文章検定とは
私たちは、日常生活でも仕事の上でも人との言葉のやり取りをしながら生活しています。そして、現代は情報化が進み、文章でのコミュニケーションの機会がますます欠かせないものとなっています。
これからの、IT化が進んだ社会生活においては、文章を正しく読み取り、文章で自分の考えを伝える能力が必要不可欠になってきます。
文章検定とは、相手に正しく伝わる文章を書けるようになようになるための検定試験です。この試験に取り組むことでコミュニケーションに役立つ文章を書く力をつけられるでしょう。
それはどういうことなのか、文章読解・作成能力検定の意義や問題の内容と勉強方法についてくわしくご紹介します。
通称:文章読解・作成能力検定
「文章検定」とは、文章読解・作成能力検定のことで、文字通り、文章を的確に読み取り、内容を把握して、それに対する考えや意見を論理的に分かりやすく組み立て、相手に伝わる文章を書く能力の検定試験です。
日本語の文章に関する検定は他に「日本語検定」(特定非営利法人 日本語検定委員会)、「語 彙・読解力検定」(朝日新聞,ベネッセコーポレーション)などがある中、文章検定の問題は、内容に記述式の比率が高く、より受験者の文章力を把握するのに適していると言えます。
教育現場・企業研修にも注目される文章検定
もともと、生徒の文章能力を上げたいという学校教育現場の声から生まれたこの検定は、企業の社員研修などにも多数取り入れられています。それは、文章検定が、ただ能力を測って完結するものでなく、取り組むことで文章力を向上させ、育てる性質の検定であることが理由となっています。
ある企業の取り組みでは、あらかじめ文章検定の対策をせずに受けた時、新入社員の合格率が約3割程度なったものが、その後公式テキストなどで勉強し再受験したところ、合格率は約7割にまで上がったとのことです。
このようにして文章検定に取り組むことで社員たちの文章能力を上げ、それが最終的には会社全体の業績を上げていくことにつながるという考えから、企業の注目を集めています。
客観的な検定結果で弱点が分かる
その背景には、企業では新入社員の多くに、基礎的な文章作成能力に課題を感じているが、具体的な訓練方法を見出すのが難しいという現状があります。
そこで、文章検定を受験することによって、各自の文章能力の弱点を知り、能力の向上に役立てることができるのです。文章検定の検定結果通知には、合否の結果とともに、どのような力が不足しているか、どのような勉強方法を取り入れればよいかなどを知ることが出来ます。
基礎的な能力を上げるための文章検定
文章読解・作成能力検定の合格率は難易度が上がるにしたがって低くなりますが、この検定の目指すところは、再受験や上級の級を受験するために勉強を続けることで、文章能力の向上させるところにあります。実際には文章検定に取り組むことで身に付く文章能力とは、どのような能力のことを言うのでしょうか。
論理的に考える力を身につける
文章検定に取り組むことで、社会生活、特にビジネスの上で必要な論理的に考えるという能力を磨くことが出来ます。
論理的な文章能力とは、テーマを把握し、情報を収集し、問題を解決して、説得力のある文章を構成する能力です。論理的な文章を書く訓練を積むことによって論理的に考える習慣ができるということです。
そして文章力が上がることで迅速なメールのやり取り、提案書の質の向上、的確な契約書の作成が可能となり、ビジネスの効率、成果にもつながってきます。このような理由から多くの企業で、新人社員研修などで文章検定が活用されるのです。
もちろん学校教育現場でも、このような文章検定に取り組むことのメリットを理解して、文章の勉強方法として積極的に取り入れていこうという考えも多くあります。
文章検定・問題の内容
文章読解・作成能力検定は、難易度により4級から2級まで4段階に分かれています。そして各レベルで「基礎力」「読解力」「作成力」の3つの要素から成っています。その問題の内容は各級それぞれどんなものになっているでしょうか。問題のポイントを知って、勉強方法を考える上での目安にしましょう。
①基礎力
それぞれの級で基礎力として、「語彙」と「文法」の力を見ます。問題の内容は、4級では漢検4級程度の語句の理解と文脈に応じた使い方が出来るかと、文法的な意味の使い方と理解度をチェックします。
3級では漢検3級程度、準2級では漢検準2級程度の語句・慣用表現を文脈に応じて使えるかをチェックします。また表現の文法的な違いについての理解度を見ます。
2級では漢検2級程度の語句・慣用表現が文脈に応じて使えるか、文法的な違いの表現における意味や役割りの理解度を見ます。
②読解力
読解力としては「意味・内容」「資料分析」「文章構成」を読み取る力を見ます。問題の内容は、4級では文章や段落の要旨と文章の中での役割を理解しているか、資料の表す意味が理解できるかチェックします。
3級、準2級、2級では文章や段落の要旨、文章構成を理解し、作者の意図やねらいを読み取ることが出来るかをチェックします。
③作成力
作成力では「構成」と「表現」、そして総合的な文章を書く力を見ます。問題は、4級では表記や文体に気をつけて、文法的・意味的に正しい文を的確な順序で書けるかと、「事実の報告」と「意見」から成る意見書が書く、与えられた条件で通信文を書くという内容です。
そして3級は文章の要素を正しい配列で並べる、表記や文体に配慮しながら、正しい敬語を使って文法、意味的に正しい文を書けるかと、「事実の報告」「意見」「意見の正しさの論証」による意見書と、与えられた条件下で通信文を書く内容になっています。
準2級、2級では、構成・表現に関しては3級と同様ですが、様々な複雑な条件を与えられた通信文と「事実の報告」「意見」「意見の正しさの論証」「異なる意見をあげて反論する」という4つの部分を入れた意見書を書かなければなりません。
文章検定・合格率と合格基準
文章読解・作成能力検定は、日本漢字検定協会が実施している検定で、中学生から一般・企業まで団体・個人で多くの人が受験している検定です。正しい文章を書くことは、学生時代はもちろん公私の社会生活でも、コミュニケーション力に欠かせないスキルとなります。その合格基準や合格率はどのくらいになっているのでしょうか。
70%程度が合格基準
各級とも、合格基準は200満点中70%が合格ラインとなっています。合格率は発表されていませんが対策せずに受けると約3割の合格率だと言われ、難易度が上がるほどに合格率は低くなるようです。
ある大学で学生達に受験させた結果では、準2級と2級ではその合格率は準2級が87.5%だったのに対して2級になると25%と、かなりの差がありました。(神戸学院大学「文章表現」「文章読解」における検定実施報告と結果分析より)
これは、レベルがあがるほど、記述式問題の比率が高くなり、難易度が上がり、合格率が下がることによるものだと言えるでしょう。各級の難易度と内容についてくわしく見てみましょう。
文章検定・各級の難易度
文章読解・作成能力検定では4級・3級・準2級・2級と難易度によって分けられています。それぞれのレベルの難易度や問題の内容を説明します。おおまかには4級が中学生レベル、3級が高校生レベル、準2級が大学生レベル、2級が社会人レベルを対象にしていると考えてよいでしょう。
4級から2級の4段階
4級は、スムーズに読む・書くことができ、基礎的な文章読解、作成が出来るレベルです。3級は、高校での積極的な表現、知的言語活動、また社会人としてのコミュニケーション活動に必要な文章読解、作成が出来るというレベルです。
準2級はより高度な、実際の社会生活の現場でのコミュニケーションに役立つ文章の読解・作成が出来るレベル、2級は高等教育での高度な教養、社会人として必要な総合的な文章読解・作成が出来るレベルになります。
各級の問題の内容
中学生くらいの難易度と言われる4級の内容は、5つの大きな問題に分かれていて、そのうち問題4と問題5が記述式の問題になっています。行数の指定があり、不足しても超過してもいけないので、慣れない人には難易度は高いと言えます。
3級、その上級の準2級は5つの大きな問題に分かれ、そのうち記述式の問題は55%の110点を占めます。しかも全体の35%が問題5の論説文を書く問題です。70%で合格ですから、この問題5をすべて失点すると、それだけで不合格ということになってしまいます。
2級はさらに記述式の問題の比率が高くなり、200点満点中160点の約80%が記述式となっています。問題の内容も手紙文の作成や条件が与えられた論説文など難易度が高く、合格率も低くなっています。
文章検定・勉強方法
文章読解・作成能力検定を受験するための対策として、基礎を学べる問題集や公式テキスト、過去問題集が出版されています。また、2級受験対策としてeランニング講座も用意されています。これらのテキスト類で勉強することで文章力をつけることが出来、それこそが文章検定の目的といえるでしょう。それぞれの勉強方法の内容を見てみましょう。
①公式テキスト・過去問題をやる
各級80ページくらいの冊子になっていて、それぞれ「基礎力」「読解力」「作成力」の3要素を基礎から勉強できるようになっています。解説ページと問題ページがあり、解説ページで要点を理解して、それを練習問題で確認できる内容になっています。
この他に「文章力ステップ」という問題集も出て基礎から実践まで段階的に身につけられます。学習のポイントや手引きも掲載されています。
そして、文章検定の効果的な勉強方法として、過去問題をぜひ解いてみましょう。実際の問題の傾向に慣れることが出来ます。また、問題を解く時間配分などを考えるために実際の問題がどのようであったかを知っておくのは効果的な勉強方法です。
過去問題集では実際の問題のほかに効果的な勉強の方法や、採点の重要ポイントをチェックすることができます。これらテキスト類は公式HPから購入することもできます。
②文章術関連の本を読む
文章の書き方に関する本もたくさん出版されています。著者によって重視するポイントや、方法は違いますが、文章検定の直接の勉強方法というより、自分の知識として取り入れていくことで、自然と自分の文章も磨かれていくでしょう。
評判のいい本をご紹介します。「9マスで悩まず書ける文章術」(山口拓朗)は文章の技術というより、情報の扱い方という面が強いのですが、文章のテーマをしぼるのが苦手な方にはおすすめできる本です。
国語学者である著者が図表も使いながら、分かりやすく文術を説明している「伝わるシンプル文章術」(飯間浩明)も好評です。論理的な文を書く方法を身につけられます。
③日々の生活から磨く
文章検定のための勉強方法は、テキストや文術の本からだけとは限りません。日常生活の中で、感じたことや目にした事柄を題材にして文章を作ってみたり、反論を考えて文章にし、意見の正当性をまた文章にしてみるなどして、たくさんの文章を書くという実践的な勉強方法こそが訓練になり、自分の合格率を上げることにもつながっていくでしょう。
文章検定は仕事に繋げられる
文章読解・作成能力検定の対象は中学生くらいのレベルからとなっており、多くの中学校・高校でも団体受験を実施しています。このように、教育現場に取り入れられるほかに、企業の研修にも多くの需要があります。
これは、文章能力が実際の社会生活、特にビジネスの場でも欠かせないものであり、社会人こそ身につけたいスキルであることを意味しています。
文章能力を実社会に活かす
文章検定への取り組みで身につけられるのは、問題を把握して情報を集め、テーマを決める要約力と問題解決力、文章を構成する作成力、そして的確な表現をするための表現力・語彙力などです。
社会生活の様々なシーンで文章を書くことが求められますが、特にビジネスの場では迅速さや正確さ、的確さが必要になってくるでしょう。
文章検定を受けることで培った文章能力は直接種々の文書作成や、メールのやり取りなどのコミュニケーションにおいて役立つことでしょう。
文章検定の意義
このような、文章を書く際の直接的な効果のほかに、もう一つの意義として論理的な考え方が出来るようになるという目的があります。常に論理的な文章のテーマや構成を考える習慣が付き、これは社会生活や仕事にも生かされることでしょう。
そして、メールや文書でのやり取りがますます多くなる現代社会で、文章を読むこと・書くことに苦手意識がなくなると今以上に積極的なコミュニケーションが取れるようになるのはないでしょうか。