貯蓄型保険とは
貯蓄型保険とは、どんな保険でしょうか。保険の役割は万が一のときの保障にありますが、それとは別に、満期が到来したり解約したりした際、お金を受け取ることができる保険商品があります。その貯蓄性に着目して「貯蓄型保険」と呼ばれます。
保険料を払って万が一のときに備えながら、一定の条件下でお金も受け取れる性質を有しているため、資産形成の一つの手段として考えられています。なお、一般の預貯金とは性質が異なるのでその点には注意する必要があります。
貯蓄に近い用途にも活用できる保険
わかりやすくするために具体的な例で見ていきましょう。生命保険で一生涯保障がある終身保険を例に挙げてみましょう。
この場合、亡くなったときや重い障害を負ったとき、すなわち保険事故が発生したときに保険金を受け取ることができますが、これとは別に満期が到来したときや解約したときに満期保険金や解約返戻金としてお金を受け取れることがあります。
死亡や重度障害は偶然的な出来事ですが、満期到来や解約は必ず到来したり、任意に行えるものであり、自由にお金が入ってくるという点でメリットがあります。
契約や条件次第ですが、この満期保険金や解約返戻金は、支払った保険料と同等かあるいはそれ以上の金額であることもあるので、貯蓄型保険は使い方次第では貯金に近く、極めて効果的でおすすめな資産形成手法であるといえます。
満期時や解約時に返戻金がある
上述のとおり貯蓄型保険には、満期時や解約時に返戻金があるのが特徴です。満期とは契約期間の満了時のことを意味し、解約時とは契約期間の途中で契約をやめる時のことを指します。いずれの場合も契約が終了する場合ですが、保険事故が起こることなく契約が終了する場合です。
このケースで「保険事故が起きなかったわけだから良し」とするべきなのでしょうが、貯蓄型保険の場合は一定の額の返戻金を返ってきます。
普通、保険は相互扶助の精神で、自分に事故がなければ他の契約者のために使われるわけですが、貯蓄型保険の場合はその点が少し修正されています。
返戻率の確認が大切
このように考えると、貯蓄型保険における満期返戻金や解約返戻金はどれくらいの額が返ってくるのかが関心事項になるでしょう。つまり返戻率が問題です。例えば、支払った保険料の総額と同額の返戻金が戻ってきたとすれば、契約期間中ただでリスクへの備えをしてもらっていたことになります。
このように貯蓄型保険を結んでいると、契約終了後の経済的負担がかなり減少することもあるので、おすすめの保険商品であるといえるでしょう。
貯蓄型保険の種類
一口に貯蓄型保険といってもその種類はさまざまです。一般的には保険のタイプには、「掛け捨て型」と「貯蓄型」の2種類があります。「掛け捨て型」は、契約期間内に万一のこと(保険事故)が起きなければ、保障を受けることなく契約は終了するので比較的単純です。
一方で、貯蓄型は貯金に近い用途に活用しているので、さまざまなニーズに応じて契約の種類も複雑になってくる傾向があります。ここでは、「貯蓄型保険」の種類について見ていきましょう。
低解約返戻金型終身保険
終身保険は、死亡保障や高度障害保障が一生続く保険商品ですが、低解約返戻金型終身保険は、保険料の払込期間中に保険を解約した場合の返戻金の額が低いタイプの終身保険です。つまり、保険料払込期間満了前に保険を解約してしまうと、受け取ることができる解約返戻金の額は払込み料の総額を下回ることになります。
一方で、毎月支払う保険料は、一般の貯蓄型保険の場合と比べて安くなるというメリットがあります。また、保険料の払込期間の満了後に保険を解約する場合には、解約返戻金の額が上昇するという特徴もあります。
毎月の保険料の安くしつつ、長期にわたって保障を受けたいと考えている人にはおすすめの貯蓄型保険であるといえます。
養老保険
養老保険は生命保険の一種で「生死混合保険」と言われるものです。その言葉どおり、生きていても死んでも保険金が受け取れるタイプのものです。保険事故が起きた場合は生命保険金が受け取ることができ、保険事故が起きることなく満期を迎えた場合は、死亡保険金と同額の満期返戻金を受け取ることができます。
「養老保険」の「養老」とは「老後を養う」と書いており、その満期返戻金で老後の生活費に充ててくださいという趣旨です。
つまり「養老保険」は、「万が一のときの家族への備え」と「老後のための自分への備え」を同時に果たすおすすめの貯蓄型保険契約です。
学資保険
学資保険とは、子どもの教育資金を確保(貯金)するための保険です。とりわけ大学入学に係る資金を確保するために、子どもが大学生になる年を満期に設定して、保険契約を結ぶものが多くなっています。学資保険のメリットはその高い貯蓄性にあります。
一方で、学資保険の中には「保障型」のタイプの契約もあります。こどもの医療保障、死亡保障、契約者の死亡保障などが付加されている保険です。このタイプはいろいろな保障が付加されているため、総支払保険料よりも満期金・お祝い金の受取額が少なくなるというデメリットがあります。
個人年金保険
個人年金保険は、保険料の払込期間(通常は60歳まで)に保険料を納めることにより、契約時に定めた年齢に達した時点から一定期間又は一生涯にわたり年金を受け取ることができる貯蓄型保険のことです。公的年金のほかに、老後の生活資金のために個人で準備する私的年金です。
個人年金保険も学資保険とほぼ同様で、将来何らかの出費が予測されることに備えて積み立てるタイプの保険です。貯金に似ていますが、金融機関の金利よりもメリットがあるケースも多く、老後資金の形成にはおすすめの貯蓄型保険です。
貯蓄型保険のメリット
貯蓄型保険のメリットはどこにあるのでしょうか。貯蓄型保険と対になる保険が掛け捨て型保険です。掛け捨て型保険は非貯蓄型であるので、万が一の保障があるだけで貯金はできないことになります。
保険を考える上では、毎月(あるいは毎年)払う負担(保険料)と将来受けることができる給付とのバランスがとれていることが大事です。ここでは、貯蓄型保険のメリットについてご紹介します。
保険料が掛け捨てではない
貯蓄型保険のメリットの1つ目は、保険料が掛け捨てでない点が挙げられます。掛け捨てとは、万が一の出来事が起こらなかった場合は、保険料が一切契約者に返らないことです。しかし、貯蓄型保険の場合は、万が一の出来事が起こらない場合でも、一定の場合には給付金(返戻金)が受けられます。
あたかも保険料が貯金されているかのような仕組みであり、ほぼ必ずと言っていいほど契約者に何らか給付金(返戻金)がなされることから、非常に重要なメリットであるといえます。
貯金ができる
貯蓄型保険のメリットの2つ目は、1つ目と似ていますが貯金ができる点が挙げられます。保険料が保険会社の収入に入り、他の契約者のための給付の原資となるのではなく、自分のための貯金をしているというイメージです。特に学資保険や養老保険、個人年金保険の場合、将来まとまったお金が必要になることが前提とされています。
手元にお金を置いておくこともできますが、手元に置くとついついお金を費消してしまうおそれもあるので貯金をしようという姿勢が理想です。利率や税金面を考えると貯金をすることのメリットは大きな意味をなしてきます。
保険料の自動振替貸付・契約者貸付ができる
貯蓄型保険のメリットの3つ目は、保険料の自動振替貸付・契約者貸付ができる点です。自動振替貸付とは、保険料の支払いが滞ったときに、解約返戻金の範囲内で保険料を自動的に保険会社が立て替え、契約を継続させてくれる制度です。解約返戻金の支払いがあることが前提です。保険料と解約返戻金が相殺されていると考えればわかりやすいでしょう。
また、契約者貸付も、解約返戻金がある場合に、そのうちの範囲内の金額を、保険会社から借りることができる制度です。こちらも解約返戻金がいわば担保替わりとなっている貸付です。
ただし、解約返戻金がついているからといって、常に、自動振替貸付や契約者貸付が受けられるわけではないので、保険会社に確認しておく必要があります。
普通預金より利率が高い
貯蓄型保険のメリットの4つ目は、普通預金より利率が高い点です。貯金ができる点がメリットであると説明しましたが、現在の金融機関の普通預金ではお金を預けてもメリットはさほどありません。しかし、貯蓄型保険の場合、とりわけ保険期間が長期に及ぶ契約の場合は、保険会社からすぐに出金されることがないため、利率が高くなる傾向にあります。
税金を節約できる
貯蓄型保険のメリットの5つ目は、税金を節約できる点にあります。ただし、これは貯蓄型保険に限らず、一般の生命保険等であれば税金を節約可能です。ここでいう「税金」とは具体的には、所得税(国の税金)及び住民税(地方の税金)です。これらの税金では、生命保険料控除という税金の節約が認められています。
生命保険料控除とは、所得の額から支払った保険料の一定の額を差し引くことができる制度です。所得が少なくなるわけですから、生命保険料を払えば税金が安くなることを意味します。
税金は社会への投資であり、保険は自己への投資(備え)です。税金はもちろん大切ですが、税金を払うよりも、貯蓄型保険として保険料を払って自分の将来に備えた方がメリットが大きいと考える人も多いのではないでしょうか。
貯蓄型保険のデメリット
税金は掛からないし、貯金はできる、そんな良いこと尽くしの貯蓄型保険ですが、メリットばかりではなくデメリットもあります。メリットとデメリットを理解し、比較考量した上で、最終的に貯蓄型保険を選択するかどうか判断する必要があります。以下、貯蓄型保険のデメリットについて紹介しましょう。
保険料が高い
貯蓄型保険のデメリットの1つ目は保険料が高いことです。保険料が掛け捨ての場合は、保険会社の収入として他の人の給付の原資に充てられますが、貯蓄型保険の場合は、自己の将来の給付の財源として留保される必要がありますので、どうしても保険料は高くなりがちです。
もちろん、これは、保険金額や年齢、性別などの諸条件が同じ内容の掛け捨て型保険と比較しての話であり、条件次第では掛け捨て型よりも保険料が安くなることにも注意しておく必要があります。
固定金利タイプはインフレリスクがある
貯蓄型保険のデメリットの2つ目は固定金利タイプの場合にはインフレリスクがある点が挙げられます。インフレリスクとは、インフレ(物価上昇)による貨幣価値の下落で損失を被るリスクのことです。固定金利タイプの貯蓄型保険は、将来的に受け取ることができる金額が確定しています。
したがって、お金の価値が下がってしまうと、受け取れることができる保険金額(の価値)が少なくなることになります。
それに対し、変動金利タイプの場合は、インフレになると金利が上昇する傾向があります。つまり、インフレの場合でも受け取ることができる金額が上昇するのでそのようなリスクは回避できます。
解約時期に制限がある場合も
貯蓄型保険のデメリットの3つ目は、貯蓄型保険の解約時期に制限がある場合があることです。例えば、早い時期で貯蓄型保険を解約すると、解約返戻金が全くないか、あっても元本割れを起こすこともあり、これらは大きなデメリットです。つまり、一定期間保険料を払い続けないと解約が事実上できない状態であるといえます。
これはある意味当然といえば当然の措置といえます。契約後すぐ解約して、それで支払った保険料よりも多くの金額がもらえるのであれば、世の国民の多くがそうするに違いありません。
掛け捨て型のメリット・デメリット
反対に掛け捨て型の保険のメリット・デメリットについても見ておきましょう。掛け捨て型とは書いて字のごとく保険料が掛け捨てとなり、万が一の事が起きなければ基本的には何の給付も受けられないタイプの保険です。
なお、税金が節約できるのは掛け捨て型でも同様です。つまり、掛け捨て型でも生命保険料控除という形で税金が節約できます。
掛け捨て型のメリット
掛け捨て型のメリットとしては、保険料が安いこと、保険料に対して大きな保障が得られること、保険の見直しがしやすいことが挙げられます。特に人生のステージに各ステージで求める保障内容は変わってくるので、保険の見直しがしやすいという点は大きなメリットになります。
掛け捨て型のデメリット
掛け捨て型のデメリットは、何といっても何も返ってこない点であり、これに尽きると言っても過言ではありません。安い保険料で安心を買っていたといえばそれまでですが、お金が貯金されず何も返ってこないのは寂しいと感じる人も多いでしょう。
また、掛け捨て型の保険の中には契約期間が定まっているものがあり、更新するときに保険料がそれまでより上がることがあるというデメリットもあります。
貯蓄型保険を選ぶポイント
以上これらのメリット・デメリットを踏まえた上で、貯蓄型保険を選ぶポイントについて考えてみましょう。ポイントしては、2つに絞られます。
1つは、契約が存続するとして万が一があった場合の保障の内容とそれに対する負担とのバランスを考慮して適当であるかどうか、もう1つは、契約を解約するとした場合の返戻率が魅力的かどうかです。
保険金額・払込期間などの確認
まずは1つ目の、貯蓄型保険の万が一の保障の内容についてです。保険事故が起こる可能性と支払う保険料の額(払込期間)、そして保障の金額がバランスがとれているかどうかを検討します。通常、受益と負担の関係が成り立つので、保障金額が大きければ大きいほど、支払う保険料の額も大きくなります。
そもそも、なぜ貯蓄型保険が必要なのかを考える必要があります。単にお金が増えそうだからということではなく、具体的な目的が必要です。また、保険料の額も現在の生活水準にとってどのような影響を与えるかを考えなければいけません。
将来に備えるために、現在の生活を苦しくしてしまっては元も子もありません。なるべく家計に負担のない保険料に設定することが大事です。
返戻率の確認
ポイントの2つ目は返戻率です。貯蓄型保険に加入する人の多くは、将来の自己や家族の資金作りが主な目的でしょう。そこで重要なポイントとなるのが、数多くの貯蓄型保険の商品の中でどれが効率的に貯金出来るかという点です。その基準となるのが「返戻率」です。
返戻率とは、契約者が支払う保険料の総額に対して、受け取ることができる保険金の総額の割合です。この返戻率が高ければ高いほど貯蓄としての効果的であるといえます。どの商品を契約しようか迷ったときには、返戻率が最も高いものにするのも1つの方法です。
返戻率の計算
返戻率は、「受け取る保険金の総額÷支払う保険料の総額×100」で計算できます。受け取る保険金の総額は、原則として生存中に受け取ることができる祝金、満期保険金、解約返戻金等の合計額であり、死亡保険金や高度障害保険金など保険事故が発生した際の保障の額は除きます。
返戻率を上げるおすすめの方法としては、保険料の支払いを月払いではなく、一時払い(一括払い)にするものがあります。1回に支払う保険料の額が増えるので、経済的に余裕がある場合におすすめします。
貯蓄型保険のおすすめ商品
ここからは具体的に、貯蓄型保険のおすすめ商品について見ていきましょう。以下2019年時点で、返戻率の高い生命保険会社3社をご紹介します。ただし、契約内容は保険会社各社で常時見直しがされています。あくまで目安に考えておき、最新の情報をもとに判断するようにしてください。
オリックス生命ライズ
貯蓄型保険のおすすめ商品の1つ目はオリックス生命ライズです。返戻率は110%を上回ります。全国で相談できる保険窓口は1000店舗を超え、保険のプロに無料で相談できる店舗、代理店、窓口を1分で予約できるので、忙しい人で保険を手早く結んでしまいたい人にはおすすめの会社です。
メットライフ生命
貯蓄型保険のおすすめ商品の2つ目はメットライフ生命です。こちらも返戻率は110%近くあり、外貨ドル建ての貯蓄型保険が有名です。日本円よりも大きなリターンが期待できますが、為替手数料が取られるなどのデメリットもあるので、注意しましょう。
手数料の低いドル建て保険ならソニー生命もおすすめです。いずれも保険営業員による勧誘などはあまり見かけませんが、商品の良さで口コミやネットなどでPRして契約を勝ち取るスタイルであるといえるでしょう。
損保ジャパン日本興亜ひまわり生命
貯蓄型保険のおすすめの3つ目は、損保ジャパン日本興亜ひまわり生命です。こちらは返戻率は110%に届きませんが、105%は超えています。損保ジャパン系列は損害保険のイメージが強いのですが、「一生のお守り」は終身保険で、もしものときの保障と解約返戻金がセットになったおすすめの商品です。
貯蓄型保険の解約のタイミング
保険といっても一生涯続ける必要はありません。あくまで将来への備えですので、備える必要性がなくなったとか、何らかの事情で急にお金が必要になった場合には、貯蓄型保険を見直して時には契約を解約する必要があります。ここでは、貯蓄型保険を解約するタイミングについて検討してみます。
利益が出るタイミングで解約する
理想的には利益が出るタイミング、すなわち返戻率が100%を超えるタイミングで貯蓄型保険を解約するのが理想です。払った金額よりももらう金額の方が増えるわけですからこれほどよいことはありません。
また仮に100%を超えてなくても、契約期間中保障があった点や税金面での節約も考えると100%を割るからといって貯蓄型保険で損をしているわけではありません。いずれにしても返戻率が100%に近いところで貯蓄型保険を解約するのがよいことは言うまでもありません。
貯蓄型保険は返戻金があるのがメリット!
貯蓄型保険のメリット・デメリットについて紹介しました。万が一の保障は、あくまで万が一であり、受け取ることはないに越したことはありません。一方、返戻金は確実に受け取ることができます。おすすめ商品のほかにも返戻率がよい商品はたくさんありますので、メリットを把握して、自分にあった貯蓄型保険を検討してみましょう。