたく存じます」の意味は、「~してほしいと思っている」ということです。「頂きたく存じます」は「頂き」「たく」「存じ」「ます」という4つの言葉から成り立っており、それぞれの言葉の意味や役割を理解すれば、おのずと全体の意味にたどりつくことができます。
ただし、実際には「頂きたく存じます」をワンフレーズとして理解したほうがよいでしょう。特に「存じる」という言葉が普段使いなれないからかなかなか出てこない人も多いようです。
~してほしいと思う
「頂く」は「食べる・飲む」「もらう」の謙譲語ですが、ここでは後者の意味で使います。謙譲語は敬語の一種で、自分がへりくだる表現、すなわち自分を下げて相手を立てるときに使います。「たく」は「~したい」で願望を表す言葉です。「頂きたく」で「~してもらいたい」という意味になります。
一方「存じ」は「存じる」であり、「知る」「思う」の謙譲語です。これに丁寧な表現である「ます」をつけて、「存じます」という表現になります。「存じます」は「思います」という意味になります。
頂きたく思うを丁寧にした表現
つまり「頂きたく存じます」で、「~してほしいと思います」という意味の言葉になります。それなら「~してほしいと思います」と素直に表現すればそれでよいではないかと思われるかもしれません。実際にはそのように表現することもあり、相手との関係によってはその方がソフトで自然な印象を与えます。
しかし、中には目上の人であるとか敬意を表すべき相手に対して、「~してほしいと思います」では少々厚かましい印象があります。そのようなときは、「頂きたく存じます」という表現が適切であり、礼儀正しく効果的です。
「頂きたく存じます」のほかに「頂きたいと思います」という表現もあります。こちらは若干弱めの敬語ですが「存じます」よりも「思います」の方が現代的で使いやすいということなのか、結構よく使われる言葉です。
「頂きたく存じます」を使うシーンは?
「頂きたく存じます」は、目上の人に何かをしてほしい場合に使うとわかってもらえたとして、実際にはそんな「堅い」言葉は使わないという人も多いことでしょう。では、上司にある会議に出席してほしいときどのように伝えますか。
「頂きたく存じます」の例文や類義語はのちほど紹介しますが、多くの人は別の言い方で伝えているのではないでしょうか。「○○部長に会議に出席してほしいです」「○○部長に会議に出席してほしいと思います」「○○部長、会議に出席していただけないでしょうか」などの伝え方です。
徐々に丁寧な表現にはなっていますが、敬語としてはまだ不十分です。これらは「~してほしい」という願望が強すぎる表現です。願望というのはときには図々しくて卑しいものでもあるので、それをそのまま伝えるのでなく、へりくだる意味があるのです。
「頂きたく存じます」の類義語
ほかにもへりくだる表現はいくつかありますので、ここでは「頂きたく存じます」の類義語について紹介しましょう。堅い表現を使うのが目的ではなく、願望の中身をいかに伝えて実現するかが目的です。上記の例でいうと、部長に会議に出てもらえるよう、機嫌を損ねない表現の類義語が求められます。
①頂ければ幸いにございます
「頂ければ幸いです」とか「頂ければ幸いにございます」は「頂きたく存じます」の代わりに使われる類義語です。「~してほしい」という願望の色を薄め、「~してくれると嬉しい、幸せだ」という個人の気持ちを表す表現になっています。
「部長に会議に出席して頂ければ幸いにございます」と言われれば、さすがに「何で出ないといけないんだ!」と叱責されることはないでしょう。
➁宜しくお願い申し上げます
同じ類義語でもそれほど敬意を表す使い方をする必要がない場合には、率直に「~していただけないでしょうか」のように伝える方法もあります。ただし、それだけではお願い事を伝えただけで少々後味が悪い感覚にとらわれます。このようなケースでは、「宜しくお願い申し上げます」などをつけることがあります。
「○○部長、会議に出席していただけないでしょうか。宜しくお願い申し上げます」という例文になります。この表現では、結局のところ「お願い」をしていることに変わりありませんが、あらためて「申し上げる」ことで、へりくだって伝えています。
「宜しくお願い申し上げます」は、堅い表現でもなく、実際のビジネスシーンではよく使われる類義語です。
その他の類義語
その他の類義語としては「願いたく存じます」「お願いしたく存じます」「~のほどお願いいたします」「~していただけませんか」「~してくださいますようお願いします」「~して頂けると助かります」「=いて頂きたいと思います」などがあります。
いずれも何かをお願いする際の類義語ですが、直接的な表現を避け、相手に対してへりくだった言い方になっていますが、回りくどい表現にならないよう注意する必要があります。
「頂きたく存じます」の正しい敬語の使い方
「頂きたく存じます」は、お願いごとを伝える表現です。二重に謙譲語が入っているので二重敬語で間違いではないかとの疑問がありますが、「頂く」と「存じる」は異なる意味の単語であり、それぞれの単語にに敬語が使われている言葉が合体したものにすぎないので、用法として誤りではありません。
二重敬語とは?
二重敬語は一つの言葉に同じ種類の敬語を二重に使っている言葉を言います。敬語には尊敬語、謙譲語、丁寧語がありますが、同じ一つの言葉に尊敬語を2回使うようなケースが二重敬語です。
例をあげると、「食べる」の尊敬語は「召し上がる」ですが、それにさらに尊敬の意を表す「お~になる」「~られる」を使って、「お召し上がりになる」「お召し上がりなられる」と使うのが二重敬語です。
正しい敬語を使おう!
「頂きたく存じます」は、2つの動詞が合体したと考えることもできますが、上述のように「頂きたく存じます」をワンフレーズとしてそのまま使用した方がわかりやすいでしょう。当然使うべき相手は、上司や目上の人であり、敬意を表すべき者です。
使い方自体は単純で、「してほしいこと」を前につけて「~して頂きたく存じます」と使います。自分が行う場合に相手に許しを求める場合は「~させて頂きたく存じます」と使う場合もあります。例えば「説明させて頂きたく存じます」のような使い方です。遠まわしに「説明するので聞いてね」というニュアンスになります。
ビジネスシーンでの使用が多い
「頂きたく存じます」はビジネスシーンでの使い方が多い表現です。上司や取引先の相手などに対してへりくだることが多いからです。ビジネスシーンは相手に何かをしてほしいことが多く、それを巧く伝えて実際に何かをしてもらう必要が多い現場です。
最近はパワハラには注意する必要はありますが、上司が部下に伝える場合は敬語を使う必要はありません。しかしその逆の場合は、うまく謙遜して伝えられるかどうかで、上司を動かすことができるかどうかが決まると言っても過言ではありません。
また、口頭での会話よりも、メールや手紙など文面でのやり取りの中での使い方が多いのが特徴です。
「~して頂きたく。」は間違い?
よくメールなどで「~して頂きたく。」というように、「存じます」を省略して表現されるケースが散見されます。これは、完全に目上の人ではないけれども、へりくだる必要があるケースで使われているように思われます。
したがって、失礼というわけでなく必ずしも誤りとまでは言い難いところですが、それであれば「~して頂きたい。」と表現すれば済む話です。「存じます」をつけることに抵抗感があるからか、「~して頂きたく。」のような変な使い方がされますが、なるべく避けるようにしましょう。
「頂きたく存じます」の例文
ビジネスシーンで使える「頂きたく存じます」の使い方を例文を挙げて紹介しましょう。注意点としては「頂きたく存じます」を何でもかんでもお願いごとにつければよいというものではありません。ビジネスシーンでは、少々図々しいとか無理なお願いかなと思えるものにこそ、「頂きたく存じます」をつけると効果を発揮することがあります。
①先方とアポを取りたい時
先方とアポを取りたい時の例文です。「○月○日に訪問させて頂きたく存じます」「○○部長と面談させて頂きたく存じます」「お時間を頂きたく存じます」「アポを取らせて頂きたく存じます」などです。このようにアポ入れを行えば相手としては断り辛くなるでしょう。少なくとも丁重に断らないとビジネスパーンとしての資質を疑われます。
➁何かを教えてもらいたい時
何かを教えてもらいたい時は、例文「明日の会議に提出する資料のことについて教えて頂きたく存じます」「昨日の○○の件の詳細をご教示頂きたく存じます」「先日お持ちいただいた提案書の3ページ目の内容を教えて頂きたく存じます」のような使い方になります。
ビジネスシーンは人に聞かないとわからないことが多いのが特徴です。自分で調べてたりしたら時間がいくらあっても足りません。たとえ上司や取引先などであっても詳しい人に聞くのが、効率的なやり方です。そのためにはいかにうまくへりくだって伝えるかが大切になってきます。
③目上の人に資料を見てもらいたい時
会議に資料を提出したいが上司の確認がとれていない、でも提出期限が迫っているので早く確認してもらいたいといった状況に出くわしたことはありませんか。そのようなケースでも目上の人に資料を確認してもらうようお願いしないといけません。
例文「明日の会議資料に出すものなので、確認頂きたく存じます」「資料の確認をして頂きたく存じます」「資料をご高覧頂きたく存じます」のような使い方をして、目上の人に資料を見てもらいましょう。
その他の例文
そのほかビジネスでよく使われるフレーズは以下のとおりです。「なにとぞご検討頂きたく存じます」「請求書をお送り頂きたく存じます」「お問い合わせ頂きたく存じます」「お聞かせ頂きたく存じます」「欠席させて頂きたく存じます」「お断りさせて頂きたく存じます」などがあります。
「頂きたく存じます」の英語表現
「頂きたく存じます」は丁寧な日本語の表現ですが、英語ではどのように使われるのでしょうか。そもそも英語にこのようなへりくだった表現はあるのか、疑問がつきません。もちろん、英語にも丁寧な依頼フレーズは存在していますので、ビジネスシーンでは丁寧な英語を活用した方が相手からOKの返事が得られやすいといえます。
~してほしい
英語で「~してほしい」というときには、「I want you to 〜」を使います。ただし、これは自分の要望を伝えるものであり、直接的すぎる表現です。目上の人に対してお願いするにはもう少し柔らかい表現が必要です。ビジネスで相手に上手にお願いしないといけないのは日本語でも英語でも同じことです。
丁寧な依頼フレーズ
英語で「~してほしい」の丁寧なフレーズは、「I would like you to~」「I would be glad if you could~」が挙げられます。
「I would like you to~」は英語で「~していただけませんか」という意味です。また、「I would be glad if you could~」は英語で「~してくれると私は嬉しい」という意味です。上記の「頂ければ幸いにございます」と近い意味です。
ほかには「Would you be able to~?」「Would you mind ~ing」のような英語の類義語もあります。
英語の例文
「I would like to ask you to do that work」で「私はあなたにその仕事をお願いしたいと思っている」となります。これでも丁寧な表現ですが、疑問符の形をとった方がより丁寧で「Could I ask you to do that work?」とすると、「してもらいたい」というよりも「してもらえませんか?」という表現となります。
つまり、「あなたにこの仕事をしていただけませんか?」という言い回しになります。直訳すると「私はあなたに頼むことができるだろうか?」となりかなり謙遜している印象があります。
このほかにも「Could you please」という依頼の形で、「Could you please do that work?」としてもほぼ同じ意味です。英語でも日本語と同様、丁寧なフレーズは多く存在しています。
「頂きたく存じます」は〇〇してほしいという意味
「頂きたく存じます」の使い方、例文について紹介してきましたがいかがだったでしょう。「○○してほしい」ということを謙遜して伝える表現だということがお分かり頂けたのではないでしょうか。類義語や英語表現も含め、ビジネスでは効果的な敬語の表現ですので、きちんと使えるようになると便利です。