出世したくない若者は約50%!
学校を卒業して就職すれば、肩書や収入増加のため出世を目指して頑張るというのが昔は普通のことでした。しかし昨今では、就職しても出世したくないという若者が急増しています。近年のアンケートによると、20~29歳の若者の男女の約50%は「出世したくない」と答えています。
もちろん出世したくないという人ばかりではなく、上級管理職になりたい人やその他中級管理職になりたいという人もいます。そんな中50%もの若者の男女が「出世したくない」と考えているというのは、昔の人から見れば不思議だと言えます。
「出世したくない」という若者たちについて、20代30代の年代別や男女別に詳しくご紹介していきます。
20代の出世意欲はあり
まず「出世したくない」と答えた人が50%を超えた20代の若者の男女ですが、先にも少し触れたように「出世したくない」と答えた人以外はほぼ、出世を望んでいます。「出世したくない」と答えた人以外は上級管理職や中級管理職を目指したいと答えたので、出世を望んでいるということになります。
「出世したくない」という人も多いですが、まだ会社に入ってそう年数の経っていない20代の若者なのでやる気も希望もあり、出世を望む人も少なくないということです。
学校を卒業してからそう年数も経っていないのに「出世したくない」という若者が多いというのは問題視すべきことでもありますが、ちゃんと「出世したい」と望む若者もいることは社会の未来にとって救いになります。
30代で出世したくない割合が増加
これが30代になってくるとまた少々変わってきます。20代なら会社ではまだ新人扱いですが、30代となるとそろそろ係長クラスなどに昇進していることも多いです。しかし30代の場合このちょっとした昇進が「出世したくない」と思う理由になることがあり、出世を望む人の割合が20代の若者よりもさらに少なくなり、出世を望む人は40%程度になります。
係長などという最初の昇進によって出世するのは面倒なことを伴うというのがわかってきたため、それ以上の出世を望まなくなるという人が多くなります。出世するにはペーパーテストのための勉強や、外部での研修に出かけなければならないなど様々な負担があります。
そういった仕事以外にもやらなければならないことが増えるということを知ってしまったため、「これ以上出世したくない」と思う人が増えています。
出世したくないのは女性に多い
出世したくない若者を男女別にみると、女性の方がより「出世したくない」と思っている人の割合が高いです。男性よりも仕事ができる女性や、女性ばかりの仕事場の中で誰よりよく働く女性などに昇進のチャンスはたくさんあります。ですが、女性は昇進の話をされると断ってしまうケースが多いです。
これには女性ならではの理由もありますが、他に「性格的に人の上に立つのは向かない」などの理由で断るという人も多く、女性は男性以上に出世に積極的な人が少ないと言えます。
もちろん女性でも「出世したい」という若者もちゃんといますが、「出世したくない」という人に比べればその数は少なく、能力が高い人が出世を望まないのは実にもったいないことです。
出世したくない理由【男性】
昨今の若者には「出世したくない」と考える男女が増えていますが、出世したくない理由は男女で微妙に異なります。男性には男性なりの、女性には女性なりの「出世したくない理由」というものがあります。本当に微妙な差である違いもありますが、性別によって大きく違う理由もあります。
昔から「出世したい」と思うことが多かった男性がなぜ「出世したくない」と思うようになったのか、まずは男性が「出世したくない」と思う理由についてご紹介していきましょう。
①仕事の変化がストレスになる
男性が「出世したくない」理由の一つ目は、仕事の変化がストレスになるからです。昇進して役職に就くと、今までのように自分のやるべき仕事だけやっていればいいわけではありません。部下の仕事が進んでいなければ手伝って調整するなどしなければなりません。下の者の面倒を見ることによって自分の手間が増えてしまいます。
女性の場合母性本能のためか面倒見の良い人が結構多いですが、男性の場合は人の面倒を見るのが面倒だというタイプの人が多いので、部下の面倒を見ることで仕事が増えるというのが大きなストレスになることがあります。
自分ひとりだけでなく部下の面倒まで見なければならないことになってしまうという仕事の変化が、男性にとっては「出世したくない」と思う大きな理由の一つになります。
②プライベートがなくなる
男性が「出世したくない」理由の二つ目は、プライベートがなくなるということです。役職に就いたからといって完全にプライベートの時間がなくなるわけではありませんが、部下が何か失敗したりしたため自分が休日出勤や残業でその穴埋めをしなければならないといったことによってプライベートの時間が減ることもあります。
そのようにプライベートの時間が減ることがストレスになるのがわかっていても、男性の場合は「自分が責任を取らなければならないから仕方ない」と諦めて残業をしたり休日出勤をしたりしてしまうため、余計にストレスがたまります。
男性はうまく残業や休日出勤を断る「断り方」というのがあまり上手ではないため、プライベートの時間を削ってまで部下の仕事の穴埋めをする破目になってしまう人が多いということです。
③同僚が仲間でなくなる
男性が「出世したくない」理由の三つ目は、同僚が仲間でなくなるということです。女性であっても上司に対する愚痴などを語り合ってストレス発散することがありますが、男性の場合は特に「帰りに呑みに行こう」とお酒を飲みに行ってそこで上司への愚痴を言い合ってストレス解消しつつ仲間との絆を深めることが多いです。
この同僚が「上司と部下」という関係になってしまうと、もう一緒にお酒を飲みに行って上司への愚痴を言い合うというコミュニケーションが取れなくなってしまいます。以前は会社帰りに時々開いていた仲間同士の飲み会にも誘われなくなってしまいます。
同期に入社してずっとお互いを励まし合ってきた仲間が「上司」と「部下」という関係になってしまうことによって、お互いの間に壁ができてしまうことは寂しいことと言えます。
④部下の責任を持ちたくない
男性が「出世したくない」理由の四つ目は、部下の責任を持ちたくないということです。出世さえしなければ、役職にさえ就かなければ他人の面倒まで見る必要はありません。なのに出世して役職に就くとそれがたとえ一番下の役職であったとしても、部下の面倒を見なければならなくなってしまいます。
元々男性には、人の面倒を見るのが得意だという人は多くないため、部下の面倒まで見なければならないというのは大きなストレスになる場合があります。
そのため、自分が自分のやるべき仕事だけをしっかりとやりたい、部下の面倒まで見たくないという理由で「出世したくない」と言う人は意外に多いです。
出世したくない理由【女性】
同じ若者でも女性の場合、「出世したくない」という理由は男性とは多少異なります。元々男性と女性には性格的な違いの他に価値観の違いなどがあり、そういった価値観の違いなどによって「出世したくない」という理由も違ってきます。また、女性の社会進出が遅かったことも女性が「出世したくない」と言うポイントになります。
男性の場合は昭和の時代から「就職したら出世しなければ」という具合でしたが、女性の社会進出は男性よりはるかに遅かったため、女性の中での「仕事」は男性の中での「仕事」より価値が低い傾向にあります。
結婚せず一生一人で仕事をばりばりとやる女性もいますが、仕事をしながら結婚して子育てをする女性も多いため、「仕事」と「家庭」を両立しなければ女性にとって「出世」は邪魔になることもあるということです。
①仕事の量が増える
女性が「出世したくない」理由の一つ目は、仕事の量が増えるということです。男性ももちろんプライベートを大切にする人が多いですが、女性の場合男性以上にプライベートを大切にし、自分自身を大切に守りたいという意識が強いです。昇進して部下を持ち、部下の面倒を見るという仕事が増えることで、貴重な時間が減ることがストレスになります。
女性は男性に比べて人の面倒を見るのが好きな人がやや多いですが、それとこれとは別な話です。面倒を見た部下がちゃんと仕事をしてくれて、自分の仕事を増やさなければ女性は文句は言いません。
部下が失敗をしたりして自分がその穴埋めや尻拭いのために仕事を増やされるのは、女性にとって大変なストレスになります。趣味や育児など、女性にはやりたいことややらなければならないことが沢山あるので、時間を削られるのは一番の痛手です。
②仕事と子育ての両立が難しい
女性が「出世したくない」理由の二つ目は、仕事と子育ての両立が難しいということです。結婚して出産しても短い産休を挟んで仕事を続ける女性は多いですが、子育てというのは多大な時間と手間が必要です。小さな子供の場合、ちょっとしたことですぐに熱を出してしまうこともあります。
自分が部下の立場なら、保育園から「熱を出したので迎えに来てください」と連絡があれば上司に謝ってすぐに迎えに行くこともできますが、自分自身が上司の立場にあるとそういうわけにはいきません。
上司という立場ではそう簡単に「早退させて下さい」などと言うことはできません。仕事と子育ての両立が難しいため、「出世したくない」という女性は結構多いです。
③上司や部下に迷惑をかける不安
女性が「出世したくない」理由の三つ目は、上司や部下に迷惑をかける不安を抱くということです。これは先にご紹介した「仕事と子育ての両立が難しい」にも関係してきます。小さな子供を抱えている人は、子供にいつ何があるかわかりません。急な呼び出しなどでどうしても早退しなければならないこともあります。
そうなったら部下だけではなく上司にも迷惑をかけかねないため、その点に関する不安を抱きがちになります。他にも仕事や部下の教育に自信がないのに管理職になったという場合に、同様の不安を抱いてしまうことがあります。
女性には人の面倒を見るのが好きな人は多いですが、仕事を教えるのは上手ではないという人もいます。そういう人は、部下の仕事が上手くいかないと「自分の教育が下手なせいで迷惑をかけている」と不安になってしまいます。
出世・昇進するメリット
若者たちが「出世したくない」と回避したがる出世や昇進ですが、出世や昇進にはちゃんとメリットもあります。「出世すると面倒が増える」といった理由で簡単に「出世したくない」と考えるのはもったいないです。出世や昇進に伴って発生するメリットのことを知れば、「出世したくない」と思わなくなる可能性もあります。
「出世したくない」と思わなくなるかもしれない、出世や昇進に伴うメリットについていくつかご紹介していきます。
①対外的な信用が増す
出世・昇進するメリットの一つ目は、対外的な信用が増すという点です。対外的な信用と言っても色々あります。ひとつはビジネスの取引先からの扱いです。平社員だったころにはあまり良いとは言えない扱いをされていたのに、肩書がついた途端手のひらを返したように取引先からの扱いが良くなるということがあります。これは大きなメリットです。
他には個人的にも大きなメリットがあります。クレジットカードを作る時や、マイホームを建てる時の住宅ローンを組む時にも「肩書」があるというのは大きなメリットになる場合があります。
「肩書」があるのとないのとでは公私ともに対外的な信用が全く違ってきますので、出世・昇進することは大きなメリットにつながります。
②スキルアップできる
出世・昇進するメリットの二つ目は、スキルアップできるという点です。出世・昇進することによって今まではいなかった部下という存在ができます。その部下たちを管理・教育することによって、自分自身にも新たな業務が生まれ、それをものにしていく過程で色々なスキルを身につけることができます。
自分自身の仕事だけができていればそれで良いという人にはあまり興味が持てなくても、常に自分を向上させたいという人にとってはスキルアップできるのは魅力的です。
決まった仕事ばかりでは物足りない人やスキルアップによって自分の価値を見出す喜びを感じるタイプの人には、色々なスキルアップが見込める出世・昇進は大きなメリットがあると言えます。
③お給料があがる
出世・昇進するメリットの三つ目は、お給料が上がるという点です。多くの企業では役職に就くと「役職手当」というものがお給料に加算されるようになります。この「役職手当」は企業によって金額に差はありますが、役職に就いていない人にはつかないものなので、その分確実にお給料が上がることになります。
「役職手当」の相場は大体、主任で5,000円~10,000円程度、係長で10,000円~30,000円程度、課長部長クラスだともっと高額です。
勤務年数を重ねることによって上がる基本給に加えて「役職手当」でさらにお給料が上がるというのは、出世・昇進する大きなメリットと言えます。
出世・昇進するデメリット
出世・昇進するメリットを先にご紹介しましたが、デメリットもあります。精神的なデメリットや時間的なデメリットなど、出世・昇進に伴うデメリットはいくつかあります。もっとも精神的なデメリットというのは個人差があり、デメリットだとは感じないという人も例外的にいます。
人それぞれの受け取り方などによって多少の個人差はありますが、一般的に出世・昇進に伴うデメリットと言われる点についていくつかご紹介していきます。
①仕事のプレッシャーが増す
出世・昇進するデメリットの一つ目は、仕事のプレッシャーが増すという点です。仕事というのはもちろん、役職に就いていなくても責任を問われるものです。期日までにやらなければならない仕事などは、平社員であってもプレッシャーが伴います。ですが部下を持つ立場になると、部下の分まで責任を負わなければならなくなってしまいます。
自分やほとんどの部下はちゃんと仕事を進めることができていても、一人でも仕事がはかどらない部下がいるとそのフォローをしなければならなくなります。自分自身でフォローするか他の部下にフォローさせるかなど色々ですが、最終的には自分の責任になります。
平社員の頃にはそれほどではなかった仕事に対するプレッシャーが、役職に就くととても大きくのしかかってくるようになることが、出世・昇進するデメリットと言えます。
②自分のペースだけで仕事ができない
出世・昇進するデメリットの二つ目は、自分のペースだけで仕事ができないという点です。ばりばりと仕事をこなしてきたことによって出世・昇進した人から見れば、部下たちの仕事が遅く見える場合もあります。自分が自分の仕事をこなしても、部下の仕事が進まないなら手伝う必要もあります。
また、部下が時間内に仕事を終えることができず残業しなければならなくなった時に、部下と一緒に残業しなければならないという場合もあります。
自分は仕事が早くできるのに、仕事の遅い部下のためだけに毎日残業しなければならないこともあるというのは、出世・昇進のデメリットのひとつと言えます。
③昇進が給料に反映されない
出世・昇進するデメリットの三つ目は、昇進が給料に反映されないこともあるという点です。企業によって扱いはまちまちですが、昇進して役職手当がつくと残業代は出さないという会社もあります。昔からの慣習でいまだにそれが行われている企業があるため、そういった点が出世・昇進のデメリットとなる場合もあります。
「役職手当には残業代が含まれている」「役職手当で給料を上げたから残業代は出さない」などといった企業もありますので、これは大きなデメリットと言えます。
ですが、「役職手当に残業代が含まれている」「役職手当で給料を上げたから残業代は出さない」というのは社会的な問題にもなっています。会社との交渉という手だてもありますので、納得できない場合は話し合いの場を持つことが大切です。
出世したくない人の昇進の断り方
「出世したくない」と思っているのに上司から昇進を持ちかけられる場合もあります。そんな時には一体どのような断り方をすれば良いのか困る人も多いです。うまい断り方が出来なければ強引に昇進させられることもあります。また、下手な断り方をすれば上司を怒らせてしまう可能性もあります。
出世を断るにはどのような断り方が良いか、どのような断り方をすれば上司を納得させられるかなど、出世の断り方についてご紹介しましょう。
①今の仕事が向いている
「出世したくない」人の昇進の断り方の一つ目は、「今の仕事が向いている」という断り方です。実際一人で自分のやるべきことをこつこつとやるのが好きで仕事をしているという人も少なくありません。そういう人は「今の仕事が向いていますので」という断り方をすると、上司も普段の仕事ぶりから納得しやすくなります。
もとより、普段から一生懸命仕事をしている人でなければ昇進のお誘いなどありません。なのでこういうタイプの人は昇進の断り方も簡単と言えます。
②他に向いている人がいる
「出世したくない」人の昇進の断り方の二つ目は、「他に向いている人がいる」という断り方です。昇進のお誘いというのは仕事ができる人にしかかかりませんが、仕事が良くできるからといって必ずしも人の上に立つのが得意とは限りません。そういう人は「自分には人の上に立つ能力はありません」といった断り方ができます。
こういう断り方をするときには「自分の仕事に対する姿勢を認めていただいたのは光栄ですが」などという言葉を先に言うとあまりかどが立ちません。認めてくれた上司への感謝の意を示しながら断るのが上手な断り方です。
③今の仕事でやりたいことがある
「出世したくない」人の昇進の断り方の四つ目は、「今の仕事でやりたいことがある」という断り方です。これも普段から真面目に一生懸命仕事をしてきた人ならではの断り方です。実際にそういう「今手放したくない仕事」があれば、こういった断り方は上司を納得させることができます。
基本的に、真面目に頑張って仕事をしてきた人にしか昇進のお誘いはありませんので、こういう人にはどんな昇進の断り方もできると言えます。
④転職を考えていると伝える
「出世したくない」人の昇進の断り方の四つ目は、「転職を考えている」という断り方です。転職と言うと上司にとっては意外な答えですが、これも普段から仕事を頑張ってきた人なら通せる断り方です。ずっと真面目に頑張ってきた人なら「転職」という言葉も「スキルアップをめざす転職」と受け取ってもらうことができるからです。
ですが「転職」という言葉を使った断り方には多少の問題もあります。それは実際には転職を考えていない場合です。本当に転職を考えているなら「転職したいから」という断り方で大丈夫ですが、本当は転職したくない場合、根掘り葉掘り尋ねられることもあります。
昇進を勧めるほどの上司なら「転職したい理由は?」「どんな仕事に転職するのか?」「会社の待遇に不満があるから転職したいのか」「転職するあてはあるのか」など質問してくる可能性があります。この断り方は、本当に転職したい人以外は注意が必要です。
出世したくないなら実際に転職するのも良い選択
「出世したくない」人が昇進を断りたい時の断り方として「転職を考えている」と伝える方法を挙げましたが、実際に転職するという道もあります。現在の職場環境や仕事内容、お給料などに不満がある場合には転職を考えることもありますが、不満を持っていない場合にも転職を考えることは多々あります。
趣味で始めた陶芸などに夢中になり、たまたま近くの工房で求人しているのを見つけたなどという場合に転職を考えるという人もいます。「出世したくない」と思うなら、思い切って転職するのも良い手です。
出世したくないのに出世が免れないなら思い切って転職
「出世したくない」と訴えても「君こそ出世するにふさわしい」などと言われ、どうやっても出世街道から逃げられないこともあります。そんな時には思い切って転職するという道もあります。「今までよりお給料が少なくなってもいい、出世はしたくない」とまで思うなら、全く違う業界に転職するのを考えることも大切です。
結局は自分自身の気持ちが一番大切なのですから、自分の人生を自分の好きなように生きるというのもひとつの道です。
出世したくないのも自分の価値観!
「出世したくない」と思う理由や昇進のメリット・デメリット、昇進の断り方などをご紹介してきましたが如何でしたか?出世するもしないもすべては自分自身の価値観の問題です。「出世したくない」という人にはその人なりの道がありますので、自分が何をしたいかどうしたいかをしっかり考えて道を選んでいきましょう。