FP(ファイナンシャルプランナー)とはどんな資格?
お金に関する雑誌やテレビで、FP(ファイナンシャルプランナー)という肩書を持つ人が、保険や株式投資の解説しているところを目にしたことがある人も多いでしょう。税金や年金といった、身近なお金に関する場面でもよく目にするFPですが、FPとは一体どのような資格なのでしょうか。
また、ファイナンスという名前から、お金に関するものであると想像できますが、具体的な仕事内容はどのようなものなのか知らない人も多いでしょう。ここでは、FPの具体的な仕事内容、FPの将来性やどのように役立つ資格なのか、FP検定の難易度や、FPに仕事を依頼した場合の料金についても詳しくご紹介致します。
FPとは「資産運用相談員」
ファイナンシャルプランナーを直訳すると「資産運用相談員」になります。その名の通り、企業や個人の資産の運用について相談に乗る職業がFPです。自分に合った保険はどのようなものがあるのか、お金を増やしたい時どのような金融商品を選べばよいのかなど、専門的な知識を持ったFPが相談に乗ってくれます。
資産運用のアドバイスをする
FPは年金や保険、資産運用、税制、住宅ローン、相続に関してのアドバイスを行います。これらの資産運用などは、個人によって最良な方法が違うため、個人に合わせた資産運用のアドバイスが出来るのがFPの強みと言えるでしょう。ここから、具体的にFPにはどのような仕事内容があるのかご紹介致します。
FPの仕事内容
様々なお金に関する悩みを抱えている人が多い中で、FPはそのすべてを総括してアドバイスをしてくれるのが特徴です。保険に関してのみ、年金に関してのみではなく、人生という大きなステージの全体像が記入されたライフプラン表というものをFPは作成します。そのライフプラン表を見て、将来に向けて計画を立てていきます。
FP仕事内容で特に重宝されるのがこのライフプラン表でしょう。自分一人のライフステージのみではなく、家族全員のライフステージを1つの表にまとめることによって、明確に将来のプランを立てることが可能となります。ここでは、このライフプランニングをはじめとして、実際にFPの仕事内容にはどのようなものがあるのかご紹介致します。
仕事内容①ライフプランニングと資金計画
FPは、個人の目標や課題に合わせてライフプラン表を作成し、それに必要な資金計画を立てます。ライフプランニングでは、将来のライフプランを表にまとめ、どのタイミングでどのような資金が必要であるかを明確にします。また、現在の収支状況から、年齢を重ねていく過程で収支がどのように変化していくかなども試算されています。
例えば、漠然と教育費が必要だから貯金しよう、と考えている人は多くても、子供が高校に入学する年に、自分は何歳になっているか把握している人は少ないでしょう。そして、その年齢ならどの程度稼いでいて、教育費以外にどのような支出があるのかが、ライフプラン表に記入されているため、具体的な対策を考えることが出来ます。
仕事内容②金融資産運用
金融資産運用に関しては、どのようにお金を守りながら、かつ増やしていくのかをアドバイスします。金融商品には、投資信託や債券、株や外貨建てなど多くの商品が存在するため、個人が一つ一つ調べて自分に合ったものを選ぶのは困難です。そのため、金融商品に関する知識や、それに関する法律などに詳しいFPが個人に合ったポートフォリオを提案します。
投資の基本は、リスクが低ければリターンも少ないローリスクローリターンのように、どれだけリスクを負うことが出来るかによってリターンの度合いが変わります。一般的に20代30代は、リスクを多く取ってハイリターンが期待できるような金融商品の割合を多くし、積極的に増やすことに注力した方が良いと言われています。
ですが、50代になってから投資を始める場合、リスクを取って元本割れを起こすリスクは極力避けるべきだと言えます。
仕事内容③タックスプランニング
FPの仕事には、タックスプランニングというものもあります。タックスプランニングでは、所得税や住民税、消費税などの税への対策に関するアドバイスを行います。所得税一つを取ってみても、複雑なルールが存在し、改正なども行われているため、FPがアドバイザーとして税金対策のアドバイスを行います。
しかし、税金に関する相談といえば、税理士を思い浮かべる人も多いでしょう。税理士は、税金の相談のみではなく実務もおこなうことができるという独占業務を持っています。FPは税理士の独占業務に触れないようにしなくてはならないため、資金計画を立てたアドバイスすることまでしか行うことが出来ません。
仕事内容④リスク管理
FPは、将来起こり得る事故や病気などのリスクを、どのように回避するかや、どのようにリスクを減らしていくかをアドバイスします。生命保険や損害保険、がんや三大疾病に備えた保険、介護保険など、リスクに対する保険は数多くあります。また、保険の販売資格も持つFPであれば、保険の相談から契約までワンストップで可能となります。
仕事内容⑤不動産
不動産の購入は、人生の一大イベントですが、ローンの支払いが滞りなく出来るのか不安になる人も多いでしょう。また、不動産を活用して収入を得ようとする場合、空室や住人トラブル、災害などのリスクが伴います。FPは、そんなリスクに対しても対策を考え、不動産購入後の収支シミュレーションを作成します。
ローンを組む前にシミュレーションを見ながら計画を立てていくことで、安心して不動産を購入することが出来ます。また、不動産を購入して実際に家賃収入を得た場合、所得が変わってくるため、税金の金額も変わってきます。
確定申告に関しては、税理士の独占業務となっているため、FPでは対応できませんが、それ以前のシミュレーションなどでFPはアドバイス可能です。
仕事内容⑥相続・事業承継
相続に関しては、多くの課題が混合して存在します。相続税をはじめとした税金の問題、不動産を相続する場合や、遺族年金がある場合、葬式に関することやその費用の問題などです。そのどれもに、専門家が存在するため、税金に関することなら税理士、葬式に関することなら葬儀屋、年金は年金事務所に相談する必要があります。
しかし、相続に関する総括的なアドバイスが必要になる場合があります。そんな時にはFPがそれぞれのアドバイスをまとめ、どれかに偏りすぎた意見を修正していく必要があります。
FPの将来性
多岐にわたる分野において知識が必要となるFPですが、FPという職業に将来性はあるのでしょうか。FPの将来性として、資格の取得後は企業に所属して働く将来性や、FPとして独立する将来性などが考えられます。しかし、FP業務はたとえFPの資格を持っていなくても出来てしまうため将来性は低いと言えます。
そのため、独立の将来性を考える場合は、FPの分野の中で専門分野を持つことや、他の士業と組み合わせていくことによって将来性を見出していく必要があるようです。
信用度が増す資格
FPの資格を取得するためには、金融や税金、保険などに関して幅広い知識が必要となります。そのため、FPの有資格者というだけで、信用度が増します。しかし、将来性があるからという理由ではなく、主に銀行員や、税理士、社会保険労務士などの専門家が自らのキャリアデザインのためにFPの資格を取得することが多いようです。
名刺に記入してあれば印象が良くなる
相談した相手の名刺に、FPと記入されている場合とそうでない場合では、記入されている方が断然印象が良くなります。身近なお金に関する相談の場合、どれか一つの分野のみではなく、「不動産と税金」などの様にいくつかの分野に知識が必要となることが多いです。そのため、広い知識を持つFPという肩書はとても好印象であると言えます。
使い道はあまりない
前述のとおり、税理士、社会保険労務士、銀行員などの専門家が補助的な資格として取得する場合が多いようです。FPの資格のみでは、使い道が少なく将来性も期待できません。そのため、FPを取得する場合は、それと関連する資格も取得しておくことで将来性も広がります。
例えば、個人に保険などの金融商品を販売した場合、銀行から販売手数料を得ることが出来ます。金融商品の販売に特化するならば、金融に関する知識をもっと勉強できる資格を取得すれば、将来性が高まるでしょう。また、相談に特化したFPになり、相談料で収入を得ようとする場合、FP資格の上級に挑戦して将来性を高めていくと良いのではないでしょうか。
FPとは独立開業するための資格ではない
FP試験に合格し、晴れてファイナンシャルプランナーとなれたとしても、それだけで独立開業が出来るわけでは無いようです。FPは国家資格ではありますが、税理士や弁護士などの様に独占業務を持ちません。そのため、FPとして行う業務のすべては、FPでなくても出来てしまいます。
しかし、税に関する実務は税理士の独占業務ですが、それに至るまでのライフプランニングや、税がどのような仕組みなのかといった個人の疑問に回答することは、FPの活躍する場面です。その後、税理士に実務を依頼しバトンを渡すなどします。
FPとは就職に役立つ資格?
就職活動の際に、簿記検定などの他にFPの資格を取得しようと考える人が多いようです。独立は厳しくても、国家資格であるFPの資格は、就職には役立つ資格なのでしょうか。企業から見て、FP資格を持っている人とそうでない人ではどの程度評価が違ってくるのか気になる人のために、FPが就職に役立つ資格であるのかどうかご紹介致します。
履歴書に書くことは可能
3級から1級まであるFP検定ですが、2級からは難易度が高くなるため、就職のために取得するならば3級が妥当であると言えます。そして、国家資格であるということから、履歴書に堂々と書くことが出来ます。しかし、3級は合格率が高く、国家資格の中では取得しやすい資格と言われているため、就職で役立つことな少ないかもしれません。
就職が有利になることはない
3級は比較的簡単に取得することが可能であるため、たとえ国家資格であっても就職が有利になることは無いようです。そして、高齢化社会で今後特に必要とされる相続に関する勉強も必要なFPですが、3級では深い知識まで求められていないため、就職後も実務で役立てることはできないでしょう。
同じ勉強時間を使うならば、会計の知識を深めることが出来る簿記検定3級の資格を取得する方が良いかもしれません。会計の知識は、どの分野の仕事をしていても必ず必要となる知識です。また、就職にも有利になると言われています。そのため、簿記3級を既に持っている人が、知識の幅を広めるという意味でFPの勉強をするのが良いのではないでしょうか。
FP取得でキャリアアップできる可能性
独立開業にも就職にも向かないFPの資格ですが、キャリアアップには活かすことができる可能性があります。例えば、銀行員がFPの肩書も持っているなら、相談窓口の業務に役立てることも出来るでしょうし、取引先にも信用してもらい易いでしょう。そのため、専門分野の知識を補完するという意味では、FPの資格は有効であると言えます。
社内のアピール材料にはなる
銀行や保険会社などの金融業界や、不動産業界では、FPの知識が業務で役立つことも多いです。金融業界や不動産業界で働いている人はFPの知識を仕事の武器にすることが出来るため、社内のアピール材料にすることもできます。FPの資格を取得した後に、有資格者であることを全面的にアピールしてみると良いかもしれません。
FP取得がきっかけで出世するのは正直難しい
前述のとおり、FPは専門分野を補完する資格であると言えるため、FP資格の取得がきっかけで出世に繋がることは無いと言えるでしょう。しかし、前述のとおり、FPの知識があったおかげで仕事を任され、そこでしっかしと結果を出すことによって、出世に繋がることはあるかもしれません。
FPとは自分の生活のために役立つ資格でもある
FPは、個人や企業のお金に関する疑問や課題に対してアドバイスを行います。個人のお金に関する課題は、多くの人が抱えていると言えます。そのため、FPの資格を取得するために勉強した知識を、自分の生活にも役立てることが出来ます。ここでは、FPの知識が実際にどのような場面で役立つかもご紹介します。
生活に密着した内容が多い
FPの資格を取得するにあたって、年金や保険、住宅ローンなどのことを勉強する必要があります。これらは全て、個人の生活に密着したものであるため、ほとんどの人が直面するものです。年金の仕組みや、実際にどの程度年金がもらえるかなどは、普段から気に掛けている人も少ないでしょう。
更に、保険も、多くの種類があり、基礎的な知識を持っていると、保険選びにも重宝します。終身タイプや、掛け捨てなど、一見ワードを見ただけではどのようなものなのかイメージし辛いものが多いです。そのため、おすすめされている保険が、果たして自分に合っているのか判断できません。
住宅ローンや投資をする時に役立つ
FPの資格で得た知識は、住宅ローンを組む際や、投資をする時にも役立ちます。住宅ローンでは、金利が数%違うだけで、総返済額に大きな差が出ます。そのため、金利はどのようにして決まるのかなど、FPの資格で得た知識があれば、住宅ローンを組む際にも、投資をする際にも損をせずに済む事が多いでしょう。
FPとは団体が利益を得るためだけの資格?
前述の通り、FP資格は国家資格ではあるものの、就職に役立てることは出来ません。また、取得しただけでは独立開業も難しく、独占業務も持ちません。そんなFP資格は、主催者である団体が受験料で利益を得るためだけに設立されたとも言われています。ここでは、FPの試験に関して詳しくご紹介致します。
金融財政事情研究会とFP協会が試験を主催
FP検定は、金融財政事情研究会と、FP協会という2つの団体が開催しています。金融財政事情研究会は、FP検定以外にも金融窓口サービス技能検定という検定も主宰している一般社団法人です。FP協会はファイナンシャルプランニングの普及を推進する特定非営利活動法人であり、ファイナンシャル・プランニング技能検定をメインに開催しています。
2つの団体が、FP検定を主宰していますが、どちらが主催しているものに合格しても、国家資格となります。
受験料収入を稼ぐための資格とも言われている
FP検定3級に合格しても、役立てることが困難であるため、受験料収入を稼ぐための資格とも言われています。国家資格であるというだけで、名前に箔が付き、3級であれば合格しやすいため、多くの人が受験しています。そのため、FP検定は天下り団体の利権のために生まれたともいわれています。
FP検定3級の難易度は?
FP資格のみでは、役立てることが難しいかもしれません。しかし、金融関係などに就職を考えている人が、やる気をアピールするためにFP検定3級に挑戦するという人も多いようです。FP検定3級の取得が、就職の内定や昇進に直結しなくても、やる気の裏付けとなるためです。ここでは、FP検定3級の難易度についてご紹介します。
合格率は70%~90%
FP協会が、2019年1月に主催したFP検定3級の合格率は、学科試験で74.09%、実技試験で83.38%でした。2018年9月に実施された3級の合格率も同程度であるため、合格しやすい資格であると言えます。勉強する分野は多岐にわたりますが、出題内容が基本的なものばかりであるため、合格率は高い水準になっているようです。
また、FP3級の取得に必要な勉強時間は、一般的に80~150時間ほどが目安だと言われています。一日2時間ずつ勉強したとしても2~3ヶ月で取得可能となるため、試験日が目前の状態からでも合格は可能だと言えるでしょう。
試験範囲はやや広い
FP検定は、試験範囲がやや広いです。しかし、試験はマークシート式の択一形式で出題され、勉強時間もそれほどかからないことから、独学でも十分合格できると言えます。通信講座や、予備校も数多くありますが、3級なら独学の方が費用も安く抑えることが出来るため、独学をお勧めしている人が多いようです。
1級は難易度が大きく上がる
FP検定は3級から1級までありますが、2級でも40%~50%の合格率があります。しかし、金融財政事情研究会が2019年1月に実施した1級の学科試験では、合格率が8.45%でした。2級から1級になると、突如難易度が跳ね上がるため、勉強期間も2級の倍の平均600時間必要だと言われています。
1級は銀行員の出世に必須?
銀行員が出世していくためには、金融に関する法律などの深い知識やコンプライアンスが必要とされます。そのため、その指標としてFP検定1級の合格が出世に必須とされているようです。他にも、難易度の高い日商簿記1級や、証券アナリスト、中小企業診断士、宅建などの資格も出世に影響すると言われています。
ファイナンシャルプランナーの相談料はいくらかかる?
FPに相談することで、個人に合わせたライフプランを作成してもらうことが出来、今後を見据えた計画を立てることが可能となります。では、FPに相談した場合、相談料はいくらかかるのでしょうか。相談するFP探しで失敗しないように、相談料の相場を覚えておくとよいでしょう。
無料で相談をしてくれるFPもいる
無料で相談をしてくれるFPは、独立系のFP事務所に所属しており、金融商品を販売できるFPか、銀行や不動産会社に所属しているFPが多いようです。金融商品の販売資格を持つFPは、金融商品の契約が取れた場合、銀行などから販売手数料を受け取ることが出来ます。そのため、相談料自体は無料で行ってくれるところが多いようです。
2万円以上かかる場合もある
FP協会が調査した「1時間当たりの有料相談料の調査結果」では、全体の約6割が、1時間当たり1万円未満の相談料で相談を依頼できます。しかし、ごく少数ではありますが、1時間当たりの相談料が2万円以上かかる場合もあります。
なぜこんなにも相談料に差があるのかというと、前述のようにビジネス形態の影響を大きく受けるためです。そのため、無料相談だとサービスの質も低いかというと、必ずしもそうとは限りません。金融商品を販売することが出来れば、相談料を回収できるというビジネス形態であるということが最大の要因です。
また、定期的に収支の見直しをしたいという人も多いため、月額や年額で相談に応じているFPもいるようです。
FPはあると便利だがなくても困らない!
金融や税金の仕組みは、検索すればインターネットでも調べることが出来ます。しかし、基礎的な知識が無い場合、仕組みを理解することは困難です。そんな時、FPが相談役となり、個人や企業に適切なアドバイスを行っていくことが重要になってきます。そのため、FPの資格はあると役に立つことが多いようです。