病欠と欠勤の違い
同じ仕事を休む行為であっても病欠と欠勤とは明確な違いがあります。この二つを混同としている人もいると思われますので具体的に解説していきます。まず欠勤とは文字通り仕事を休むことであり、通常は給料の支払いが伴わない休みのことを指します。対して病欠は有給扱いとして処理できる場合と医師の診断書が必要な場合があります。
病欠は欠勤の種類
欠勤とは会社を休む場合の総称のようなものです。休む理由が明確にされていないからです。欠勤という言葉には様々な休みの理由が含まれてます。ですから病欠は欠勤の一種類と言えます。病欠とは病気治療が必要な場合の休みであり、体調不良で1日、2日の休みの場合から医師の診断書の提出や入院による長期療養が必要な場合など様々です。
病欠時に診断書の提示を求める会社は多い
1日から3日ほどの病欠ならば、大抵のサラリーマンは有給休暇を使って処理するでしょう。有給休暇は給料の支払いが伴う休暇です。しかし5日以上の欠勤ということになると病気だという理由の裏付けを取るために医師の診断書を提出させる会社もあります。
但し診断書の提出は法的に義務付けられているものではありませんので、会社によっては仮病を防ぐという表向きの理由のために、休みの日数によってではなく会社が必要と認めた時に診断書を提出させるというような表現で就業規則に記載していることもあります。
近年では社員のメンタルの管理にも重点を置いている会社も増えてきていますので、診断書を提出させる目的はメンタルに不調をきたしている社員がいないか気を配るという面も含まれています。
病欠を有休で処理するうえで注意する点とは
有給休暇は給料が保証された休暇であり、社員は取得する権利があります。勤務年数に応じて有給休暇日数は毎年10日から20日付与されます。原則として有給休暇は完全消化を奨励されていますが、インフルエンザその他の急病やけがにより5日以上の病欠が発生した場合に備えて、7日前後の予備日数を有給休暇で残しておくことは必要です。
有給休暇が認められない場合
従業員の権利である有給休暇も場合によっては会社側は取得時期の変更を命令することが出来ます。それは業務繁忙期や決算期など特定の期間において、その従業員がいなければ業務に支障をきたすと認められた場合です。これを時季変更権と言います。サラリーマンにとっては常識的な事ですが、これから社会人になる人は覚えておきましょう。
病欠と休職の違い
病欠は欠勤という枠に含まれている休みの理由の一つです。欠勤という響きには無断欠勤というようにややネガティブな響きがあります。しかし病欠は言葉通り病気という具体的な理由で会社を休むという意味が見て取れます。一方、欠勤には病欠以外にも休職という場合も含まれています。
休職は労働の義務が免除された欠勤
休職とは会社が社員に仕事を休むことを認めた制度のことです。つまり労働の義務が免除された欠勤を指します。社員は通常病欠でも短期の場合は有給休暇で処理し、長くなった場合は医師の診断書を提出して病欠を申請します。病欠の期間は会社によって異なりますが、最長で90日程であることが多いようです。
病欠の期間が過ぎると休職扱いとなります。休職が認められる理由は病気の他に育児休業や産前産後休暇、介護休暇などがあります。病気で休職を認めてもらうためには主治医の診断書に求職の必要性や期間を記載してもらう必要があります。
休職を申請するときのポイント
まず自分の症状を客観的に証明するために病院で診断書を発行してもらいます。そして上司にまず相談しましょう。その後は人事経由で産業医の診断という流れになります。産業医の診断結果と診断書内容を踏まえたうえで人事と面談し、双方合意されれば休職という手続きに入ることが出来ます。
復職する場合も本人の復帰意思を示すために診断書が必要となります。回復状況は必ずしも元の状態に100%戻っていなくても構いません。業種を限定して就職しているのでなければ会社は本人の能力に適した業務が出来るような配置をしなければならないのです。
休職中に給料を払う義務はない
私傷病の理由で本人が申し出て認められる休職の期間中は大半のケースで給料は支払われません。各会社の就業規則に寄りますが、一切給料が支払われない場合と1か月から半年など一定期間は基本給満額の給料が支払われ、その後は期間に応じて減額され最終的に無給となる会社もあります。
これは給料が支払われるかどうかは会社によって様々であり、会社に給料支給の義務はないからです。そこで救済策として健康保険に加入している方ならば健康保険機関から『傷病手当金』が支給される場合があります。
本人が『業務外の傷病であり就業が困難であること、連続4日以上仕事に付けなかったこと、休業中給料の支払いがないこと』に全て当てはまる場合に限り、申請すれば支給されます。
休職の扱いは会社ごとで違う
休職期間中の社員の扱いは会社ごとに定められた就業規則によって違ってきます。それは休職とは自己都合によって会社を長期的に休むことだからです。休職期間の上限や給料支払いの有無なども各会社によって差があることは当然なのです。従って安易に休職という手段を選ぶことにはリスクが伴います。
但しメンタルな理由で不具合が生じた場合は、無理せず医師の診断を仰ぎましょう。このような場合で休職することは自分を守る意味で必要なことです。うつ病などは社会問題化するほど多くのサラリーマンを悩ませていますので休職することは賢明な方法と言えます。
病欠を会社に伝えるメール
病欠であれ有給休暇であれ会社に休む旨の連絡を入れることは社会人として当然のマナーです。連絡の方法は電話が最も多いと思われます。ただし会社が認めていれば携帯電話から上司や同僚宛にショートメールで知らせることが出来る場合もあります。業務用ノートPCを自宅に持ち帰れる人にはメールで連絡することは有効な手段と言えます。
上司に送るメール
上司にメールで欠勤の連絡を入れる時の注意点としては、まず丁寧な言葉で分かり易く誠実に自分の状況を伝えることです。例えば「風邪気味で体調が悪いのでお休みを頂けないでしょうか」というような具合です。加えて症状や病院に行くのかどうかなどを簡潔に伝えて、自分の業務の申し送り状況も記載すれば申し分ありません。
ポイントとして、件名は簡潔に記載し病状も具体的に伝えること。例えばただの風邪かインフルエンザかということは冬季では特に留意する点です。自分の業務内容を緊急度の高い案件とそうではない案件とを分かり易く伝えておくと上司も安心し信頼度も高くなります。
同僚に送るメール
同僚宛のメールも上司宛同様に丁寧な言葉遣いと、申し訳ないという気持ちを表して伝えることが大切です。件名は上司宛と同じでも良いでしょう。上司には伝えてあることをことわって、代行してもらいたい仕事の内容を具体的に伝えます。
緊急度に応じて優先順位をつけて依頼することが相手の立場に立った内容と言えます。メールの利点は仕事の申し送り内容が文面で残せることです。後日出社したら代行してもらった同僚に丁寧にお礼を言うことも忘れずに行います。
取引先に送るメール
取引先にまでメールで欠勤を知らせるケースはめったにありませんが、当日に取引先へ訪問する予定があった場合などは丁寧に断りのメールを入れることは大切です。この場合はアポの延期という内容でメールすることが良いでしょう。
申し訳ないという気持ちが表れる文面にすることが肝心です。アポの内容が例え本人が行かなければならない要件だとしても、無理に訪問して相手に感染させてしまってはかえって迷惑になります。完治した後改めて訪問してお詫びを入れて置けば取引先も理解を示してくれるはずです。
病欠を会社に伝える電話
体調不良の時は出来るだけ会社を休んで早期回復できるように療養しましょう。無理して出社して症状を拗らせたり、周囲の人に病気を感染させては逆に迷惑になります。当日休みを告げる場合は出来るだけ早く連絡します。そのためにはまず電話で一報を入れることが望ましい方法です。
休みの一報はメールよりまず電話でという考えの会社がまだまだ多いのは事実です。メールでいきなり休みますという連絡ではそっけない印象を与えるからでしょう。電話で連絡する場合のポイントを以下に解説します。
電話で欠勤を知らせるポイント
上司に直接伝える場合は「休みたいのですが」というニュアンスより「休んでも大丈夫ですか?」という風にお伺いを立てる聞き方が望ましいでしょう。まず体調不良である旨を伝え、休みませてもらいたい旨を伝えます。そして病院に行くかどうか、業務の引継ぎ等について伝えます。
メールによる伝達同様に業務上の申し送り事項を具体的に伝え、何かあったら連絡できるよう緊急連絡先を伝えておきます。ここまで連絡できれば安心して静養できます。たいていの場合、よほどのことがない限り職場から病欠中の従業員に連絡を取ることはありません。
病欠を理由にして解雇できる?
通常の手続きを経て休んだ病欠ならば、解雇される心配はありません。しかし長期的な入院や療養で業務を支障をきたした場合やたびたび病気で休みがちな場合には解雇されるリスクもあります。もし病気を理由に会社を解雇されてしまったらどう対処するか、不当解雇かも知れない解雇通達をされた時の対応方法をご紹介します。
解雇できる場合
身体や精神に疾患が認められ、出勤や業務の継続が困難だと判断された場合、普通解雇として解雇が認められるケースがあります。但し会社は就業規則にその旨を明記し、原則として30日前に告知しなければ社員を解雇出来ません。
厚生労働省は就業規則のモデルケースを開示していますが、そこにも普通解雇できる条件として、社員の不都合な業務態度に加えて『精神または身体の障害により業務に耐えられないとき』解雇が出来ると記載しています。多くの会社はこれを手本として就業規則に同様な文言を載せています。
就業規則を日ごろから目を通しておくことは必要です。もし会社が冊子や共有ファイルにも就業規則を載せていなかったら、上司に閲覧を希望するか欠勤・病欠・休職に関する会社の規定を確認しておくことをお勧めします。
解雇された時の対処法
解雇された時の対応はどのようにしたら良いでしょうか。業務上により病気やけがをした場合は療養期間+30日間が経過するまでは解雇出来ません。業務とは関係ない傷病で業務継続が不可能と判断された場合は、就業規則に明記されていれば解雇は可能です。従ってまずは病気やケガが業務と関係あるかどうかを判断することから対応は始まります。
解雇通知を受けたらその理由をよく確認することです。病気と業務の因果関係や、解雇を受けるまでの経緯や就業規則の内容を確認します。自分が業務に耐えうるのか、職場環境がメンタル面に影響したかなどをまとめておけば弁護士に相談する時に大変役に立ちます。
もし30日以内での解雇通知を受けたら正しい解雇予告ではないので、解雇無効の主張や解雇予告手当の請求を行うことが出来ることも念頭に入れて置きましょう。
解雇できない場合
業務上の原因で発症した病気やけがを負ったとしても業務遂行できるならば解雇は出来ません。うつ病や適応障害と病院で診断された場合は診断書を人事に提出し、配置転換を求めることは正当な権利として受け入れられるケースが多くなっています。メンタルな疾病はセンシティブな問題でもあるので会社側も慎重な対応になるからです。
業務との因果関係で病気を発症し長期療養する場合、療養期間及びその後の30日間は解雇出来ないことが労働基準法19条1項で定められています。ただし3年以上の長期療養を経ても治癒が見られない場合、打切保障という制度を会社が選択することも出来ます。
打切補償とは3年たっても治癒が見られない従業員に対し、平均賃金の1200日分を使用者が補償することで解雇できるという制度です。
病欠はメールや電話で早急に伝えよう!
病気で具合が悪いときは無理せずに休養を取りましょう。そして上司や同僚を心配させないよう会社への連絡は電話かメールで出来るだけ早く伝えるようにします。症状の具合や業務上の申し送り事項を伝え、最低限業務に支障をきたさないような連絡を心がければ、病気回復後も気持ちよく職場へ復帰できます。
最後に病欠が長引いた場合の対応法について振り返っておきます。病気の原因が業務と関係しているかどうかは重要なポイントです。因果関係があると判明した場合、会社は簡単に解雇が出来ません。
従って医師の診断書を入手しておくことは大切です。病欠から休職へ移行する場合も人事担当者とよく話し合って、休職にあたっての条件を事前に確認しておきましょう。